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26話:天使と個人戦

 この世界に来てから何度も見た勇者パーティーの面々が並び、いつも通り勇者が一番前に出て、大声で話し始めた。


「もしかしてこのダンジョンはお前たちが攻略していたのか? ならご苦労様だな、あとは僕たち勇者パーティーが引き継ぐから君たちはもう帰るといい!」


「はぁ!? 他のパーティーが攻略中のダンジョンには入らないのが常識だろうが、お前らがさっさと帰りやがれ!」


「勇者に向かってなんだその口の利き方は!? 僕たちが残りを攻略してやろうって言ってんだ、さっさと帰れよ!」


 ダンジョン内に勇者の怒声が響き渡る。

 どうやら前に倒した時から何も反省はしていないようだ。

 こんな時にこいつと会うなんて、本当に厄介だな。なんでいまさらダンジョンなんて攻略してるんだ。


「僕たちはこのダンジョンの報酬が必要なんだ、邪魔するなら追い返すぞ!」


「ぐっ……このダンジョンの秘宝はお前らみたいな雑魚パーティーより僕たちに相応しい! かかってくるなら相手になってやるぞ!」


 一度負けているのに強がりな、こっちは急いでるんだから無理やり追い返すのが一番早いか。

 もったいないが派手な魔法を撃てばすぐに帰るだろう。


「そんなに言うなら、覚悟を決めた方がいいよ」


「待て待て待て! せっかく同じ人数のパーティーメンバーがいるんだ。僕に考えがある」


 魔法を撃とうと護符を準備した時、勇者が焦ったように止めてきた。

 パーティーメンバーがいるからって、何をするつもりだ?


「ここはパーティーメンバーの個人戦と行こうじゃないか。戦士は戦士、魔術師は魔術師と戦って勝った数が多いパーティーが先に進めるんだ」


 パーティー間の個人戦の要求――。

 つまり、俺一人は全員で相手しても勝てないから一人負けても他が勝てればいいというわけだ。

 これはむしろ、めんどくさい勇者パーティーを避けるのに利用できる考えかもしれない。


「何が個人戦だ、そんな要求受けられるはずないだろ!」


「いや、そうしよう」


「なに言ってんだシト、こいつらの話なんて聞く意味はない!」


 個人戦ということは、一対一の力比べだからここで勇者以外のパーティーメンバーも倒してしまえばこいつらは完全に俺たちに負けたということになる。

 誰一人歯が立たない状況を作ればもういちいち突っかかってくることもないだろう。


 こいつらはここで完全に潰しておいた方がいい。

 アギトに勇者に聞こえないよう耳打ちするために近づく。


「お前、何を考えて――」


「君たちに強化魔法をかける。これからもしあった時もめんどくさいから、勇者パーティーを全員倒してしまえばいい」


「だが、俺達にはあまり時間はないぞ」


「問題無い、"強化"――この護符を持っていれば勇者パーティーに負けることはないさ。勝負が始まった時に使えばアギトたちならすぐにでも倒せるはずだよ」


 その後、強化魔法を保存した護符をシャルルとカレンにも渡し、勇者の話を聞くことにした。


「それじゃあ誰と誰が戦うのかな? 僕は一人で全員相手にしてもいいんだけど」


「舐めやがって……お前は僕とだ、あの時の恨みここで晴らしてやるっ!」


「私たちはそこの黒魔導士とおチビちゃんよ、泣いたって許してあげないんだから」


 魔術師と聖職者は二人でセットらしく、シャルルとカレンを指名した。

 残りの二人は何も言わなかったが、必然的に戦士とアギトがマッチすることになる。


 それぞれ戦う相手が決まったところで、邪魔が入らないよう――というか戦いの最中に魔法が干渉しようにアギトと戦士は一層、シャルルとカレンペア、魔術師と聖職者ペアは二層、俺と勇者は三層で戦うことになった。


 そして移動しようとした時、勇者がまた話し始めた。


「いいことを思いついた、勝った方にもう一つ条件を付け加えるとしよう!」


「なんだ、まだなにかあるのか?」


「僕たちが勝ったら、そこの精霊族(エレメンタル)を貰う!」


 そう言って指差したのは、俺のことだった。

 一瞬何のことかわからなかったが、この場に精霊族は俺しかいない。

 こいつはまた自分勝手なルールをつけ足して、ダンジョン攻略どころか俺までいただこうって魂胆だったか。


「そんなっ、ダメに決まってます!」


「そんなこと認められるか! そもそも個人戦ですら理屈が通ってねえのにシトを加入させるだと!?」


 カレンとアギトが反論するが、いま言い合って時間をかけたところで意味はないだろう。

 なにを言われても勝てば全部チャラだ、いまは言いたいだけ言わせておけばいい。


「いいよアギト、どんな条件をつけられても勝てばいいだけさ」


「本当にいいのか? いくらなんでも――」


「僕たちがあんななんちゃって勇者パーティーに負けるわけないだろう?」


「なっ……!? お前どれだけ僕たちを舐めてるんだ!」


「そうよ、私達勇者パーティーにそんな口をきいたこと後悔させてやるんだから!」


 勇者と魔術師から反論が来るが、聞こえないふりをしてダンジョンの奥まで歩く。

 いうだけ言っていればいいさ、アギトもシャルルもパーティーとしても動きどころか個人でもその力はこの世界でかなり強い。

 それに加えて俺が強化魔法を仕込んでいるんだから負けるわけがない。


「じゃあ行ってくる、お前らも負けるなよ」


「心配するな、俺達はなんちゃって勇者パーティーに負けない……だろ?」


「シャルルさん、足手まといかもしれませんが、私も頑張ります! シトも気を付けてくださいね」


 自分が一番危険な立場だっていうのに、俺の心配だなんて――カレンは本当にいい子だな。

 シャルルと一緒とは言え心配だが、ここから俺にできることはない。あとはシャルルが守ってくれるのを祈るだけだ。


「ありがとう。シャルル、カレンのことは頼んだよ」


「任せろ、傷一つつけずに戻ってくる」


 そして全員がバラバラの階層に移動し、パーティー間の個人戦が始まった。

20時にもう1話投稿されます。

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[気になる点] 「じゃあ行ってくる、お雨らも負けるなよ」 お雨らじゃなっくてお前らですよね?
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