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21話:天使と酒

 宿に戻り部屋に入るとアギトが簡易的な食事を机に並べていた。

 先に宿に戻っていると言っていたが昼飯の買い出しに行ってたのか、気が利く男だな。


 部屋の角にあった机も移動していて、椅子も四つに増えている。

 これだけ周りが見えるのにパーティーを組みたくないとは、本当にもったいない。


「帰ってきたか、シャルルお前それ……」


 シャルルが道具屋で買った茶色い瓶を見て驚くアギト。

 これはなにか重要なアイテムだったのか?


「お前昼間からアルコポーションなんて飲むつもりか、いろいろあったのはわかるがいくらなんでもそれはないだろう」


「すまん、今は何も考えたくないんだ……」


 アルコポーション!?

 MP回復効果があるが、過剰に使うと酩酊のバッドステータスを受ける娯楽アイテム――端的に言えばこの世界の酒だ!


 ポーションとは言えこの世界の酒か……ちょっと気になるな。アセンブルを始めてからは寝る間も惜しんでたから飲まなくなったけど、それ以前はギャルゲーしながらよく飲んでたし。


「まあまあ、少しぐらいはいいじゃないか。シャルル、僕ももらっていいかい?」


「構わないが……飲めるのか?」


「飲める飲める! 飲んでみたいとも!」


 コップを差し出してシャルルに注いでもらう。

 料理もそうだったがゲームでは感じられないアイテムの味ってのは毎回楽しみだ。

 機会があったらポーションも飲んでみたい。


「はぁ……カレンは飲むなよ?」


「はっはい!」


 コップいっぱいに注がれたアルコポーションは茶色い液体で、ふんわりとアルコールの匂いが漂っている。

 一口含飲むと香りも芳醇で苦みの中にほのかな甘みがありウイスキーのような味がするが、アルコール度数でいえばそんなに高くない。飲みやすくてポーションではなく酒として楽しめるいい飲み物だ。


「ぷはぁ、こんな良いものがあるなら教えてくれよ」


「アルコポーションなんて普通は飲まん、それにお前が飲めるかも知らなかっただろう」


 そう言ってアギトは昼食に手を付ける。

 さて、僕も新しい異世界料理を味わうとするか。


「う〜……なんでエナはギルドに……」


 変な声が聞こえて隣を見ると、顔を真っ赤にしたシャルルがふらふらした頭をなんとか倒れないように支えながらスプーンを持っていた。


「シャ、シャルル?」


 話しかけても反応がないどころかろれつの回らない言葉をずっとつぶやき続けていて、シャルルのコップを見ると俺と同じぐらい注がれていた酒がもうない。

 まさかもう全部飲んだのか?


「だから飲むなといったのに……」


 アギトが食事の手を止めて立ち上がる。

 こいつシャルルが酒に弱いことを知ってたのか、なら教えてくれればよかったのに。


「待て待て、僕が運ぶよ。アギトとカレンは食べてていい」


 知らなかったとはいえ飲んでいいといったのは俺だしちょっと責任を感じて立ち上がる。

 とりあえずベッドに寝かせておけばよさそうだし、酒に弱いと言っても少し寝かせれば起きるだろう。


 シャルルを抱えてベッドに運ぼうとすると、アギトに呼び止められた。


「シト、出て左の部屋も借りたからそっちに運んでくれ。一人で寝かせておいたほうがいいだろう」


「わかった、やっぱり気が利くね」


 部屋を出て隣の部屋の扉を開けると、内装はほぼ同じ部屋だ。椅子がないのはアギトがさっきまでいた部屋に運んだからだろう。


「弱いのに一気飲みなんて、下手したら体を壊すよ」


 聞こえてないだろうけど、元は酒を嗜んでいた大人として酒の飲み方を注意してシャルルをベッドに寝かせる。

 顔は赤いままだしたまになにか言っては虚空を見つめてぼーっとしているが、とりあえず酔っているだけで他の心配はなさそうだ。


 念の為に部屋にエチケット袋的なものがあるか探すためベッドから立ち上がろうとすると、腕を引っ張られてベッドに転がり込んだ。


「シャルル!? 君もしかして起きて――」


「エナ……俺は、強く……」


 寝てるな……あの修道女との思い出の夢でも見てるのだろうか。

 しょうがないな、少しだけ付き合ってやるか。こいつも酒に弱いのに買ってきて飲むほど思い詰めてるんだしな。


「シト、遅くなるようでしたらお昼ご飯をこっちに――な、なんで二人で寝てるんですか!?」


 扉を開けてカレンが入ってくる。

 やばい、これは勘違いされる構図だ。


「違うんだカレン! 寝ぼけたシャルルに引っ張られただけで、僕はなにもしていない!」


「そ、そうなんですか……ダメですよシト、そんな無防備に男の人とベッドに入っちゃ、もし何かの間違いで、その……あ、赤ちゃんが出来たらどうするんですか!?」


 …………はい?

 いくらなんでもそれはないだろう。確かにカレンはまだ子供だけど、この冒険者とモンスターが蔓延る異世界でそんな無知なわけ。


「あ、愛し合う男女が一緒のベッドで寝ると赤ちゃんができるのでしょう……シャルルさんとはそんな関係じゃないと思いますが、もしものことがあったら大変です!」


 あー……俺、この子の子供なら産める気がする。

 って何をやばいことを考えてるんだ俺は、いくらなんでも俺がいまの体で子供なんて想像できない。一瞬でも気の迷いを起こさないようしっかり気をつけておかないと。


 とりあえずカレンが来るぐらい時間をかけていたことだしずっとベットにいるわけにもいかず、立ち上がってカレンと一緒に隣の部屋に戻った。

 シャルルは眠ってしまったし、起きたらエナのことを教えてあげるか。シャルルの昔の記憶からなにかエナについてもっとわかることがあるかもしれないし。


「遅かったな、なにをしてたんだ?」


「な、なにもしてませんでしたよ! シトは寝ているシャルルさんの隣にいてくれただけです!」


 手を振ってアピールしながらさっき見たことを隠しているカレンだが、焦りすぎだ。それだと何かしてましたって言ってるようなもんだぞ。


「そ、そうか……シャルルの様子はどうだった?」


「酔って寝てるよ、あの様子なら夜まで起きないんじゃないかな」


「ならあのエナという修道女について少し話そう、シャルルがいると話しづらいからな」


 椅子に座り、俺たちはエナの対策と、もしエナが魔族だった場合について話し合うことになった。

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