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20話:天使と騒動の後

「なにを……しているんだ……!」


 驚きで荒れた息が整わない。

 突然三階から飛び出すなんて、死にはしないとしてもただの怪我じゃすまないだろう。


「すまなかった、でもこの人は――」


「お前達、無事か!?」


 ギルドの入口からビクティたちが出てくる。

 アギトやカレン、ローゲンも一緒だ。

 幸いなことに俺が飛び降りてすぐに部屋を出たようで羽を使ったところは誰にも見られていなかった。


「そいつはまだ生きているのか?」


「たぶん、でもまた気を失った」


「なら後だ、アギト、カレンと二人でありったけのポーションをもってこい! 一人も死人を出すな!」


「わかった!」


「わかりました!」


 ビクティの指示でアギトとカレンがギルドに走っていく。

 あの二人がギルド内の全員を助けてくれるだろう、俺はこっちをどうにかしないと。


「シャルル話は後だ、その女を封印する。ローゲン、頼む」


「わし程度の力で封じられれば良いのじゃがな」


 ローゲンが前に出て杖を構え、魔法を発動すると修道女の周りから光る文字が浮かび上がり巻き付いて拘束した。


「シャルル……なんで彼女を助けたのか、聞かせてくれるかい?」


「……わかった」


 ギルド内で比較的体力が残っていた冒険者達の手で修道女は地下まで運び込まれ、俺達は全員崩壊した三階の代わりに二階の一室に集まり、シャルルの話を聞くことになった。


「俺が教会区の出身ってことは知ってるよな」


 今朝、公園で聞いた話だ。

 知らなかったらしいカレンは驚いているようだが、他の全員は知っているらしい。


「見てすぐには気づかなかったが、さっき思い出した。あの人はガキの頃に俺と会ったことがある」


「子供の頃の話だろ、見間違いじゃないのか?」


「いやそれはない、あの人は教会区で差別されてた亜人族(デミヒューマン)の俺に、唯一優しくしてくれた人だ」


 シャルルが子供の頃に会ったことがあるってことは、そんなに前から教会区にいたのか。

 教会にいる神父や修道士は気づかなかったのか?


 魔族に匹敵するほどの強さで、見捨てられた森にいた謎の修道女。しかもシャルルの知り合いだなんて、知れば知るほど得体が知れないな。


「名前は確か……エナ・リットリー」


「ローゲン、君は教会にも顔が利く、エナ・リットリーについて調べてくれ」


「承知した、ビクティ殿は件の修道女からは目を離さぬようにな」


「わかっている、ギルド全体を危険に晒したんだ。同じようなことは二度と起こさない」


 ローゲンが立ち上がって先に部屋を出ていく。

 白魔導士が使う回復魔法は教会で作られたという設定があるから、ローゲンが行くのは適任だろう。


「お前たちも今日は休むといい、彼女はこちらで管理する。ローゲンから情報があり次第呼ぶからあまり遠くには行くなよ」


「わかった、俺はとりあえず宿に戻ろう」


「僕は道具屋に寄ってから帰るよ、カレンはどうする?」


「私はシトと一緒に行きます」


 立ち上がってシャルルを見ると、まだ悩んでいるようで動く気配がない。

 昔の恩人がギルドにいて、なぜか冒険者達を襲っていたのだから無理もないだろう。せめてそれまでの経緯だけでも話しておくべきか。


「シャルルも来てくれ、朝の散歩の途中だっただろう!」


「ちょ、ちょっと待ってくれ!」


 シャルルの手を掴んで無理矢理連れ出しギルドを出て、カレンと三人で道具屋に向かうことにした。


「シトはなんで道具屋いくんですか?」


「恥ずかしながら前買ってもらった護符がなくなってね、買い直しに行きたいんだ」


「そうですか、ならこちらを」


 カレンは懐から財布を取り出して中身を俺に渡そうとするが、俺もクエスト報酬の分け前をもらってるから買ってもらわなくても大丈夫だ。


「カレン、僕はお金を持ってるよ」


「何言ってるんですか、私の契約精霊の買い物なんですから私が買います!」


 この子、責任感があるのかなんなのか、結構頑固だな……一緒にいる間に内気なタイプだと思ってたけど、実は精霊に対しては違うのか。

 でもこれから何度も買い物をするたび金を出されるのはちょっと気が引けるから、カレンを納得させつつ俺が引け目を感じないようになるやり方を考えた。


「じゃあカレンに僕のお金を預けるよ、カレンが僕のお金を管理して必要な分だけ僕に渡すんだ。これならいいだろ?」


「えっ? えーっと……そういうことなら」


 要はお小遣い制度みたいな感じだけど、俺が自分の取り分以上の買い物をしなければカレンに金を出させることはない。

 これなら納得してくれるようだ。


 道具屋について前と同じ護符が置いてある場所まで行き、あるだけ持って店主のところに行く。

 でも十枚ですらすぐ使ってしまったのに少し物足りない枚数だ。


「おじさん、護符はもっとないのかい?」


「あん? 護符は持ってきた三十枚で売り切れだよ。他の商品も在庫が少ないんだ、それは誰も買わねぇからいいけどポーションの買い込みなんてするんじゃねえぞ」


「在庫が少ない? ギルドがある町の道具屋なんだからそんなことはないだろう」


「今はアウディトーレからの商人が来てなくて、こっちも商売あがったりなんだ。特に魔法具なんてこの田舎じゃ作れねぇから、アウディトーレとの間にあるケンウェイの関所が開くまで我慢しな」


 そういえば、カレンも前に召喚石が売り切れたとか言ってたな。

 関所が閉まってるってことは町をまたいで商売をしている行商人の足が止まっているってことか、こんな時に厄介な。


「わかったよ、じゃあこれだけ売ってくれ」


 道具屋に入る前に受け取った銅貨を店主に渡して護符を受け取ると、後ろにポーションを持ったカレンとなにやら茶色い瓶を持ったシャルルが並んでいた。


 見たことないアイテムだが、何に使うのかはまあいいだろう。


 全員が用を終えた道具屋から宿屋に戻る。

 ギルドを出てから何も喋っていないシャルルが心配だが、宿にいるアギトに相談すればなにかわかることがあるかもしれない。

20時にもう1話投稿されます。

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