19話:天使と騒乱のギルド
「すぐに向かうよ!」
「俺も行く!」
立ち上がったシャルルも走る俺を追いかけてくるが、今はアギト達にも来てもらいたい。
「シャルルは宿にいる二人を呼んできてくれ!」
「一人でいいのか!? ……わかった!」
理解してくれたのがシャルルは宿の方向に向かって行った。
それにしてもギルドには冒険者やギルドマスターだっているはずだ、それが俺を呼びに来るほどの事態になるって……あの修道女何者だったんだ?
「考えてる暇はないか……!」
屋根に飛び乗り、町を屋根伝いに全速力で進むと、ギルドの方向に煙が上がっているのが見えた。
燃えている様子はない、色も紫色で異様だ。おそらくあのエフェクトは毒の魔法。一定時間の継続ダメージと麻痺のバッドステータスを与える状態異常効果を持つ"ポイズンミスト"か!
「"アンチマジックフィールド"……!」
速攻魔法で状態異常地帯を無効化する魔法を身にまとってギルドの前に着地する。
ギルド自体は破壊されていない、でも中はポイズンミストのせいで倒れている冒険者でいっぱいだろう。
アンチマジックフィールドの効果が切れないうちにギルドの扉を蹴破り中に入ると、想像通り冒険者たちが倒れ込んで苦しんでいた。
「あとで助けるよ……」
一旦冒険者たちは後にして三階の修道女を寝かせていた部屋に向かう。
部屋の近くはもっともポイズンミストの効果が強く、たぶんまだ中にあの修道女がいる。
意を決して扉を開けると、中にはギルマスのビクティとギルド在中医師のローゲンが修道女と対峙していた。
「ビクティ、ローゲン!」
「シト、来てくれたのか!」
「説明は後じゃ、あやつを止めるぞ! "アダマイトメタリクス"」
防御力と精神力を上げる上級魔法か、元々高名な白魔導士だったという設定は健在だな。
とりあえずあれが何なのか確かめないと……これだけの広域魔法を展開できるとなれば魔族か、少なくともアクマ種の可能性が高い。
護符はあと五枚しかないが、節約している場合ではないな。
「ギルドが壊れても弁償代は払えないからね、"氷域"!」
氷属性制御系魔法"ゼロ・レイド"――周辺一帯の敵に長時間の凍結を与える魔法だ。
まずは動きを止めて魔法の継続を終わらせる、自由に動けるようになればあとは数の利でどうにでもできる。
「"リジェクト"」
部屋内をすべて凍らせながら修道女に接近していた氷が寸前で砕け散る。
無効化魔法だと!? 魔術師系のプレイヤーにほぼ一方的に有利が取れるクソ魔法じゃねえか、最低でもレベルは80……俺の魔法をリジェクトできるのならカンストに近い!
「……ローゲンを逃がせ」
「なに、彼がいないとわたしたちには戦う術がなくなるぞ!」
そうは言っても白魔導士のローゼンじゃリジェクトが使えるあいつには格好の的だ。
ここにいてもサポートどころかなにもできず殺されるだけになる。
「わしなら心配いらん、どうせはいずれ消える命よ。未来ある若者のために死ねるなら本望じゃ」
……リスポーンもないこの世界で、その覚悟は尊敬できるな。
「死んだら君のためだけに祈ってやる」
「頼んだよ、天使殿」
「"有罪"、"薔薇園"、"絶望"」
護符を三枚使ってそれぞれ別々の魔法を保存する。
ギルドでシャルルが使っていたのと同じ複合魔法――ゲームでは別属性が絡んでいる複合魔法に対してはリジェクトは通用しない。
「"シグネス"」
発動前に修道女が動き俺に対して定数ダメージと継続ダメージを与える状態異常魔法を発動する。
まずい、魔法発動までは動けないし、いま避ければ護符を三枚失って魔法が使えなくなる。
もしビクティかローゼンに守られれば確実に死ぬ、どうする――!?
「三重魔法陣"マジック・リフレクト"!」
突如俺の目の前に魔法陣が展開され修道女の魔法を弾いた。
この場で俺以外に複合魔法が使えるのは――
「大丈夫かシト!」
扉からシャルル、そしてアギトとカレンが入ってきた。
ポイズンミストの領域の中を突っ込んできたのか、冒険者と同じように体が麻痺して動けなくなるはずだが……シャルルのアンチマジックフィールドだな。
三人分を賄うとは、ギルド最強魔導士の腕は確かだ。
「アギト、あいつに単純な魔法は通じない。僕が動きを止めるから君が仕留めてくれ!」
「任せろ!」
だがアギトといえどレベルは50かそこら、カンストしてるかもしれないあの修道女相手に攻撃が通じるのか?
いや弱気になるな、魔法の対策をしていると物理の弱いのはプレイヤーもモンスターも同じだ。
俺が魔法を発動してすぐにアギトにバフをかけて攻撃を強化すればいい――いつもそうやって勝ってきた。ゲームでも異世界でも、やることは同じだ。
「複合魔法"ディスペア・オブ・ティターニア"!」
部屋全体を覆うほどの魔法陣が三つ展開され、女体の形をした薔薇のモンスターが浮かび上がると、壁や天井を突き破って出現した茨が修道女に巻き付き拘束する。
ディスペア・オブ・ティターニアは土・闇・闇の二属性複合魔法、巻き付く茨で対象に物理拘束、麻痺、MP減少のバッドステータスを与える。
おまけ程度の物理ダメージもあり、リジェクトと並んで距離をとり物理ダメージを避けて戦う相手に有効な、いわゆる魔術師殺しの魔法だ。
「"超強化"――アギト!」
護符の残り一枚に強化魔法を保存してアギトに張り付ける。
レベル50でも竜騎士の物理攻撃なら80程度の攻撃力が出るはずだ。
「"ドラゴニックチャージ"!」
アギトが剣を盾のように構えて修道女に突っ込み、拘束している茨ごと吹き飛ばして、修道女は壁を突き破って三階から落ちていった――
「まずい!」
後ろからシャルルが走り出し、修道女が突き破った穴から飛び降りた。
なにをするつもりだ!?
落下ダメージはレベルやステータスの関係ない定数ダメージ、この高さなら死にはしないがかなりのダメージを負うはずだ。
駆け出して穴から飛び出す。
下を見るとシャルルが修道女を抱きとめて落下していた。
「"フォール"」
落下の速攻魔法で速度を上げ、シャルルのマントを掴み羽を開いた。
フォールの影響で速度が落ちずらいが、ギリギリでダメージを受けない程度の速度まで落とすことができ修道女を含めた俺たち三人は地上に着地した。
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