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18話:天使と朝の散歩

 気がついたら朝になっていた。

 昨日は確か、シャルルが暴れだしてみんなで止めた後……疲れて全員寝たのか。


 周りを見渡すと荒れた部屋の床にアギトとシャルル、ベッドには俺とカレンがいる。

 カレンたちはまだ起きる気配がないな、急ぎの用事もないし昨日のクエスト報酬である程度金にも余裕が出来たから寝かせておいていいか。


「なんか二日経っただけなのに慣れてきたな……」


 この世界に来てすぐの頃は困惑してたし、今もだけどカレンたちとまともに会話できる気がしていなかったが、意外と天使ロープレがはまっているのか違和感なく接していられている気がする。


 カレンとは誘惑に負けて一緒に風呂にも入った仲だしな、申し訳ない気持ち半分、感謝半分だ。

 カレンと出会っていなかったらいまだに召喚の家周辺でなにもせずぼーっとしていただろう。アギトやシャルルも、出会ってあまり時間は経っていないがクエストに言ったり宿で飯を食ったり、この世界来なければ体験できなかったことをいろいろと体験出来ている。


「さて、一回起きると眠くないんだよなー。外に散歩でも行こうか」


 ベッドを下りて仕切りに干したままだった服を取りに行こうとすると、寝ていたはずのシャルルが少し動いた。


「うう、俺はいつの間に寝て……」


「おはようシャルル、よく眠れた?」


 正直床だからまともな睡眠とは言えないけど、昨日部屋をめちゃくちゃにするほど暴れていたんだからかなり熟睡したはずだろう。


 起きたシャルルの前にしゃがみこんで挨拶をすると、目を見開いたシャルルが跳ね起きて壁まであとずさりする。


「シ、シト、そんな恰好で近づかないでくれ!」


「なんだい、別に裸ってわけじゃないじゃないか」


 俺は今上着を脱いではいるがそこまで薄着というわけでもない。

 別にそんな離れるほどじゃないと思うんだが。


「そんなに離れることないだろ、女の子に慣れる特訓をするんじゃなかったのかい?」


 壁際にいるシャルルに近づいて膝に手を突き上半身を倒すと、シャルルがひょっとこ顔のまま燃え上がりそうなほど顔を赤らめた。


「違うんだ、屈むとその……見えてしまう!」


 目を塞ぐシャルルが指の隙間から覗く先は――俺の胸だ。

 そうか、この服は上着を着ていないと結構緩い。無防備に屈むと下に垂れた服の隙間から見えてしまうということか。


「これは失礼したね、僕も寝起きで気が緩んでいたようだ」


 服を直して上着を取りに行く。

 アギトと初めて会った時もそうだけど、俺も体が女という自覚をもっと持った方がいいな。


「そうだ、早く起きたから散歩に行こうと思ってたんだ。シャルルも一緒にどうだい?」


「え? あ、ああ……」


 二人で宿屋を出て目的地もないまま歩く。

 シャルルは相変わらず布で顔を覆っているが、まあイケメンでも女の子が近くに来た瞬間変形してしまうのだからしょうがないか。


「特に目的地もないんだけど、どこか行きたい場所はある?」


「そ、それなら教会区の公園はどうだ? あそこは静かで人も少ないし……」


「じゃあ行こうか!」


 教会区――アルタイルの北東部に構える教会を中心としている自治区で教会関係者や修道士、信仰の厚い住民が住んでいる……という設定だったが出入りは自由だ。

 教会の前にある公園も広く、朝早いというのに修道士や子供たちが集まって歌ったり本を読んだりしている。この辺はゲームで設置されていたNPCと同じだな。


「いい場所知ってるじゃないか、朝の散歩も悪くないね」


「そうだな……」


 そういえば、昨日見捨てられた森で助けた人は修道服を着ていたよな。

 ちょっと気になるけど、宿に戻った後ギルドに行って聞いてみればいいか。


「もうシャルル、もっと話さないと慣れないよ?」


「すまん……じゃあ、少しいいか?」


「なに?」


 少し間を開けて、シャルルが話す。


「俺はこの教会区の生まれでな、神とか信仰がとかってずっと神父から言われて育ってきたんだ。でも俺にはいつまで経っても信仰心なんか芽生えなかったし、むしろ嫌気がさして家を抜け出しては隠れて剣士のふりをしていた」


 教会区の生まれで今は冒険者か、しかも黒魔導士となると珍しい気がするな。


亜人族(デミヒューマン)はどれだけ教会に尽くしても人族(ヒューマン)より地位が上がらない。それどころか祈りの途中にも石を投げられる……なのに神が教会がって言ってる親にも反発してた」


 種族差別か……ゲームじゃ掲示板でステータス優先の効率厨とロールプレイ優先のプレイヤーが喧嘩する程度だったが、現実になると残酷なものだ。


「その時出会ったのがアギトだ、あいつもまだガキだったのに冒険者になろうってさ。お前には白い修道服よりも漆黒のマントが似合うって言ってくれた……本当はもっと一緒にクエストもしたかったんだが、俺がこんなんなっちまった時に勇者がこの町に来てな、あの時は全てを失った気分だったよ」


 二人の間にそんな深い関係があったのか……関係がこじれてもシャルルはまだアギトとパーティーを組みたいんだな。


「話してくれてありがとう、もうあんまり抱え込んじゃいけないよ――辛いことがあったら僕を頼るといい、僕がいつでも君の力になろう」


 シャルルに近づいてそっと肩に手を置く。

 そうだ――俺は困っていたり、悲しんだりしてる人の力になるために天使になったんだ。

 シャルルのおかげで自分の今までと、これからを再確認できた。


 シャルルはまたアギトとパーティーが組みたい、俺もカレンとアギトとパーティーを組みたい。

 ならシャルルにもアギトとパーティーを組むことに協力してもらおう。


「シャルル、実はね――」


「シトさーん!」


 話そうとした時、公園の奥から俺の名前を呼びながら誰かが走ってきた。

 見覚えのある獣人族(ビースト)、あれはギルドの受付嬢の子だ。


「探しましたよ……こんなところにいるなんて」


「なにかあったのかい?」


「ギルマスから伝言です……修道女が目を覚ましたって、でもその人が暴れだして大変なんです!」


 そう聞いて、俺はすぐさま立ち上がった。

20時にもう1話投稿されます。

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