16話:天使と残念な黒魔導士
とっさにカレンをかばうと、前に出たアギトが剣で魔法を弾く。
今のは闇属性切断系魔法の"ダーカーナイフ"
物理ダメージを与える魔法だから俺でも当たってたら多少ダメージがあったな、アギトがいてくれてよかった。
「君、突然魔法を撃つなんて何考えてるんだ!?」
「おっ……おま、君には関係にゃいだろ!」
え、今なんて言った?
もしかして噛んだのか?
「シャルル、お前はなんで俺に会うたびに攻撃してくるんだ!?」
「黙れ! "ダーカーソウル・バレット"」
今度は連射する闇属性の弾丸を杖から発射してくるが、それもすべてアギトの剣によって弾かれた。
突然ギルド内飛び交う魔法の嵐に冒険者達も身を守って隠れている。
「くそっ! もうやめろシャルル、ギルドが壊れるぞ!」
「ギルドなんて知ったことか! 俺はお前に恨みを晴らすまで魔法を撃つのをやめない!」
シャルルって、ギルマスのビクティが言ってた冒険者か……確かアギトと同じくらいの実力があるっていう。
それにしてもここまで見境のない恨みって、アギトは一体アイツと何があったんだ?
「お前のせいで……お前がモテる竜騎士になったせいで女の子がみんな俺に見向きもしなかったあの頃の恨み、晴らさずにおくべきか!」
「いつまでそんなこと言ってるんだ!」
うっわ〜、思ってたより全然理由がどうでもいい。
その気持ち若干わからんでもないが。
「久しぶりに帰ってきたと思ったら可愛い女の子二人も引き連れやがって! お前が今朝同じ宿屋から出てくるところも見たぞ、昨日はお楽しみだったんだろう!? 三人一部屋、一つのベッドでアゲアゲエブリナイトだったんだろう!?」
「誤解だシャルル、俺達はそういう関係じゃ――」
「でも揉んだよね?」
……やべ、今言うことじゃなかった。
「きっさまあああ!」
怒りが頂点に達したのかシャルルは背負っていた杖をすべて取り出して構えを変える。
空中に浮いた杖からも魔力が溢れ出しその場でいくつもの魔法陣が形成された。
「五重魔法陣"スターダスト・メテオ"!」
これはやばい……火、水、土属性の複合殲滅魔法なんて町中どこらか室内で使ったらマジで死人が出るぞ!
発動する前に止めないと!
「アギト、これどうやって止めればいい!?」
「魔法のことを俺に聞くな! だがシャルルを止めるんなら――行ってこい!」
アギトに突き飛ばされ、その勢いのまま階段を駆け下り止まることができず俺は正面にいたシャルルに抱きつく形で急停止した。
何考えてるんだ、今まさに発動しようとしている魔法陣の真下とか一番危険だろ!?
「お…お、お、おおおお!?」
上方から感じる唸り声と荒れた鼻息に目を向けると、シャルルが布で覆っていてもわかるぐらい赤面している。
もしかしてこいつ、俺と同じで女への免疫を持ち合わせていないタイプか……。
悲しいな同志よ、俺達は女の子と触れ合いたいと思っていながらいざ触れ合うと何もできなくなる悲しいモンスターだ。
でもいまのところは魔法を止めるためにこのままでいさせてもらおう。
「てってててテンシデゴザルッ!」
意味のわからない言葉とともにシャルルは仰向けにぶっ倒れ、発動されかけていた魔法が止まりなんとかギルドの崩壊を阻止することができたようだ。
シャルルが倒れている間に受付で報酬も受取、医務室では例の人がまだ寝ているそうなので、ギルドに放置することもできず倒れたシャルルを抱えて宿屋に戻ることになった。
特に用はないが、あのままギルドに置いたままでも混乱しそうだしな。俺のせいで誤解もあったしまたさっきみたいなことが起きないよう説明もしておきたい。
「とりあえずシャルルは寝かせておくぞ、二人とも休んでてくれ。俺は裏の食堂で飯を買ってくる」
「ありがとうございます」
「僕は昨日と同じのが良いな、肉は多めでね」
「わかった……シャルルが起きてもあまりからかうなよ、そいつはそれでもギルド一の黒魔導士なんだからな」
黒魔導士か、闇属性に特化した魔術師の上級職だが使っていた魔法と装備を見る限り他の元素魔法もかなり扱えるんだろうが、闇属性は唯一の物理攻撃魔法だから剣士や狩人がいるパーティーではあまり役には立たなかった、シャルルがモテないというのも納得だな。
「うっ……俺は一体、ここはどこだ?」
「シト、シャルルさんが起きましたよ!」
「おや、お目覚めかい? 突然倒れてびっくりしたよ、怪我はない?」
倒れた時は頭からいったからな、ある程度レベルが高いなら大丈夫だろうが一応心配だ。
「おまっきき君はさっきの、なんでここにいる!?」
「なんでって、ここは僕とカレンの部屋だよ。ギルドで気絶した君を運んできたんだ」
「倒れた時頭を打っていたようですが大丈夫ですか? 痛むようでしたら薬草を――」
「いやいやいや大丈夫だ! どこも痛くない、俺は元気だぞ!」
「そうですか、なら安心です」
シャルルが上半身を起こして腕をラジオ体操のように動かしアピールすると、カレンも薬草を持っていたしまって椅子に座ってお茶を淹れている。
うーん、何を話せばいいかわからないな。
誤解を解くにしてもアギトもいないし……何も話題がないな。珍しい黒魔導士だしそのへんの話でもして時間を潰すか。
「君は黒魔導士らしいね、魔術師で複合魔法を使えるぐらい強くなれるんならアギトと同じ竜騎士を目指そうとは思はなかったのかい?」
「あ、ああ……俺もギルドに入った時は剣士だったんだが、才能がなくてな。アギトが勇者パーティーに誘われるまで騎士の頃のアギトと魔術師の俺でパーティーを組んでたんだ」
アギトとパーティー? ということはパーティーを組まなくなったのは勇者パーティーを脱退したあとからか。
「ギルドでも中堅ぐらいのころ、勇者パーティーがアギトを誘いにきてな、パーティーこそ組んでたがあまり折り合いのついてなかった俺達は別れて、アギトは街を出ていった」
「折り合いがつかなかったのってもしかして……」
「ああ、あいつはモテた。羨ましいほどにモテていた、冒険者の子も町の女の子も依頼人まで同じパーティーの俺には目もくれずアギトばかりちやほやして……」
「そうか、そんな過去が」
「そしてこじらせた俺はついに女の子前では顔が引きつり目を見て話すことすらできず、一人でクエスト行き誰にも知られずクエストを終わらせる孤高の黒魔導士になっていたんだ!」
だがら顔を隠してたのか。
それに薄々思ってたけど、こいつちょっと中二病も入ってるな。黒魔導士らしいと言えばらしいけど。
「そうかそうか、大変だったねぇ君も」
「シャルルさんもアギトさんも、昔そんな事があったんですね」
ベットに腰掛けて少しシャルルに近づく。
たったそれだけでキョドりだすシャルルだが、女の子とまともに話すこともできない気持ちは大いにわかる。俺だってこの体になってなかったらシャルルと全く変わらない状況だっただろう。
こいつには俺の代わりに女の子とまともな関係を築けるようになってほしい。
20時にもう1話投稿されます。
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