14話:天使と討伐クエスト
冒険者ギルドで受け取った依頼書を手に、俺達三人は街を出て歩いていた。
「見捨てられた森の魔猪の討伐……放置されている間に巨大化したため通常の冒険者では対処できなくなったようですね」
「見捨てられた森かぁ……確か結構遠かったよね〜」
ゲームなら俺は全地域、全ダンジョンを開放していたからワープで一瞬だが、この世界じゃそれができない。
アルタイルから見捨てられた森は徒歩でいけばかなりの時間がかかった記憶がある。召喚の家からアルタイルまでの移動で辟易していたのに、こっからまた歩くのか、考えるだけで気分が沈むな。
「なんだシト、疲れたのか?」
「いや、馬でもあればよかったと思ってね。アギトはアルタイルまで馬で来たんだろ? 僕たちを乗せてってくれよ」
「バカ言うな、アルタイルに三人乗せて走れる馬はいない。馬車だって借りるのに金がかかるんだ」
「バカとは何だ、天使たる僕に不敬だぞ!」
「やめてください二人共、私達は一時的とは言えパーティーなんですから仲良くしましょう」
アギトとの言い合いをカレンニ止められる。
さすがに天使ロープレとはいえどなんにでも突っかかる必要はないな、アギトはできるなら一時的じゃなくて本格的にパーティーに組み込みたいし、多少は容認するか。
「そういえばギルドで昨日の夜、町の空を飛ぶ天使を見たって噂が話題になってたんだが……お前じゃないだろうな?」
昨日の夜? もしかして羽で飛び回っていたのが誰かに見られたのか!
うかつだった、もしかしてこの世界じゃ羽が普及していないのか。天使っぽいし便利だったけど、下手に人前で使うのはやめておこう。
「僕は知らないよ、きっと噂にたてたいだけの変人か空を飛びたかった変人じゃないかい」
「そうか、まあ問い詰めはしないでおく」
なんとか誤魔化せたようだ。
「さて、夜ご飯までには帰りたいし早く森まで行こうか」
昨日の夜のことをいろいろ聞かれたりしたらめんどくさいから、話題を逸らしてさっさとクエストを終わらせよう。
アルタイルを出て歩き始めてから大体三時間、やっと見捨てられた森の入口まで到着した。
これがゲームだったら修正待ったなしのクソゲーだな。
「では討伐対象の魔猪を探しましょう、アギトさんは魔猪について知ってることはありますか?」
「通常ならレベルは高くても30、全身を覆う脂肪のせいで物理攻撃に耐性が高く剣や弓での攻撃はあまり効果がない」
「そして弱点は火属性魔法、だよね?」
魔猪は回復ポーションの代わりになる料理の素材をドロップするモンスターだからアセンブルでは通称"生肉"と呼ばれよく倒していた。
下手に中断耐性が高いと突進が多段ヒットする特徴があったが遠距離からの火属性魔法で簡単に倒せた。
「よく知ってるな」
「ふふん、少しは僕のことを見直しただろう」
ゲームでよく狩ってた――とは言えないしな。
どう説明しても理解はされないだろうし。
「だが依頼書に書いてある通り、今回討伐する魔猪はかなり巨大化しているらしい。レベルでいうな50前後である程度に警戒しておいた方がいいだろう」
「レベル50……私、戦えるでしょうか?」
「心配することはないさ、カレンには僕がついているんだから!」
「もっと緊張感を持て、それに依頼書の備考欄にはほかにも気になることが書いてある」
気になることか、俺はこの世界の文字が読めないからモンスターの絵を見ただけだけど、依頼書に討伐モンスター以外のことが書いてあるのか?
「見捨てられた森で、一月前に原因不明の大きな魔力反応があったそうだ。この件もあって森に近づけず魔猪も放置されてしまったらしい」
こういうことが依頼書に書いてあるということは、いわゆる乱入クエストか。
目的のモンスターとの戦闘中にさらに上位のモンスターが乱入してくる高難度クエスト、なんだ軽いクエストだと思っていたのに楽しみにさせてくれるな。
大きな魔力反応というのなら魔族か、それに準ずるアクマ種の可能性もある。
「こ、怖いですね……」
「多少は恐怖を感じておいた方がいい、恐怖を感じない冒険者は狂人か実力を知らないバカだけだ」
ぐっ……乱入を楽しみにしている俺がバカみたいじゃないか。
でも我慢だ。天使ロープレと言ってもなんでもかんでも噛みついていたらまともに人間関係も築けない。
「さて、魔猪はどこにいるのかな?」
「おそらくはこの先の川だ。この森の中では水が流れている場所が少ない、モンスターといえど生物だから強いやつはその辺を根城にする」
「じゃあ早く向かおうか、このままだと日が暮れちゃうよ」
「確かに、日の落ちた森を歩くのは危険だからな……早めにクエストを達成するか」
「ま、待ってください! 私を一人にしないでぇ!」
しばらく歩くと、アギトが言っていた川が流れる地点までたどり着いた。
周りに魔猪の姿は見えないが、根城だというのならここで見張っていればいずれやってくるだろう。
「二人とも、木に登って待ち伏せるぞ。魔猪の足跡があった、いずれここに戻ってくるはずだ」
周辺を見回っていたアギトからの指示、たぶん頭上からの不意打ちで仕留める算段なんだろう。
真正面から言っても負けはしないと思うが、カレンもいるし安全策をとるのはありだ。
「え、木に登るって……この森の木はとても高くて登れそうにないですよ!」
「それは僕にお任せ!」
大木を見上げているカレンを抱きかかえて飛ぶ。
昨日の町探索と宿の一件で俺にはレベルに見合った身体能力があるとわかっている。
女の子一人抱えて大木を登る程度どうってことない。
「わわわ!」
「ちゃんと落ちないように捕まってるんだよ?」
低い位置にある細い枝を踏んで上の方にある太い枝までカレンを連れていくと、そこでカレンを下ろしてアギトを待つ。
アギトも鎧を着ていながら身軽で問題なく大木の上まで登ってきた。
「確認したところ魔猪のサイズは通常の三倍ってところだな、真正面から戦って勝てる相手じゃなさそうだ」
三倍か、魔猪の通常サイズは平均サイズの男アバターと同じか少し小さいくらいだった。
それが三倍ともなれば見た目だけでいうならまさに怪物だろう。
「そんな魔猪をどうやって倒すんですか?」
「幸い魔猪は上空か側面からの攻撃に弱い、木の上で待ち伏せて近くまで来たところを上から魔法で攻撃する」
「わかった、とりあえず魔猪が出てくるまで――なんだ?」
突然木々が揺れるほどの地響きと、まるでなにかをなぎ倒すような音が響き渡った。
音の方向を見ると、遠くの方から土煙が上がっていて、こっちの方向へ近づいてきている。
「まさか魔猪か!?」
アギトが立ち上がって剣を構え、俺も護符を取り出しいつでも迎え撃てるよう準備をする。
音を聞くとマジでこっちに来ているのは怪物って感じだ、レベルも相当高いだろう。
「来るぞ……!」
土煙が川を囲む木々の周りに舞い上がったと同時に、森の中から魔猪が現れた。
前方に半裸の女性を追いかけながら――。
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