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12話:天使と騎士の寝相

 宿に戻って部屋に入ると、カレンは持て余すほど広めのベッド、アギトは硬い床の上で寝ていた。


 話し合った結果かアギトが一方的に主張したか、俺が外を探索している間に別々の場所で寝ることで決着したようだ。


「それにしても床で寝るとか、体おかしくなるだろ……」


 俺もゲーマー時代、ベッドに行く気力すらなくなったときは椅子から床に倒れ込んで寝ていたが、起きた時体中が異常事態だった。

 気づかないようにアギトをベッドに運ぶか。


 そっと近づいて起こさないように持ち上げると、鎧を脱いでいるとはいえかなり軽く感じる。

 アギトは竜騎士なだけあって体格は良いし筋肉もある、体重は80キロほどあると思うがこれも俺のレベルが高いせいか。


「さて、俺も寝るか……」


 眠る必要はないと説明していた通り、俺は今疲れはあるが眠気はない。

 でもベッドで寝る気持ちよさってのは何事にも変えられない至高の快感だ。


カレンに近づかないようにアギトを真ん中にしてベッドに潜り込む。隣が男だから何も考えることなく眠れそうだ。

 眠気はまったくないが、目ぐらい閉じておこう。



 気がつけば窓から暖かい光が漏れてくる朝を迎えた。

 薄っすら見える世界は昨日と同じ異世界で、今までの体験が夢ではなかったことを理解する。


 俺も目を閉じてぼーっとしているうちに眠ってはいたようだ。この体は一応眠ること自体は可能らしい、疲れも取れてるし、必要なさそうでも眠ったほうが精神的に調子は良くなるのかも。


「なんか……くすぐったい」


 胸辺りになにかあるような違和感を感じるが、ベッドの気持ちよさでどうでもよくなる。

 まだ朝だし二度寝しよう……。


「……うわっ!?」


 胸辺りにあったくすぐったい程度の違和感が、ぐっと力が入ったように強くなる。

 何事かと掛け布団を剥がしてみると、ゴツゴツした男の手が俺の胸を鷲掴みにしていた。


「…………は?」


 腕の主を一応確かめると、やはりアギトを腕だ。

 これはどう処理すればいいのだろうか、寝て起きたら逆ラッキースケベをされていた天使ってどういう反応をするんだ?

 いや、起きる前に手を離してなかったことにしてしまったほうがいいか。


「ぐっ……力強っ!?」


 離そうとすると強く握り込んでくる。

 もはや痛いぐらいだ、こいつ本当は起きてるんじゃないか!?


「ていっ!」


「うっ……! なんだ!? 盗賊か、モンスターか!?」


 俺の軽いチョップで目を覚ましたアギトは飛び起きるが、手はまだ俺の胸を掴んだままだ。

 正直焦ってはいるが、とりあえず余裕のある感じの天使ロープレだ。


「そろそろ離してくれないかな、僕の体に手形でもつける気かい?」


「……シト、なんでベッドに? なっ!? すまない!」


 アギトは俺の方を見て状況を理解したようで、離した左手を振り回して俺から距離を取ると、次は逆方向で寝ていたカレンの胸に右手を置いてしまう。


「ふあ……もう朝ですか……?」


「おはようカレン」


「あ、アギトさん、シト、おはようございま――」


 眠気の残る目をこすりながら挨拶をしてくれるカレンだが、隣にアギトがいるという事実に気づき、みるみる顔を赤くしていく。

 そして、アギトの手が乗っていることにも気づいた。


「あ……あ……!?」


「アギトってもしかして、そっちのほうが好き?」


「バカ、俺は別に――」


「きゃあああああああ!」


 朝から鼓膜を突き破りそうな絶叫で目を覚ますとは、この目覚まし時計なら宿屋全員の目が覚めただろうな。



 全員ベッドから出て落ち着いた後、服を着て今日こそ冒険者ギルドにいくため宿屋をでた。

 俺とアギトは横並びで歩いているが、カレンは不機嫌そうに少し前を歩いている。


「すまないカレン、床で寝ていたはずなんだがいつの間にかベッドにいてだな」


「気にしてませんから、もうその話はやめてください」


「これは気にしてるよね〜、ちなみに僕は本当に気にしてないよ」


 僕は、という言葉に反応してカレンが振り返る。


「もしかしてアギトさん、シトの胸も!?」


「誤解だ、そもそも俺は床で寝てたはずなのに気づいたらベッドに……」


 そこまで言って少し考えたアギトは、隣を歩いている俺の方を向いた。


「シト、お前の仕業か?」


「し、しらなーい」


 すっとぼけてみるが、事実アギトを移動させたのは俺だ。まさかこんなことになるなんて思っていなかったが、これから寝る時は気をつけたほうが良いかもしれないな。


「見えてきました、あれが冒険者ギルドです」


 目の前にあるのは三階建ての赤い屋根の建物。

 昨日裏で勇者を揉め事を起こしたがほとんどあとも残ってはいないようだ、俺も姿を見られていないはずだし普通に入って大丈夫だろう。


「それでは、冒険者登録をしましょうか」


 中に入ると、簡易的な食堂のように机と椅子が並んでいて、端には依頼を受けるための掲示板と依頼申請のための受付があり獣人族(ビースト)の女の子が受付嬢として立っている。


「みた!」


「見間違いだ!」


「見だっつってんだろ!」


「だからいるわけねえって!」


 あれはギルド内でいつも喧嘩してたNPCか、そんなところまで同じなんだな。

 ゲームの設定では冒険者は誰でもなれるだけあって荒くれ者も多い、引きこもり陰キャゲーム廃人の俺としては居心地が悪い。


「俺は少し用がある、二人は冒険者登録をすましておいてくれ」


「わかりました」


 登録のために二階へ行くと、アギトは一人で三階まで行ってしまった。

 ギルドの三階というとギルドマスターやギルド関係者の部屋しかなかったはずだが、そのへんに用があるのか。

 まあいい、俺達は言われた通り冒険者登録をしてしまおう。


「冒険者登録をしたいのですが」


「はい、ではこちらの用紙に名前と職業をご記入ください」


 二階受付の亜人族(デミヒューマン)から用紙を受け取ると、カレンは言われた通り書き始める。

 二枚渡されたけど、これ俺も書かないといけないのか?


「カレン、僕も書かなきゃだめなのかい?」


「確かにそうですね……すいません、こちらの方は私の契約精霊なのですか」


「け、契約精霊!? ってことは上位精霊の方なのですか?」


「はい、ですから契約精霊なので冒険者登録は不要なのでは」


「ちょ、ちょっと待っていてください!」


 受付の子が急いで裏まで走っていき、分厚い辞書みたいな本を持って戻ってきた。


「ありました! "上位精霊について――精霊族(エレメンタル)における上位精霊は契約者がいたとしたも個人と捉え、冒険者として登録を義務付けるものとする"……ですので精霊の方にも登録して貰う必要があります」


「そうなのか、めんどくさいなぁ」


「それではシトの分も書いておきますよ、私がシトの契約主なんですから」


 いや契約主っていうんなら立場が逆なんじゃないかと思ったが、文字の読み書きもできないしカレンに任せることにした。

20時にもう1話投稿されます。

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