プロローグ
書き溜めがだいぶあるので、毎日更新が続きます。
人を殺した。初めての感触を味わった。
倒れた男の身体はもう動かない。
起き上がることだって、ありはしない。
死んだのだから、それは当然のことだ。
ぽたり、ぽたりと水滴が地面を跳ねる。
手に握るナイフが血を滴らせていた。
その音が酷く生々しくて、すぐさま真っ赤なそれを手放した。
がらんと大きな音が鳴る。
その拍子に、ようやく私はどこか揺らいでいた自我をはっきりと取り戻した。
途端に迫りくるのは、鋭利な罪の意識で。
必然的に私は、自己肯定に徹するしかなかった。
――彼は殺していい存在だった。
けれどすぐさま、もう一つの冷静な感情がそれを否定する。
――いや、違う。
そうだ。
今、こうして私に殺された彼も、きっとある種の正義を内に秘めていたはずなのだ。
ただそれが、私にとってどうにも都合が悪かっただけで。
もしかしたら、彼が生きていたからこそ、救われた命があったかも知れない。
もしかしたら私たちは既に、選択を誤っているのかも知れない。
だが、功名な学者でも確実な未来を見通せはしない。
だからこそ、せめて。
私は改めて誓う。
今は亡き両親に。肩を並べる同志たちに。
名も知らぬ彼に。
この国を壊すと。この国を蘇らせると。
即ち、革命を起こすと。
モチベアップのための評価・ブックマークなどよろしくお願いします!
意見なども頂ければ幸いです!