プロローグ
「……よし、これで全部終わったな…それにしてもこれだけ綺麗に掃除してもお客さん来ないんじゃあなぁ…」
「綺麗にすることが大切なんだぞ幸博」
「分かってるって、まぁそれに掃除は好きだし」
ここは寂れた商店街の一角にある、古い映画館。
かつては多くの人で賑わいを見せたが、それも今は昔。商店街の店がシャッターを下ろすにつれ客足は遠のいていった。
(なんかつまらんなぁーお客さんも全く来ないって訳じゃないけど日に10人程度、まぁ最新作も来ないし来たとしても数ヶ月遅れだし立地も悪いししょうがないか)
「じゃあそろそろ閉めるか、掃除助かったよ幸博明日もよろしくな」
「おじさん、また明日」
ここは葉月市にあるハズキシネマ。幸博はここからそう遠くない大学に通ってる学生で実家も近くにある。地方だがそこそこ発展しており都会と田舎の中間といったところ。
(こんな映画館普通なら潰れてるんだけど、おじさん不動産もしてて正直そっちメインなんだよなー映画館は道楽で儲けとか気にしてないし…でも給料はちゃんと貰えてるからいいんだけど)
(まぁ、僕もなんだかんだこの映画館すきだからなぁ、古いけどただ古いんじゃなくて味のあるレトロな雰囲気も気に入ってるし)
「外寒いだろうなー帰りにコンビニ寄るか」ガチャ
「……………え……………」 (なんだコレ、というか、、どのココ?)
映画が存在しない異世界で、初めて映画館が誕生した瞬間であった。