9話 ユッキーノ街③
剣汰を見つけた雪山じゃない雪山へと行ってみたら、雪は溶けており狼が炎を放っていた。アンジはやっぱりと箒を止めて俺に教えてくれる。
「あれはデッドウルフで全属性が存在する。ディーグは炎魔道士であるから、今回炎系の死屍の弱点は水魔法。つまり想心が一番合う属性」
「OK。属性の相性とかはゲームやってたから頭に入ってる。んじゃここは邪魔なデッドウルフを爆発させてみようかな。これってやや近くに行かないとクラゲは行かない?」
「その通り、だから下へ降りて直接対面と行こうか。もし駄目だったとしても僕がサポートするから安心して」
なんか緊張すると思いながら地上へ降りてデッドウルフがこちらへ走って来てカステクラインを起動させる。
「カステクライン!水、海月の爆弾!」
クラゲが複数現れてデッドウルフがクラゲを噛もうと触れた瞬間、爆発してここにいたデッドウルフが消滅した。できたと喜んでいる暇はなく、再びデッドウルフが走って来てキリがないと判断した俺は違う魔法を唱える。
「カステクライン!水、魚の大津波!」
魚が大量に現れて津波のように流れていきその隙に俺たちは盾乃がいるところを探していく。しかしどこへ探しても盾乃は見つからず、どこにいるんやらと探していたらアンジがぴたりと止まった。
「どうかしたか?」
「何かが変だと思ってた。まるでそこに行かせないように僕たちは同じところをただぐるぐる回ってただけだ」
それじゃあ盾乃のところに辿り着けないと思考を膨らませていたら、ふとこれならいけるんじゃとカステクラインを起動させる。
「カステクライン!水、海王の叫び!」
ドンッと鯨が現れて鯨が叫び出し雪山全体まで響くんじゃないかっていうぐらいやまびこが帰って来た。鯨が叫んだことにより、だいぶ大ダメージを与えられたんじゃないかと、鯨が消えたと同時に保護魔法がかかっていたらしく洞窟が現れる。
俺とアンジはアイコンタクトで頷き、すぐさまその奥へ進んだ。
その先に進んでみると言葉を失うぐらい衝撃が走る。火刑のように誰かを焼いたような姿で、丸焦げとなっていた。おそらくあれは盾乃だと触れようとした瞬間、目の前に知らない奴というか、ディーグで俺は距離を離す。
「てっきり嬢ちゃんの兄ちゃんが来ると思ってたけどそうじゃねえみたいだな。さっきのはアンジがやったようには見えなかった。と言うことは新入りがやったように見えるが、新入りにしてはあの威力は出せない。お前何もんだ?」
「俺は葉桜想心」
「葉桜…ハハッ。お前がか!」
ディーグは俺に向けて指を指して来て、ケラケラ笑い出し死屍とデッドウルフ数体を出してきた。
「そのカステクライン、青藍の葉桜。ようやくお出ましか。お前の実力、見せてもらおうじゃん!デステクライン!闇、ウルフの噛み癖!」
デッドウルフが俺に襲いかかって来て、俺も負けずにカステクラインを起動させる。
「カステクライン!水、海月の爆弾!」
クラゲが数体出てウルフが触れたから爆発し煙のせいで、ディーグが見えないと周囲を見渡す。ディーグはどこだと煙が消えた直後、目の前にディーグがいてやばいと無意識にガードしたら丸焦げになってしまった盾乃が俺の前にいた。
「アンちゃんのお友達はやらせない。カステクライン!錬、鉄の氷柱!」
盾乃のカステクラインが来てしまい、鉄でできた氷柱が現れてディーグに当ててみるも、交わされてしまう。ディーグは盾乃のカステクラインを壊すため盾乃に集中し始めた。
俺とアンジは盾乃を助けようとしたが、死屍とデッドウルフを多く出してきて距離を離されてしまう。このままだと盾乃がやられてしまうと魔法を当てて、盾乃を守ろうとしたその時だった。
からんという音が鳴り盾乃の盾になったのは剣汰で、剣汰のカステクラインが壊されている場面を目撃した。
「剣汰!」
「想心、行かないで!カステクラインが破壊されれば死屍の姿になる!」
剣汰は盾乃に早く逃げてと伝えみるみると哀れな姿となっていき、盾乃を攻撃し始めて動けなくなってしまった盾乃を庇う。その隙にアンジが盾乃を避難させ、剣汰をどうすればいいのかわからず振り払った。
アンジが回復魔法で癒してくれて、落ちていた剣で剣汰を仕留める。いや盾乃が見ているんだ。何かいい方法があればと襲いかかってくる剣汰を止めていたら、一瞬の出来事が起きる。
ミルクティーベージュの髪質でふんわりと花の香りがして、雫のピンをしている少女が現れた。しかもオッドアイで盗人の子だと判明する。
「ごめん。私が武器屋に行ってしまったせいで、狙われやすくなっちゃった。でも大丈夫。すぐ元に戻してあげるから。デステクライン!浄化、永久の雫!」
敵だというのに彼女は壊れた剣汰のカステクラインを掴み、右目からキラキラと輝く雫がカステクラインに垂らした。そしたらなんと、カステクラインが元通りになり剣汰の魂が戻って来たのだ。
剣汰は盾乃と呼びながら意識を失って、俺がキャッチしゆっくり地面に寝かせる。さっきの子はと周囲を見たがすでにいなくなっていた。
まさかディーグはそれを確かめに盾乃を利用していたとすればどうだろうか。まだそこははっきりしてないけれど、剣汰が無事に戻って来たからよかった。
そうだ。校長の奥さんもこれで治せるのではないかと思い、剣汰を連れてユッキーノ街へと帰る。
翌日のこと。剣汰と盾乃がいる武器屋に訪れてみたら、剣汰の叫び声が聞こえて、剣汰の部屋に入った。盾乃がバケツを持って無理しないでと言っている。
アンジはちょっと診せてもらうよと剣汰の診察が始まり、アンジって医師免許持ってたっけと疑問に思うも盾乃が俺のところにきて隠れてしまった。大丈夫だよと盾乃の頭を撫でていたら、想心ちょっとと一旦、剣汰の部屋を後にし外で話を聞く。
「剣汰くんの右目に雫のマークがある。どういうわけかはわからないけど、盗人の子を捕まえてみないとわからない。私生活に支障はないと思うけど、しばらくはここに止まったほうがいいかもね」
「俺も同感。安心できるまではここにいたいからな。それに俺の勘だけどディーグがまた現れる可能性が高いんじゃないかって気がする」
「やっぱり。僕も思ってた。ディーグはそう簡単に引き下がらないタイプだからね。交代で街の巡回と剣汰くんの看病。それでいいかな?」
「いいぜ。先どっちにする?」
「じゃあ先に僕が剣汰くんをみてるよ。だから巡回の方お願い。何かあったら連絡して」
了解と俺はそのまま街の巡回をすることにした。
ずしずしと雪を踏みしめながら市場を歩いていて、朝食食べたけどいい匂いに釣られ三十ポイだから一本買い食べ歩きをしていると背後から待てこらと肉屋の店主の声がする。
もしかしてと振り向いたら昨日助けてくれた彼女で、捕まえようとしたら目の前でずっこける彼女。俺は咄嗟に拘束魔法をかけた。
「カステクライン!拘束、わかめの結び!」
わかめが彼女を捕らえそれでも逃げるパターンがあるから俺の体重を乗せ肉を回収する。到着した肉屋の店主は息を切らしながら、感謝を述べた。
「やっと捕まった。ありがとさん、想心」
「いえ。この子は俺が城まで連行するのでご安心ください。他の皆さんにもそう伝えていただければと。ちょい、暴れんな。お前には聞きたいことがあるんだから。あの、すみません。また逃げるような感じなんで武器屋にアンジがいます。呼んできてもらえますか?」
すぐ連れてくるとこんなに寒いのに汗だくの店主はアンジを呼びに行ってもらう。もう少し魔法を覚えていたら楽勝にアンジのところへと連れて行けたんだけどな。ジタバタ暴れる彼女でどうして盗人をしていたのかは大体想像がつく。
アンジが到着して睡眠魔法で彼女を眠らせ、そのまま武器屋へと連れて行った。
アンジの拘束魔法で彼女を厳重に拘束して、目を覚ますのを待ちながら俺は盾乃とオセロで遊んでいる。盾乃はまだ十歳で子供に負けてられないと駒を置き黒に変えていたらガタンと倒れ解いてよと叫ぶ彼女。
一時中断し盾乃は剣汰の部屋に行ってもらって、椅子を立たせアンジと尋問を行う。
「君は天の世界ではない人物だよね?なぜ天の世界にいる?」
「…私を匿ってくれるなら全部話す」
「わかった。なら今日からお前は俺の寮生に入ってもらう」
「本気?」
「アンジも実際に見ただろ?剣汰の魂は奪われるはずだったのに、戻って来れた。他にもそうなってしまった人たちがまだいるはずだ。彼女の力を借りれば助けられる可能性が大きい」
アンジは腑に落ちない顔をしつつ、あの瞳についてアンジが問いただす。
「わかった。寮長である想心がそう言うなら僕は何も言わない。それで剣汰くんの瞳には雫のマークがあった。どういうことなの?」
「わからない。私の魔法はただ一つ、死屍にされてしまった人たちを救える魔法だけ。そのせいで獄の世界の人たちは私を嫌い、一番の国、トーメイノ国に幽閉された。デステクラインは誰にも壊せないからずっと閉じ込められてたの。トーメイノ国に幽閉されて半年ぐらいかな。救ってくれたのがセブラだった」
「あのセブラが?」
頷く彼女でアンジはそんなはずないと腰を抜かしてしまい地べたに座り込むアンジ。なんでそんなに驚くんだよと内心思いつつ俺が聞く。
「なんでセブラが助けてくれた?」
「私の力を必要としてくれるのは天の世界だけ。もう時期青藍の葉桜の持ち主が現れる。私が持つ終焉の雫は汀春さんが認めた獄の世界にいた人であり、照秋さんを支えた人物って教えてくれた。だからセブラさんの力でこっちに逃げて来たのはいいけど、デステクラインがあるから思うように喋れなくて、盗人になっちゃった…」
どういう理屈でセブラが彼女を天の世界へと来させたのかはまだ不明だが、彼女と行動していれば何か手掛かりが掴めるかもしれない。まだ驚いているアンジをほっときもう一つ確認をした。
「あの魔法は消えたりとかはしない?」
「うん。本で読んだよ。永久の雫はカステクラインの魔法は効かない。私が解かない限り、永久に魔法はかかり続ける。右目の雫の意味は本に載ってなかったけど、きっとかけたおまじないみたいなマークを意味するんじゃないのかな」
今のところ剣汰はやられた夢で吐いてしまった程度らしいから、もう少し様子見て大丈夫そうならユッキーノ街を離れるか。その前に盗んだ分のお金はきっちり払わせないといけない。
「アンジ、拘束魔法解除して…今更驚いても仕方ねえじゃん。ほら」
「あっごめん。あまりにも意外すぎたから」
アンジが拘束魔法を解除して、彼女は釈放されたが名前聞いてなかったな。
「名はなんて言うんだ?」
「本名は明かさないほうがいいよ。そうだな、雫ちゃんって言うのはどうかな?それにカラコン入れておけば気づかれる恐れは低くなる」
「そうだな。獄の連中に覆われているんじゃ本名はあまり出さないほうがいいか。んじゃよろしくな、雫。俺は想心で隣にいるのがアンジな」
「ありがとう、想心、アンジ」
雫が笑って俺たちも笑い盗んでしまった四軒を回って謝りに行くことにした。
◆
いろんなクエストを受けてやっと百万ポイントになり、僕は六段魔道士の申請をしに職員室で手続きを行っていた。ポイントは全てリセットされちゃうけど、もう百万ポイントを集めれば想心がいる世界へと行ける。
手続きが終了し僕に名刺百枚をくれて、名刺には五段魔道士、紅葉川思穏と書かれてあった。ありがとうございますと先生に伝えて、セブラが待っているところに行ってみる。そしたらダークグレー寮長のディーグがセブラと話していた。何話してるんだろうって少し気になりながら、セブラのところへ行くとディーグはどこかへ行ってしまう。
「どうかした?」
「大人の事情ってやつだよ。六段魔道士になれた思穏に新しい依頼書が早速来た。受けるか受けないかは思穏が決めていい」
セブラが僕に見せてくれたのは五万ポイントの依頼書で、内容はライトノ国にある一つの街で盗人が発生しているらしい。その盗人を捕まえればいいってわけか。こういう場でも盗人は発生するんだね。
「この依頼、受けるよ」
「よし、そうと決まればそのまま出かけるか。今日はどうする?箒にチャレンジしてみる?」
「えへへ。今日もお願いしちゃっていいかな?」
「よし。そうと決まれば行きますか。デステクライン!取り出し、箒!」
セブラの箒が出てセブラが先に乗り、僕はセブラの後ろに乗って出発した。
やっぱり自分で乗れたら最高だけどこう見えて僕、高所恐怖症なんだよね。だからよく自殺しようと屋上に行ったものだよ。セブラのシャツを掴み目を瞑っているとセブラが言ってくれる言葉に救われる。
「無理しなくていい。遠慮せずがっちり俺に掴まっていればいいよ」
「ありがとう、セブラ。じゃあがっちり掴まらせてもらうね」
セブラにがっちり掴まって街に着くまで、目を瞑っていた。
到着したらしく目を開けると大きな街で、賑やかな音楽が流れている。何かお祭りとかやっているのかなとセブラの箒から降りて街に入った。
ポイントがあれば欲しい物とか買えたのになとちょっと出店を見つつ、盗人を捜していたら待ちなさいという声に目をやる。
正面から走ってくる彼女がいて、彼女の後ろで走っているのは店主らしい人だ。僕はすぐさま行動に移して彼女を捕らえるためデステクラインを起動させる。
「デステクライン!拘束、鎖の結び!」
鎖が現れて彼女を捕らえ、彼女が持っていた品物を店主に渡す。
「こちらでやっておきますので大丈夫ですよ」
「ありがとうございます。報酬額のポイントを払わせてください」
店主が依頼を出していたらしく、ポイントが入ってセブラが彼女を担いで人があまり寄らない場所まで連れて行く。本当は罰を与えたくはないけど、そういう決まりだからやるしかない。
路地裏へと入って誰もいないことを確認し、台がちょうどあってそこに座らせた。
「どうして盗人なんかしたの?」
「なぁ、そのデステクライン、透過の紅葉やろ?ようみしてなぁ」
僕のデステクラインに興味があるのか僕はデステクラインを外そうとしたらセブラが止めに入る。
「てめえ、青の団長、滝木くるめだろ?唯一、獄の世界に侵入できる奴だ。なんの目的だ?」
「言えへんに決まっとるやろう、セブラ。強いて言える範囲は紅葉川思穏がここにいることや。元はと言えばあの時点で二つの命は助かるはずやったのに、誰かはんのせいで二つの命が亡くなったことやで。セブラ、何を考えてるんや。妾の後輩とそこにいる思穏に何をさせる気でいはるん?」
「教えるわけないだろ?そもそも思穏の魂は自ら殺めたからこちらに呼んだだけだ」
「ほんまに?そうは見えへんかった。想心は汀春に似ていたから嫌気が差したんちゃうか?」
いい加減にしろと死屍を数体だし、彼女に攻撃しようとするも彼女がカステクラインを起動させる。
「カステクライン!水、海王の叫び!」
鯨が現れて叫び出し耳が痛くなるほどで耳を塞ぐとセブラが僕を担いで空を飛ぶ。セブラの耳からには多少血が出てしまいハンカチで当ててあげる。
「セブラ…」
「悪い、ちょっとやらかした。海王の叫びは俺たちにもダメージがくる。街の人たちや観光客が心配だ。巡回するぞ」
「わかった。でもまず傷を癒さなきゃ。デステクライン!闇、抜け殻の漣!」
セブラを癒しながら僕たちは街に戻り、みんなが大丈夫か確かめに入った。




