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シゴノセカイ《改訂版》  作者: 福乃 吹風
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72話 ナギノ村②

 ナギノ村にある誰かの家に隠れ、アンジは外の様子を伺っていた。雫はあれから元気がないし、なんか空気が変な感じだな。なにか話題をと考えていたら、アンジが外の様子を見るのをやめ、俺と雫のほうに体を向けた。


「追ってくる様子はなさそう。雫が不安を抱いている理由で、正直に話すよ。僕は獣柱の番犬で龍桜冰春。汀春の双子の弟なんだ。ただ想心、ごめん。汀春とはあまり会えてなかったから、どんな人だったのかは伝えられない」

「おっおう。んで雫はなんで不安を抱いてんだ?獣柱の番犬がついているなら、怖くはないだろ?」


 雫に聞くと雫は口をもごもごしては、外の様子を見始めてしまう。


「雫、はっきり言ってくれないとこの空気で過ごしたくはないんだが?」

「…アンジに不安を持ってはなくて、その…セブラがカステクライン使いになったのを感じたの」

「えっ…」

「もしかしたらデステクライン使いに追われてるような感覚なの。これってさ、もしかすると私はセブラとなにか意味があるんじゃないのかな?」


 真剣な眼差しで言う雫であり、俺はさっぱりだがアンジは何かを閃いたようだ。


「母さんが言ってた。セブラの本家は地に司る家柄で、龍桜家は天を司る家柄」

「空と地ってことか。ん?てことは天の世界は龍桜家が仕切っていて、獄の世界はセブラの本家が仕切ってるってことになんの?だったら紅葉川家との繋がりは?」

「確かに千年前、獄の世界を仕切っていたのは紅葉川家。なにがどうなってっ」

「アンジ!」


 いきなりアンジが苦しみ出してしまい、アンジに声をかけ続けていたら、なんとボーイッシュの女性が現れた。


「冰春、冰春しっかり。想心、水をありったけちょうだい」

「咲さん?」

「いいから早く」


 はいと慌てながらバケツがあってそこに水を流してあげる。バケツにたっぷり入った水を渡してあげ、左手をバケツに入れ、右手でアンジの胸に当てる。

 すると淡い光が光り出して数秒後、落ち着くようにアンジは眠りへとついた。一息をつく咲さんであるも、悲しそうな瞳をしている。


「咲さん、あの」

「冰春はね、汀春のことが大好きだったの。けれどそれを知った龍桜家は、冰春を部屋に閉じ込めた。今も冰春はこっちで暮らしていたことを封印されながら過ごしてる」

「そうなんですか?」

「えぇ。千年前、冰春は汀春と過ごしたいがために偽名を使って過ごしてた。そして艿花を生まれ変わらせることに加担したことで、記憶を抹消されちゃったの。それを阻止しようと汀春が抵抗したけれど、冰春は記憶を失い、そして汀春は封印された」 


 まさかそんな過去があっただなんて、アンジは結構苦しかったんじゃないかって気がする。じゃあなんで今はこうしてアンジと一緒にいられるのか疑問だ。


「咲さん、ならなんで今はこうしてアンジと一緒にいられるんですか?普通逆じゃありません?」

「獣柱は百年ごとに変わるの。今の獣柱の長の考えが、今までの長より不思議な人なのよ。接触させてなんのメリットもないはずなのに、今の長だけは特に優しい方だけど、油断はできない」

「アンジのことはよくわかりました。セブラがカステクライン使いになったかもしれないのはご存知ですか?」


 雫が質問をすると知ってるわと立ち上がった。


「セブラは何度もカステクライン使いになってはデステクライン使いに戻ってる。だからそのうちデステクライン使いに戻ると思うわよ。それから冰春ではなく今まで通り、アンジで接してあげてね」


 はいと答えると咲さんは行ってしまい、良かったと俺と雫は安堵していると、ガタンと物音が聞こえる。雫はアンジを見ててもらい、音がしたほうへゆっくり歩くと、コケコッコーと鳴き声が聞こえた。

 てことはもしかしてと部屋を覗くと、着地を失敗したらしい獣柱の鶏谷珺と鶏がいる。


「コケ」

「着地失敗したところ見られた。まあいい。さっき龍桜咲さんの気配感じて来たけど、また逃げられたか。それよりアンジは大丈夫?」

「あーはい。なんとか」

「そっかそっか。心配だから起きるまで同行させてもらうよ。ちなみに腹減ってる?」


 言おうとしたらギュルギュルと鳴ってしまい、笑いながら料理作ってやると言われたもので、鶏谷珺はキッチンへと行ってしまわれた。なんか恥ずかしいなと思いながら、アンジと雫のもとへ戻る。


「どうだったの?」

「獣柱の鶏谷さんがきて、なんか料理作ってくれるらしい」

「それって食べて平気?大丈夫?」

「あっさっき咲さんに聞いておけばよかったな。アンジが早く起きてくれればいいけど、しばらく起きそうにないから、今回だけにしておこ」

 雫は半信半疑でいるものの雫もお腹を空かせてしまい、そうしよっかと料理ができるまで待つことに。


 待つこと数分後…


「できたぞ」


 テーブルに置かれたのはなんと卵焼き、目玉焼き、ゆで卵、オムライス、蟹玉と卵を使った料理がたくさんあった。そしてご飯にかける用の卵がカゴにどっさりある。


「好きなだけ食べていいが、残さず食べろよ」


 アンジが起きてくれればいいがまだ起きそうになく、二人で食べ切れるか心配でも食べるしかない。一口頬張るとすごいうまく、ガツガツ食べてしまいそうだった。礼儀正しく食べているとへえとなぜかにやけている鶏谷珺が俺を見ている。


「なんすか?」

「俺のイメージ、全然違った。ガツガツ食べそうなイメージなのに、礼儀正しいな」

「最初、ここに来たとき、アンジに指摘されたんで、染みついたのかもしれない。あの、鶏谷さんは」

「珺でいい」


 アンジのこともっと知りたいという気持ちがあって、それを他人から聞いてもいいのかなと、ふと思ってしまう。さっき咲さんがくれた情報だけでも貴重なのに、なんで俺はこう焦っているんだろう。

 考えていたら珺さんに言われてしまった。


「冰春のことで知りたいんだろ?」

「あっはい」

「俺から言えるのは、冰春が寂しがり屋だってこと。だからだと思う。りよっしーが想心の側近としてそばにいさせたんじゃないかな。あぁりよっしーは俺たちの上司の人の名前」

「なんとなくわかります。それに気になっていたことがあって」


 なにと珺さんが言うもんで、アンジの寝顔を見ながら聞いてみることに。


「以前、店主のおばちゃんに言われたんです。アンジの魂が消えかかっていたところ、俺たちの団長である滝木団長が救ったと」

「それか…。その件に関しては俺の口では言えないが、そのうち冰春か、それか直接団長に聞けばいい。それが原因で、想心のそばにいるよう命じられたのかもしれないからな」

「一ついいですか?」

「なんなりと、ロゼ姫」

「セブラがカステクライン使いになったのを感じたの。私となにか関係があるんですか?」


 まさかこのタイミングで聞くとはなと、俺も気になっていたことだった。咲さんは何度もデステクライン使いに戻ってるって言ってたしな。

 そしたらアンジが起きて、珺さんがいることでびっくりしている。


「アンジが起きたから、俺はお暇する。卵料理食べて元気出せ。ロゼ姫、その回答はまた今度な」


 そう言って珺さんは光っていなくなってしまい、珺さんが座っていたところにアンジが座った。


「二人とも、なんで獣柱の人が来ていたのか説明してくれない?」

「アンジが心配で来たらしい」

「…そっか。他になにか聞いた?」

「さっき疑問に思っていたセブラの件で聞こうとしたところ、アンジが起きちゃったから聞けなかっただけだよ。あとは俺のイメージが違ったって言われた」


 なんでと卵を割って、ご飯にかけながら聞くアンジであり、雫は静かに笑っている。


「ほら、以前はさガツガツ食べてたところ、アンジに指摘されたから、礼儀正しく食べてたんだよ。んで笑われた」

「そうなんだね。まさか珺さんが飼っている鶏の卵をいただくだなんて貴重すぎる」


 俺と雫はびっくりしすぎて吹き出しそうになりつつ、残したら絶対に怒られそうだからしっかり食べねばと思った。


 珺さんの料理を全て食べ終えた俺たちは、グレイの死屍デッドルタがいないか、確認し外へと出る。それにしても勝手に人の家にお邪魔しちゃったけどよかったんだろうか。

 早く兄貴たちと合流しなくちゃなと、動こうとしたら死屍デッドルタに囲まれてしまう。グレイが出した死屍デッドルタなのか判断しにくいところだが、カステクラインを起動させた。


「カステクライン!水、海驢あしかのボール投げ!」


 鼻の上にボールを乗せた海驢が現れ、ボールを死屍デッドルタに投げると爆発する。アンジも雫もカステクラインを使いながら攻撃を与えていると、誰かが降って来た。

 誰だと思いきやミケが現れて、一緒に戦ってくれるようだ。今のところダークグレーノ団員らしき人物がいそうにないから野良の可能性がある。

 ミケがここに来たということは、三毛屋さんがこの村に来ていたらと考えていると、付近で爆発が起きた。


 兄貴と松風先輩が不安になっていたら、そこに猫姿の三毛屋を抱っこしているグレイが現れる。


「やはり来ましたわね、ミケ。この子はミケに返しますわ。ただ、ふふ」


 身構えているとミケが黒い光に包まれてしまい、助けようとしたがアンジに引き止められてしまう。すると黒い光が消え、ミケの正体に俺は震え上がるほどだった。ミケはこっちを向いていて俺は息が苦しくなってしまう。


「想心!」


 思い出したくもない記憶が蘇ってきて、しゃがみ込み、アンジが背中に手を当てた。グレイはくすくす笑っている声で、最初からわかってたんだとはっきりする。


「ふふ、やはり想心の心に傷があるのはわかってましたわ。それを知っていながらアンジは過ごしていたのですの」

「確かに僕は想心の心の状態を知れる。だけどミケが関係しているとは限らない」

「そう言ってますけど、想心が今どんな表情しているのか見てあげてほしいですわ」


 俺はついアンジにしがみつき、震えが止まらずにいながらアンジに伝える。


「ミケから…ミケから…今すぐ離れたい」

「わかったから、ちょっと待ってね。まだこの手は使いたくはなかったけど」


 アンジの本当の姿へと変わり、大丈夫と俺に安心させながら、首に下げている笛を吹いた。そしたらそこに白龍が現れた途端に、視界が暗くなる。



 百合男さんがルルラちゃんに向けて攻撃し始め、リラ団長と優くんに悠くんが止めに入っていた。僕も加勢して戦いたいけど、ルルラちゃんが僕の服を引っ張って震えてるから動けない。

 なぜ今もなお、百合男さんはルルラちゃんを敵視しているのか。お互いデステクライン使いだというのに、憎しみ続けている理由。


「ルルラちゃん」

「なあに?」

「お父さんを怒らせたとかではないんだよね?」


 聞いてみるとより強く掴むルルラちゃんで、ルルラちゃんが百合男さんを怒らせた意味がわかれば、百合男さんの憎しみは収まるかもしれない。

 僕はしゃがんでルルラちゃんの顔をしっかり見てあげ、事情を聞いてあげる。


「なにがあったのか教えてもらえる?」

「…ルルね、お父ちゃんを悲しませちゃったっ。あの日っルルの誕生日にっ」


 ルルラちゃんは思い出したことで泣いてしまい、ルルラちゃんの誕生日にもしかしてと思った。苦しかったねと優しく包んであげ、泣き止むまで待つ。

 ルルラちゃんが泣いてることで、百合男さんがこっちに来ようとも、リラ団長たちが止めてくれていた。


 深い事情はまだ聞けてなくても、ルルラちゃんが秘めた思いは、リラ団長たちに伝わってると思う。だから大丈夫だよ、ルルラちゃんと頭を撫でた。

 このような思いを持たせてはいけないのはわかってはいるけれど、親が知らないうちに子は成長していく。ルルラちゃんの場合、ずっと母親の存在を知りたかったけど、聞けなかった。ううん、お父さんの口ではなく、うっかり聞いてしまったからこそ、ルルラちゃんは苦しかったんだ。


 聞きたいことを違うところから聞いてしまって、心がもやもやするような。


 待っててあげるとリラ団長たちが吹き飛ばされてしまい、百合男さんの攻撃がこっちにきそうなところだった。


「カステクライン!光、猫の隠密!」 


 僕とルルラちゃんが見えなくなったのか違うところを探し始める百合男さんで、なにがどうなってと周囲をみる。するとリラ団長と悠くんはまだ倒れているも、優くんだけは違かった。ライトノ団ではなく、シロノ団服を着ている優くん。

 トコトコと白い猫がやって来てミャアとルルラちゃんの足元にすりすりしていた。


「すみません、思穏先輩。悠が気絶してくれているからこの姿になりました」

「…まさか、シロノ団をこっちに来させたのも」

「いえ、違います。おそらく別の人から指示を受け、来たんだと思いますよ。るこ、ごめんね。これが終わり次第、迂生は帰らなくちゃならない。一緒にいられてよかった。思穏先輩、るこのこと頼みます」

「優お兄ちゃん!」


 るこちゃんが行こうとするも、結界らしきものがあるのか弾かれてしまう。見えるのは黒い光と白い光。いやだとるこちゃんは再び泣いてしまった。


 せっかく兄妹として過ごしていたのに、またルルラちゃんを苦しませてしまうだなんて。なんとかならないだろうか。リラ団長が起き上がっても驚くとはなかった。

 ただ僕とルルラちゃんが見えていないようでも、安心感を持って百合男さんに攻撃をし始める。

 

 悠くんは優くんの正体を知らないから、起きる前に終わらせてあげたいからな。そうと決まればと僕はしゃがむのをやめ、立ち上がる。

 優くんの秘密を知ってしまった以上、ライトノ寮長として守秘していかなくてはいけない。


 ふうっと深呼吸をしながら一度目を閉じ、ルルラちゃんが悲しませず、優くんの正体を明かさないようにと思っていると、ルルラちゃんが綺麗と言い出す。

 ゆっくり目を開けたらそこには僕も驚くほどで紅葉の葉が多く舞い踊ってキラキラと暖色の光があった。そして僕はふとこう発言する。


「カステクライン!とう、紅葉の川!」


 川のように紅葉たちが百合男さんのほうへ行き、百合男さんは逃げようとするも、リラ団長と優くんが止めに入った。百合男さんは叫びながらで、僕は立ちくらみしそうになったところせブラが現れる。


「セブラ…」

「まさか透を使うだなんてな。とにかくルル、あの光が消えたら父ちゃんのところへ行け。父ちゃんはもう大丈夫だ」

「本当に?」

「本当だ」


 セブラに支えてもらっていながらその光景を見ていると、邪人と呼ばれているものが現れる。ただ僕の光が強かったのか、邪人は消滅した。光が消えルルラちゃんはリラ団長たちがいるそばへといく。


「んで倒れてる少年誰だ?」

「悠くんと言って、優くんの弟らしいよ」

「まじか。全然気づかなかった。ん?なんでカステクライン使いがいるんだよ。とにかく起こしてやりたいが、おい。いるんだろ?牡丹」


 セブラが言うと牡丹副団長が現れてしまい、なんだこの胸騒ぎと思っていると、優くんがいち早く気づき、リラ団長とルルラちゃんを遠ざけた。優くんも百合男さんから離れると、百合男さんの様子がおかしい。

 邪人はとったはずなのになんでと混乱していると、百合男さんは叫び出し、そしてみるみると死屍デッドルタとなってしまった。

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