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シゴノセカイ《改訂版》  作者: 福乃 吹風
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71話 ナギノ村①

 俺はなぜか全く思い出せず、ただアンジがそばにいてくれた。何があったんだっけと思い返そうとも思い出せないで、空をぼーっと見ていたらアンジから話してくれる。


「グレイの魔法で意識を失ってたんだよ」

「…そうか。なんか黒い百合をもらったような気がしたんだけど…」

「夢じゃないかな?」

「そうだ!兄貴と松風先輩は?」


 アンジに聞くと俺の名を呼ぶ兄貴と松風先輩が走って来た。兄貴はなぜか俺に抱きつき良かったと呟く。ただ兄貴は俺から離れることはなかった。


「兄貴?」


 声をかけるとなんでもないと兄貴は言い、なんだこのモヤモヤした感じはと思ってしまう。松風先輩は周囲を警戒しながら言った。


「いっ、たん、カゼ、ノ、国に、戻、ろ。団、長が、なにか、わかる、かも、しれ、ない、から」

「そうだね。想心立そう?」


 なんとかと立ちあがろうとしたが、なぜか力が入らなくてアンジと兄貴に手伝ってもらい、ワープでカゼノ国に戻る。住民たちのことが気になるけど、報告しなくちゃな。

 歩いていたら庭でフィリシャ女王陛下がいらっしゃって、声をかけようとしたところ、グーダス団長に止められてしまった。


「今はそっとしてあげといてください。先ほどの件で、女王陛下は後悔されているんです。想ちゃんに任せた任務」

「俺は別に気にしてませんよ」

「想ちゃんが気にされてなくても、女王陛下は悔いが残ってる。昔もいまも」


 昔と気になっているとアンジがあの件ですよねとグーダス団長に質問をすると、はいと女王陛下の様子を見ながら教えてくれる。


「フィリシャ女王陛下にとっては、特別な子がいたんです。ちょうどダークグレーノ団長、グレイのような姿をした子がいて。その子は女王陛下のことがとても大好きだった。ただある日、その子は戦場の場で魂を狩られたんです」

「戦場の場ってダークグレーノ国での戦場ですか?」

「はい。私もその場にいました。前のダークグレーノ団長に、狩られてしまって救いたくても救えなかったんです。そのやり方があまりにも酷くて」


 酷いというのはどういう意味だと思っていると、アンジが代理で話してくれた。


「無理やりデステクライン使いにする方法がいくつかあって、まず魂を狩ったあと体が残るでしょ?その体に呪いをかけて戻すというやり方がある」

「えっじゃあ湘西さんもそのパターンになっていたかも知れないってことか?」

「いえ。できるのはダークグレーノ国に滞在している時じゃないとうまくできないんですよ。だからあまりそういう任務は二段魔導士か一段魔導士しかやらせない任務となっているんです」


 想像するだけでぞっとしてしまいそうな感じがしてしまう。


「じゃあその子はいまもどこかに?」

「おそらくそうなります。また危険なことが起きてしまったので、女王陛下は」


 危険なことがあったって何があったんだとアンジを見るも、アンジは平然としていた。隠している様子はないから、きっとグーダス団長のほうで何かが起きたんだろう。


「あっそう言えば意識が飛ぶ前に黒い光が見えたような気がするよ。あれはなんだったんだろ」


 雫が言っていて兄貴たちもあまり覚えていないようだった。アンジは見ていないと言った。てことは俺はその黒い光に巻き込まれたってことか。


「団、長、そっ、ちは、大、丈夫、だった?」

「大丈夫というより、夏海ちゃんを奪おうとダークグレーノ団員が来たぐらい。安心して。夏海ちゃん猫の姿になっても大活躍だったから」


 それならよかったとほっとする俺たちであり、ひとまずフィリシャ女王陛下に報告は、また今度となった。今日は何かと疲れがあり、寮で体を休めることに。

 ボフッとベッドにダイブして汀は俺の横で眠りについた。汀もお疲れ様と撫でていると、アンジがベッドに座りあることを言われる。


「汀春さんにもし弟がいたらどう思う?」

「急にどうした?」

「いや、想心だったらどんな感情を持つかなって気になって」


 変な質問にんーと仰向けになり天井を見ながら、こう答えてあげた。


「もしまだこっちにいるんだったら、会ってみたい。そしたら汀春さんのこと、もっと知れそうな気がするよ。急にどうした?アンジらしくないというか」


 アンジのほうを向いてアンジの顔は言いにくそうな表情をしている。やっぱり俺になにか隠してんだろうな。俺はアンジの隣に座り伝えた。


「無理に話さなくていいよ。アンジが話したいってときに話聞くからさ。それまで待ってるよ」

「ごめん。ありがとう」

「前にも言ったけどさ、どんな言葉をもらったとしても、俺はアンジのそばから離れない。それだけは覚えといてほしい。だからアンジのタイミングで話してくれればいいからな」


 アンジの頭を撫でうんと小さく言うアンジだった。


 その日の夜、アンジはぐっすりと寝ていて、俺はベランダで夜風に当たる。アンジが言いにくいことと言ったら、獣柱のことについてかな。あんなこと言っちまったけど、本当は心が晴れないでいる。

 明日、ちゃんとアンジと普通にいられるか心配だなと思っていると、そこには白い烏が手紙を持ってきた。それを受け取ると白い烏はどこかへと羽ばたいて行ってしまう。誰だと封を開け手紙を拝見した。

拝啓、天国にいる颯楽兄、想兄へ

 私はいま、二人に会いたいという気持ちが強くて、獣柱さんという方に頼んで、手紙を出してる。

 お父さんとお母さんが行方不明になって、不安が大きいけれど、爽がそばにいてくれるからなんとか乗り越えてるよ。

 ただ怖いという恐怖心に押し潰されそうになるけど、獣柱さんの方が言ってたの。

 大丈夫、君のお兄さんたちは、必ず助けに来てくれる。それまでは我々が必ず守り抜くから、好きなことをしてほしいと言われた。

 だから少しずつでも、私がやりたいことをしていこうと思ってる。

 だから心配しないで見守っててほしいな。

 またなにかあったら、獣柱さんの方に手紙渡すね。 芽森より


 これが本当に芽森からなのかは不明だが、明日兄貴にも見せよう。芽森、必ず会いに行くからなと夜空を見て就寝することにした。


 翌日のこと、珍しくアンジに起こされず起きたがアンジの姿がなかった。珍しいと寝巻きから制服に着替えようとしたところ、置き手紙が置かれてある。

 すぐ戻るねと書かれてあって、すぐ戻ってくるならいいかと着替えた。兄貴は松風先輩と一緒の寮で、雫は隣の部屋だ。雫を一人にしておくわけにはいかないから、部屋の外で待とうと出た。すると雫が考え込んでいる表情をしている。


「雫?」

「ん?あっおはよう、想心。あれアンジは?」

「すぐ戻るっていう置き手紙があったよ。なにかあった?」

「ちょっといい?」


 うんと談話室とかではなく、俺たちが使っている部屋へと入り、雫にあることを言われた。


「夢でね、実は芽森ちゃんと少しだけシンクロしたの」

「芽森と話せたとか?」

「ううん。そういう夢じゃなかったというより、芽森ちゃんの今の現状ってところかな。芽森ちゃん、心のダメージが強すぎた部分しか見えなかった。以前リヴィソウルで見たより、深いというか。それが今なのかその前に起きたことなのかは全く」


 心のダメージが強かったってことなら、夜中もらった手紙は別の人物が書いて、俺たちが安心できるとでも思ったんだろうか。俺は夜中もらった手紙を雫に見てもらうことに。


「夜中、寝付けなくて、そのとき白い烏がこれを持ってきたんだ」


 手紙を渡し雫に読んでもらって、雫は深く考えているように見えた。手紙と夢はどちらが正しいのか判断しにくいが、雫の夢が本当なら、手紙は誰が書いたのか。まさかなと雫を待っていると、アンジが戻ってくる。


「おはよう、二人ともどうしたの?」

「…想心、ありがとう。先行ってるね」


 雫は俺に手紙を返したあと、さっさと部屋を出てしまい、なにか分かったのかも知れない。そう思って一応、アンジにも手紙を見せた。


「どう思う?」

「この文字は芽森ちゃんの字で間違いはないんだよね?」

「あぁ。獣柱が書いたとかじゃないよな?」

「獣柱がそこまでやらないと思うよ。もしあれだったらリヴィソウルでもう一回確認してみるのもいいかもね」


 アンジに違和感はなかったから、おそらく雫が見たのは一番最初に起きたことなんだろうと思いたい。


 朝食を食べ終えた俺たちは、フィリシャ女王の元へ行こうとしたところ、グーダス団長と会う。


「おはよう、想ちゃんたち。ちょっと一件、頼みたい依頼があって。これなんだけど、涼ちゃんならわかるかな?」


 松風先輩に見せるとゆっくり目でやらせるのとグーダス団長に質問をしていた。


「この前の一件もあったから、想ちゃんたちに任せられるのこれしかなくて。大丈夫そうなら、早速ナギノ村に行ってほしいの」

「わかりました。その依頼引き受けます。あの、女王陛下はまだ?」

「女王陛下のことは気になさらないでください。そのうちいつもの優しい女王陛下に戻るので」


 気になってしまうがグーダス団長がそばにいるだろうし、大丈夫だよなとその依頼場所であるナギノ村へ行くことに。ナギノ村はどんな感じなんだろうな。

 箒に乗って移動をしていると、風があったのに風を感じず、俺たちはなぜか落下するところ、松風先輩が助けてくれた。もう一度飛ぼうとするも、飛べずどうなっているんだろうか。


「普、段、なら、ナギ、ノ、村に、行ける」

「デステクライン使いが近くにいるのかも知れない。アンジくん、…アンジくん?」


 兄貴が呼んでいるのに返事はせず、アンジはナギノ村の方角を見ていて何かを感じているんだろうか。雫もアンジの様子がおかしいことで、なぜか俺の裾を掴んでる。

 もしかすると雫は龍ノ姫として覚醒し始めているのかも知れない。


「風がない原因がわかったかもしれない。涼太郎さんの風を出していただけませんか?」

「どの、辺、に?」

「ナギノ村の方角です」


 やってみると松風先輩はナギノ村の方角に風魔法を唱えた。


「カス、テ、クライン!風、ダ、チョウ、の、疾、風!」


 ダチョウが出す風をナギノ村の方角へやってもらうと、風が吹き出す。


「説明は後でしますので、今のうちに行きましょう」


 アンジが言うもんで、渋々箒に乗ってみると空を飛べ、ナギノ村へと向かった。



 ナギノ村に到着したものの、ここも村人が住んでいるようには見えず、松風先輩が不思議な顔している。


「前に、きた、とき、は、村、人、たちが、いた、よ。どう、しちゃ、ったん、だろ」

「感じる…」


 雫が何かを感じているようで、俺たちは雫を守るために囲みながら周囲を警戒した。すると死屍デッドルタが数体現れ、ディーグも現れる。それによって兄貴と松風先輩が一歩前に出た。


「まさか颯楽と涼太郎が一緒にまだいるだなんてな」

「涼太郎から全て聞いたよ。ディーグ、冤罪だったのになんで裁判で戦わなかった?無罪になってたら父さんは喜んで」

「喜ぶ?お前の親父さんに喜ばれる筋合いはない。俺は殺人を犯した。自分がやったって自覚があるんだよ!この手がそう叫んでやがる!」


 ディーグは右手を掴み兄貴たちを睨んでいて、ディーグが嘘をついているわけはなんなのか。俺はそのとき、自分のことしか考えてなかったから、把握できてなかったけど、一つだけ言えるとしたらきっと。


「大樹さん」


 本当の名前を伝えると兄貴と松風先輩は俺のほうを向き、ディーグは目を丸くしていた。


「想心、思い出したの?」

「小さい頃、遊んでくれてたよな…。悪い、思い出すの遅すぎて」

「今更そんなこと思い出されても、俺の心は変わらないぜ、想心!」


 ディーグが死屍デッドルタを動かし、俺たちも戦闘を開始する。確かにそうかも知れない。俺にとっちゃ曖昧な記憶だ。兄貴とディーグは小学校の先輩後輩ではあるけれど、家に遊びにきていたとき、遊んでもらってた。

 なんでこんなこと忘れていたんだろうか。記憶というものは大人になるにつれ、だんだんと忘れていく人や、全部覚えている人もいる。


 ディーグのこと思い出していたら、剣汰と盾乃が襲われたとき、わかってたのに。それに引っかかると死屍デッドルタを倒しながら、ディーグに伝えた。


「なんであのとき、話してくれなかったんだよ!こっちに来てすぐの時、最初に戦った相手がディーグなのに、なんで言ってくれなかった!」


 伝えてみるもディーグは次から次へと死屍デッドルタを出していて、話し合おうとはしない。ディーグがダークグレーノ団を選んだ理由。

 

「カステクライン!水、海月の爆弾!」

 

 ディーグを犯人にした人は今も現世でのうのうと生きていたらって考えちまうと。


「想心!」

 考えていたらアンジの声で死屍デッドルタに襲われそうになり、しまったと思った時のことだ。


「カステクライン!植物、ヤギのシュレッダー!」


 ヤギが数頭現れ、紙を食べるかのように死屍デッドルタを食べた。そこにはなんとミズノ国で待機をしているテンファが現れた。

 なんでここがわかったんだと疑問に思いながらも、テンファはディーグに聞く。


「ディーグさん、小生の父さんはどこにいますか?」

「さあな。今頃、妹を襲ってるかも知れないぜ」


 冷ややかな笑みで答えるディーグであっても、テンファが冷静でいた。全て倒し切った俺たちであり、ディーグは舌打ちをして行こうとする。けれど姿を消すというより、俺たちに背を向けて歩き出した。

 俺がディーグを止めようとしたところ、俺の目の前にテンファの父ちゃんが現れる。


「悠が呼んでくれた。あぁ愛おしい悠よ」

 

 俺の前に現れたのにも関わらず、テンファのほうへ走り出して、無視すんなとテンファの父ちゃんを掴もうとした。がなぜか俺の背後にアンジの声がする。


「想心に触れないでもらえないかな」

「ふふっ。やっぱり動きましたわね、アンジ。いい加減話したらどうですの?」

「なんのことかさっぱりだよ!カステクライン!水、亀の甲羅!」

 

 振り向こうとした瞬間にアンジに手を引っ張られ、後ろで爆発が起きた。テンファは父ちゃんと距離を保ちつつ、兄貴と松風先輩はディーグを追いかけたっぽい。


「雫、僕のことで不安なのはわかってるけど、今はとにかくグレイから離れるよ。テンファ!」

「行ってください!後で焔副団長が来てくれるので!」


 そうか、カゼノの国に行く前に話してくれていたな。焔副団長と知り合いだってこと。


「気をつけろよ!」


 はいっと元気よく返事をしてくれて、俺たちは一旦身を引くことになった。



 ダークグレーノ国にいるもあれからグレイ団長たちに会わず、このまま滞在していていいものだろうかと感じてしまった。それにいつルルラちゃんのお父さんが現れるかわからないし、早めにライトノ国に帰ったほうがいいんじゃないかと感じる。

 それに比べセブラったらみよりさんと楽しそうに話してるから、話したくても話しかけづらいのがな。二人を見ていたら隣に美命ちゃんが座る。


「ねえ、美命ちゃん」

「どうしたの?」

「美命ちゃんはさ、この先どうするの?」

「んーまだ決めてない。ただね、今の時間が私にとって大事かな。ほら、あっちではずっと病院生活だったから、なかなか生まれ変わりは考えてない」


 美命ちゃんが生まれ変わりをすぐしないのも、想心のことが心配だからだよね。すでに美命ちゃんは一億達成しているんじゃないかって気もしてしまった。

 ルルラちゃんは優くんと楽しく追いかけっこしていて、こうやってみるとよかったねと思ってしまう。


「ルルラちゃんの存在は知ってたの?」

「うん。シロノ国では全ての情報が入ってるからね。それに」

「それに?」

「ううん。なんでもない。それよりそろそろかも知れない。みよりさん!」


 そろそろって一体と思っていたら、美命ちゃんとみよりさんが消えた瞬間に僕らはシロノ団に囲まれてしまった。


「逃げ足が速いようだ。追え」


 何人かは美命ちゃんとみよりさんを追いかけて行き、セブラは感じたことがない怒りが肌で伝わる。


「争う気はねえから、とっとと失せろ」

「そうはいきませんよ。なぜなら、確定したのですから、セブラ、いいや。寅萩春とらはぎしゅん。君はデステクライン使いではなく、カステクライン使いだ。しかし、わかっているね?君は天の世界に移住は不可能だ。せいぜい、ここで魂が狩られることを願っているよ」


 告げ終えたシロノ団は笑いながら姿を消した直後に、セブラのデステクラインが輝き出して、別のものとなった。


「セブラ…」

「平気だ。リラ、俺はしばらく身を潜める。思穏のこと頼んだぞ。おそらく思穏もカステクラインになったら同じことが起きうるかも知れない」

「わかった。気をつけて」


 セブラは僕たちの頭を撫でた後、姿を消しまさかこのタイミングでセブラがカステクライン使いになってしまうだなんて誰も思わなかっただろうな。


「安心しなさい。すぐ戻ってくる。さてとセブラがいなくなったところで、優。そろそろ来るから準備は進めて。思っていた以上に早く来そう」


 セブラがいなくなったことが理由なのかわからないけれど、目の前で爆発が起きた。砂埃で何が起きたのかわからずとも、人の影が現れ、そこに現れたのはルルラちゃんのお父さん、百合男さんが誰かを担いでいた。


「悠!」

「憎い、憎い…ちゃんと殺せていなかった。るこを選ばなければ、選ばなければ」

「あなたが嫌がっていたのに、私の望みを叶えてくれてありがとう。けれど私はこうなってしまったことを悔やんでる。私のせいであなたも、優も、悠も、るこも、苦しませてしまった。私がしっかりしていれば、あなたたちをっ」

「憎い、憎い」


 リラ団長がデステクラインを起動させようとした時のことだった。


「カステクライン!植物、向日葵の日光!」


 向日葵が百合男さんの周りに咲き、光を浴びせられ、その隙に悠という少年がこっちに来る。そしてルルラちゃんは泣きながら、ごめんなさいと謝った。

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