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シゴノセカイ《改訂版》  作者: 福乃 吹風
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68話 アンジの秘密

 どこまで吹き飛ばされたのか分からず僕たちは意識を失っていた。その影響で僕たちが目にしたのは黒い光がポツッと見える。あそこは確か想心がいた場所と、起きあがろうとしたけれど激痛が走った。こんな時にとカステクラインを起動させる。


「カステクライン!水、貝殻の海波!」


 雫と猫になってしまった涼太郎さんの傷も癒しながら痛みが消えるのを待つ。早く、早く想心のところに行かなくちゃ大変なことが起きちゃう。だから僕が選ばれたんだ。まだ意識を失っている雫をここに置いておくわけにはいかない。雫の正体を知っているのは僕と想心のお兄さんのみ。

 どっちを優先すればいいと交互に見ていたら、コケコッコーと鶏の声が聴こえる。もしかしてと周囲を見渡すと鶏谷珺がいた。


「鶏谷珺」

「早く行ってやれ。時間がない。アンジがいかなければ終わりだ。龍ノ姫は守っておく」

「勝手に連れて行かないでくださいね。感謝します」


 想心たちには言えない秘密を獣柱のみんなは知ってる。なぜ生かされているのかは分からない。本当は無魂として新しい命に生まれ変わるはずだったのに、こうやって想心の側近となった理由はただ一つ。止められるのは僕しかいないってことを。

 急いでと箒に乗り真っ先に想心のところへといく。昔起きたできたことを繰り返させないために。 


 想心のほかにグレイとテンファの父親である猫又百合男ねこまたゆりおがいた。想心はぐったりと倒れているところ猫又百合男が支えている。

 この負の感情を吸って想心はいま、迷っているんだ。この姿をあまり見せたくはないけれど想心を守るために僕はやるよ。

「ふふっアンジですわ。残念でしたわね。来ても無駄ですわよ」

「どうかな。想心は返してもらうよ」


 想心、僕はまだ君に本来の姿を見せるわけにはいかないんだ。だからまだ起きないでねと願いながら僕の正体を明かすとグレイは驚愕していた。


「なぜ…ですの?」

「なぜ?今まで気づかなかった君らのおかげで、普通に暮らせていたんだよ。あの時はまんまと罠にかかって戻るのに時間がかかった」

「ありえませんわ!だってっだって玖朗が魂を狩ったはずですの!」

「いいや、濡羽玖朗は確かに狩ったけど実際は違う。僕はわざと濡羽玖朗に狩られたんだよ。その理由がわかる?」


 グレイはどういうことなのか理解できていないようだった。僕が想心の近くによったことで、テンファのお父さんが離れてくれる。


「答えが分からないか。じゃあ教えてあげるよ。僕は獣柱の番犬であり、暗示をかける者と言ったらわかるかな?」

「ティオ…」

「正解。玖朗に暗示をかけていると言ったらどう思う?」


 それを伝えるとグレイは撤退ですわとすぐいなくなったところで猫又優が現れた。


「心配できたけど大丈夫そうですか?アンジさん」

「平気。早く戻らないと勘付かれる。くれぐれも気をつけて」

「何かあれば知らせてください。鈴翔からの情報はもらっています。鈴翔の合図で動くのでどうか巻き込まれないようにしてくださいね」

「うん、ありがとう。優くん」


 優くんは獄の世界に戻ってもらい起きる前に暗示をかけておかなければならない。本当は暗示をかけずに過ごさせてあげたかったけれど、芽森ちゃんの負の感情を吸い込んでしまったことで、いつデステクライン使いになるか分からない状況だ。

 おそらく李好さんはこの状況をどう思っているんだろうと感じている。芽森ちゃんの負の感情を追い払うとしても、その負がデステクライン使いの好物だと知ったら、再び芽森ちゃんは閉じ込められてしまうのは確実。それをどう防ぐのかも李好さんの判断だ。


 今はとにかく想心に暗示をとかけようとしたら、気配を感じ防ぐ。


「おい、何してんだ?」

「セブラ」

「やっぱりお前、俺の」

「違いますよ。それに顔や背丈が違う。今からさっき起きた出来事を封印しなくてはならないので、邪魔しないでもらえませんか?」


 それでもセブラはどこうとしなくこの姿を見られた以上、今後どう影響がでるか分からない。


「いずれ話さないと後悔するのはアンジだぞ。それでいいのかって聞いてんだよ」

「いい。そのほうが想心は幸せなんだよ。言ったところで僕の意思は変わらない」

「アンジの秘密を知ったら、想心が一番悲しむのわかるなら話してやれ。絶対、絶対に後悔んぞ」

「今更父親ヅラしないでほしい!」


 僕はついセブラのことを父親と言ってしまった。セブラは僕のことを触れようとしたから手を振り払う。僕はずっとっずっとっ嘘ついていた。

 本当は違うんだ、想心。僕は執事の一家じゃない。僕は紛れもなく汀春の双子の弟、冰春ひはる。セブラと咲さんのもう一人の息子。汀春はセブラ似で僕は咲さん似だった。だからだよ。兄弟差別が起きて、汀春は召使のようにこき使われて、その一方僕は優雅に暮らせていたことを。

 それでも汀春は嫌な顔せず僕と接してくれていたのに、龍桜家はその光景を見て僕は部屋に監禁された。そこからだよ、玖朗はそれを知って、汀春と毎日会ってくれたこと。


 結局、僕はあの部屋に閉じ込められて数ヶ月後、ここに辿り着いたときは神の領域かと思った。そこに現れたのは獣柱であり、僕が選ばれたわけを知る。


「君は生まれ変わることを禁ずる。その代わり今日から君は獣柱の番犬として動いてもらおうか」

「獣柱って神の使いと呼ばれている動物を示しているんですか?」

「そうよ。あなたは龍ノ姫の兄弟であり、あなたの心は穢れてはいない純粋な魂だもの」

「ですが僕は一時期、うつ状態と言いますが、負の感情を持っていました。そんな僕が純粋な心をお持ちだと?」


 聞いてみると初代の獣柱の皆さんは、その通りと言っていて意味不明だった。僕が再びこういう場で過ごすだなんて夢のまた夢のような。そして次から次へとこっちに来る情報を聞き、そして汀春の名前が出たときはすぐに会いに行きたかった。

 けれど獣柱の言葉は絶対ということで会うことはできず、そして獣柱がしていることがなんなのか理解をし、こっそり汀春にヒントを送っていた。

 そして僕たちの妹は無事、生まれ変わることができたけれど、汀春の魂は封印されてしまう。


「なぜなんです?なぜ汀春の魂を封印しなければならなかったんです?」

「君は気にしなくていい。次の任務に集中したまえ」

「ですが」

「話は終わり」


 話を聞いてはくれない状況のなか、知り合ったのが咲さんだった。


「冰春、大きくなったわね」

「…どちら様でしょうか?」 

「まあ覚えてないでしょうね。私はあなたのお母さん、龍桜咲って言えばわかるかしら?」


 あまり覚えていなくてすみませんと謝った。けれど咲さんは優しく本当にこの人が母親なのかとびっくりしてしまうほどだった。 


「あの、汀春と会えますか?」

「酷いのよ。汀春に会いたいって伝えたら、次男を招待したんだからいいだろって。もうムキーってなりそうだったの。私にとっては二人同時に会いたかったわ」

「やっぱり会えないんですね」

「分からない。きっと汀春は父親似だからなのかもしれない。一応ね、伝えとくとあなたたちの父親は獄の世界に幽閉されちゃった。悪いことしてないのに、それも酷いと思わない?」


 僕には育ててくれた父親を浮かんでいたから、当たり前だと思っていたけれど、咲さん曰く僕と汀春は咲さんが好きだった人の子どもだと後から知った。


「父親はね、冰春が思っている人じゃないわよ。とても優しくて、時に笑わせてくれる面白い人なの。必ず会えるわ。名前はねーーーーー」


 それを聞いた時、僕はあの人の息子じゃないとわかって、階級を上げ探し回った。そして見つけたんだ、僕の、ううん僕たちの父さん。だけど勇気が出なかった。会ったとしても、何を話せたらいいのか。

 僕が思っている以上の偉大な人で、いつか話したい。それなのに、なんでこのタイミングなの。まさか母さんがと想心を抱き上げる。


「アンジ、いや冰春」

「僕はアンジだっ」

「隠さなくていい。感じるんだよ。息子たちの魂の光が」

「僕は違う」


 僕は何度も嘘をついてきた。だから嘘しか言えない苦痛を、セブラは、父さんは、母さんが言った通りの人だった。父さんは優しく僕と想心を抱きしめ、ごめんなという言葉に落涙する。

 封印していた感情が、今ここで溢れ出すだなんてと思っていると、母さんが駆けつけてくれた。


「油断したわ。ごめんなさい。追い払えたと思っていたの」

「みよりはよくやってくれたよ。あれ美命は?」

「誰かが来ようとしている人物を止めてもらってるわ。獣柱の一人よ。早くしないと」

「僕っどうしたらっ」


 俺が暴れるからその隙にとセブラは行ってしまう。話したかった。いろんなこと聞きたかった。歴史ではなく直接。


「封印しなさい。芽森ちゃんの負は強すぎるし、今の想心には耐えられないのわかってるわよね。ただ一つだけ。セブラが言ったことは、私も同じよ。大丈夫、想心なら必ず受け止めてくれるわ。私もそろそろ行くわね。獣柱に見つかりたくはないから」

「母さん、感謝します」


 僕のおでことそして想心のおでこにキスをした母さんは姿を消し、僕はさっき起きた出来事を封印した。僕はあの時から何も変わってないな。汀春と会えると思ってたけど、獣柱に逆らえず接触を禁じられていたこと。無理矢理でもいいから会いに行けばよかったなって思う。

 それに思うんだ、想心。なんで汀春の魂を持つ想心の側近にさせられたのか意味が不明だった。獣柱は百年ごとに世代は変わっていく。今の獣柱の長である李好さんの考えが読めないよ。


 想心の寝顔を見ていると白い烏たちが僕たちを囲み、烏木滾良さんが現れる。


「さっきのは見ないことにするね。家族の再会は大切だもん」

「感謝します。なぜ芽森ちゃんの感情がこっちに来てしまったんですか?」

「李好さん悩んでる最中。確かに気分転換として外の空気を吸わせてはいるけれど、その負の感情を風龍が追い払ってるらしい。ただその感情を利用しようとしているデステクライン使いが現れたから、芽森ちゃんを神社に戻そうか悩んでる」

「それで芽森ちゃんの感情を想心が貰っちゃったってことなんですね」


 そう言うことと言われてしまい、僕は基本想心から離れることはできなくても、少しだけ現世に行く時間があれば芽森ちゃんに会うことは可能かもしれない。


「滾良さん、芽森ちゃんに会いに行っても大丈夫ですか?」

「そこは直接、李好さんに聞きなよ。私じゃ判断できないぞ」


 ですよねと少し緊張してしまうもカステクラインを起動させる。


「カステクライン!連絡、氷の小鳥」


 氷でできた小鳥が僕の周りを一周して、僕の手のひらに乗っかる。忙しい人だから出ないかなと待っていると出てくれた。


『どうしたんだい?』

「お忙しいところすみません。あの芽森ちゃんの件で」

『冰春が芽森ちゃんとの接触はできない。その意味がわかるね?』

「…今会えばその感情が想心に行ってしまうからですよね?ただ芽森ちゃんがこのまま落ち込んで過ごしてるのはどうかと思うんです。風を追い払うのではなく、例えば気分転換で芽森ちゃんがしたいことをさせるとか、そう言うことは可能でしょうか?」


 李好さんは少し悩んでいる様子でやっぱり難しいことなのかなと思っていると、こう回答がきた。


『確かにこのまま芽森ちゃんが怯えて生活するよりかは、芽森ちゃんがしたいことをさせることでポジティブなことを考えられるかもしれない。少し頭がスッキリしたよ。さすがは咲ちゃんの息子だね。引き続き、想心くんのこと頼んだよ』

「はい。僕がいる限り、濃藍の葉桜にはさせません」

『期待していますよ、冰春』


 失礼致しますと告げ、通話を終える。


「そっちも少しスッキリした顔になったね。さっきは本当のお父さん見て泣いてたのに」

「ちょっと滾良さん。恥ずかしいこと言わないでください。滾良さんはしばらくこっちに?」

「うん。私と珺に藍雅、それから行ったり来たりしているのは鈴翔だよ」

「先日、珺さんと鈴翔くんにはお会いしました」

「聞いてるよ。鈴翔ったら、冰春いじりすごいね。一緒に話聞きたかったのにダメって言われたんでしょ?」


 それを言われ赤っ恥になり余計なこと言うだなんて鈴翔くんに、今度あったらどんな態度をとればいいんだか分からなくなってしまう。

 滾良さんは笑っていて、僕もつい笑っていると想心が起きそうだった。滾良さんは手を振っていなくなり、僕も今の姿に戻っておく。


 芽森と寝言を言う想心であり、起きるまで待つことにした。



 アルは馬鹿なことをしてしまったでありますの。なぜ、なぜ今まで気づかなかったのか混乱が起きてますわ。クロノ国に戻っているとお聞きし、行ってみるとベッドでゴロゴロしている玖朗がいましたわ。


「大変ですわ!」

「何がだ?今は療養中だから、厄介ごとは伊雪に行ってくれないか?」

「アンジの正体がわかったんですの!アンジの正体が」

「冰春なんだろ?随分前から知っている。それがなんだ?」


 駄目ですわ。昔の玖朗は冰春のこと大嫌いとお聞きしてましたの。なぜなら冰春は汀春をいじめていた張本人だと言うことを。兄弟差別で冰雪は兄が嫌がることをたくさんしていたって言ってたじゃないですわ。

 このまま行けば想心は昔のように冰春によって支配されてしまいますわよ。どうしたらと考えていたら、そうですわとセブラの元へと行ってみますの。


「セブラ」

「いきなり現れるなよ。なにかあったか?」

「冰春のことで」

「ん?冰春がどうかしたか?」


 父親であるセブラなら状況が読めていそうでも、なぜか嬉しそうな表情を出しているのはどう言うことですの。


「以前玖朗が狩った魂が冰春のもので、冰春は玖朗に暗示をかけたようですの」

「暗示?あぁあれか。いや正しいんだが、ちょっと異なってる。アンジ、つまり俺の次男、冰春は暴走してしまった玖朗を助けるために暗示をかけたんだよ」

「暴走?」

「そうだ。だいぶ前の話になる。汀春が封印されたと聞いた時、俺たちは止めることもできなかった玖朗を止めたんだよ。冰春が来てくれたことによって、玖朗は落ち着きを見せたんだ。だから気にするな」


 疑わしい感覚ですわ。あるがみたあの表情。冷酷のような微笑みでしたの。なぜあんな冷酷な笑みを出せるのか、鳥肌が出てしまいますの。

 玖朗やセブラの前では違く、本当の顔はあるがみた表情ならば、すぐさまこっち側につけさせなければならない気がしますわね。


 信用してくれそうにないですから、このことは伏せておくことにしますわ。


 この後起きる出来事で、想心がどちらにつくか、もう目に見えてますけど、これはサプライズですの。楽しみですわ。

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