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シゴノセカイ《改訂版》  作者: 福乃 吹風
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63話 白鳩の少年

 団長たちはまだ家族として過ごしたいという要望で、俺たちはひと足さきにダンザ校長にご挨拶をすることに。イッシェも帰るからなんか想像できてしまう映像が浮かび上がった。

 城の扉を開けた瞬間、俺らは爆発に巻き込まれ、髪の毛がチリチリとなる。このパターン、来たときにあったなと思い出しながら、ダンザ校長の元へと行く。


「ダンザ校長」

「もう帰るんか。もっとゆっくりしていけばえぇのに」

「いえ。俺にはやらなくちゃならないことがあるので帰ります。お世話になりました」

「いつでも来ればえぇ。そやった渡しておきたいものがあるんや」


 なんだろうと思っていると、ダンザ校長は俺に種が入った袋をくれた。


「なんの種ですか?」

「植えてみればわかるやで。想心、これからもイッシェ、ちゃうんかった。滝木莱愛たきぼくらいあのこと頼むで」

「本名変えたら変更はできないんじゃ」

「わいの判断で決めることもできるんや。あの子はもう前に進むようになっとる。以前はなぁ、ほんまに小学生やったから、ダンザのお嫁さんになるぅゆうて、可愛かったんや」


 イッシェ…じゃなかった莱愛がそんなこと言っていただなんて、なんか俺たちはつい思い浮かべてしまう。今となっては黄色の団寮長として務めている姿に誇らしかった。

 たまにアンジに駄々捏ねてる姿も、本当は誰かに甘えたい想いが存在していても、甘えられなかった。一番上、長女だからしっかりしなくちゃという想いに潰されていたのかもしれない。


「そやけどここで過ごしていくうちにな、びっくりするほど成長がはようなって、今は黄色の団寮長を務めている姿が自慢や。引き続き、莱愛はあんな性格しておるけど、甘えさせてあげてや」

「もちろんです。たとえ、莱愛が上の年になる人であっても、俺にとっちゃ妹のように可愛いんで。あっ一番は芽森ですけど」

「想心、ほんまにありがとな」


 ダンザ校長に抱きつかれて、ちょっと照れくさくなってしまう。アンジたちも、お任せくださいと言っていて、さて行きますかと行こうとした時のことだ。


 大きな揺れが起き何が起きてるんだと、揺れが収まるのを待つ。今までは地震みたいのはあまりなかったはず。落ち着いたところで、ダンザ校長が離れた。


「今の揺れは?」

「…現世で何かが起きとるようや。ちいと想心に客が来るかもしれへんな」


 ダンザ校長が言うと白い団員たちが本当に来て、なぜかアンジは俺の前に出る。


「アンジ、どいてもらえますか?」

「断ります」

「そうですか。ならアンジを」

「おいおい、待った。何の用だ?それになんでアンジが連行されなくちゃならない?ちゃんと説明しろ」


 俺が質問をすると後ろにいたらしい団員が前に出ようとしたところ、前にいた白の団員たちが道を開けた。白の団員より上品そうなローブを羽織り、白い鳩が肩に乗っかっている。

 少年は俺たちに微笑みかけながら、白い鳩に触れてアンジに忠告した。


「あまり手荒な真似はしたくないから、さっさとそこどいてくれるとありがたいなぁ。そうじゃないとアンジの本名、ここで明かすよ。それでもいいのかな?」


 アンジの本名とついアンジを見てしまうも、アンジは一歩も動こうとはしない。そう言えば美命が来た時も機嫌を悪くしてたな。それに白の団は気をつけたほうがいいと言われてたっけ。


「カッチーン。もういいや。シト」


 肩に乗っていた鳩がアンジに向かって、何やってんだよとつい俺は無意識に出していた。水龍が目の前に現れ、そして俺たちを護るように囲む。シトという鳩は少年の方へと戻った。


「はあ、だから言ってんのに。水龍様、お鎮まりください。今は出る幕ではありません。龍ノ姫となる巫女について、想心にご報告しなければならないと判断いたしました」

「お前たちの行動は無礼。咲を捜索しないと約束は守れるか?約束が守らなければ」

「承知しております。地震がこっちにも影響が出たことにより、我々は龍ノ姫を護る役目をしなければならない」

「以前のようなことが起きたら、お前たちの命はないと思え」


 はいと少年が言うと水龍は水となって消えていき、アンジは納得していなくとも、後ろに下がるが俺の手を握る。


「ダンザ国王陛下」

「校長でえぇよ」

「いえ。その名では呼べません。少しの間、想心と二人きりでお話がしたいので、邪魔虫を払ってくれません?」

「僕も同行させてもらいたい」


 却下と笑顔で言うもんで、アンジは俺から離れたくない理由もわかる。ダンザ校長は呆れながらも、アンジと言ったことで最初は手を離さなかったが離れた。

 絶対に聞かないでよと圧をかけながら、少年は誰もいない庭で二人きりとなる。


「初めまして、鳩羽戸鈴翔はとばとれいと。この子はシト。獣柱じゅうばしらの一人と言ったらいいかな」

「獣柱ってなんだ?」

「獣柱は龍ノ姫をお護りする柱。本来、想像するのは肉食系をイメージするかもしれない。ここでは神の使いである動物が対象とされている」

「つまり白の団員は神の使いってことか」


 そうなりますねと白い烏はどこかへ旅立ってしまい、鈴翔は話を進める。


「僕たちは今、龍使いとなる人たちをかき集めていて、詳細は言えないけど、龍ノ姫となる巫女、芽森ちゃんが濡羽玖朗に狙われている。こちらに来させないために、協力願いたい。今すぐとは言わないよ。答えが出たら想心の前に現れるから」

「あのさ美命もその一人なのか?」

「違うよ。美命ちゃんは鹿柱の部下として動いている。もし会いたいのならば、龍使いとして想心を招待できる。但し妙な真似をすれば牢獄行きだから」


 美命が最近現れない理由が引っかかっていて、どうにか探りを入れたくとも鈴翔は話てはくれなさそうだな。そろそろアンジの元に戻ってあげないと、アンジがやばそうだ。


「考えておく。芽森のこと頼む」

「はい。伝言は伝えたから」


 鈴翔が行こうとするとそれからと振り返って言われる。


「想心の心が真っ黒になった場合、こちらで穢れを落としに伺うよ。その時は僕じゃない誰かが行くと思うから。それじゃ」


 スッといなくなってしまい、俺の心が真っ黒ってまさかとつい胸に手を当てる。大丈夫だよなと少し不安になるも、アンジたちのところへと戻った。



 姿は消していたけれどあそこにシャン・エンディリアがいたのは確かだった。娘が想心のそばにいるからとは限らない。どれくらい想心と一緒にいるのかは不明であっても、早めに捕えとく必要がある。

 シロノ王国に帰還すると、意外な方が帰って来ていた。


李好りよしさん、戻って来てたの?」

「おや、鈴翔くん、おかえり。いやぁまじかで想心くんと接触したけど、あの子は闇落ちする可能性が高いとみていい」

「まさか學門学として接触してた?」

「全然ばれなかったよ。それに雫ちゃんも僕に気づかなかった。それで悪い子ちゃんの様子を見に行こうと思うんだけど一緒に来るかい?」


 想心には本当のことは告げていなく、はいと蛇見李好じゃみりよしさんについて行くことにする。龍桜咲様を逃した罪で、美命ちゃんは罰せられていた。

 誰が罰を与えているんだろうと行ってみたら白い狼がいる。と言うことは無口の狼牙藍雅ろうがあいがさんもいた。美命ちゃんは何度も紅葉川思穏を庇ったのも含まれているのか、まだ解放はしないようだ。


「李好さん、咲様を捜索しないという条件で、想心に伝言伝えたよ。本当に捜索しなくて平気?」

「いずれ迎えに行くからいい。セブラの元にいるのは把握しているからね。さてと美命、純粋な心の持ち主である以上、そういう感情は持ってはいけないとここで教えたはずだ」

「こんなの間違ってる!純粋であるがゆえに、なんでもやりたいことして、相手の気持ちを無視するだなんて、最低です!」


 今までは大人しく指示に従っていた美命ちゃんが反抗期になるだなんて、こりゃあ李好さんは怒りマックスだと感じる。想心がこっちに来てから、おかしくなったのもあるかもしれない。


「鈴翔くん、藍雅、部屋から出てそれ以外の柱たちに招集を。葉桜芽森ちゃんの守護霊から緊急任務を引き受けたから」


 御意と答え藍雅さんと一緒にあの部屋から出ると、美命ちゃんの悲鳴が聞こえる。李好さんは蛇柱ということもあって、怒ると怖いのは僕たちは知っていた。

 だから僕たちは逆鱗に触れないように、任務を遂行している。藍雅さんの狼が唸り出し始めていて、僕たちは足を止めた。この気配と、動こうとした瞬間に爆発が起きた。


 よりによってシロノ王国を攻めるとかあり得ないんだけどと、シトに伝播しに行ってもらう。


「ふうむ、思ってたのと違ったー。てんてんてん」

「ライトグレーノ団長、絹鬼涼真!」

「ただビンゴだった。ここに梅咲美命ちゃんがいるはずなんだけど、どこにいる?」

「教えるつもりはないよ。藍雅さん!」


 藍雅さんと連携を取りながら、僕たちはカステクラインを起動させた。


「カステクライン!光、鳩の電波!」

 

 白い鳩が数羽現れ、光と同時に電波を放つ。けれど絹鬼涼真との相性は普通で、一人で来ているようではない。ここで獣柱全員が集まる確率はないから、藍雅さんの白狼とうまくやらなくちゃ。

 絹鬼涼真は電気を吸収できる死屍デッドルタを出したことで、絹鬼涼真には流れなかった。


「ふうむ。いい電気だったけど、僕のネズミちゃんを確保できるかな?」


 僕が電気を流している間にネズミを放っていただなんて、李好さんはネズミが大の苦手なんだ。藍雅さんはすでにいないってことは、李好さんのもとへ戻ったっぽい。


「そうだった。獣柱の鳩くん。えっとなんだったっけ?あっそうそう。僕らデステクライン使いは、獣柱の君たちを排除させてもらう。君たちの光はとても強いけれど、僕たちには切り札が順調に育ってる」

「君たちには何がなんでも渡すつもりもない。それにこちらはそっち側に内通者を忍ばせたから、そっちに行ったとしても連れ戻せる準備も整ってる」

「ふうん、そっか。じゃあセブラに伝えとくけど、想心の想い人はいただくよ」


 まさかと動こうとしたら睡眠ガスが撒かれてしまい、おやすみ鳩くんと言われながら瞼を閉じた。


 

 僕の頬を舐めるような感覚で目を開けると、藍雅さんの白狼が僕を舐めている。起きたことで藍雅さんのところへと行き、僕は立ち上がるとシトが僕の肩に乗っかった。


「美命ちゃんは?」


 首を横に振る藍雅さんで美命ちゃんは奪われちゃったってことでいいんだ。美命ちゃんをシロノ国に招いたのは訳がある。想心がいずれ来ると確信をしていたから、純粋の心を持つ美命ちゃんをシロノ国に招いた。なぜなら美命ちゃんは汀春様の奥様の魂なのだから。

 いずれ共鳴反応が起きてもおかしくはなく、そして青藍の葉桜が動いたことにより、美命ちゃんは想心を意識するようになった。


「ありゃあ、やられたっぽいな。悪い遅くなって、鈴翔、藍雅」


 頭に鶏を乗せている僕たちより年齢が上で、獣柱では鶏である鶏谷珺けいたにたまきさんが来てくれる。いつもは鶏の卵収穫をしていた。


「珺さん、先ほどライトグレーノ団長と接触しました。狙いはやはり美命ちゃんだったようで」

「こっちも鶏小屋に現れて鶏たちが突いてたよ。状況はともあれ二人とも無傷でよかった」


 珺さんに頭を撫でられ嬉しい気持ちがあり、僕にはお兄ちゃんがいたけれど、不仲だったから珺さんに甘えてしまう部分がある。


「被害は少なかったそうだけど、鹿ちゃんの部屋がめちゃくちゃ荒らされてたらしくて結構ショック受けてた感じぐらいだ。りよっしーの様子見に行かないと」


 藍雅さんが微笑をしているってことは、気絶しているのだと理解し戻ってみると、まだネズミがうじゃうじゃと倒れている李好さんの周りを囲んでいた。


「やべえ数に囲まれてんな。藍牙も払えないってことは猫に帰って来てもらわなくちゃだが、猫は現在任務中。ニト、起こしてやって」


 僕と藍雅さんは耳を塞ぎ、そして鶏の鳴き声、コケコッコーが爆音のように響き渡る。すると驚いたのかネズミたちが退散したことで、李好さんが目をパチリさせ起き上がった。


「私としたことが…。起こしてくれて感謝するよ、珺」

「んで、これからどうすんだ?現在任務で離れられない猫以外はもう各部屋で待機してる。猫が来るまで待機?」

「いや、平気だよ。僕たちだけで葉桜芽森ちゃんの元へ行こうか。もしかすると半分はこっちで任務を与えるかもしれない」


 龍桜神社に入ってから、依頼は受けていなかったけれど、緊急任務となれば再びあのようなことが起きている。李好さんは僕たちの前では普通であっても、肌で感じるほど怒りを出していた。

 いつか李好さん自身が闇落ちしてしまうのではないかと恐れている。


 猫柱以外集まって僕たちは葉桜芽森ちゃんがいる現世へと向かった。相変わらずの部屋に芽森ちゃんは正座をしてただ一点を見つめているだけだ。

 そこに芽森ちゃんの守護霊が現れ、とても悲しい瞳をしていた。


「獣柱の皆様、お待ちしておりました。以前と同じことが起きようとしております。あなたたちの光を貸していただきたい。それからできれば現世にいる芽森のご友人をここに来させてほしいの」

「御意。鈴翔、行ってくれるね?」


 御意と僕は一礼をして芽森の友人、つまり松風爽の元へと瞬間移動する。けれど松風爽がいたのが風龍神社であり吹き飛ばされてしまった。風龍様は僕を拒否していることがわかり、一度風龍神社から離れる。

 僕ら、獣柱は以前の龍ノ姫を裏切り、龍桜神社の当主についたこともあって、簡単に入ることは許されなくなってしまった。


「シト、李好さんに伝播して。松風爽が風龍神社内にいて接触が不可能。出るタイミングで接触しますと」


 シトは羽ばたいて李好さんたちがいる龍桜神社に行ってもらい、伝えるにしても松風爽は僕のことを認識できない。どうやって伝えるかが肝心となるわけで、風龍様が話を聞いてくださるのならば風龍様に伝言を頼む。

 様子を伺っていると風龍神社の神主様が神社から離れ、どうやら僕が見えているようで僕の前に立つ。


「貴様は龍ノ姫の獣柱だな?使いということはあの中にいる人物に何のようだ?」

「僕は鳩柱、鳩羽戸鈴翔。芽森ちゃんの守護霊より伝言を承っております。龍桜神社に来るようにと」

「簡単に行かせるわけにはいかない。芽森の両親が消えた以上、お前たちを信用できないと風龍から言われている。帰ってもらおうか?」

「以前の僕たちじゃありません」


 伝えたとしても神主様は断ると神社に戻ろうとしていて、なんとか説得できればと考えていたら、シトが戻ってきて僕の肩に乗り喋り出す。


「待ちなさい、松風家の者よ。確かに信頼度は下がっているのは承知。しかしこのままいけば再び大きな災いが生まれる。それだけは避けたいはずだ」

「…神の使いか。伝えるが龍桜家の者は、二人の接触をさせない。それでもいいというのか?」

「こちらで説得する。芽森の人生と爽の人生を奪わせたりはせん」


 少し待っていろと神主様は神社へと戻り、五分後、松風爽と神主が現れる。


「光が見えるだろ?」

「黒い物体の次は白い物体というより、眩しすぎるだろ。これが獣柱の明るさなんですか?」

「あぁ。その光に触れれば連れてってくれる。鈴翔、お前を信じているぞ」


 一礼して松風爽の肩に触れ、芽森ちゃんがいる部屋へと戻ったら、龍桜神社の神主の息子、辰弥様が芽森ちゃんを離そうとしていなかった。


「君たち、なんでそいつを連れて来たの?今すぐ追い払って」

「我々は龍ノ姫に従う。君に我々は扱えない。今すぐ龍ノ姫となる巫女を離してもらいたい。秩序を護る者として危害を与えるのならば、君の守護霊は消えるだけだ」

「散々、僕らに従ってくれていたのに、なんで急にあいつの味方になってんの?」


 これはまずい状況となり、辰弥様に従っている五龍が一斉に姿を出し、それによって風龍が松風爽を守る。


「こうなるんだったら、こなきゃよかったんだけど、どうすりゃあいい…」


 松風爽が焦りを出していて、どうしますか李好さんと、李好さんがいる方へと向いた。すると騒がしいですねと龍桜神社の神主、龍桜龍真様が来る。


「獣柱の君たちがこんな早く来るとはねえ。辰弥、芽森ちゃんから離れて」

「なんで父さんまで」

「いいから。獣柱が来ている以上、安泰とみていい。そういうことでいいのかな?芽森ちゃんの守護霊様」

「芽森を護るのは当然のこと。できれば自我を戻してあげ、外の空気を吸わせてあげてほしいの。部屋に閉じ込めていると、いつ影が忍び来るかわからない。獣柱がいる限り、影は離れるでしょう」


 龍真様はそうですねと言いながら、芽森ちゃんの前へと行き、辰弥様を離れさせ、指を鳴らすと、芽森ちゃんが動揺して、松風爽のところへと行く。

 辰弥様が手を出そうとするから、龍真様が止めに入り、僕たちに告げた。


「本来ならばこの部屋から出てほしくはないけれど、芽森ちゃんの守護霊の言う通り、一時期間、君に預けておく。ただし時が来た際は、この神社に戻って来てもらおうか」

「父さん…」

「辰弥、大丈夫。槍で刺したマークは消えてないから平気だよ。獣柱の皆様、龍ノ姫君をよろしくお頼み申します」

「承知いたしました。葉桜芽森様、僕の手を握ってください。ご安心を。家へと帰れます」


 芽森ちゃんは不安な顔になりながらも松風爽の手を握り、そして李好様の手を握ると場所が切り替わる。芽森ちゃんが住んでいたご実家に帰って来た瞬間に、芽森ちゃんは松風爽にしがみつき涙を流した。


「しばらくは二人きりにさせてあげましょう。僕らは一度外へ」


 この家は龍桜神社のお護りが貼られてあるから大丈夫と信じて外に出る。


「思っていた以上に、芽森ちゃんは縛りつけられていた。その影響でいつ芽森ちゃんの影が出るかわからないから、気をつける必要があるようだ。滾良たぎらと藍牙、珺は天の世界へと戻り、龍使いをかき集めてほしい。鈴翔は引き続き、伝播役として行き来をお願い。それ以外のみんなは、ここでデステクライン使いを払うように」

「りよっしーは?」

「僕はまだばれていないようなので、學問学として調査を行う。何かわかり次第、連絡を。それからもし可能であれば、美命ちゃんを連れ戻してほしいかな」


 御意と一斉に言い、僕と天の世界に戻る人たちと一度帰った。



 ネズミの鳴き声がするとゆっくり目を覚ましたら、ネズミが多くいたとしても驚くことはなかった。体を起こしライトグレーノ寮なのかわからずとも、ベッドから降りる。李好さんたちを怒らせたら、大ごとになるのはわかってた。私が利用されているのを知った時、不安が大きく膨れ上がってた。

 けれど掟を守らなくちゃならなくて、いつも通りに接してたけどもう無理だよと、膝に乗るネズミに触れる。


 すると扉が開いてライトグレーノ団長、絹鬼涼真が料理を持って来てくれた。けれど見た目に吐き気が出そうな感覚。せっかく持って来てくれたけれど、食べる気がないと思ったら、ちょっと待ったーと針尾智人副団長が止めに入る。


「これは俺が食うからこっち食べてね」

「僕の特製だったら元気に」

「はいはい。気持ちだけでいいよ。ネズミたちの餌やりやっておいで」


 うんと料理を針尾智人団長に託し、絹鬼涼真は部屋を後にし、針尾智人はほっと息を吐く。


「毒入りじゃないから、栄養取りなね」

「ありがとうございます。なぜ助けてくれたんですか?」

「想心の想い人だった子だって、セブラから聞いててさ。んで助けた。俺たちは一応グレーゾーンの中に居続けてるから、発動は低めなわけ。それくらいはわかってる?」

「はい。芽森ちゃんを守る人たちだから、抗えなかった。けど咲さんが帰って来たとき、いてもたってもいられなかったんです」


 咲さんがどんな状況でいたのか私は見ていたからこそ、あぁするしかなかった。今はきっと私の捜索が始まってるのかもしれない。ここでミッドヴィークとして動くのがいいのかな。


「事情は俺らにはよくわかんないけど、とにかくそれ食べて元気取り戻しなよ。それにもうすぐ会いに来ると思う」


 誰がと思っていると再び扉が開いて、そこにはなんと思穏くんが来てくれて、私はその日抱えていた感情が涙へと変わり、思穏くんがもう大丈夫と優しく包んでくれた。

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