62話 遊園地で遊ぼうぜ
白金銀の一件が落ち着いた頃……
ガバッと起き上がって俺は結構な汗をかいていて、手が便乗じゃないぐらい震えていた。まるで現世からメッセージをもらったかのように、爽の言葉がくっきりと覚えてる。
芽森のお兄さんたち、こんにちは。松風爽です。今、こっちでは余震が続き、人々が怯えている状況です。それと妙な体験をしました。黒い物体に言われたんです。芽森が危険な状態で、余震も芽森が起こしていると。俺もできる限りのことはしようと思います。どうか、どうか、芽森のことを守ってやってください。よろしくお願いします。
これはただの夢じゃないのははっきりしていて、思わずカステクラインを起動させた。
「カステクライン!連絡、水のペンギン!」
カステクラインから水のペンギンが現れ、俺の上半身を一周回り手のひらに乗っかる。兄貴、出てくれるよなと待っていたらすぐ出てくれた。
「兄貴っ」
『想心、落ち着いて。僕も爽くんからのメッセージを受け取ったよ。正直驚いてるんだ。こんな形で現世からメッセージを受け取るのは珍しくないことらしい』
「そうなのか?」
『うん。現世の人の想いが強ければ強いほど、こっちにいる天のみんなに届く。とにかく僕はまだ階級が上がってないから、現世にいけるよう努力はするつもりだよ』
現世にいける階級は三段魔導士で俺はまだ五段魔導士。すぐいけるわけじゃないのはわかっていても、芽森がとても心配だ。
「芽森、大丈夫だよな…」
『そばにいられない辛さはお互い持ってるはずだよ。それを乗り越えなくちゃならない』
「わかってるけど、芽森に何かあったら俺はきっと…」
『想心、ネガティブ思考はもうやめなね。ネガティブなオーラでデステクラインになったら困るよ。芽森なら大丈夫って信じてあげなくちゃ。そうでしょ?』
兄貴が言っている言葉は正しいのはわかってる。兄貴としてそばにいられないのが辛すぎる。
『もし気になるならリヴィソウルだっけ?それで確認すればいい。ただそれをみるときは僕と一緒にね。絶対に一人で見たら、想心暴れそうだから』
「うん。約束する」
『じゃあリヴィソウルは僕が買っておくから、想心は買わないようにね。呼ばれているから切るよ』
「ありがとう、兄貴」
こっちこそと兄貴から言われ通話を終えると、通話を終えるのを待ってくれていたのか、アンジが入って来た。
「大丈夫?」
「なんとか…。悪い、寝巻きが汗ばんでてシャワー浴びてくる」
兄貴は冷静だとしても俺の心は晴れないまま、シャワーを浴びて着替えた。忍者の都で滞在させてもらい、そろそろ帰って報告しないとな。
襖を開けるとみんなが待っていて、イッシェの見舞いに行くことになった。またダンザ校長の溺愛を見る羽目になるのなら、テンファに頼まれている白い向日葵を探しに行きたいぐらいだよ。
「ねえ母さん」
「どないしたん?」
「一度でいいから、その…父さんと母さん、盾乃四人で家族旅行したい。駄目なのはわかってる。けど父さんとちゃんと向き合いたいんだ」
前で歩いている剣汰と団長で俺たちは剣汰の思いをどうにか叶えてあげられないか、二人がイッシェの見舞いに行っている間に、學門さんのところへと向かった。
この前掃除したばかりなのに、すでに元通り化になっているも、普通に歩いて學門さんがいる研究室へと入る。
「おや、どうしたんだい?」
「あの遊園地的なものって作れますか?」
「急な案件だね。まあできなくはないけど」
「思い出を作ってあげたいんです」
なるほどねえと考え始める學門さんで、やっぱり難しいかなと考えていたら、なんと莉穏さんがひょっこり現れた。
「イッシェのためにも、やってあげようよ。ダンザ校長絶対許可出してくれると思う」
「しかし」
「しかしじゃないの。再び白金銀が闇深き人になる前に。ね?やろうよ」
「莉穏さん?どういうことですか?」
莉穏さんが言った言葉に疑問が湧き、聞いてないのと學門さんの腕を離し、學門さんは何故か転んだ。
「邪人を倒したと思うけど、白金銀の邪人はおそらくまた復活する。邪人が入ってしまったら、以前の白金銀に戻るってことだよ」
「銀様が…」
「執着心が強かったからね。あの程度では完全に倒せてないのは確実。ひっそりと白金銀の影に潜んでるかもしれない」
また白金銀があのようになってしまったら懲り懲りだと思ってしまった俺らで、どうにか完全に倒す方法を探したいところだ。
「莉穏ちゃんの頼みなら仕方ないな。まるまる二、三週間はかかると思うが、それでもいいか?」
「ならはいねはしばらく銀様のおそばにいますわ。邪人が現れたら嫌ですもの。準備が整い次第連絡くださいまし」
「わかった。頼んだぞ、ハウヴァ」
ハウヴァはグレーノ王国に戻り、俺たちは剣汰に喜ばせるため、団長やリディーに協力してもらうことに。
そして二週間半……
雫の父さんも協力してもらい、小さいが遊園地が完成した。現世ではあり得ない早さの出来で、カステクラインの力は凄すぎると感じてしまうほどだ。
団長は盾乃の目を隠し、白金銀は剣汰の目を隠してやってくる。二人が手を離した時の剣汰と盾乃の笑顔が眩しいくらい笑顔を出していて、二人の手を引っ張る剣汰と盾乃。
こうやってみると本当に子供で、こうやって甘えたかったんだろうなと俺たちは何故か涙ぐむ。
「すまんのう」
「イッシェ!?もう大丈夫なのか?」
「うむ。じゃがまだ受け入れたくないのじゃ。あやつがしてきたこと」
「まあまだ受け入れなくていいんじゃないか?ゆっくり許していけばいいよ」
そうかのうと話していたら、イッシェも早くと剣汰がせかし、イッシェも剣汰たちのところへと行った。んじゃあ俺たちは警備にでも当たるかと、手分けして銀の邪人がいそうな場所を探し出す。
今回ミケは風船配りをしてくれて、リディーも一緒に来てくれた。またテンファはじゃんけんで負けたそうで、なんとしてでも白い向日葵を手土産にしたい。
「リディー、わざわざ来てくれてありがとな」
「構わん。子供の幸せを守るのも先生の役目だからな。それより気づいているか?」
「あぁ。姿はないけど気配は感じ取れる。あれってダークグレーの誰か」
「おそらくな。なんの目的でいるのかはわからんが警戒はしておいたほうがいいかもしれん」
莉穏さんや瀬雷さんたちがいるから大丈夫だろうとは思いたい。剣汰たちは色んな乗り物に乗っている姿をみて、来世でまたこの四人が今度こそ幸せな家族になってほしいなと感じた。
次の瞬間のことだった。影が真っ先に白金銀の影へと入り込もうとしていて、俺は真っ先に唱えていたんだ。
「カステクライン!水、水龍の天泣!」
水龍が現れ涙を影に流してくれるも、邪人は白金銀に行こうとしていて、誰か止めろと叫んだ時のこと。
「カステクライン!雷、雷龍の雷轟!」
雷を放つ龍が現れ雷が激しく音が轟き、水龍の天泣と雷龍の雷轟が合わさって、邪人に放たれた。目が開けられないほどの光に俺だけ聞こえた。
「完全に消えたとしても、他の邪人はこれだけじゃ倒せない。せいぜい足掻け」
それを聞いた瞬間、光は止み空が輝きを放っている。他の邪人、つまり濡羽玖朗の邪人はこの程度じゃ倒せないってことなのか、くーたんと何故か呟いた。
そしたらハウヴァが、想心がっ想心がくーたんってとお腹を抑えて笑っていて、超絶恥ずかしいと背を向ける。雷龍を出してくれたのは、なんと莉穏さんで雷龍に触れていた。俺のはすぐ消えてしまってたが、なんでまだいるんだろうとそばによる。
「莉穏さん、なぜ雷龍がまだ」
「あれ?教えてなかったっけ?私、現世では龍使いしてたの。えっと雷龍の龍使いね。こっちでも雷龍は私の味方となってくれてるの。ありがとう、もう戻っていいよ」
仰天ニュースを聞かされているような感覚で、雷龍は天へと行き消えていく。
「そろそろかな」
そろそろと首を傾げると今度はブラックノ団員に囲まれてしまった。俺がくーたんって呟いたからかと身構えていると、一人の団員が前に出て発言する。
「秋葉莉穏、同行を願いたい」
「来ると思った。前々から私をつけてたんでしょ?私が紅葉川家の人間だと知りながら、私は何故か天の世界に招かれた。本来ならば紅葉川家は獄の世界に行くのが決まり。理由を教えてよ。じゃなきゃ私はあなたたちと行かない。何か企んでるの見え見えだもん」
「龍使いをかき集めてる」
「ふうん。要は芽森ちゃんを奪還後、芽森ちゃんの守護神を奪う計画なんじゃないの?あの時、実は私もいたの忘れないでもらえるかな?」
ブラックノ団員たちは黙りしてしまい、莉穏さんが言っている言葉って、玖朗が現世に連れてってくれた時だよな。
「現世で何があったのかはわかってるけど、今来るべきじゃない。大切なご家族の邪魔をされたくはないの。改めて来てくれると嬉しいな」
「…承知しました。ですがあまり時間は残されていません。想心様もどうか、お早めの決断を。それでは」
ブラックノ団員たちが消えていき、ハウヴァは俺の腕を掴んであっかんべえをしていた。
「嫌ですわ。せっかくの大事な時間を邪魔されて」
「ハウヴァ、悪い。ちょっと出かけるから見ててほしい」
ハウヴァに呼び止められても、何かが引っ掛かって仕方がない。なんだこの引っ掛かりはとどこかで見てんだろと周囲を見渡していると、伊生さんが来る。やっぱりそうだったのかよと伊生さんに警戒する。
「さっきのって伊生さんが指示を出したのかよ」
「なんのことですか?」
「惚けるな!ブラックノ団員は滅多に心を変えることはできないと聞いてる。グレーゾーンに元々入ってないだろ?」
それを告げると伊生さんは仕方ないですねと本性を明らかにした。ブラックノ団員が着ている服を着ていて、瀬雷さんはなぜ気づきもしなかったんだと感じてしまう。
「もう少しあそこにいたかったんですけどね、雷龍の龍使いを見つけたので、私は撤収します。今度会う時は妹さんを救った後ですかね。それとも一緒に」
俺の頬にいきなり触れ、やめろと手を払った。
「姉が言っていた通り、照れ屋さん」
「ちげえわ!」
「そんなにカリカリしなくてもいいじゃありませんか。あなたは水龍の龍使いと我々は認識している。妹ちゃんの情報はいくらでも出せますよ。欲しいはずです」
今すぐにでも芽森がどんな状況なのか知りたいけれど、兄貴と約束したんだ。絶対に情報は貰わない。ここで捕えるべきか迷っていると、暗野伊雪が登場する。
「やっほー、想心」
「伊雪、湘西さんの魂返せ!」
「毎回会うたびに言ってくるねえ。やなこった。伊生は先帰ってて。ちょおと二人で話したいからさ」
伊生さんは俺に一礼をして帰ってしまい、身構えていると肩を組まれてしまった。
「ちょっと場所移そっか」
そう言って景色ががらんと変わり、そこには玖朗の状態を知る羽目になる。
「…平気なのか?」
「平気じゃないから連れて来たんでしょうが。安心しな。ここはブラックノ国じゃない。ライトノ国だから。そろそろ戻ってくる」
誰がと聞く前に扉が開いて夢でも見ているんじゃないかと思うぐらい、思穏と俺より背丈が上の人がいた。
「何連れてきてるんだよ。伊雪馬鹿になっちまったのか」
暗野伊雪は背が高い人の腹を殴り、思穏を置いて行ってしまった。
「セブラ大丈夫かな」
「えっセブラ!?」
「うん。僕の指導役をしてくれてる人だよ。それより驚いちゃった」
「俺も暗野伊雪に連れて来られたよ。事情は知ってんの?」
まあねと思穏と俺はソファーに腰を下ろし、話を進める。
「ごめん」
「いいよ」
「セブラに言われてた。僕は天の世界に行けないこと。最初は自殺しちゃったからって思ってたけど、実は違ってた。僕の家系は大々、獄の世界に来ることになってるんだって」
「さっき思穏の姉ちゃんが言ってた。なぜか姉ちゃんは天の世界に招かれた理由を探ってるらしい」
お姉ちゃんがと驚いていて、それ以外にも雷龍の龍使いのこととかを教えてあげた。
「なるほど。お姉ちゃんはその雷龍の加護をもらっているから、招かれたのかもしれない」
「よくわかんないけど、俺は水龍の龍使いって言われたけど、しっくりこない」
濡羽玖朗が必死に守ろうとしてくれたことありがとなと玖朗の手を握ると、なんと目を覚ましたんだ。咄嗟に離そうとしたが握られ、謝罪の言葉を聞く。
「守り切れなかった。すまない」
「いいよ。それより体大丈夫なのかよ」
「あぁ。想心が来てくれたから、もう大丈夫。銀は?銀はどうなった?」
「笑っちまうよ。今、家族と遊園地で遊んでる。容体が良くなったら行ってみようぜ」
入れるかなと少々弱気できっと大丈夫だよと握り直してあげる。
「芽森がくーたん助けてって呼んでくれて」
「無理矢理呼ばせたのかよ」
「ちゃんと呼んでくれてパワーもそれ以上だったのに、奴は俺より上だった。そのせいで芽森は届かない場所に封印された」
封印と俺と思穏は顔を一度見せ合ってしまい、玖朗が話を進めていった。
「昔と今も変わることがない魂にいつも惑わされ、大切なものを失っていく。今回はうまくいけると思ったのにいけなかった」
「芽森なら大丈夫って信じてるから、いつものく…くーたんに戻れよ」
思穏は笑いを必死に堪えていて、やっぱり言うんじゃなかったと思っていると玖朗の手が俺の頭に触れる。
「想心、ありがとう。傷も癒えた。伊雪、いるんだろ?」
はーいと扉が開き、伊雪さんとなぜかボロボロになって入ってくるセブラ。
「想心を元の場所に戻せ。思穏、芽森を守り抜きたいなら、まず階級上げに専念しろ。セブラおじさん」
「おじさんつけなくてよろしい。本当はもう少し話す時間をあげたいんだが、上ががみがみ言いそうなんだ。悪いな、ほら思穏」
「あっうん」
思穏ともう少し話はしたかったけれど、俺がここにいるってばれたらアウトだもんな。セブラと思穏が退散したことで、もう少しチャージさせてと抱き枕になる。
「今度は一緒に芽森を救おう、颯楽と一緒に」
「約束はできねえぞ」
「仮の約束だ」
ゆびきりげんまんをなぜかする羽目になり、そして寝るの早と思いながらも、そっとベッドから退散し、布団をかけて元いた場所へと戻った。
「想心、ありがとう」
「急にどうした?伊雪らしくない」
「団長さ、心の傷あんま癒えてないんだよ。汀春の生まれ変わりが遅くなったのも、艿花の生まれ変わりが遅くなったのも、全てあいつらが悪い。なんで、なんで団長が千年の間も苦しまなくちゃならないの。悔しいよ、想心」
伊雪が珍しく涙を俺に見せ、確かにそうだよなと納得してしまうところがある。なぜ玖朗が苦しまなくちゃならないのか。汀春さんだったら、なんて言うんだろうと考えてしまう。
するとアンジの声が聞こえ、まだ慰めてやりたかったが、すっと暗野伊雪は消えた。
「想心、ここにいた。ハウヴァが…」
「ん?どうした?」
「いや、なんでもない。剣汰くんが探してたから行こ」
アンジ、どうしたんだと思いながらも、俺たちは遊園地を楽しむことに。




