6話 魔法より飛行でしょ
ついに待ってましたと体育着に着替えて、準備運動をしていると先生が箒を持って来て整列をする。この人、さっき食堂で挨拶した無言の人だ。アンジのように先生してるのかと首に巻いているマフラーが靡きながら喋る。
「今日は、某が城のどこかに、隠した手裏剣を、取ってきて、もらう。チャイムが、鳴るまでに、見つけろ。以上、だ」
みんなは箒を持って飛んでってしまい、俺はどうすればとみんなが探しているのを眺めていたら、おいっと声をかけられた。
「想、心」
「はい」
「飛び方、教える。箒に、跨いで」
こうすかと見ててもらいながら地面を蹴ってみてと次に指示が出たから、地面を蹴るように蹴ってみたら宙に浮いた。先生も箒に乗って動かし方を伝授してもらい、魔法より飛行の方が得意かもしれないと自由に動かせたことで探して、ご覧と言われ探す。
それにしても先生の喋り方が独特過ぎて、読点がいちいち入っているような感じだ。どうにかして普通に喋ることはできないのかなと探していると発見し手に取ってみた。
どうみてもこれ折り紙でよくある手裏剣だよなとよく飛ばずに行かなかったな。一応ポケットにしまって本物の手裏剣を探す。
確認しては折り紙の手裏剣が多くて、ポケットにこれ以上入らないぐらいまで来ていた。どこにあるんだかと探しているとキランと何かが見え近くに寄ったら、本物の手裏剣を見つける。大きく太い字で松風涼太郎という文字が書かれていた。
よしっ。早速松風先生のところへ持って行こうとしたら、クラスメイトが発見しそれを寄越せとこっちに来る。やばっと感じてすぐさま松風先生のところへ持って行った。
息を切らしながら見事、松風先生のところへ持って行けて、五百点の点数をくれた喜びが隠し切れない。だからみんなそれを持って行きたかったんだなと、俺よりバテているみんなは悔しそうに地面に倒れていた。
しかしアンジは息切れをしていなく、俺にスポーツドリンクをくれていいなと駄々をこねるみんな。
「意外と、早く、見つかった。次回は、もっと、見つけづらい、場所に、おこう。今日の、授業、ここまで」
チャイムが鳴り箒を棚に戻して、アンジは一度職員室に行ってくるようだ。授業は終わったしどうすっかなとアンジを待つため中庭のベンチに座る。
魔法学はアンジが教えてくれるから、遠出したとしても大丈夫。問題は飛行だな。さっきは上手く行ったけど、着陸する時思うように行かなかった。
まだ自分の箒を持ってないから、箒を買って練習するしかなさそう。そこはアンジに相談してからだなと空を見上げていたら、隣いいかなと声がかかりこれはこれはとぺこっとお辞儀した。
「ここに来て、どうだい?」
「はい、最初は何もかもが新鮮で覚えられるかどうか、不安が大きいですけどなんとかやれてます」
「それは何よりだ。いやぁこうして想心と会えただけでも喜ばしいことだ」
「え?」
「驚かせてしまってすまなかったね。その魂は汀春そのものを感じれる。私は汀春を息子のように慕っていた。無論、妻もね、汀春を息子のように親しんでいた。どうせなら想心を養子にいれたいぐらいだ」
校長は夕空を眺め遠い場所を見つめるかのように、その続きを語ってくれる。
「でも私たちはこの世界の人間でもあり、あの世で亡くなられた多くの魂を守らねばならない責務があってね。だから魂である君たちをあの世に戻すため養子にはできないんだ。それからだよ、妻は汀春が生まれ変わりになってすぐ、亡霊を見るかのように汀春を追うような仕草を見せてしまった」
「…そうだったんですね。あの奥様はいまどうされてるんですか?」
「元気だよ。もしよかったら、会ってくれないか?」
「いいんですか?」
もちろんと校長が言うものだから校長についていくと、壁で校長が手を翳すと壁が移動し通路が見えた。お邪魔しますと一応伝えて中に入れてもらうと壁が元通りに戻る。不思議だと校長についていくとなぜか地下の階段を降りて行きあれと思ってしまった。
地下に到着すると扉に大きな魔法円があって、校長は素手で魔法円を解除したのだ。厳重な鍵が全て解除されたことにより、お邪魔すると唸り声が聞こえる。
校長は大丈夫だよと俺に告げその先に進むと、牢屋で縛られている女性がいて唸っていた。
「あれが妻だよ。今日も元気そうだ」
「失礼ですが、奥様は死屍?」
「以前は誰にも優しい妻で、子供たちの面倒を見ていた。汀春がいなければと思ってしまうこともある。だが汀春を憎めない。なぜなら窮地の時、救ってくれたのが汀春なのだから。カステクラインが壊れると、こうなってしまう。カステクラインは自分の思いが重要だよ。不安定になればカステクラインは徐々に壊れ始め、妻のようになってしまう。治す方法もない今、ここで拘束させてる」
汀春さんがどんな人だったのかはまだ覚え切れてないけど、俺の力で治せるなら治してあげたい。そのためにはもっと魔法学を勉強しておかなくちゃな。
「あの、校長」
「なんだい?」
「また奥様に会いに行っても構いませんか?奥様が戻れるように俺が治療法を探してみます。できれば奥様のカステクラインがあれば、それをお借りしてもよろしいでしょうか?」
「壊れてしまったが、これでよければ持っていてほしい。妻が喜ぶ。カステクライン!取り出し、妻のカステクライン!」
ボンッと現れてこんな感じで壊れてしまうんだとそれを受け取り、俺はカステクラインを起動させる。
「カステクライン!取り入れ、女王様のカステクライン!」
奥様のカステクラインが一瞬で消え、しまえることに成功し校長と中庭に戻った。
「もし治せる方法を見つける方法があれば、すぐに連絡を頼む。報酬点数はいくらでも出そう」
「いいんですか?じゃあ一万点で」
「それだけでいいのか?」
「いいんです。だっていきなり高い点数をもらえませんよ。俺はコツコツ貯めたいし、反則は絶対に嫌なんで」
「想心がそういうのであれば、一万点にしよう。もし何か困りごとがあるのなら、頼りに来なさい」
返事をするとではと校長は子供たちに挨拶をしに行かれ、アンジがお待たせと来た。遅いと軽く拳骨をしてあることを相談に乗ってもらう。
「俺さ、お金とか持ってないけど、どうやって買い物すんだ?」
「それはもらった点数で買い物してるよ。今日、点数もらったから買い物行こっか」
まだ五百点しかもらってないけど買えるものなのかなと城下町で買い物をすることに。
普段アンジが行っているお店に連れてってもらうと、結構安めなものがたくさんありカステクラインのチェーンとかも売っていた。チェーンはまだいいけど、他に買うものと言ったら筆記用具的な文房具は必要か。
いろんな羽ペンにインクが豊富で大体五十ポイで買える。羽ペンは二本選び、インクは紺青色を選んだ。後はと品物を見ていたらいろんな種類の箒があって、その一つがかっこいいと思ってしまい手に取る。
これで飛べたら最高だなと値段をチェックしたら一万二千ポイとありそっと元にあった場所に戻した。もっとポイント集めたら買いに行こう。それまでは馬で登校だなと後は日常に必要なものを買い、残高ポイントは二百七十ポイント。
アンジは店主と何か話していて、俺は先に店を出ていた。食材等はいつも家令が買っているから気にしなくていいと言ってたな。
待っているとお待たせとアンジは凄い嬉しそうな笑みを出していた。どうしたと聞いたら内緒と言われ、教えろよと戯れあっていたらこの前俺を馬鹿にした連中と遭遇する。
しかしライゼ先生の効果もあったのか、一度会釈して逃げるかのように走っていき、なんだと不思議に思いながら帰宅し一日が終了した。
太陽の光で気持ちいい朝を迎え、欠伸をしながら上半身を起こしてアーリーモーニングティーをいただく。
「今日は昨日もらった依頼の調査に行くことになったよ」
「授業は?」
「授業は今回ないというか、そろそろ依頼を受け始めいろんなところに行ってもらいたいと校長からのお言葉でもある」
「だけどアンジ、先生やってるのに大丈夫なのか?」
「大丈夫。僕の代理は他にもいるからなんとかなる。それじゃあ着替えるから」
俺は布団から出て制服に着替え、しばらくは料理長のご飯が食べられなくなるのは寂しいな。帰って来たらいっぱい作ってもらおう。
着替え等はアンジがすでに持っているらしく、俺は手ぶらで大丈夫らしい。朝食をしっかりいただいていると、執事が俺宛のを持って来たのだ。
こんな朝に何が届いたんだと大きな箱で開けてみると、これって俺が一目惚れした箒だった。なんでとアンジの顔をみるとプレゼントだよと俺の隣にくる。
しかも箒にはローマ字で想心とあって凄い嬉しいとアンジに感謝した。
「ポイント減っちまうのにありがとな」
「いいよ。それに僕は教師のポイントもあったし、余裕があったからね。たまにはプレゼントしたかったから」
「絶対に大事に使うな。早速ユッキーノ街へ行こうぜ」
「もう焦らないの」
嬉しすぎて朝食を食べ終え、真っ先に外へ出て箒に跨ぎ、早くアンジと急かしてアンジが箒に跨いだことにより思いっきり蹴って空を飛ぶ。
下からは行ってらっしゃいませ、想心様、アンジ様と声がかかり、行って来まーすと大声で伝えながらユッキー街へと出発した。
凄い風が気持ちいいなとユッキーノ街ってまずどこだっけっと箒を停止させアンジに聞く。
「ユッキーノ街ってどこだ?」
「わかってて進んでるのかと思ったけど、こっちで正解だよ。もう少しで雪景色が見えるから僕が唱える魔法を覚えて。カステクライン!防御、水泡の衣!」
アンジの頭にキラキラと水の泡が一度つき、何も見えなくなってしまった。俺もアンジの真似をしてみる。
「カステクライン!防御、水泡の衣!」
自分にかかっているのか分からなくても、そのまま進んで行った。
◆
ライトノ国にある一つの街について早速、ロゼ・エンディリアがいるかどうかを聞き取り調査をするつもりで来た。なのだがセブラが人気なのか大勢の人たちに囲まれ、ファンサービスを行なっているセブラ。
昨日の夜、話してくれた内容でセブラは千年前からここにいて、歳が止まっているのは歳を取らず二十四歳のまま。僕は永遠に十六歳の姿でこの世を彷徨うことになるんだ。
そう考えるとセブラが言っていたように、僕も名前を変更してここに留まろうか迷いが生じる。だけどもし、もしだよ。想心と来世で会えるなら会いたい気持ちが強い。
セブラが今任務中なんでとファンたちから離れ、すまんと手を合わせながらこっちに来て情報収集をすることにする。
「人気者だね」
「へへ。だって千年ちょっともここにいるわけないだろう。大体の奴は奪った魂で生まれ変わったからさ。俺の知り合いも全員奪った魂で行っちまった。まあただ一人、残ってるが眠りについている」
「なんで?ここは病気はないって教えてくれた」
「事情ってもんがあるんだよ。俺たちはここに幽閉されたことで、照秋は変わっちまった。戦を起こす随分前は自殺者や罪人も天の世界にいたんだよ。でも自殺者がその当初、増加してな」
千年前はどんな感じだったのか想像がつかないけれど、自ら死すということは今も変わらず何かがきっかけがあって自害をしたのだろう。
戦国時代の人たちも自殺をすれば獄の世界へと入っていただろうか。
セブラは歩きながらでも、普段とは違う寂しさの目をしながら綴ってくれた。
「神は怒り俺たちを獄の世界に幽閉して、親しかったやつとも離れ離れになっちまった。照秋は汀春と向き合おうとしたのに離れ離れにされたことで、神に怒り戦が終わったとしても、死屍を天の世界へ送るため永久に眠り続けてるってわけ」
そんなことがあったから照秋さんは今も怒りと憎しみが絶えずにいる。だけど僕は怒りとか憎しみなんて持てないよ。この魂は神様から母親に渡すようなもの。それを粗末にした僕たちは地獄で罰を受けるのが当たり前だと思ってしまった。
こうなることがわかっていたなら、最初から別々に作っといたほうがよかったのではないか。何が正しくて何が間違っているのかはまだ理解できないけど、汀春さんはもう会えないと確信して生まれ変わったとしか言いようがない。
セブラが住民の家を訪ねロゼ・エンディリアがここに来ていないか聞いているも、僕は照秋さんと汀春さんのことを考えてしまう。千年眠り続けている照秋さんが復活したら、どうするんだろうか。
「思穏?思穏聞いてるか?」
「あっごめん」
「初日だから疲れちまったか。宿で休もう。ありがとう、おっちゃん」
またおいでと行ってくれて、僕の異変に気づいたらしいセブラで宿に戻ろうとした。咄嗟にセブラの袖を掴み、どうしたとセブラが振り向く。
「セブラは照秋さんを起こすために僕をここに来させたの?」
セブラの表情は何かを隠しているような感じであっても、掴んでいる手を下ろされた。
「前にも言ったが、照秋は思穏を選んだのは間違いはない。ただ俺は昭明を覚まさせるために、思穏をここに来させたわけじゃない。任務のために動いただけだ」
嘘だと言いたかったよ。けれどセブラの瞳に映る化け物がそれ以上問うなと忠告されたような気分でそっかと相槌を打ち、ゼブラより先に宿へと入った。




