58話 ニンニンは忍び①
俺たちは一度、カミナリノ王国に戻り、ダンザ校長に報告後、瀬雷さんの団と一緒に忍者がいるという都に行くことになった。それにしてもダンザ校長、イッシェにつきっきりぶりがやばかったと、俺たちは唖然してしまったな。
鬱陶しくなったのか、王宮医師の人が出入り禁止命令を出し、ダンザ校長はかなり落ち込んでいた。確かに止めるほど意味があるのは確かで、見舞いに行った時、カステクラインがいつ壊れてもおかしくはなかった状況だったから、念のためってやつなんだろう。
「団長、大丈夫かな」
「母さんなら無事だと思います」
「心配ではあるよな。にしても忍者がいる都ってどんなところなんだろう」
「んー僕はあんまり知らないけど、瀬雷さんたちはよく忍者に会うんですか?」
尋ねてみると瀬雷さんたちは少し間が空くも、瀬雷さんたちがいきなり笑い出してしまった。なんでそんなに笑う必要があるんだと、俺たちはきょとんとしていると落ち着いた伊生さんが言う。
「行けばわかりますよ。想心くんたちが思っている忍者に会えると思う」
「獄の世界にも悪党の忍者はいましたわね」
「悪党の忍者ってどんな?」
「あら?お気づきじゃなかったのですの?葉黒は元々忍者の家系で、殿の使命で暗殺を行なっていたようですわ」
がたいのいい人でどこかの軍人なのかなとは思っていたけれど、そっち系の人だったんだ。
「それじゃあ戦国時代の人ってことは、汀春さんたちがいた時代にもいたってこと?」
「そこまでは聞いたことはないですわ。ただ葉黒がずっとグレーゾーンにいるのは何か意味がありますの」
「確かにリディーや玖朗って初代の人たちだよな。あんなこと言ってたけど、何か意味があるんじゃ」
俺が言うとみんなは言われてみればと考えていて、俺と思穏が選ばれた理由もそこに繋がっているとしたらどうだろうか。そうだった。思穏のじいちゃんばあちゃんがくれた照秋さんが記されている本を取り出す。
「照秋さんが記されているものだよね」
「うん。色々あったから読むの忘れてた」
千年前の話が読めると開くが、パタンと閉じた。
「想心?顔真っ赤だけど」
俺はついなんじゃこりゃあと貰った本を投げ捨て、あららとハウヴァが取りに行ってくれる。なんで中身がばあちゃんの水着姿なんだよ。
ハウヴァが戻ってくるも爆笑していて、こういう趣味だったのと馬鹿にされてしまう。雫もそれをみるが、雫はなぜか真剣に見ていた。
「これって自分が求めているものが写ってる。私にはお父さんとの思い出が見えるよ」
返してもらいそんなわけあるはずがないと、再度見てみるとばあちゃんの水着姿ではなくて違うものが見える。それは俺が一番知りたかったこと、両親の写真だった。
大丈夫とアンジに心配されるも平気だとめくっていく。もし生きていたら兄貴や芽森には会えなかったんだよな。んで肝心な千年前の話を知りたかったんだが、何度閉じて開いても千年前の話は出なかった。
「どうなってんだ…?」
「教科書のように呪文を唱えてみれば何かわかるかもしれない」
アンジが言うもこれは教科書じゃないから最初の言葉が浮かばない。どうすればいいんだと悩んでいると、雫が背表紙を見てこれじゃないと教えてくれる。背表紙に紅葉川家についてと記されていた。
「カステクライン!歴史、紅葉川家」
すると本が一瞬だけ紅葉の葉っぱに埋もれ、表紙が紅葉と川の模様が描かれている。ページを開くと照秋さんがしてきたことが記されていた。
照秋さんがなぜデステクライン使いの頂点に昇ったのかも記されている。その文面に龍桜家のことも記されていて、胸がざわめいた。
濡羽玖朗の妹である艿花さんを愛していたが、照秋さんは汀春さんと共に死亡。その原因が龍桜家が関わっている。しかし犯人と見られる人物は、こっちに来ても汀春に聞いても不明のままだが、あれは不審な転落をしたのは、俺も汀春もわかっていた。
「照秋さんと汀春さんは自殺ではなく他殺…」
「龍桜家ってあまり聞かない苗字だけど」
「僕も聞いたことないです」
考えたくないことだった。一瞬だけ艿花さんと芽森を重ねてしまい、これがもし本当ならば俺と兄貴が死んだ理由も納得がいっちまう。
異変に気づいたアンジが顔色悪いよと言っていて、アンジに本を託し少し眠ることにした。
ここは一体どこだと誰かん家の庭にいて、周囲を見渡しているとやあと声がかかる。その人物は紛れもなく汀春さんだった。
「汀春さん?」
「いやあまさかこの千年間、僕の魂が眠りについていただなんて衝撃すぎて驚いてはいる。ただそれを仕掛けたのはおそらく義理の兄、くーたんだと思うんだ」
「あの気になってたんですけど、なぜその呼び名なんですか?」
「生まれた時からくーたんがそばにいて、小さい頃よく呼んでた。大人になるにつれ、恥ずかしくなったんだよ。案の定、子犬のように目で訴えてくるから、くーたんってまた呼ぶようになったら、めちゃくちゃ甘やかしてくる。想心のようにね」
まだちゃんとくーたんと呼べてはいないが、いつもピンチの時に情報をくれたり、助けてくれている。
「まあそれは置いておいて。紅葉川家からあれをいただいたようだね」
「はい。汀春さんと照秋さんが自殺ではなく他殺だったと」
「僕も照秋も誰に殺されたのかはっきりはしてない。ただ艿花を苦しめていた龍桜家に暗示を掛けられ死したのではないかと考えてるんだ。僕と照秋はあの時、艿花を取り戻そうと計画を立ててたから」
「だとしたらなぜ照秋さんはデステクライン使いに?」
聞くと汀春さんは少し寂しいような目をしながら言われた。
「龍桜家の当主を殺し、照秋は罪人となってしまった。だけど実際は違ったんだよ。照秋は二度も暗示を掛けられてしまったと本人から聞いた」
聞いた瞬間、吐き気がきてしまって、庭にあった池に吐いてしまう。想像したくない映像が現れ、それがもしそうなってしまったら俺の心は破壊するかもしれない。
汀春さんが背中を摩ってくれて水をくれたから飲み干す。
「もし犯人がまだ天の世界、あるいは獄の世界にいるのであれば、覚悟は必要になってくる」
「…わかってます。俺がなぜ思穏と死ななければならなかったのか。さっきのでなんとなくわかりました。汀春さん、一ついいですか?」
「なんだい?」
「現世にいる芽森に何か起きた場合、芽森のそばにいてほしいんです。できないのは承知していますが、なんか胸のざわざわ感がとれなくて」
難しいこと言うねと汀春さんが困っていたとしても、芽森に何かが起きてしまった時点で、俺はきっと暴走どころじゃなくなるのは目に見えてる。
「できるかわからないけど、やってみるよ。なぜなら芽森ちゃんの魂は艿花の魂だったから」
感謝しますと頭を下げ汀春さんの手が乗っかると同時に目が覚めた。俺は横になっていてというかハウヴァの膝で寝ていてもびっくりとかはせず、ゆっくり体を起こす。
「もう大丈夫ですの?」
「あぁ。ありがとな」
お礼を伝えていたら雫がむすっとした顔でこちらを見ていて、俺はつい雫と目を逸らし体が少々熱かった。アンジはともかくなんで雫があんな表情をするんだよ。ハウヴァはくすくす笑っていて、揶揄うんじゃないとペシッと軽めに叩く。
「じゃんけんで負けたんですから」
「そんなんじゃないってば」
アンジは剣汰と楽しく会話をしてるから、俺も混ぜろと言おうとしたところ、馬車が横転してしまった。何があったと馬車から降りると、忍者っぽい格好をした人たちに囲まれている。しかも忍者の服がグレー色ってことは、デステクライン使いか。
「ハウヴァ殿、今すぐ戻るよう銀様からことづかっております。戻らなければ無理矢理でも」
「嫌ですわ。そもそもはいねはグレーゾーンの中。どちらにいても構わないという称号を得ておりますの。腹黒い銀様とこれ以上いたくはないとお伝えよろしくて?」
「そうですか。仕方ありません。デステクライン!闇、カメレオンの霧隠!」
忍者らしきデステクライン使いたちが、一斉に姿を消し、どこから出てくるとカステクラインを起動させる準備をする。無闇に動かないほうがいいよなと警戒を抱いていると、危ないと剣汰に言われ、剣汰が攻撃を交わした。
「ふふふ、君には我々が見えているのは当たり前。ならこれはどうかな」
何か剣汰にやるんじゃないかと剣汰を庇おうとした時のことだ。一瞬だったから何が起きたのかわからずにいて、グレーノ団数名が倒れ始める。
一体何が起きたんだと混乱していると、黄色い忍者の格好をした人が現れ、間に合ってよかったにんと言う人がいる。
「国王の名によりお前たちを捕らえよと受けたにん。逃げ場はないだにんよ。ふう、怪我はなかったにん?」
「助けていただきありがとうございます」
「怪我がなくてよかったにんよ。この周辺には仕掛けがあるから気をつけるにん。それより伊生」
伊生さんはぎこちない様子で、ゆっくり瀬雷さんの後ろに隠れようとするから、忍者は手裏剣で木に固定をした。
「隠れても無駄だにん。ハーフソウルである暗野伊生」
伊生さんと忍者を交代に見て、そして数秒後、俺たちは思わず大声を出してしまった。暗野伊雪に姉妹がいたとは知らなかったな。姉妹同士似てないから、全然気づかなかった。
「まだ此奴とつるんでいるにん?言ったはずだにんよ?まだハーフソウルでもあるから、気をつけろにんと。ブラックノ団副寮長の妹であり、しかも伊生はブラックノ団員。いつ裏切られてもおかしくはないにん!」
すると刺さっていた手裏剣が灰となって消えていき、伊生さんはいい加減にしてくださいと、忍者に言い放つ。
「確かに私は姉と一緒に自ら自害をしました。ですが私はその時セブラ先生の教訓を受け、ハーフソウルまでいけたんです。何度言ったらわかってくれるんですか?瀬雷さんたちはすでに私のこと受け入れてくれたんですよ」
「それとこれとは別だにん!何度言ったらぁ」
「そこまでだ、二人とも。想心たちが引いてることぐらいわかってやれ」
いや、引いているのではなく、俺たちはどうしようもなく焦りを感じていた。なぜならあの伊雪の妹だぞ。セブラから教訓を受けたとしても、あの態度を生でみるとそういう一面も伊生さんはいずれ出すんじゃないかという恐れがある。
瀬雷さんの言葉で納得したのか仲直りをするというか、お互いごめんと謝ったはいいが、ばちばちし始めてしまう二人で、瀬雷さんはため息を出していた。
行くよと瀬雷さんに言われてしまい、横転してしまった馬車を魔法で元に戻し、馬はロボットだから大丈夫なんだそうだ。瀬雷さんを挟んで座る二人で、俺たちは少々気まずさがあった。
ただハウヴァは鼻歌を歌っていて、やめろと合図を送ってみるも、終わらそうとはしない。早く忍者の都に着いてくれと思いながら、俺たちはいつの間にか寝ていた。
◆
姉が災害で亡くなった日、妾は白金銀に助けられたんや。あの時、姉が瓦礫の影響で挟まれて、姉は意識不明やった。それでも当初はまだ幼かったこともあり、まだ崩れる恐れがあるとわからず、姉を揺さぶってしまったんや。
その影響でなのか二度目の崩れが発生し、妾も下敷きになるのが目に見えておった。そやけど妾を助けた白金銀の顔は、はっきり覚えとる。白金銀の表情はいつも姉を揶揄っていた笑顔ではなく、失いたくはなかった絶望感。そこで知ったんや。
白金銀は姉のことが大好きだったんやと。きっとニュースを見て駆けつけてくれたのに、助けられなかった悔いがとても強かったんや。少しして妾の両親や大人たちが駆けつけてくれ、妾はねえねがと指を指していたな。母はそれを知り、姉の名を叫んでおった。しかし再び災害が起きると判断し、救出は遅れたことで姉は死亡確定。
葬式の時、大人たちは姉がなぜ待っていてくれなかったのだろうかと議論を立てていたんや。言えへんかった。駄々を捏ねてしまったから、姉が亡くなったんやと。
ずっと抱えたまま過ごして妾が高校生になった時やった。スーツ姿の白金銀と再会したんや。そんで白金銀は妾に告白してきた時は、少々戸惑ってしもうた。
「くるめ、久しぶり。気持ちが抑えられなくて言う。くるめのことが好きだ」
「気持ちは嬉しいんやけど、その妾は好きな子がおって」
「頼む、くるめしかいないんだよ」
両肩を掴みそう言う白金銀で周りにいる同じ学校の生徒がイケメンとひそひそと聞こえておったな。そやけど白金銀の気持ちに応えられず、そっかとぎこちない笑顔で白金銀は帰ったんや。
そして妾が就職して入社した時に、再び白金銀と再会することになるとは思いもよらなかったんや。偶然なのか必然なのか、白金銀は営業部のエースで、妾の指導役になった時は、びっくりしたんや。そんで次第に仲ようなって、妾は白金銀と結婚。
最初は幸せな家庭が続いていたんやけど、剣汰がまだ妾のお腹にいる時に言われたんや。
「ずっと家にいてほしい」
「なんでや?この子のためにも、もっとお金は必要になってくるはずや」
金銭関係で揉めるようになって、それから地獄のようなことが起きてしもうた。育休で仕事を休んでいた時に、郵便物を見たんや。それは妾が勤務している会社で、なぜか退職が完了した通知やった。
なんでやと会社に問い合わせようとした時に、仕事に行っているはずの銀に襲われてしまったんや。
目を覚ました場所は山奥にある一軒家におることがわかって、剣汰を抱っこし外へ出ようと玄関のドアノブをひねるも、びくともせえへんかった。完全に監禁されてしもうて、白金銀の帰りを待つことにしたんや。
夜、剣汰が寝ておる時に、白金銀が戻って来よって、どう言うことやと怒鳴った。
「どう言うことや!」
「剣汰が起きる」
「なんで、なんでや」
「くるめは自分の物だ。自分がいながらも男にちやほやしている姿を見た時、腹が立った。なら一層のこと、専業主婦になってもらったほうがいいと確信した。それなのに諦めがつかないから、こうしているだけだ」
妾は道具じゃないと言いたくても、白金銀の瞳があの時と全く同じ瞳をしておった。失いたくない気持ち、そして妾への復讐があの時から始まっていたんやと。
それからは白金銀は在宅勤務で仕事をするようになり、妾はずっと白金銀に監視されながら過ごすようになったんや。ほんまにずっと閉じ込められて生活なんかなと思っていたんやけど、白金銀は普通に剣汰にやりたいことをさせ、幼稚園や小学校に行かせてあげていたんや。
行事がある時は行かせてもらってたんやけど、盾乃は違ったんや。盾乃は妾と同様に家から出ることは禁じられ、勉強は妾が教えてあげていたんや。
そやけど、盾乃は外に出たいと妾に言っておって、剣汰も違和感を感じておったんやろう。少しでもえぇからと剣汰はやや遠い遊園地に行きたいと白金銀に言い、行ってもらって、なんとか妾は久しぶりの外に出たんや。しばらくは帰ってこないんやろうと、盾乃と山を下山していた時やった。なぜか白金銀の車が戻って来よって、白金銀に捕まってしもうたんや。
そこからは逃げないように枷をつけられ、剣汰と盾乃が殺され、そしてもう必要はないと妾を殺した。
もう二度と剣汰と盾乃に会えへんのかなと思ったんやけど、天の世界に着いた時、お母さんと走ってくる剣汰と盾乃の姿を見て、妾は白金銀から解放されたと思えたんや。
現在……
獄の世界かあるいは天の世界なのか、わからない場所に妾はいたんや。まるで殺された場所に似たような家ににとる。カステクラインは白金銀が持っとるんやろう。拘束魔法がかけられておるな。
あの時、剣汰がくれた剣には無魂にする魔力を秘めておったんや。あれはおそらく処分されておりそうや。
階段を登る足音が聞こえ、扉のほうを向くと白金銀が入ってきよる。妾が来たことで上機嫌らしい白金銀は妾の髪に触れよった。
「死んでも自分のところに来るとはな。剣汰たちの苗字をなぜ変えた?探すのに一苦労した」
「親の権利で苗字を変えることができるんや。それくらいわかっとるやろ?」
「親の権利か。まあいい。団長であるお前は、これくらい容易く解除できるだろ?なぜ解かない?」
「けじめや。腹黒い銀の心を浄化しに来たんやで。妾たちを苦しめたことは許せへん。そやけど妾は」
銀の唇が触れ、これ以上言うなと言うように封じられ、銀の魔法を解除し銀の胸を押す。
「銀、これ以上やったらどうなるかわかるやろ?それともなんや?イッシェのカステクラインを壊して、何がしたいんや?好きやったんやろ?ねえねのことが。なのになんでや……」
銀は黙ったまま何も言わへんと思ったら、場所が切り替わり、妾はドン引きしてしもうた。姉が現世にいた頃の写真や、こっちの世界の写真が壁中に張り付いておる。
「自分は今でも壊したいぐらいイッシェが愛おしくてたまらない。だから」
気味が悪い笑顔を作り、首に下げている人形がイッシェだけれど、人形の雰囲気が違ったんや。
「イッシェの人形を壊し、そして自分自身で縫った。もう時期理想のイッシェが完成し迎えるんだ。くるめ、お前は特等席で見せてやる」
なんとかして人形を奪おうとやろうとしても、銀の闇が強うて、再び眠ることになってしもうた。
◆
蓜島さんに言われたことでまだ整理がついていけてなかった。まさか僕もハーフソウルになっているだなんて信じられない。ただカステクライン使いになれば、想心に会えるんだよね。
セブラはどんな気持ちでいるんだろうと歩いていたら、セブラとセブラが愛していた方が楽しそうに話していた。セブラが気づいたことで、その方も微笑む。
「玖朗さん大丈夫なの?」
「えぇ。息子は大丈夫。聞いてたの。あなたが照秋の後継者に選ばれたこと。そして汀春の魂を持つ子も、天の世界にいる。再び起きる前提として、あなたに話して置かなければならない。いいかしら?」
「はい」
「んじゃ、とにかく誰にも知らない秘密基地へ行くか」
秘密基地と疑問に抱いているとセブラが手を握り、着いた場所はどこかの部屋だった。ここは一体と思いながらもソファーに座り、二人は向かいのソファーに座って話す。
「旧名は天龍寺みより、そして龍桜家に嫁いだことで龍桜咲となったの。嫁いだ時には違和感はなかったけれど、長男の玖朗が生まれてすぐよ。夫が娘がよかったと言われ、不審に思ってたの」
「不審に抱いたことって?」
「本来ならば受け継ぐ子として息子がほしいと思ってた。そして気がついたの。龍桜家には龍神がついていて、娘を差し出す計画。それを知って私は玖朗を置いて逃げた時に出会ったのがセブラ」
「みよりと会った時は今でも忘れられない。天女が現れて心が奪われたんだから」
みよりさんはくすくす笑っていて、セブラは余計に頬を赤くしていた。二人は手を繋ぎ、みよりさんが続けて言った。
「セブラと出会って、置いてきちゃった玖朗を連れて一緒に、セブラと過ごすつもりだった。けどそれは結局できなかったの」
「どうして?」
「俺が自殺したからだよ。ただなんで自殺したのかは正直言うとわかってないところでさ」
「つまりセブラも誰かに殺されたんじゃないの?」
かもなとセブラは言っていて、みよりさんは仮説を一つ立てた。
「夫かそれとも夫のお父様が私とセブラの関係を知って、セブラを操り自殺に追い込んだのではないかと考えてるの。龍桜家に嫁いだ時に、何度か違和感を感じるようになったから」
「その頃は証拠が見つからなくて、誰が犯人なのか特定はできなかった。龍桜家は必ず天の世界へと招かれている」
「私も艿花を産んでいつの間にかここにいたから、私がどんな死に方をしたのかはっきりはしてないの」
二人の不審な死が存在していたということは、龍桜家に一体何が起きているんだろう。そしてもう一つ聞かされることに。
「想心とそれから颯楽の妹、芽森が龍桜家に囚われてしまった。その影響で玖朗が暴れ、あの状況になったってことなんだ」
「兄妹想いの玖朗さんだからってことですよね?」
「そうね。玖朗は異父兄弟である汀春のことが大好きだった。もちろん艿花からも溺愛されてたって教えてもらってたの」
「だから現世にいる芽森のことも心配で、たまに現世に行ってるんだよ」
芽森ちゃんが囚われているということは、艿花さんの生まれ変わりが芽森ちゃんってことになる。もっと僕も階級を上げ、芽森ちゃんを救える力を身につけたい。
「セブラ、僕、もっと力つけて助けに行きたい」
「助けられるかわからないが、体力はつけといたほうがいいな。今後、何かが起きるのは確実だからな。今まで以上な災害があっちで起きる可能性がある」
「そうね。私が逃げ出したことで、シロノ国は徹底的に国を捜索するかもしれない」
「あの、みよりさんがシロノ団に追われるのはなんですか?」
「それはね」




