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シゴノセカイ《改訂版》  作者: 福乃 吹風
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57話 アズマ塔②

 雫が試験真っ只中、俺たちは學門さんの家で、無事に合格しますようにと祈っていた。あれからイッシェから連絡がないから、心配と不安がある。団長に一応伝えたけれど来てくれるかわからないし、雫を待つしかなかった。だから俺と剣汰は次の階級を上げるため、アンジに教わっている。


「想心は今回、氷と炎の試験だから実技では水が出るはず。それをどう対処していくかが肝心。それで剣汰くんの階級っていくつなんだっけ?把握してなかったなと思って」

「一応、三段魔導士です」

 

 俺とアンジは数秒固まりそして思わず叫んでしまったことで、ひょっこり學門さんが顔を出した。剣汰が照れくさそうに、俺たちに言うんだ。


「想心と会ってから、役に立ちたくて実は階級上げしてたんです。魔法は不得意でもなんとか階級上げはできました」


 俺より上に言っている剣汰であり、確か一番最初に会った時は、五段魔導士って言ってたもんな。成長してる姿に誇らしかった。


「だからです。階級上げをしたので、父さんと向き合えるんじゃないかって。久しぶりに会った時は、まだ恐怖があったとしても、想心やアンちゃん。雫がいるから大丈夫って」

「そうかそうか。よく頑張ったな」


 わしゃわしゃと剣汰の頭を撫でてやり、剣汰は褒められたことでいい笑顔を出している。てことはもうすぐでアンジと並ぶんだよな。凄えことじゃねえかと戯れていたら、まだ終わっていないはずなのに雫が戻ってくる。

 下を向いているってことは落ちちゃったのかと、雫の言葉を待っていると、パッと笑顔になってVサインを見せる。俺たちはよっしゃとハイタッチして、學門さんがおめでとうと来てくれた。


「よくできたね」

「はい。學門さんの教えがうまかったので、階級上げることができました。ありがとうございます」

「いいんだよ。準備も整っているから、早速行こうか」


 はいっと學門さんが作ったロボットに乗って、出発することに。


「雫、ダンザ校長なんか言ってた?」

「雫ならやれると信じてたでって言ってたよ。これでテンファにも報告ができる」

「だな。あっ學門さん。白い向日葵が咲いている場所ってわかりますか?団員が欲しがってて」

「そう言えば最近、白い向日葵見かけなくなった。以前は道端に咲いていることがあって、採取しやすかったんだよ」


 手土産に持っていけると思っていたけれど、簡単に見つけられなくなっちゃったのは残念だったな。アズマ塔に着くまでまだ多少あるらしく、アンジの個人授業を受けていたら、戦闘準備をと學門さんに言われる。


「どうしたんですか?」

「目の前にグレーのローブを着た人がいる。あれは誰だろう」


 學門さんに調べてもらうとイッシェたちと会う前に、白金銀と遭遇しちまった。白金銀の死屍デッドルタに囲まれてしまい、出たほうがいいかもしれない。

 だが學門さんは操縦してなんとビームを出し、周囲が光ったことで死屍デッドルタは消える。これだったら前に進めるかもしれない。けれど白金銀はそのまま立っていた。


「父さん…」

「剣汰無理しなくていいんだぞ」

「平気。學門さん、あの人僕の父親なので、止めておきます。その間にイッシェさんを救ってください」

「君を置いていけるわけない。もう一発撃てば」


 おい、来るぞと叫んだ瞬間に真っ二つにロボットが裂かれ、気づいていなかったら俺たちはやられていたかもしれない。せっかくいけると思っていたが、簡単に行かせてはくれないようだ。

 僕のロボットがと落ち込んでいる學門さんであり、ここで白金銀を止めなければならない。濡羽玖朗と約束した覚えはないが、芽森を助けてくれるって言うならやるしかなさそうだな。


「剣汰、ようやく会えた。盾乃は?盾乃は一緒じゃない?」

「父さんに会わせるつもりはありません。父さんがしてきたことは一ミリたりとも許したくはない。母さんと盾乃に何をしたのか」

「家族は自分の所有物だ。どう扱うかは主人にある。そう教育させていただろう?」

「自由を与えなかった父さんは間違ってる!カステクライン!錬、象の鉄鋼水!」


 象が現れ鼻から鉄鋼水を放射させ、白金銀は錬魔導士だから効果がないんじゃと思いきや、次の魔法を唱えた。


「カステクライン!炎、虎の閃火!」



 炎を纏う虎も出現し、白金銀のほうへ突進して煌びやかな炎が舞う。だが雨が降っていることで一瞬で消え、白金銀は笑っていた。


「まさか自分に歯向かうようになるだなんて、思ってもみなかった。残念だが、自分は無傷だ。それじゃあ反撃と行こうか」


 鋼タイプの死屍デッドルタが数体出現し、俺たちは死屍デッドルタを倒し始めていく。


「カステクライン!水、海月の爆弾!」

「カステクライン!水、イルカの超音波!」

「カステクライン!水、魚の大津波!」


 俺たちは水魔導士だから、鋼タイプに効果的だから、すぐ鋼タイプの死屍デッドルタが消滅する。剣汰のサポートしようとした時だった。


「カステクライン!水、海神の槍!」


 団長の声が聞こえどこからだと周囲を見渡していたら、白金銀の目の前に現れる。来てくれたんだと海神が槍を振り回して白金銀をやろうとも交わされてしまった。


「やっと会いに来てくれた。嬉しく思うよ」

「会いとうなかった。妾はよかった。そやけど剣汰と盾乃の命まで奪う必要なかったはずや!」

「自分の言うことを聞かなかった罰だ。それが何が悪いという?自分はくるめがやった行為を、秘密にしてやったのに、仇で返すつもりか?」

「銀の正体をあの時は知らへんかったことが悔しいや!妾はずっとっ」


 団長が犯したってどう言うことだと、混乱があるもこのままいけば団長が危ないと感じる。


「莱愛に伝えてやったよ。そしたらかなり驚いていた。あの顔は思い出すだけで笑えてくる」


 団長よせと体が勝手に動くも、団長は叫びながら剣汰が作ったであろう短剣で、白金銀を刺そうとした。が失敗に終わり白金銀の闇に呑み込まれてしまう。

 団長と叫ぶも返事がなく闇の霧がもくもくとこっちに来ようとして、このまま進めば俺たちも巻き込まれる可能性があった。ちくしょうと俺は無意識にあの魔法を唱える。


「カステクライン!水龍の天泣!」


 この魔法はまだ制御できてないからあまり使いたくなかったけど、団長が闇落ちしたら青の団はどうなっちまうんだよ。お願いだと水龍が現れ、目から大きな雫を垂らし闇があった部分に落ちるとキラキラと闇が消える。しかし白金銀と団長の姿はなく、俺はその場で倒れ込んだ。



 激しい雨に雷が鳴り止まなくて、相当危険度が高まっていることがわかってしもうた。くるめちゃんが現れたのはわかっとるけど、くるめちゃんは留学生ではないから、確認が取れへん。ここでカステクラインからデステクラインになってしもうたら大変なことが起きるさかい。なんとかせんとならへんなと雷の様子具合を見ておったら、哉一が来よる。


「ダンザ校長、アズマ塔に行く許可を出してもらいたい。くるめを失うわけには」

「ほんまにどいつもこいつも言うこと聞かへん子ばかりで、呆れてしもうや。わかったさかい。ただし、白金銀を見つけ次第、すぐ無魂にせえ」

「承知しています」


 哉一はわいに一礼して想心たちを追い、くるめちゃんが闇落ちしないことを願うしかない。イッシェのカステクラインはなんとかまだ壊れておらへんのは、近くにハーフソウルの子がおるからやろう。

 

「陛下!」

「校長でえぇって何度言ったらわかるんや。まあえぇ、それでどうやった?」

「現世で大きな災害が起きてしまったようです!」


 あの阿呆やりよったんかとつい空を見てしもうた。濡羽玖朗がずっとおるんのは、獄との王会議でわかっておったんやけど、派手にやりすぎたようやな。


「濡羽玖朗の安否は?」

「大きな傷を負った模様でしばらくは療養期間となるかもしれません」

「…なるほどやな。ちいとやばいかもしれへん。そのこと想心が知ってしもうたら、おそらくグレーゾーンから出てしまうかもしれへん。早急に、こちらにも医師を派遣させる準備を頼むわ」


 はっと左大臣は手続きをしに行ってもらい、もしやするとこれは濡羽玖朗が仕掛けた罠かもしれへんな。芽森を助けられなかったことと、銀の闇を吸収させる作戦かもしれへん。

 想心はファウを助けたと思っているかもしれへんけど、あれはちゃうことを伝えておくべきやったかもな。ファウの闇を吸収してしもうたことで、グレーゾーンにおるんや。想心、やるでないでとわいは、これから起きようとしている準備をしに行ったんや。



 想兄、想兄助けてと芽森の声でガバッと起きると、大丈夫とアンジが俺の顔色を見ていた。ここは一体どこだと建物の中にいるのは確かだ。


「悪い。イッシェとハウヴァ見つかったか?」

「うん。本当はすぐにでもカミナリノ王国に戻りたかったんだけど、ハウヴァがどうしてもって言うから、アズマ塔にいる。イッシェは早急に治療が必要な状況だったから、學門さんと一緒にカミナリノ王国に戻ったよ」

「そっか。んで肝心のハウヴァはどこ行ったんだ?」


 アンジに尋ねると違う部屋から大笑いする声がして、アンジがあはははと苦笑いしながら扉を開けてくれた。そこにいたのはなんと瀬雷さんと伊生さんもいらっしゃって、雫たちはお腹を押さえながら笑っている。

 なぜそんなに笑う必要があるんだと思いきや、後ろを向いていた瀬雷さんの顔に落書きされていて、俺はつい笑ってしまった。


「想心くん、目を覚ましたようだね。気分はどうだい?」

「もう大丈夫です。なぜこちらに?」

「らいは実は言うとイッシェの幼馴染なんだ。それなのにらいは何もできなかった。くるめが苦しんでる時期、芸能活動をしていて、あまりそばにいられなかったんだよ」

「そうだったんですか。じゃあ白金銀のことも?」


 うんと瀬雷さんは言っていてなんとかして早くこの件を終わらせたい気持ちが強い。白金銀が行く場所ってどこだと考えているとアンジのカステクラインがくるくると回り始める。


「誰だろう?カステクライン!連絡、氷の小鳥!」


 アンジのカステクラインから氷の小鳥が現れ、アンジの周りを一周しアンジの手のひらに乗った。


『アンジ、そこに剣汰はいるか?』

「います」

『剣汰は無事のようだな。たった今グレーノ団員数名がミズノ王国に攻め、全員確保した。盾乃を奪おうとしていたようだが、熊が守ってくれているから安心しろ』


 熊なんかいたっけと思い返すとミケだとすぐにわかり、あだ名が熊になるとはねえ。


『それから妙なことを言っていた。白金銀は忍者だと。どう言う意味なのかは不明だが、戦国時代には忍者がいたのは当然だから、いるのもおかしくはない。カミナリノ国にも忍者が住んでいる都があるから行ってみるといい』

「ありがとうございます」

『検討を祈っている』


 リディーから情報共有してもらったけれど、団長のこと伝えなくてよかったんだろうか。


「団長じゃなく僕にかけて来たのは意味があると思う。ハウヴァ、想心も起きたし本題に入ってもいいかな?」

「なぜいつもあんな格好をしていたのか意味がありますの。あれは銀様のご趣味とかではなくて、獄の世界では罪人同士愛してはいけないからですわ」

「そんな決まりがあんのかよ」

「罪を犯した者たちはペナルティがありますのよ。罪の重さによって異なりますわ。銀様のペナルティは先ほども仰った通り、罪人同士で愛し合わないこと。家族とちゃんと向き合えばペナルティは解消されますの」


 納得したいが白金銀は反省どころか再び罪を重くしているんじゃないかと感じてしまう。


「すでに決定事項で、銀様を無魂にしてもらう必要がありますわ。協力してくれますわよね?」

「ハウヴァはそれでいいのかよ」

「…寂しい気持ちはありますの。はいねにとって銀様は憧れの人でしたわ」


 剣汰も少し落ち込んでいて父親と向き合うと決意したのに、無魂にされたらもう二度と向き合うことができなくなってしまうんだよな。なんとか白金銀を納得できればいいと感じた。



 グレーノ王国ではまだ暴走している死屍デッドルタがいて、その対処をしている。セブラはまだ戻って来ないけれど、僕の心にはもやもやがあった。

 なぜ玖朗さんが現世で暴れたのか。それがすごく引っかかっていて、僕たちには言えない事情があるのはわかってる。もし仮に想心の妹である芽森ちゃんに危害を加えていたら、想心はきっと大暴れしてそうだなと感じてしまった。


「思穏先輩!」


 暴走している死屍デッドルタを倒していたら、そこになぜか行方知らずだった優くんが現れる。


「優くん!?一体どこに行ってたの?僕たち心配してて」

「すみません。知らない奴らに絡まれて、失神してました。それより濡羽団長のことお聞きして」

「僕も正直驚いてるんだ。最強である玖朗さんに傷を負わせる人は誰一人いないんじゃないかって思ってたから」

「一体何が起きたんですかね」


 知りたいけどあの場にいた伊雪さんに聞いてもはぐらかしそうだし、副団長の育さんも誤魔化しそうだったから聞くに聞けなかった。

 グレーノ城に到着し報告へとグレイティア女王陛下の元へ行こうとしたらやけに城内が騒がしい。近くにいたグレーノ生に聞いてみると、女王陛下が行方不明になったそうだ。女王陛下が行方不明になるだなんて思いもよらず、女王陛下が行きそうな場所ってどこだろうか。


 考えていたらルルの王子様ーと呼んでいるルルラちゃんと、グレーノ副団長である蓜島葉黒さんがこっちにくる。ルルラちゃんは僕に抱きついて、頭を撫でてあげた。


「思穏、少し話がある。いいか?」

「はい。ルルラちゃん、優お兄ちゃんと待っててね」


 うんとルルラちゃんは優くんの手を引っ張って行ってもらい、僕は蓜島さんの後をついていく。話ってなんだろうかと蓜島さんが使用している部屋へと入った瞬間、笑ってはいけないんだろうけどつい笑ってしまった。なぜかというと可愛いシェパードのぬいぐるみが飾られていたからだ。

 想像していた人ではなかったけれど、よくよく見たら同じぬいぐるみだと気づく。


「あのこのぬいぐるみたちは?」

「昔飼っていたシェパードに似ていたからつい購入してしまう」

「そうだったんですね」


 座れと言われたからソファーに腰を下ろし、蓜島さんにあることを言われた。


「想心が今、グレーゾーンの位置に立っている」


 数秒固まってしまうほど驚きがあって、想心がグレーゾーンの位置に立っているだなんて信じたくない。なんで、どうして想心がグレーゾーンに入ってしまった現況は何。


「想心がグレーゾーンの位置に入った現況は、ホノオノ国で起きたこと」

「絹鬼団長とかが想心に何かをしたんですか?」

「いや、そうじゃない。闇落ちしてしまった奴を救うために、ある能力を使った影響でグレーゾーンに入った」


 グレーゾーンとは、半分が光でもう半分が闇を抱えている者たち。つまり光が強ければカステクライン使いになれるチャンスがあり、その一方闇が強ければデステクライン使いへとなると、セブラから教わってる。


「その能力ってどういう能力なんですか?」

「人の想いを感じ取れる力、そしてその想いを和らげることもできる」

「それっていいことなんじゃ」

「表向きはそうかもしれない。だが闇落ちした者と共鳴した場合、代償を払うことになる。助ける代わりに自ら犠牲になると」


 つまり闇落ちした人を救った時点で、想心の心は穢れていくってこと。そうならないためには、二つ目のその想いを和らげることをしなければ大丈夫ってことだよね。


「想心には言ったんですか?」

「グレーゾーンの意味は伝えたが、想心の能力については話してはいない。自ら考えてもらう必要があるからな」


 確かにいろんなことを教わってはいるけれど、考える時も必要になる。ただ想心はあまり考えず、すぐ行動に移ってしまうから、そこを直せば戻っていくかもしれない。それと気になっていたことが一つあった。


「あの、なぜ僕にこんな大事なことを話してくれるんですか?」

「思穏もグレーゾーンに入ったからだ」

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