53話 ハツコウ発電所③
莉穏さんと一緒にハツコウ発電所を歩いていたら、ノーマルの死屍が複数現れ、カステクラインを起動させる。
「カステクライン!水、カワウソの牙!」
汀と複数のカワウソが出てきて、死屍に攻撃をし、アンジの氷魔法や雫の植物魔法、剣汰の錬魔法や莉穏さんの雷魔法でこの場にいた死屍は消えていく。
さっき莉穏さんが倒してくれたデッドシンマは鋼タイプのようで、水魔道士にとっちゃめちゃくちゃ相性がいいんだと。また遭遇した場合は焦らず、水魔法を唱えれば故障するように消えてくれるらしい。
「見た感じノーマルの死屍が多いよね」
「ですね。てっきり父さんが使用している錬タイプかと」
「え?剣汰くんって錬魔導士なの?」
「はい。僕と妹の盾乃は他の魔法はあまり覚えられなくて、なぜか錬魔法だけすんなり覚えられたんです」
莉穏さんは衝撃すぎると結構驚かれていて、そういや教科書に載っていない魔法だったなと思い返す。
「父譲りなのかは不明なんですけど、母さんの水魔導士よりなぜかしっくりしていたので、錬魔法を覚えて鍛治職人になったんです」
「わお。錬魔導士は植物魔導士より、少ないって聞くよ。今では十人いるかわからないぐらいって聞くし」
だから教科書に載っていないんだなと歩いていたら、何かを踏んだ音がした。恐る恐る下を向くと黄色いマスを踏んでしまったらしく、俺たちが立っているマスがパカッと開きバラバラに落とされてしまう。
アンジたちすまんと心の中で叫びながら落下した場所へと到着した。ガラクタがクッション代わりになってくれて、怪我はしなくて済んだ。
アンジたちは別の部屋についたんだろうかと、念のためアンジたちを呼んでみるも返事がない。汀がいるから一人ではないから少しほっとしている部分がある。
それにしてもここは一体なんの部屋だとガラクタの山から降りて周囲を見渡す。ゴミ捨て場ではないようで、機械が動いているから、何か製造しているのか。とにかくアンジたちと合流しなくてはと歩こうとしたら、奥の暗闇から赤い光が二つ見える。
なんか嫌な予感と汀を抱っこして走った瞬間、赤いのが増え俺目掛けて走ってきた。イッシェのロボットじゃないと、部屋から出ようともロックがかかっているようで、出るに出られない。
ロボットたちに追いつかれてしまい、逃げるにはと周りを見渡すも何もなかった。ここで箒を取り出しても構わないが、攻撃され燃やされたら嫌だな。ここは降参して捕まるしかないか。そう思った時だった。
「デステクライン!闇、雪狐の瞳!」
雪狐が俺の前に現れ、ロボットが雪狐の瞳を見たからなのか凍る。誰がと思っているとバックハグが来て、耳元で俺の名を呼ぶ声で咄嗟に離れた。
ハウヴァはふふっと笑っていて、汀が唸り始める。
「ハウヴァ」
「ふふっ。あのロボットたちを止めて差し上げたのに」
「まさか剣汰を奪おうとかしてねえだろうな?」
するとハウヴァは三つの人形を持っていて、剣汰と盾乃、それから団長の人形を持っていた。早く回収しないと団長たちが危ないと、カステクラインを起動させようとしたら、ハウヴァが俺の手をとりその人形を託される。
余計にわからないとハウヴァの顔を見たら、何かを察ししたのか、俺の手を握って物陰に隠れた。
なんで隠れるんだよとハウヴァが見ている方を見ていると、白金銀が立っていて思わず出ようとしたら止められる。そういや白金銀、団服ではなく燕尾服を着ていた。白金銀はいないと判断したのかすぐ消えてしまう。
「ハウヴァ…?」
「銀様が常に持っているその人形を探していると思いますわ」
「どうして俺にくれるんだよ。俺たち敵同士だろ?」
「はいねはグレーノ団であり、グレーゾーンの中にいる者。とにかくアンジたちと合流したいところだけれど、葉黒に言われてますわよね?ハツコウ発電所の謎を明かせと」
これかとポケットにしまっていたカードを取り出し、周囲を警戒しながら教えてくれる。
「はいねがここに現れていたのは訳がありますの。見てはいけないものをここで発見してしまいましたわ。言葉で説明するより見てもらったほうが早いかもしれませんの。こっちですわ」
ハウヴァはフードを深く被りついて行くことになったが、実際についてっていいのかわからない。それでも汀はなぜかハウヴァのほうに飛び乗ってしまったことでついて行くしかなかった。
ロックがかかっていた場所はハウヴァにやってもらい、通路を歩く。
「なあ死屍が出現していた理由なんだけど」
「誰にも近寄らせないためですわ。あれを銀様が見てしまったら、銀様たちは銀様たちではなくなってしまいますの」
白金銀と関係しているのかと疑問だらけでありながらも進んでロックがかかった部屋の前に到着した。ハウヴァは暗証番号を入れ、その中へと入ると思いがけない部屋だ。
それは円形状の水槽がいくつも存在しそこに入っているのは同じ人がたくさんいる。
「この人って…?」
「想心が持つ青藍の葉桜の持ち主、汀春ですの」
その言葉で体がふらつき変な汗を掻いてしまう。ハウヴァがハンカチを貸してくれてそれで汗を拭った。ここはイッシェの所有地だよな。まさかこれを起こして獄の世界を攻めようとか考えてないよな。
「おそらくカードの意味は、なぜ汀春が存在するのか調査してほしいということだと思いますの」
「…俺が役に立たなければここにいる汀春を起こすってことなのか」
「わかりませんわ。ただ一つ言えるとしたら、誰がこれを作ったのか気になりますわね」
一つの水槽に手をつけるハウヴァで、遠くからアンジたちの声が聞こえる。汀は汀春が目の前にいたとしても動こうとしないのは、汀春ではないからと認識しているからだろう。
これを校長に話せばなんというのか想像がついてしまいそうで怖い。ダンザ校長はこのことを知っていて、俺たちを行かせたのかも不明だ。
そしたら誰かの足音が聞こえて俺たちは再び身を隠す。まさか白金銀が現れたのかと確認してみると、えっと言葉が出てしまって気がつかれてしまった。
「想心、そこで何をしておるんじゃ?」
「イッシェこそ何してるんだよ。これ全部、イッシェが作ったのか?」
「違うぞ。妾がこの発電所もらった時からあったのじゃ。ダンザに聞いたのじゃが、知らないと言っておったぞ。それより想心の隣におるのって」
やらかしたと誤魔化そうとしたらハウヴァが俺の腕を掴んで、デートしてますのとふざけていう。おいっと突っ込んでいたら邪魔して悪かったのうとイッシェが退散しようとするから待ったとストップをかけた。
「なんで警戒しないんだよ」
「む?じゃってハウヴァはハーフソウルじゃから、様子見じゃよ。もし想心に何かをしようとしておるんじゃったら、ここで止めるのじゃ。それに汀がハウヴァに懐いておるから大丈夫なんじゃろ?」
「ですって。このままデートの続きを」
ハウヴァが言おうとしたらアンジたちが到着し、アンジたちがカステクラインを起動させる準備をしようとも、水槽の中にいる人物を見て固まってしまう。
「汀春…さん?え?何がどうなって…」
「ここは初めて来たけど、イッシェ、これはどういうことなの?」
「知らぬ。ダンザに聞いても知らぬと言っておったから、誰の所有物なのかもしらん。異常がないかたまに来る程度じゃ」
アンジたちはまだ困惑状態となっていて、ダンザ校長も知らないということは、やはり内密に誰かが作っていたのは間違いはない。
ここでふと思い浮かぶのは思穏のじいちゃんばあちゃん、それから雫の父ちゃんであるシャン・エンディリアが仕上げたとしか言いようがなかった。
「整理をつけたいけど、想心からそろそろ離れてくれないかな?」
「嫌ですわ。はいねは想心から」
体全身が震えるほどで後ろに白金銀がいると警告しているような感覚だ。ハウヴァは俺から離れようとしなくて、汀が唸っていたとしても、白金銀の恐怖に押し潰されたのかアンジのところへと行く。
「自分の所有物に手を出すとはな。ハウヴァ、今すぐ戻れ」
「っ嫌ですわ!デステクっ」
「ハウヴァ!」
白金銀がハウヴァを気絶させ、ハウヴァを支えようとしたら、なぜか濡羽玖朗に担がれる羽目になった。
「可愛い弟に手を出すなと言ったはずだ」
「自分の所有物に手を出すからだ。それともここを知られるのが怖かったのか?」
「こんなものは知らない。想心、今すぐここから去れ。銀はもう手遅れだ。急げ!」
「だけどハウヴァが」
玖朗は大丈夫と言い残し、玖朗のデステクラインによってアンジの元へといつの間にか到着している。本当に平気なのかわからずとも、剣汰は昔のことを思い出してしまったのかびくともしなかった。俺たちがついてると安心させてハツコウ発電所を出ることに。
出ると黒い雲が存在し雷が鳴り響き、全員出たよなと思ったら、イッシェの姿がなかった。
「イッシェがいない」
「まさか残ったんじゃ。それに濡羽玖朗がいる限り、近寄るのは危険すぎる。どうすれば」
「剣汰、大丈夫?」
「…大丈夫です。久々の父親に会って、昔のこと思い出しちゃっただけ。アンちゃん、僕、父さんを止めたい」
剣汰が出した勇気の言葉だとしても、俺たちは行かせられない。濡羽玖朗が逃がしてくれたということは、かなり状況が酷いということを意味している。
それと俺や雫は白金銀に立ち向かえる階級ではないから、逃がしてくれたんだと思いたい。答えが出ず立ち止まっていたら、蓜島葉黒が現れる。
「弟想いの濡羽玖朗は甘すぎるな。まあいい。それで見つけられたか?」
「まだ答えは出せないが、俺が失敗すればあの中の誰かが引き継ぐってことでいいんだろ?」
「大体は当たっている。あそこに眠る汀春を生み出したのはシャン・エンディリアだ」
雫が動揺してしまい、よりによって雫の父ちゃんが生み出していただなんて衝撃すぎた。建物が燃え始めていて、イッシェの安否確認をしたいところだ。
蓜島葉黒は煙を眺めながら俺たちに伝える。
「いずれお前の前に現れるだろう。グレーゾーンというのはお前の心が半分穢れているということ。今は平気だとしてもお前は、デステクライン使いになる可能性が高いということだ。そうならないために気をつけることだな」
「想心がグレーゾーンに入ってるわけない!」
アンジは焦って言うも俺には見えると言って再び姿を消してしまった。嘘だよねとアンジは言うも俺もわからないよと答える。デステクライン使いになる可能性が高いというのは、どういう意味なのだろうか。
一旦この件については後にして、イッシェの捜索をするしかなさそうだな。
「莉穏さん」
「予想外すぎて、頭追いついていけてないけど、想心くん、雫ちゃん、剣汰くんは右の建物に全ての電源を落とす装置があるから電源を落として。私とアンジくんでイッシェを探してみる」
了解と伝えて俺たちは右の建物へと急いだ。すでに燃えていたらアウトだなと思いながらも、走っていくとよりによって死屍の群れがある。
「カステクライン!水、魚の大津波!」
大量の魚が津波のように死屍を流し、その隙に建物の中へと入った。えっと電源落とす装置はどこだと探し回っていると、誰かが吹っ飛んでくる。
瓦礫の煙のせいで誰が吹っ飛んできたんだと、煙が消えるとそこには瀬雷さんだった。
「瀬雷さん!」
「いててててえ。あれ?想心くん。そうか、ハツコウ発電所まで吹き飛ばされたか。伊生、すぐ戻れそうにないから、対処のほう頼む。さてここまで吹き飛ばされたせいで、こっちも大変そうだ。力を貸すよ。それで何をしようとしていた?」
「すべての電源を落とすようにと莉穏さんに頼まれてて」
「莉穏ちゃん、帰って来てたなら教えてほしかった。まあいっか」
体制を立て直す瀬雷さんで、こっちと案内してくれる。途中で死屍に遭遇するも、鋼タイプということもありすぐ対処できた。
ここだと瀬雷さんが言っていて、結構な数を落とさなければならないようだ。手分けして電源を落とし真っ暗な状態となってしまう。すると瀬雷さんがカステクラインを明るくしてくれたことで少し視野が広くなった。雷魔法は懐中電灯にもなるらしいから、今度はその魔法を取得しようと決める。
遠くから爆発音が何回か聞こえ、濡羽玖朗と白金銀が争っているのだろうと建物から脱出した。天気も悪いから暗く感じ、莉穏さんとアンジに合図を送りたいものだ。
外で待機をしていたら莉穏さんとアンジがボロボロとなって出てきたもののイッシェの姿がない。
「イッシェは?」
「銀を追っていなくなったよ。もうこのままだったら、カミナリノ王国にいられなくなる。莉穏さん、どうしましょう」
「ダンザ校長には報告するけど、イッシェが暴走してしまったのは、妹と甥っ子と姪っ子の敵討ち。このままいけばいずれデステクライン使いとなってしまう。急いでイッシェを止めなくちゃならないけど、銀がどこへ行ったのかわからない」
銀が行きそうな場所ってまさか、団長と盾乃がいるミズノ王国じゃないよな。不安になって俺はつい連絡をとってみる。
「カステクライン!連絡、水のペンギン!」
カステクラインから水のペンギンが現れ、俺の周りを一周して手のひらに乗っかる。出てくれるかなと待つこと数秒後、団長がどないしたと返事をくれた。
「団長、そっちに銀来てます?」
『来てへんよ。夫と遭遇したんやね。剣汰、大丈夫なん?あの子、銀にやられたことの傷が深くてな』
「母さん、アンちゃんと想心に、雫がそばにいてくれてるから大丈夫」
『そやったね。こっちも警戒はしておくさかい。それとイッシェのこと頼んでもえぇかな』
もちろんですと伝え、団長と会話を終え、ひとまず白金銀があっちに行っていないことがわかった。
だとするとどこへ行ったんだかと思っていると、濡羽玖朗がいきなり現れ、しかも俺に抱きついてアンジたちはカステクラインを起動させる準備をする。
「離れろよ!」
「少しだけこうさせろ。白金銀が逃げた場所、知りたいだろ?あぁそうだった、伊雪、育」
伊雪と王林育も現れ、俺はブラックノ団に囲まれた感じだ。アンジがより警戒心を出していて、この状況どうすればいいんだよと言いたかった。
剣汰が珍しく離れてくださいと言うも伊雪が団長の邪魔はさせないよーと言っている。こっちは緊張感が半端ないんですけどと思っていると、耳元で囁かれる。
「芽森が危険な場所にずっといる。このままいけば確実に自殺するのは確実だ」
「俺にどうしろと?」
「僕が芽森を救ってやる。その代わり銀を救ってやれ。それができるのは想心だけだ。ふう充電完了、いくぞ」
まったねえと伊雪はこっちを振り向き手を振って消えて、王林育は俺に箱を渡し、璃子に渡しでだぁと言って消える。検討を祈っていると濡羽玖朗は微笑んでいなくなった。
まじで焦ったと俺はその場で地べたに座り込み、アンジが背中を摩ってくれて雫たちはまだいるのではないかと警戒心を出している。
「何を言われたの?」
「芽森が危ないって言われたのと、俺の力で銀を救ってやって欲しいって言われた」
「銀がいる場所は教えてもらえなかったの?」
聞くの忘れたと言おうとしたら、王林育からもらった箱の上にカードが挟まっていて、ここにいると記されていた。
「アズマ塔…?知ってるか?」
聞いてみると瀬雷さんがあそこかと難しそうな顔をしながら教えてくれる。
「アズマ塔は行くのに難しいと言われているところ。行った者はチリとなると聞いたことがある」
「え?魂はカステクラインによって守られているから大丈夫なんじゃ」
「そうだけど、チリになった人たちは戻るのに何百年と時間がかかるみたいだから、この何十年は誰も入ったことがないってダンザ校長に言われてる。そこにイッシェがいるかわからないけど、ここにいても意味がないから戻ろう」
汀春さんのあれは破壊されたのか不明だが、俺たちはカミナリノ王国に戻ることになった。
◆
晩餐会を終え、一日が経ち僕と優くんは蓜島さんと一緒に行動をしていた。セブラはルルラちゃんと一緒に、グレイティア女王陛下の護衛にあたっている。
銀団長がいるという塔にお邪魔してみると、ハツコウ発電所に行ったはずのハウヴァさんが縄で縛られていた。そして銀さんは思っていたより、怒りを出している。
「今は気分が悪いから、出ていってもらえないか?」
「ご気分がよろしくないのは承知しております。ですがこれ以上、罪を犯せばハウヴァさんと一緒にいられなくなる。だから」
「自分に説教は結構。葉黒、二人を部屋から出せ」
凄まじい闇を感じても、僕は一歩も引かない。なぜならハウヴァさんが泣いているからだ。ハウヴァさんは後もう少しでカステクライン使いになれるのが目に見えるから、こうやって縛りたがりたくなる。
僕が縄を解こうとした時、腕を強く掴まれ痛くても縄を解こうと思ったら、銀団長の闇に呑まれ視界が暗くなってしまった。
僕じゃ説得できなかったとゆっくり目を覚ますと優くんと蓜島さんが心配な目でこっちを見ている。
「銀団長は?」
「ハウヴァさんを連れてどこかへ行っちゃいました。おそらく天の世界に行ったんだと思います。蓜島さん、この場合」
「カステクライン使いによって強制無魂にしてもらう必要がある。俺たちにはもう何もできまい」
「ハウヴァさんは?」
「時期に目覚めるだろう。俺はそのことを報告しに行く。おそらく銀はこっちにも仕掛けてくるだろうから準備は進めておけ」
はいと蓜島さんに言い、蓜島さんはグレイティア女王陛下の元へと行かれた。想心、大丈夫だよねと願いながら、僕たちは準備を進めることに。




