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シゴノセカイ《改訂版》  作者: 福乃 吹風
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52話 ハツコウ発電所②

 南の城下町を歩いているがやたらと視線を感じるも、アンジが手を引っ張る理由がなんなのかまだわからない。そろそろ手を離してもらってもいいが、あんな事を言った訳はきっとちやほやされる俺を見たくはなかったんだろうな。

 まあいいけどさと歩いていたら、死屍デッドルタだと叫んで逃げてる住民たちが走ってくる。俺とアンジはすぐさま死屍デッドルタが出現したであろう場所へ急ぐと、雫がさっき言った瀬雷哉一さんが全て倒した後だった。わざわざ行かなくてもよかったかと、俺とアンジが突っ立っていたら目が合いぱっと花を咲かせ、俺の前に来て両手を握られる。


「君が噂の想心くん!」

「あーはい」

「いやぁらいよりこんなにファンが多くいるとは、君はらいのライバルとしか言いようがない」


 ファン数を競い合うつもりはそもそもないんですがと言いたかったところ、瀬雷哉一さんは俺の手を握ったまま違う方角を見つめ始めた。


「どうかされました?」

「あの方角…これは失礼。伊生いなま、状況を報告。ふむふむ、わかった。至急、想心くんと召使を行かせる。持ち堪えてくれ」

「何かあったんですか?」

死屍デッドルタの群れが王国に接近しているようだ。力を貸してほしい」


 状況がまだ理解できていないが、死屍デッドルタの群れが王国に接近しているなら対処は必要だ。本当は思穏のじいちゃんばあちゃんに会いたかったが、後回しになりそう。

 ちょうど王国の南門に到着し伊生さんという方と合流した。


「数は?」

「ざっと見て五千はいると解析ができています。どうされますか?」

「南門で五千となれば合計で二万ぐらい。イッシェのロボット兵は?」

「それが全て誤作動が発生しているようで、ロボット兵は使えない模様です」


 確か雫や剣汰を担いで侵入者扱いされちゃったもんな。


「属性はノーマルですか?」


 聞くと植物タイプの死屍デッドルタが接近しているらしく、俺たちが抜擢されたらしい。そっか俺は氷魔法取得したし、アンジも氷魔法が使えるからだ。

 なんか緊張するなと先頭に立ち俺とアンジは氷魔法を唱えた。


「カステクライン!氷、ペンギンの滑走!」


 ペンギンが複数現れ、すいすいと滑りながら死屍デッドルタにぶつかっていく。しかし消えたとしても増える一方でキリがなかった。となればデステクライン使いがいるのは間違いない。そいつを倒さない限り、死屍デッドルタは消えないはずだ。

 どこにいるとカスてクラインを使用しつつ、剣汰がくれた剣で倒しているとやや遠くに人影が見える。


 そこかとアンジに任せて、人影がある方へ走っていくと、気づかれたのか動き出す。なんとか距離を縮めて、捕まえたいところだが見失ってしまった。

 汀がキューと叫んでいてそっちかと汀を追いかけると、グレーのローブを羽織っている中年のおっさんがいる。鍛え上げられた体で両腕にはタトゥーが入っていた。中年のおっさんは大きな拍手をする。 


「見事なもんだな、青藍の葉桜に選ばれし者よ」

「てめえはグレーノ団員だな?」

「あぁ。俺はグレーノ団副団長をしている蓜島葉黒はいじまはぐろ。それにしても小僧、俺には見える。お前は今の段階でグレーゾーンにいることをな」

「…グレーゾーンってなんだ?」

 

 聞くと蓜島葉黒は俺に何かを投げ、それをキャッチすると灰色のカードだった。


「グレーゾーンの意味を知りたければ、まずはそのカードの謎を明かせ。謎が解けたら教えてやる」


 それを告げたと同時にアンジの声が聞こえたことで、蓜島葉黒は姿を消しちまう。カードに記されていたのは、ハツコウ発電所で起きた謎を明かせとあった。

 ハツコウ発電所で何かがあったのかはイッシェに聞く必要があるなとそのカードはポケットにしまう。


「想心!無事?」

「あーうん。追いかけたけど、見失っちまった。そっちは大丈夫だったか?」

「うん。なぜか知らないけど撤収したんだよね。今まではそんなことはなかったって瀬雷さんが言ってたから油断はできないと思う」


 俺が蓜島葉黒と接触したから撤収したのかは定かではないけれど、瀬雷さんたちがいるところへと戻った。



 カミナリノ国では雷が鳴り止まないとしても、想心はハツコウ発電所で真実を知る羽目になる。表と出るか、それとも裏と出るかは、想心次第。

 グレーを選んだ大半の者たちはハーフソウルの持ち主であり、そして導く者と呼ばれている。銀はハーフソウルではないけれど、葉黒はハーフソウル。だからカステクライン使いに誘導するか、デステクライン使いに誘導するか、誘い出せる。想心がデステクライン使いとなった時、両方の世界は滅ぶ可能性があるから、何がなんでも止めなくてはならないと城下町を眺めていたら、銀が入ってきた。


「銀、何?晩餐会まで後もう少しだから、私が選んだ燕尾服にさっさと着替えてくれない?」

「ハウヴァをこれ以上、弄ばないでもらいたい」

「銀がしてきたことが許せないから、罰してあげてるの。それくらいわからないの?」


 銀の顔を見ると複雑な思いを持っているのは見え見えだった。私はシジ族として、厳しい指導をしているのは訳がある。

 銀は奥さんやお子さんたちに何をしたのか、きっちり反省してほしいというのに、魂はまだ黒い。反省していないことがはっきりしているから、銀が愛している人、ハウヴァに与えているの。

 本当に銀を団長にさせるべきか迷いがあったし、セブラから随時報告はもらっていた。


「あなたが反省しない限り続ける。奥さんとそれからお子さんたちと向き合いなさい。もし反省できないのならば、ダークグレーかもしくはブラックに、強制的に移ってもらう。ただしハウヴァはここに置いておく。あなた一人だけ異動だということを肝に免じておきなさい」


 何も言わず銀は私に頭を下げ去って行き、想心が今、カミナリノ国に到着しているから、接触はする。葉黒に持たせたカード、ちゃんと受け取ってくれたかなと、晩餐会に着るドレスに着替えに行った。



 瀬雷さんたちと合流をし、一通り死屍デッドルタやデステクライン使いが城下町にいないか確認するも、それらしきものはなく、瀬雷さんたちはダザン校長に報告を上げに行かれた。

 俺たちも同行しようか思っていたが、留学生のため、来なくていいと言われたから、そのまま思穏のじいちゃんばあちゃんに会いに行くことに。ダンザ校長に教えてもらった住所を頼りに行ってみると、変わった形をした家に住んでいた。


 ベルを鳴らしても返事がなく出かけているのだろうかと思っていると、わしらに何用じゃと声がかかる。振り向くと思っていたじいちゃんばあちゃんではなく、白衣を着て変な眼鏡と髭を生やしているじいちゃんと、化粧が濃いめのばあちゃんだった。   


「あの紅葉川さんですか?」

「然様じゃが、お主…」


 近々と来て眼鏡をくいっと上げるじいちゃんで、何を言われるんだと身構えていると、思穏のだちじゃなと家の中に入らせてくれた。

 すごいロボットの数が何か作業をしていて、お邪魔しますと発言すると一斉にロボットの顔が向きいらっしゃいませと言われる。思穏のじいちゃんばあちゃん何者だと思いながらも、ばあちゃんがここにお座りと言われたもんで、ソファーに座った。

 じいちゃんばあちゃんは向かいのソファーに座り、すまんのうとなぜか謝罪される。


「わしたちの孫によって巻き込まれてしまってすまんのう」

「いえ。あの千年前のお話って伺ったことありますか?」

「照秋の話かのう。受け継がれていた話は、わしらも知っておるが、それを知ったとて、思穏を救うことはできんぞ」

「構いません」


 じいちゃんはばあちゃんにあれを持ってきてくれと頼み、ばあちゃんは席を外した。


「思穏が生まれる前に死んでしもうて、会ったことはないが、想心。改めて感謝する」


 深々と頭を下げるじいちゃんで、頭上げてくださいと伝えるとじいちゃんは申し訳ない顔立ちをしていて俺に告ぐ。


「わしはリヴィソウルで拝見しておった。孫の顔が見たくてのう。まさかあんな教育をさせられていたとはわしたちにも責任があるんじゃ。わしたちも厳しく教育していたことで、孫たちにも影響が及んでいたことを。莉穏にも悲しいことをさせてしまった」


 そんなことないですと言いたくても、喉に引っかかってしまう。子は親を見て育っていくから、こんな親になりたくないという思いで、子と接してしまう。

 けれど結局親と同じことをしていると認識するのは子供が傷ついた後か、その前に気づくかの二択。


「思穏があっち側の偉い何かになるとダンザから聞かされた時は、かなりショックじゃった。じゃからせめて思穏が攻めて来た時に、止められるよう妻と開発を行なっていてな」

「そう…だったんですね」


 止めるための何かを作っているのはさすがに聞けないな。ばあちゃんが戻って来て、俺に渡してくれる。しかもこの世界で使われている文字だった。


「それは持っていて構わん。時が来たら青藍の葉桜の持ち主に渡すようにと記されておったからのう」

「本当にいいんですか」

「よいよい。わしたちはこれから行かなければならぬところがある」

「じゃあ僕たち、お暇しようか。想心?」


 なんでもないとアンジに伝え、俺たちはお暇することに。後でじっくり読ませてもらうとして、さっき一体のロボットがずっと俺を見ていたような気もした。

「思穏くんの祖父母さん、どこに行く予定だったんだろう」

「さあな。白衣着てたし何かの研究で忙しいんじゃないか?」

「そうかもしれないけど、もしかしてさ、雫のお父さんと関係してるんじゃないのかな」


 そんなことってあるかと言いながら、ふとそう感じてしまう。あのタイミングで俺に照秋さんについての本を託すということは、身を隠す可能性だって出てくるはず。明日、ハツコウ発電所に一度行って、再度尋ねてみるか。


 

 翌日のこと。雫と剣汰は昨日、武器屋に行ったあとにダンザ校長から指示を受け、北門で死屍デッドルタを倒していたら、ハウヴァと出会ったらしい。

 しかしいつものハウヴァではなく、まるで操り人形のように、無鉄砲に攻撃をして来たらしい。しばらくして蓜島葉黒がハウヴァを担いで消えたそうだ。


「なんか調子狂うというか、普段と違うのは確かだから、会ったら警戒はしておいたほうがいいかも」

「盾乃は母さんと一緒にいるから安心ではあるけど、早めに終わらせることできますか?」

「状況次第かな。想心、昨日から浮かない顔してどうしたの?」

「あーなんというか、思穏のじいちゃんばあちゃん、なにかを隠してるような感じだったなってさ」 


 雫と剣汰はその場にいなかったから首を傾げていて、アンジは昨日のことを振り返っているようだ。ハツコウ発電所に到着し、事前にイッシェからもらっていたカードでハツコウ発電所へと入る。

 トラップには一応気をつけるよう言われていて、黄色いマス目がトラップらしい。見ていなかったらおそらくトラップにまた引っかかるな。


「仕草とか思い返してみても、普通だったような感じではあるよ」

「そうか。昨日、アンジ言ってただろ?雫の父ちゃんと関係しているんじゃないかって」

「まあ確かに」

「話している時、一体のロボットがさ俺のことずっと見ているような感じだったから、ロボットを通して雫の父ちゃんが見ていたんじゃないかって気がしただけ」


 お父さんがと雫が言っていて、仮にカミナリノ国のどこかにいるのだとしたら、もう一度会えるチャンスはあるかもしれない。

 それにしても電気が所々壊れていて、点滅しているから不気味なんだよな。イッシェ曰く、修復魔法をかけてもすぐ壊れるからそのままにしているらしい。


 死屍デッドルタは今のところ現れていないから調査しようともできない、そう思った時のことだ。俺たちを囲む死屍デッドルタで、剣汰の叫び声が聞こえ後ろを振り向く。初めての死屍デッドルタのタイプで、剣汰は気を失っていた。


「剣汰!」

「想心!行かないで!あれは見たことがない死屍デッドルタで、僕も初めてみるタイプ。雫は何か知ってる?」 

死屍デッドルタはある程度暗記してるけど、私も初めてみるタイプ」


 死屍デッドルタは剣汰を捕まえたままで、俺たちがまだ動かないから攻撃はしてこない。どうすると考えていると、電気が壁中に流れ始め、電気タイプかと思いきや、莉穏さんの声が聞こえる。


「カステクライン!雷、雷獣の閃光!プラス魚の大津波!アンジくん!」

「カステクライン!防御、氷の壁!」


 俺たちの前に氷の壁ができ、その向こうでは水と電気が合わさった魔法で死屍デッドルタが消滅し、剣汰が落ちそうなところ莉穏さんがキャッチしてくれた。

 アンジは氷の壁を解除し莉穏さんは剣汰を起こし、剣汰はあれと目を覚ます。


「アンジくん、ナイス」

「莉穏さんが出す技ですぐ対処できました。どうしてこちらに?」

「じいちゃんとばあちゃんに呼ばれて、思穏の友達をサポートしてあげなさいって言われたの」

「わざわざすみません」


 いいよいいよと剣汰を立たせる莉穏さんで、だとしたらとつい尋ねてしまう。


「あの莉穏さんと思穏の祖父母さんが出かけたわけって…」

「詳しいことは知らないけど、とある人と手を組んでいるって聞いたことがあるよ」


 俺たちは目を合わせ、雫が名を出す。


「その人ってシャン・エンディリアですか?」

「名前は聞いたことがないからごめんね」


 そうですかと少し凹む雫で、じいちゃんばあちゃんが生まれ変わらないわけがもし、雫の父ちゃんであるシャン・エンディリアと関わっていたら、この世界でいったい何が起きようとしているのか。

 この件が終わったとしても、おそらく留守の可能性が高いかもしれないと感じてしまった。



 晩餐会に出席しいろんな人たちに挨拶をし終えたけれど、セブラはいないのとよく聞かれてしまった。別件でここにはいないんですと答えたけれど、これでよかったのだろうか。

 ルルラちゃんと優くんは美味しそうに料理を頬張っていて、楽しんでくれているのであればいいかと、僕も頬張っていたらハウヴァさんを見かける。いつもは銀さんと一緒にいる場が多い感じだけれど、その場には銀さんの姿がなかった。それに様子が変で、声をかけてみる。


「ハウヴァさん?」

「あら、思穏ですわ。ここにおられるということは、セブラも?」

「セブラは別件でいなくて」

「…そう。ならはいねと一曲踊ってくれません?」


 踊りはあんまり習ってはいないけれど、ハウヴァの手をとり一曲踊ることに。ハウヴァはどこか寂しそうな顔立ちをしていても、微笑んで僕を見ていた。


「銀団長と何かあったんですか?僕でよければお話、聞きます」

「思穏は優しいですのね。はいねは銀様を愛していますわ。ただ銀様を愛したことで、罰を受けていますの」

「罰?」


 ステップを踏みながらそうですわとハウヴァは言い、僕に教えてくれる。


「銀様が現世でしてきたことは決して許されることではないのはお分かりかしら?」

「ある程度はお聞きしています」

「妻と子どもを愛さなかった罰として、はいねが罰を受け、銀様を苦しめていますの。グレーノ国ではハーフソウルを持つ者たちが多い。次、銀様が天の世界にいる妻と子どもたちに何かをしたら、はいねとお別れになりますわ」


 セブラから教わったハーフソウル。魂の半分が浄化されている証拠で、もう時期カステクライン使いになるかもしれない。それとハーフソウルになった時点で、焼き印が発動することはないが悪いことを立て続けに行えば焼印が自動的に発動する。


「あのハーフソウルになっているかどうか、見極めることってできるんですか?」

「ハーフソウルになっているかは、シジ族でしか見れませんの。だからはいねがハーフソウルの持ち主かどうかはわかりませんわ。ただ一つだけ。階級を上げていけば見える方法があると、セブラから聞いたことがありますの」


 セブラはそういうのを持っていて、誰がハーフソウルなのかわかりながら指導をしているってことでいいのかな。今度、セブラに聞くとして、ハウヴァさんを元気づけられる方法といったらなんだろう。

 そろそろ一曲が終わってしまいそうで、何かないかなと考えていると、ハウヴァさんが急に止まってしまった。ハウヴァさんが見ている方角を見ると、銀団長が女王様をエスコートしている。ハウヴァさんが握る手が強くなり、そして震えていた。


 それにしても美しすぎる女王様で、つい見惚れていたら目の前にセブラの顔が出てきて、行くぞとハウヴァさんと僕の手を引っ張り、ルルラちゃんと優くんのところへ戻る。


「用件は済んだの?」

「あぁ。ハウヴァ、辛いなら家に戻ったほうがいい」

「大丈夫ですわ。グレイティア陛下がなされていることは理解していますの。だからその時が来ましたら、はいねがこの手で銀様を止めますわ」

「ハツコウ発電所に行くのは止めないが、今ハツコウ発電所に想心たちがいる。それでも行く気か?」

「行きますわ。たとえ何が起きようとも、銀様をグレーゾーンに引き摺り出す。それがはいねがやる役目ですもの。もしはいねがあっち側のほうにつくことになったとしたら、その時は銀様をよろしくお願いしますわね」


 どっから出してきたのかグレーのローブを羽織り、ハウヴァは行ってしまう。


「セブラ」

「ハウヴァはもうすぐカステクライン使いになる。その前にけりをつけたいんだろう。銀を愛したことへの罪をな」


 ハウヴァさんは自ら自害をし、そして愛を見つけたとしても、それは罪となる。天の世界ではそういうのは罪にならないけれど、獄の世界ではそういう決まりが存在していた。

 罪人同士で愛し合うことは許されない。それが愛する家族を殺した者たちに与えられているペナルティであることを。


「銀団長は女王様を殺めたりしないよね?」

「わからねえな。あの様子だと銀はやるかもしれない。そうならないためにもルル、優。二人に協力してもらいたいことがある」


 なになにと興味津々のルルラちゃんと優さんで、セブラの作戦を教えてもらい、すぐ行動へと移った。 

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