49話 カミナリノ国
試験はなんとか乗り越え無事に五段魔導士となり、アンジとの約束で氷魔法とそれからもう一つ取得できるが、迷ってしまっている。全然決めていなかったから、どうすっかなとペンを回していたら、雫はどんよりしていた。筆記試験は良かったらしいが、実技試験で落ちてしまったらしく五段魔導士にはなれなかったという。
やっぱり植物魔法を覚えたとしても実際に試験で合格しなくちゃ魔力も上手くいかないらしい。次、頑張ろうぜと言おうとしたら、すみませーんと職員室に響き渡った。
誰だと扉の方を向くと黄色いローブを羽織った女性が立っており、カミナリノ王国にいる団員だろうかと、俺はスルーしてどの魔法を取得するか考える。
雷を避けたいがここで植物魔法を覚えるとなれば必ず今度の試験に支障が出るかもしれない。どうしたものかと悩んでいたら、ふむふむと隣で見ているような感じでそっちに目をやった。
そしたらさっきの女性でどこかで会ったような感じだと思っていると、その女性は俺のほうを向いてこう言ったんだ。
「思穏と仲良くしてくれてありがとね、想心くん」
「えっと…」
「初めまして。私は思穏のお姉ちゃんだった秋葉莉穏。よろしくねって言っても、私は思穏がまだ幼かった時に、あの家を出てったからさ」
思穏から姉については教えてもらってなかったし、それに思穏の両親も触れてはいなかった。それに莉穏さんの年齢を見る限り、兄貴と同じ年齢ぐらいの人。どうやって俺と仲がいいことを知っているのは、誰から聞いたんだろうか。
聞こうとしたら莉穏さんは、ポケットから何かを取り出して俺に託す。それは思穏の幼き写真で泣いている姿だった。
「私ね、思穏が生まれた時から、両親の態度ががらんって変わって、両親は私に干渉しなくなった。どんなにテストの点数を満点にしても、私のこと完全に無視。そんな時にね、お母さんのおばあちゃんが気にかけてくれて、おばあちゃん家に住んでたの」
おっとそんな話を持ちかけてくるとは思わず、雫も少々驚いては聞いている。莉穏さんはどこか寂しそうな表情をしていて、俺たちに語った。
「おばあちゃん家で過ごしている時ね、たまに思穏のこと思い出してたの。私がいなくても平気かなとか、そばにいなくて不安になってないかなって。けど結局、災害で亡くなっちゃってさ、もちろん仏壇はおばあちゃん家に置いてもらってるから、私のことは知らなかったと思う」
「もしかして思穏に会ったんですか?」
「へへ。会いに行ったら拒否られちゃったよ。まあ覚悟はしてた。思穏が苦しんでたのに、そばにいてあげられなかったし、思穏は私を恨んでることぐらい」
「そんなことないんじゃ」
そうだよと言われてしまい、獄の世界に行けるぐらいの階級を莉穏さんは持っていることを知る。
「私のことは心配しなくていいよ。可愛い後輩から頼まれていたものを届けに来たの。はい、これで感電はしないから安心してカミナリノ国に行けばいいよ」
「あっありがとうございます」
それじゃあまたねえと寂しそうな笑顔で行ってしまわれ、優しそうな人なのに思穏が拒否してしまう理由。もし会うことができるなら、ちゃんと話したいな。
三つくれたってことは俺とアンジに雫用って認識でいいのかは不明だが取り入れをして、迷いに迷って、氷と炎を取得することにした。
手続きを済ませ早速、アンジに報告しようと家へと向かっている最中に、ミケに追いかけられているイッシェを発見する。
「どうしたんだろうね」
「だな。あんなに追いかけ回すってことは何かミケが嫌がることでもしたんじゃ」
助けてくれぬかとイッシェが言っていて、ミケが暴れたらこれ投げてとニャヴィにもらっていたものを投げる。鈴ボールに猫じゃらしがついているもので、効果は本当にあるんだろうかと見ていると、イッシェではなくそのボールで遊び始めた。
イッシェはありがとじゃと言いながら息を切らしていて、そういや先輩たちも追いかけられていたなと思い返す。
「なんでミケに追いかけられてたんだ?」
「人間に戻りたいって言ってたから、毛を多少奪ったら追いかけられたんじゃ」
「奪ったってまさか寝ている間に取ったのか?」
「起きてる時嫌がってたからのう。なかなか採れなかったんじゃよ」
それはなんとも言えず、やはりリディーにしつけてもらったほうが良いのではと感じてしまった。口に咥えてこっちにくるミケは俺にボールを返し、家へと戻っていくもチラチラとこっちを見ている。相当痛かったんだろうと思い、イッシェに伝えた。
「無理やりはやめてあげろよ。特に睡眠時間に採るのはあまりよろしくない。ただミケのためにありがとな」
「うむ…今後気をつけるのじゃ。早速、研究して結果を早めに出せるようにしてみようぞ」
よろしくなとお互い自分の家へと向かう道中、気になっていたことを雫に相談してみる。
「あのさ、滝木団長とイッシェの関係性ってわかったりする?」
「んー私はそこまで詳しくないし、デステクライン使いも、そんなに詳しくはない。だけど白金団長なら何か知ってるかもしれない。ほら、滝木団長って綺麗だし」
そっち系で関係してるのかは不明だが、白金銀は剣汰と盾乃の親父だったよな。行く前に様子見に行ったほうがいいかもしれないなと寮に戻ってみると、そこに剣汰と盾乃が来ていた。
「どうした?」
「想心、久しぶり。カミナリノ国に行くって聞いたから、同行したい」
「なるほど。雫、二人を応接室へ案内してやって。俺、ちょっくらアンジと話してくるわ」
雫は二人を応接室へと案内してもらい、アンジがいるであろう執務室へと入る。アンジにおかえりと言われ。ただいまと告げながら伝える。
「剣汰と盾乃が来客してて、団長って帰ってきてる?」
「あれ?さっきミズノ城に行ったばかりでまだ帰ってきてはないと思う。どうかしたの?」
「俺たちがカミナリノ国に向かうことを知ったらしくて、一緒に同行したいんだと」
珍しいとアンジは言っており、カミナリノ国と共鳴してる国はグレーノ国。想像したくないことが起きるんじゃないかって気もするが、判断は団長が決めることになってるから、話だけでも聞くか。
応接室へと入り向かいのソファーに座って、なぜ同行したいのか聞いた。
「なぜ一緒に行きたい?」
「カミナリノ国でしか手に入らないものがあるんだけど、カミナリノ国に入ると怖かった。だけど想心と一緒なら怖くないと思って」
通話していた時の剣汰は父親と向き合う感じではあったが、直接会うとやっぱり我慢していたんだと理解する。トラウマを克服してほしいが、実際に白金銀と接触した時は、やばかったしハウヴァがいる以上、刺激が強い。
ここは今回、雫を置いてリディーに同行してもらい、雫は盾乃の面倒を見てもらったほうがいいか。悩みどころだなといい案がでないか考えていたら、テンファがあのーと扉を少し開けて会話を聞いていたようだ。
「話は聞かせていただきました。剣汰くんが同行したいというなら、盾乃ちゃんは?」
「一緒に行きたいけど、剣ちゃんがダメって言ったからお留守番するよ」
「盾乃は留守番してもらう予定です」
「ならさ小生も同行してもいいかな?カミナリノ国でしか手に入らない薬草があって。今までは湘西さんが仕入れてくれてたから」
まさか二人とも素材を手に入れるために、カミナリノ国に行きたいんだなんてな。やっぱり雫は盾乃ちゃんの面倒を見てもらうかと答えようとしたら、リディが入ってくる。
「想心殿がカミナリノ国に行くのであれば、先生も同行させてもらおうか」
そう来ますよねと苦笑いしてしまうほどだ。リディは白金銀に狙われているが、白金銀を倒したい野心があるんだろう。それにリディがいてくれれば、剣汰も安心する。
俺的には四人で行きたいのもあるからなと悩みに悩んだ結果。
「なあアンジ」
「いやだよ」
「なんも言ってねえよ」
「僕は想心と離れるつもりはないし、リディ先生がいるからもっと嫌だ」
アンジも譲る気はないらしく、どうしたものかと思った時のことだ。俺のカステクラインがくるくる回りだし、誰かがかけてきているのがわかる。
ちょっと席外す間に決めておいてくれと告げ、客室から退散しカステクラインを起動させた。
「カステクライン!連絡、水のペンギン!」
カステクラインから水のペンギンが俺の周りを一周し、俺の手に乗っかり、しかも水のペンギンは肘をついて寝っ転がっている。
『よう、想心』
声の主でわかり数秒固まってしまうぐらいで、俺は多分、声が震えていたと思う。
「セブラ…?」
『正解!悪いな。想心を巻き込んじまって。想心に伝えておかなくちゃならないことがある』
「いきなりなんだよ。思穏と俺を落としたくせに」
『こっちのやり方があるんだよ。それに想心が現世にいたら、今ごろ玖朗が暴れていたと思う』
どういうことだと小声で言いながら、客室から離れ自分の部屋へと行く。
『龍桜神社の神主に殺されていたからだ。その意味がなんだかわかるよな?』
鼓動が早くなっていき、俺が葉桜の人間ではないことが頭の中によぎった。
『自覚はしていたようだな。ここで言うのもあれだが、想心の実の親が殺されたわけは、龍桜家が関係している。もし本当の親に会いたければ、カミナリノ国に滞在しているから聞いてみるといい』
「なんで俺に情報くれんだ。意味わかんねえよ…」
『そろそろ伝えろと玖朗がうるさっいってえよ!ったく、悪い。今、隣に玖朗いんだわ。玖朗と話すか?』
「いや、いい。ただ、ピンチの時、いつも助けてくれてありがとな。それだけ伝えといてくれ。アンジの足音聞こえるから、切る」
おうっとセブラの声が聞こえた後、水のペンギンはただの水へとなる。すると扉のノックが聞こえ、扉を開けた。
「大丈夫?」
「あぁ平気。それで誰が行くか決まった?」
アンジに聞くとアンジは嬉しそうにしていて、てことはリディがお留守番となったんだな。客室に戻ってみるとリディはグルルルとアンジに威嚇していて、帰ってきたら甘えさせてあげようと決めた。
しかしテンファもぐずんと落ち込んでおり、アンジに聞いたところ雫に負けたそうだ。リディがいれば盾乃ちゃんは大丈夫か。
後日、校長から留学届をいただき、まずは再度ホノオノ国に訪れなくてはならないのだが、アンジが輪になってと言われたからアンジの隣に立つ。
「何するんだ?」
「ホノオノ国に行くんだよ」
はてなと首を傾げる俺と雫で手を繋ぐらしくアンジと雫の手を握る。全員握ったことでアンジがカステクラインを起動させた。
「カステクライン!移動、ホノオノ王国!」
アンジが言ったことで、一瞬だけ眩しい光に包まれ数秒後、なんとホノオノ王国の前に立っていたのだ。そういう呪文があるなら早く教えろよと言いたかったが、アンジに言われた。
「ホノオノ王国は僕も初めてだったから、ワープの魔法は使えなかったんだ」
「そういうことか。ちなみにその呪文って誰でもいけんの?」
「うん。移動魔法は初期の人でも使用できる。すでに自分の足で行っている場所は、いつでも行けるんだよ」
「初めて知りました。ならすぐにミズノ王国に行けてたな」
剣汰がそう言っていて、なぜか雫が違う方角を見ていた。どうしたと雫が見ている方角に目をやると、やや遠くで干からびた鳥たちがうじゃうじゃ飛んでいる。
「あの方角はカミナリノ王国。誰かが襲われてるかもしれない。急ごう」
箒を取り出して干からびた鳥たちがいる方角へと急いだ。一体何があるんだと徐々に近づくにつれて、誰かと誰かが争っている姿が見える。
俺たちは知らなう人だが、雫がボソッと言い出した。
「お…父さん?」
シャン・エンディリアなのかとその光景を見ていたら、気づいたらしい奴は姿を膨らませ、そして雫はお父さんと叫ぶが、シャン・エンディリアもすまないというような顔立ちですぐ消えてしまう。
水くれと干からびた鳥たちに突かれながら、落ち込んでいる雫を励ますことに。
◆
姉がどこかでいるのはなんとなくわかっていたけれど、まさかあんなタイミングで再会するとは思ってもみなかった。姉がいてくれたら、両親がしてきたこと乗り越えられてたかもしれないと、ずっと、ずっと……。
羨ましかったよ。両親に縛られない生活で、好きなことして生活してたんだろうなって。姉に助けを求めたくても、求められなかったのは、両親が姉のことを捨てたから。家にあった姉の物も、家具も全て、あの日消えた。お姉ちゃんはと幼い頃、両親に聞いてもはぐらかしてばかり。そしてあまりにも僕が姉に会いたいと言い出したことで、言われていたこと。
〝いい加減にしなさい!お姉ちゃんは元々いなかったの!それくらいわかってちょうだい!〟
今でも覚えてる。母に殴られた痛み。姉は両親に応えられなかったから、両親は姉がいたことを消したがっていた。歯向かいたかった気持ちはあったよ。そんなこと言わないで、僕にとってはお姉ちゃんだよって。
だけど僕は想心のように、言い返せないし、喧嘩も強くはない。だから僕は叩かれた頬に手を当て、ごめんなさいと言い、両親に応えられるよう努力した。
しかし僕はやたらと変な連中に絡まれてばかりで、心が限界の時。ヒーローが現れた。そのヒーローこそが想心。それからは僕の悩みを聞いてくれて、一緒に解決方法探してくれてたなと空を見上げる。
想心は今、どこの国にいるんだろう。あっちでお姉ちゃんと会ってるのかなと、姉が倒した連中が起きるまで、待っていたらセブラが猛ダッシュできて、大丈夫かと来てくれた。
「ぜえぜえ、ハウヴァの様子がちとやばくて対応で遅れた。ったくこいつら倒したのか?」
「ううん。…お姉ちゃんが倒して、なかなか起きないから待ってた。この人たちは?」
「グレーノ王国のもんじゃなさそうだな。一応縛っとくか。デステクライン!拘束、鎖の結び!」
僕を捕まえた連中は鎖の結びで拘束され、僕が入れられていた檻の中へと放り込むセブラ。
「後で聞き出すとして、思穏大丈夫か?」
「平気だよ」
「もし無理だって思ったら言えよ」
ありがとねと伝えながら、前のほうに座り、ルルラちゃんと優くんが待つところまで向かった。
遅くなってしまい、大変申し訳ございません。出来上がり次第随時更新していきます。




