46話 ラットリエ姫の暴走①
そう言えば夏海が猫になりかけているのまだファウには伝えていなかったな。どのタイミングで話そうか書斎で魔法学をアンジから教わっていた。ミケが来てくれればなと勉強していたら、焔副団長が何冊か持って書斎を後にする。
本って持ち出しできたっけと思いながら、アンジが事前に作っていた問題を解いていった。
ここがちょっとわからないとアンジに教わっていたら、焔副団長が書斎に戻って来て俺らが使用している机のところへ来た。何か言いたそうな雰囲気で、どうしたんですかと聞こうとしたら、焔副団長が俺に抱きついていがったと泣きじゃくる。
いがったってどういう意味と混乱してしまうほどだ。とにかく落ちつかせるためにりんごを渡してみるともぐもぐと食べ始める。落ち着いたのか空いている席に座って、教えてもらった。
「璃子が無事でいることが確認取れた」
「どういう?」
「セブラが保護してくれているらしいから問題はない。育のところじゃなくてほっとしている」
確か王林育さんって璃子さんのストーカーだとしても、一度だけ会った時はそんな感じでもなさそうだったけどな。焔副団長が大丈夫なら、問題はただ一つ。ここでファウに聞くしかないとファウに聞いてみることに。
「璃子さんが無事なら、ファウに聞きたいことがある。どうして今までねずみが姉であることを教えてはくれなかったんだ?」
質問するとそれはと口をつぐんでしまい、俺たちに言いづらいことでもあるのだろうと理解した。無理して言わなくていいと付け足してあげると、ファウは大丈夫っすと俺たちに教えてくれる。
「姉ちゃんと初めてこっちで会った時、姉ちゃんに声すらかけられなかった」
「どうして?」
「姉ちゃんと目が合って声かけようと思ったんすけど、そこにライトグレーノ団長と副団長が姉ちゃんを気にかけてたっす。知り合いって団長が聞いてて、知らないって言われて姉ちゃんたちは去っちゃったっすよ…。あそこで勇気を出していれば自分は今頃ここにはいなかったと思うんす」
本の機械で必ずバレる可能性だってあるはずなのに、なぜ知らないふりをねずみはしたんだろうか。それともファウがこっちに来てしまったことを受け入れられていないとしたらと考えてしまう。
「いくら会っても姉ちゃんは知らん顔でも、自分だけ攻撃が当たらないように攻撃してくるっすよ。そこに姉ちゃんの優しさが含まれていたとしても、自分は納得できないっす。絶対に自分を恨んでるはずなのに、どうしてって心がモヤモヤして」
ファウは誘拐された時、石戸牡丹が助けてそのまま石戸牡丹と住んでいたんだもんな。
「モヤモヤしていても、姉ちゃんがそれを望んでいるならって、誰にも言わなかったっす。おそらくこの先も姉ちゃんは自分と向き合ってはくれないと確信してるっすから、父さんだけでもなんとか理由を聞き出したくて」
「石戸牡丹が冤罪となる証拠ってこっちにあるんだよね?だったらその証拠探しに行ってみない?」
アンジにそう言われて確かにそうだし、きっかけさえあればねずみは話してくれそうだ。そうとなれば手分けして探すかと教科書を取り入れしていたら、茜の団員が大変ですと俺たちのところに到着する。
「レイム団長が消えちゃったんです!」
情緒不安定だから明日伺うことにしていたけれど、このタイミングでレイム団長が消えるだなんて誰もが思わなかったことだろう。
「自分たちも手分けして探す。ちなみに副団長は?」
「行き違いで戻って来ました」
「なら自分は副団長に少し話があるから終わったら自分も捜索する」
はいと俺たちは書斎を出てレイム団長を探すことになり、ムツさんの次がレイム団長が消えるだなんてどうなってんだ。もしかしてあの白い林檎農園に行ったんじゃないよな。あそこにはラットリエ姫とダークグレーノ団が待ってんだ。
何も起きていてほしくはないと願っていても白い林檎農園の方から煙が多数出ていた。俺たちは水魔導士でもありカステクラインを起動させる。
「カステクライン!水、雲雨の涙!」
雨雲を出し雨の射的で煙は消えたとしても白い林檎農園が燃えたことで焦げた匂いが充満していた。誰も怪我とかしてなければいいがと箒から降りて歩いてみる。
さすがにダークグレーノ団は撤退しているよなと周囲を見渡していたら、ラットリエ姫がなぜかいた。なんでこんなところにと疑問に思っていた俺たちであり、目が合うとよかったとこっちに来る。
「お散歩していましたら、この農園が燃えていたのを目撃して来たらこんな状況に」
「危険なので僕たちから離れないでもらえますでしょうか」
雫はアンジと耳を引っ張っているも、ラットリエ姫はよろしくお願いたしますと言われた。違和感があるも俺たちはラットリエ姫を護衛しながら何もないか探る。
「そういえば焔様はどちらに?」
「別件で別行動すると言われたよ。すぐ合流すると思う」
不機嫌に言う雫で雫はラットリエ姫には裏があると確信している様子だった。農園を探したとしてもダークグレーノ団の姿はなく撤退したようだ。
それにしてもなぜこの農園が燃えていたにも関わらず、誰も来なかったのかが疑問だな。
「異常なさそうだし、ホノオノ王国に戻ってみっか」
「誰かしら団員が駆けつけて来てもいいはずなのに、いないのが気になるっすよ」
「確かにこれだけ燃えていたのに誰一人来ないのは何かがありそうな」
ファウとアンジが言い、もう少し周辺を探してみるかと提案しようとした時のことだ。爆発音が近くに鳴り、煙がもくもくと広がって俺たちは真っ先に行ってみる。
行ってみるとそこにはデッドアーバーが多数出現しており、またかよとアンジが炎魔法でデッドアーバーを倒してみるも効果は薄い。この前は林檎の異臭がしていたけれど、今回は無臭なのが気になる。
「なあアンジ、デッドアーバーって木属性で合ってるんだよな?」
「そうだね。木属性だけどこの前のようにデッドアーバーから異臭はしない。もしかしたら別の属性って考えるほうがいいかもしれない」
「今まで新種は現れなかったっすよね。どうなってるんすか」
アーバーって他に何か意味があったりするんじゃと考えていくと、あれっと思わず近くで見ちまう。危険だから離れてとアンジに叱られるも、じーっとデッドアーバーを見ていたらあっとつい声を漏らしちまった。
声を出したことで一斉にデッドアーバーが俺の方に向き、攻撃をし始めてアンジの後ろへと隠れる。アンジはなんか言いたげそうな顔をしていたけれど、氷魔法を唱えてくれた。
「カステクライン!氷、トナカイの残雪!」
トナカイが雪をつけながらデッドアーバーにつので攻撃をしてもらうと、俺の読み通りだった。デッドアーバーは金属だから凍らせればデッドアーバーは落ち着く。
ここはホノオノ国でもあって暑さがあるからオーバーヒートをして暴走をしていたことになる。
「アーバー…そうか。アーバーは機械の部品を表すこともある。だから炎魔法を使用しても効果は薄かったんだ」
「デッドアーバーをよくよく見たらさ、機械の部品っぽいのいくつか見えた。ややこしいけど炎魔法が聞かなかったら、氷魔法を唱えよう」
「そう言うわりには、想心と雫は氷魔法取得してない。だから先に覚えればすぐ対処できたのに」
アンジは拗ねてしまって悪かったよと謝るが、なぜかデッドアーバーはその後、俺たちに攻撃はして来ない。簡単にデッドアーバーが消えないわけって一体と考えていたら、焔副団長がやって来る。
焔副団長が来たことによって、デッドアーバーは消えていった。ラットリエ姫は焔副団長に会えたことでキャーキャー騒いでいる。
「ラットリエ」
「はい、焔様」
「そろそろ城に戻って平気だ。すでに条件を満たしているシジ族がライトグレーノーノ王国へ到着している」
それを告げる焔副団長の言葉でラットリエ姫は微笑むのではなく真顔となり、空気が変わって空模様も変わり始めた。
「焔様ご冗談ですよね?」
「冗談ではない。確認しに行けばいい話だろう。それにラットリエ、ファウと繋がっていただろ?」
えっと俺たちはついファウの方を向き、ファウは冷笑をしてカスてクラインがみるみると色が変わり果てていく。まさか夏海をあのようにしたのもお前なのか。
「邪魔者は排除したかったっすから、焔副団長の妹さんを拉致らせたんすよ。そうすりゃあ、焔副団長は動くだろうと」
「矛盾している。なぜそうまでして、自分の妹を拉致る必要はなかったはずだ」
「取引したんすよ。焔副団長の妹と引き換えに姉ちゃんと一緒にいられるようにって」
「ねずみはこんなこと望んでるはずがないし、ファウの母ちゃんだって望んでないはずだ!」
言ってみるもファウの心はすでに壊れていたのかもしれないと感じてしまう。だってファウの瞳は殺意があるような瞳で、今にも襲いかかって来そうだ。
夏海が知っちまったら、夏海だって闇落ちする可能性だって出てくるのによ。
「ばれてしまったら仕方ありませんね。焔様が私のものにならないと言うならば、焔様の妹をここで殺してあげます。そうしてほしくはないでしょ?」
しかし焔副団長は表情が変わらずそして鼻をほじくり始めた。はしたないとアンジがあわあわしているも、ふーんと言う軽いノリだ。
次第にラットリエ姫は怒りが耐えられなくなったのか、デッドマウスが数体現れてしまう。
「よくわかりました…とでも言うと思っていらっしゃいますの!」
ラットリエ姫とファウはあの巨大ネズミに乗って俺たちを見下し、どうするんすかと焔副団長を見た。焔副団長は丸めたらしいものを巨大ネズミに飛ばし、どういった教育を受けていたんだと思った俺とアンジ。
「自分はラットリエ姫の暴走を止めに入る。あれだとおそらく璃子を巻き込むつもりだ。想心とアンジはもし可能ならねずみと接触して、ここに連れて来い。いいな?」
「私は?」
「雫は夏海に打ち明けた後、明香さんに報告して連れて来てくれ。現況はバラバラになってしまった家族だ」
バラバラになってしまった家族が原因で、カステクライン使いとしてではなく、デステクライン使いになっちまったってこと。そういうこともあり得るんだと頭の中に入れながら、俺とアンジはねずみを捜すことになった。
◆
ミズノ王国……
海が荒れ始めていき、嵐が起きてもおかしくはない状況で、想心たちが少々心配だ。眺めていると左大臣が隣へと来て、私と一緒に海の様子を見ながら言われる。
「国王陛下、想心殿をホノオノ王国に留学させてよろしかったのですか?」
「今も迷いが生じているが、他国を回って体験させたほうがいいと思っていてね。かつて汀春がしたように、他国の問題も解決してくれると思っている。ただ…」
これはまだ確証は持ててはいないけれど、想心の心に何かがいるのは明白だった。それが一体なんなのか、内に隠していたものがいずれ現れるのではないかと恐れる。
もしかするとこれは想心をデステクライン使いにさせるために、罠が仕組まれていたら大ごとになってしまう。それは一番に避けたいことだから、アンジをつけさせた。
「国王陛下」
「すまない。嫌なことを思ってしまった。この嵐が早く止んでくれると嬉しいね」
今はただ想心たちが無事に帰って来ることを願いながら、海を眺めるのをやめ、できる限りのことをしていくことに。
◆
王様はブラックノ団に璃子さんを奪われたことで、とてもお怒りの様子だとしても、団長と副団長は何もしなかった。これでよかったんだよねとネズミに指示を与えながら、ふと弟の顔が浮かぶ。
弟はお父さんがこっちにいることで、ショックを受けてたと思う。わずみも実際にお父さんと再会した時、かなりショックだった。お父さんと過ごした時間はとても少なかったけれど、お父さんの方から話しかけてくれてたな。
「ねずみ?」
「お父さん?え?なんでこっちに来てるの?」
「冤罪として処刑されたというより、持病が再発してね。刑務所で亡くなったんだ」
「じゃあ裁判は?」
中断して幕は閉じたと思うと聞かされた時、お父さんに罪を着せた人が許せなかった。今ものうのうと生きている様子を浮かべるだけで、何か仕掛けをしに生の世界へと行こうと思ったけれど、お父さんはそれを望んではないことぐらい、顔に出ていたな。
だからたとえ団が違くともお父さんとできなかったことをたまにしている。それに誰が犯人なのかお父さんから教えてはもらってなかった。一体誰なのか、まだこっちに来ていない人間なのかも不明のまま過ごしている。
少しお父さんに会いに行こうかなと思っていたら、お父さんのほうから会いに来てくれた。珍しいなとお父さんと手を振りながら、お父さんのところへ行く。
「お父さん、まだこっちに滞在してたんだね。どうかしたの?」
「今すぐ天の世界へと行け」
その後の言葉を受け入れられなくても、お父さんは覚悟をしていたんだ。わずみはお父さんとハグをして、天の世界へ逃げることにした。




