42話 ヒノ村②
トキ婆ちゃんに依頼があるか確認したところ、手伝ってほしい依頼があり、その手伝いを行なっていた。こんなもんかと火草という薬草をカゴにわんさか入れていたら、焔副団長が戻って来る。
服は乱れていて多少傷を負っているから、アンジがカステクラインを起動させた。
「カステクライン!水、貝殻の海波!」
焔副団長の傷が癒えていき何があったのか事情を聞くことに。
「焔副団長、何があったんですか?」
「ライトグレー城に乗り込もうとしたところ、ライト団の団長に攻撃されて入ることができなかった」
「リラ団長!?」
「えっとつまり思穏の団長ってこと?」
三人が頷きてっきりイメージではオラオラ系の団長だとばかり思っていたがそうではないらしい。
「リラ団長がそっちにいるのって珍しいな。大体、生の世界にいるって噂があるよ」
「僕も噂程度でしか聞いたことがなかった。副団長、リラ団長は何か仰っていました?」
「思穏の邪魔をするなと言われた。思穏も自分の妹狙いらしい。連れて行くから止めてくれないか?」
「副団長、想心を獄の世界に連れてったら校長が怒りますのでやめましょう」
アンジがそう言ったらなぜか青ざめる焔副団長であり、きっと苦い思い出が存在するのだろうと感じた。思穏が動いてくれているのなら、大丈夫だと信じたい。
とにかくこれを運ぶかとカゴを背負い、依頼主のところへと持って行く。ありがとよ、兄ちゃんたちと言われ、ポイが入ったことを確認した。
それじゃあひとまずホノオノ国に戻るとするかと思っていたところ、カステクラインがくるくると回る。誰だと思いながらカステクラインを起動した。
「カステクライン!連絡、水のペンギン!」
カステクラインから水のペンギンが現れ。俺の周りを一周回り俺の手のひらに乗っかる。ファウの声だ。
「ファウ?どうした?」
『目を離したすきに夏海がいなくなっちまったっす!想心の兄さんたちにも手伝ってもらってるけど、どこにもいないんすよ!そっちにいないっすか?』
「いや、見かけてねえし、俺たち今、ヒノ村に来てんだわ。見つけたら連絡するな」
頼むっすねと切れてしまい、夏海が行方不明になるだなんてな。夏海を探そうと焔副団長が言ってくれたことで、手分けしてヒノ村の村人に聞き込みをすることにした。
大半の村人は見かけていないと言っていて、さっき玖朗が来たのと何かに繋がるんじゃと考えていたらミケがヒノ村へと来る。俺たちを見つけたことで停止し、手帳に何かを書いて俺たちに見せてくれた。夏海の居場所知ってるとあり、案内しろと伝え案内してもらうことに。
ヒノ村から少し離れた林へと入って行き、進んで行くとポツンと小屋があった。そこに夏海がいるんだろうかと小屋にお邪魔したら俺たちはつい攻撃体勢になっちまう。なぜなら体が猫で顔は夏海のまま。
夏海はいつもの笑みではなくどこか寂しそうな笑顔を出しながら俺たちに告げる。
「あたし、もうすぐで猫になっちゃうみたい」
「ミケのようになるってことか」
ミケに聞いてみると表情は変わらずとも、深く頷いた。どうにかして元に戻せる方法があるんじゃないかって思う。すると雫が思い当たる節があるのか夏海に教えた。
「人形が関係しているのかもしれない」
「人形ってあっちにある人形のことか?」
「うん。人形の壊し方や使用した者によって異なるって聞いたことがあるの。夏海の場合はグレイによって壊された。グレイは基本、カステクライン使いを死屍にするのではなく、呪いがかかるだけ」
「じゃあ元に戻れるって認識でいいの?」
それはわからないと断言をする雫で、まあ仮説の一つと捉えればいいってことだよな。それに引っかかるのは今回、ライトグレーノ団とダークグレーノ団が同時に動いていること。
もし次、仕掛けるとしたらと頭にあるページをめくっていく。ねずみにりんご、それからねずみの母親にファウの父親が登場したことに何か意図があるんじゃと夏海に聞いた。
「ファウの両親って?」
「父親は以前会ったよね?デステクライン使いでダークグレー団副団長、石戸牡丹で母親はカステクライン使いで茜の団にいる雲井明香さん」
なぜファウは妹の存在を明かさなかったのかは定かではないが、異父兄妹なんじゃないかって。それで母親にも父親にもそれを明かされずに生きていた。
「ちなみにさ、妹がいたとか聞いたことはないよな?」
「んー妹って言うよりファウは双子で、姉がいるけど離婚して父親に育てられたって聞いたよ」
全てのピースがはまり、なぜそうなったのか謎が解けてしまう。これはファウとねずみが同時にいて、それと両親揃ってる時間帯で話し合わないと、この謎は解けない。もしかしたら夏海を襲ったわけも、そう言う意味かもしれないな。
「アンジ、デステクライン使いを呼び起こすにはどうしたらいい?」
「何する気なの?」
「猫の解除ができるかもしれないんだ」
「こちらから誘き寄せるとしたら、こっちに潜んでるデステクライン使いに頼む程度だと思う。副団長は何かいい方法ありますか?」
同意見だと焔副団長は言い、じゃあまずはデステクライン使いが現れるのを待つしかないようだな。猫になる前になんとかしてあげたく、俺たちはすぐ行動を開始した。
◆
なんとか傭兵の格好をして紛れてはいいけれど、どのタイミングでバレるか不安だった。無事に辿り着けるだろうかと歩いていたら、侵入者だと声が響き渡る。一体誰がと言ってみるとそこにいたのはブラックノ団員たちが暴れている。
傭兵が気を取られているうちに急いで璃子さんがいるであろう部屋を探していると、僕たちを待ち構えていたらしい涼真さんが立っていた。
「意外と早い到着」
「どこにいる?」
「教えるつもりはない。それに他国の人間が勝手に他国の問題に突っ込むのはルール違反」
「それはわかってます。ただ王様がルールを破った場合、国民たちはどうなるんですか?」
いずれわかると涼真さんは言い出して、僕たちを追い払うために死屍を出して来る。僕たちは所詮、手を出せるのは限られているけれど、こんなのはあんまりだと僕とセブラは涼真さんに攻撃を開始した。
◆
まずはねずみとファウの母親である明香さんを訪ねに行こうとしたところ、ちょうどヒノ村にいたらしく話を伺うことになった。
ねずみとファウが生まれてすぐのことで、父親である石戸牡丹からあることを言われていたらしい。離婚をしてくれと。もちろん、双子を育てるために教育費が二倍かかることで、猛反対をしよく喧嘩をすることでねずみとファウはよく泣いていた。
なぜと牡丹に聞くも言えないと一点張りで、探偵に調査をしてもらったところ、借金を抱えていることが発覚。それでも一緒に乗り越えられると信じていた明香さんだったが、牡丹の言葉、家族を守りたいと離婚は成立。借金とりは明香さんが住むアパートには来なくても、明香さんに悲劇が訪れた。それはファウが行方不明になり、ねずみのことをほったらかしにしてしまったそうだ。
ファウは結局、牡丹が見つけお父さんと一緒にいたいと志願があり、ファウはそのまま牡丹と住むことになった。そして悲劇はまだ続く。
明香さんはほったらかしにしてしまったねずみのところに帰ろうとした際、交通事故に巻き込まれてしまったそうだ。入院中、頭によぎったのはねずみの幸せ。保護をしてもらい里親に引き取られたほうがねずみの幸せなのではないかと。決心をし児童相談所に連絡をし、保護してもらうことに。
これでねずみは何不自由なく新しい里親のもとで幸せになってほしいという願いを持ちながら、少しでもねずみやファウ、愛する夫のために働いた。
働いているうちに衝撃なニュースが流れた直後に、ファウと久々に会うことができた。
「母さん、自分はどうしたらっ」
頼りに来てくれたのは嬉しい反面、ねずみに申し訳ない気持ちが強かった。ねずみは困ったり、悩んでいる時、誰を頼っているのだろうかと。
ファウは父親思いの優しい子に育って、その挙句ねずみを捨ててしまった。ねずみはきっと恨んでいるような気分を味わいながら、何度もファウの相談にのってあげていた明香さんだったが、最悪な知らせを受ける羽目に。
それはねずみが自害したという知らせ。駆けつけた時、明香さんはねずみにしがみついて後悔の涙が止まらなかった。絶望に落ちていた際、体に異変が起き検査を行ったところ、病気が発覚をしてファウに看取られながらあの世を去ったと言う。
少ししてこっちの生活に慣れた時期に、偶然とファウに出会ってはごめんというようなぎこちない笑みでファウは現れた。
「どうして…?」
「災害に巻き込まれてここに来ちゃったっす…。まだやりたいことったくさんっ」
ファウは今でも泣きじゃくりそうな顔立ちで、明香さんはファウを優しく包み、一緒に泣いたそうだ。落ち着いてファウにこう言われる。
「母さんが名付けてくれた名前を変更すること許してほしい。自分さ、ずっと後悔してたことがあって」
「後悔?」
「うん。誘拐された時、実はさ自分じゃなくて姉ちゃん目当ての人で、姉ちゃんを助けようとしたら捕まったっすよ。姉ちゃん、あの時凄かったっす。自分のために抵抗して助けようとしてくれたところで、誘拐した人がさ姉ちゃんを諦めて自分だけを連れて行かれちゃったっす」
その言葉でねずみにかけていた言葉を思い出してしまうも、グッと堪えてファウの言葉をしっかりと聞いた。
「姉ちゃんが苦しんでいた時期、自分は父親を選んで姉ちゃんをひとりぼっちにさせちゃったっす。だから姉ちゃんがあっち側にいるなら、自分はこの世界に残って姉ちゃんがしようとしていること全部止めるって決めたんすよ、母さん」
ファウは凛々しい顔立ちで覚悟を持って行動をしていることを知った明香さんは、ファウの言葉を受け入れそして明香さん自身もねずみと向き合おうと決めたらしい。
「あの時、みっともないところ見せてしまってごめんなさい」
「いえ。ねずみにはちゃんと言葉届いてるはずです」
あの時、明香さんがねずみに言ったねずみの由来の言葉に、俺たちは心に沁みたんだ。
〝ねずみの由来はね、ずっと願いが実りますようにとつけたの。ねずみの夢をお父さんとお母さんは望んでた。それなのに、ごめんね、ねずみ。そばにいてあげられなくて、真実を伝えられなくて、苦しかったわよね〟
あの場ではねずみの瞳は揺るぐことはなくとも、誰だってわかるくらい涙を必死に堪えていたことを。
「ちゃんとねずみと向き合ってあげていたら、まだ生きていたかもしれないと何度も思ったわ。あっちではもう二度と戻ることはできなくとも、ここでちゃんとねずみと向き合うつもりよ」
「明香さんとねずみがちゃんと話せる時間は確保するとして、旦那さんが冤罪というのはお聞きしたことは?」
「えぇ、聞いてるわ。ある人物によって嵌められ罪を背負うことになったと。その罪はデステクライン使いが絡んでることもね」
だからいくら証拠を探そうとも見つからなかったということになる。俺たちで見つけられたらいいけれど、そう簡単に上手くいかないよな。
そしたら焔副団長が何かを感じたのかいきなり立ち上がり外の方を向いた。どうかしたんですかとアンジが焔副団長に聞くと、いやと座り直す。
「そろそろ戻らないと門限に遅れそうだわ。まだこっちにいるのよね。何かねずみの情報が入ったら教えてちょうだい」
明香さんは会計を済ませて行かれてしまい、とにかく次ファウに話を聞いたほうが良さそうだな。
「ファウに相談しに行かないか?」
「そうだね。それにしても一つ疑問が抱いたことがあったんだ。なんでファウはねずみちゃんのことを教えてはくれなかったんだろう」
「自分も気になっていた。なぜファウは今までこのことを隠していながら過ごしていたのか。ねずみと何度も会っているはずだしな」
「言われてみればそうかも。もしかしてファウは何かを隠してるとかじゃない?」
アンジたちも同じことを考えていたらしく、早速アンジがファウを呼び出してもらっていると、助けてくれと店に入ってくる村人。焔副団長がどうしたとその村人に質問をすると、村人はトキ婆がと焦っていた。
アンジは先行ってと合図をもらい俺たちはトキ婆ちゃんのところへと急ぐ。トキ婆ちゃんの家付近には村人が密集しており、こっちだと村人たちが俺たちを呼んでいた。開けてもらうとそこにはトキ婆ちゃんが倒れており、焔副団長が確認をしている。
「トキ婆ちゃんって持病とか持ってんのか?」
いや持ってないと村人たちは発言をしており、となれば誰かに襲われたか病気が発覚して倒れたかの二択。意識はあるんだよなと待っていると、焔副団長がトキ婆ちゃんを抱えた。
「副団長、トキ婆ちゃんは?」
「気を失っているだけだから大丈夫だろう。誰か玄関の扉を開けてくれ」
村人の一人が玄関の扉を開け焔副団長はトキ婆ちゃんを寝室に寝かせているとアンジが到着する。
「アンジ、念のため医者を呼んでおいてくれ。自分は一応、ティモファ王に報告してくる」
何も起きてはいないはずだが焔副団長は何かを掴んだような気がした。俺と雫でトキ婆ちゃんが起きるのを待つことに。
◆
団長でもある涼真さんに勝てるわけじゃないから、結構な傷を負ったとしても負ける気はさらさらなかった。現世にいた頃の僕はキッパリ諦めていたかもしれない。
なんとかして璃子さんがいるであろう部屋に辿り着くことさえできればいいな。セブラは一級魔導士だから涼真さんの魔法は大体把握している。ならと僕はセブラにアイコンタクトを取り分かってくれたのか、セブラは涼真さんに攻撃し続け、涼真さんもムキになってセブラだけに攻撃をし始めた。
今がチャンスと僕は涼真さんと戦うのをやめ、真っ先に先へと進む。気づかれる前に璃子さんのところにと思った直後のことだ。複数の針が刺さり、それが痺れ針だと知り大胆に転ぶ。
「王様のおもちゃを奪うのは駄目だよって教わらなかった?」
「智人さん、こんなのは間違ってるっ」
「間違ってるのは正義感を出す奴らだ。つまり君もそうってこと。今更償っても意味がないんだよ!」
智人さんは痺れた僕を蹴り飛ばして行き、智人さんが近くに来ようとした時のことだった。なんでと愕然してしまうほどで、僕の前に現れたのはなんと美命ちゃん。
「カステクライン使いがなんのよう?今ライトノ団とブラックノ団に侵入されてるから邪魔しないでもらえない?」
「間違ってるのはライトグレーノ団。やってはいけない行為をしたのはこちらでも報告を受けている。直ちにカステクライン使いを解放しなければ、あなたに大きな天罰が起きる」
「ご忠告どうもありがとう。ただ俺たちはやってはいけない行為範囲外だよ。確かに王から命を受けたけど、王に吹っかけた人物じゃない。だから君はカステクライン使いは何もできないってわけさ」
美命ちゃんは僕に背を向けたままでどんな表情でいるのかわからないけれど、美命ちゃんの怒りが肌で感じ取れるほど怒っている。その怒りは智人さんではなく、何もできない自分への怒りだった。
「図星だったかぁ。それとも友達を助けに来ちゃった系か」
「思穏くんは関係ない」
「ふうん。まあどちらにせよ、これ以上思穏を痛めつけていたら上からガミガミうるさいんで。少しすれば痺れは切れるから。じゃっ」
そう言った智人さんはどこかへと行ったのか、美命ちゃんが振り向いて大丈夫と手を貸してくれる。
「僕を助けちゃったら駄目なんじゃ」
「デステクライン使いはカスてクライン使いを助けるのは御法度だけど、カステクライン使いはデステクライン使いを助けても大丈夫」
それは知らなかったなとまだ痺れがあるもなんとか歩けそうだ。美命ちゃんは前のこともあって僕と目を合わせようとはしてくれなかった。
「この前はごめんね。あんなこと言っちゃって」
「いいよ。あのさこの前言ってたことって本当なの?そのセブラは嘘をついてるって」
「それは言えないけれど、いずれセブラの本性が現れるかもしれないから気をつけてね」
うんと答えると美命ちゃんはそれじゃあといなくなってしまい、僕は璃子さんがいるであろう部屋へと向かうことに。




