41話 ヒノ村①
数日が経ちネズミの頻度はほとんどなくなる一方、焔副団長はイライラモードが落ちつくことはなかった。
後一歩のところで璃子さんは奪われてしまったようで、あっちに乗り込むにしても戦力がないため、璃子さんが無事でいることをただ祈るしかない。ただその一件が終えたと同時に兄貴が回復して戻って来てくれたから俺的には嬉しいかな。
ニャヴィのニャウ族たちは引き続き、璃子さん情報を巡るべく、ネズミを追いかけ回すそうだ。
「兄貴、まだ回復したばっかなのに、大丈夫かよ」
「平気。鍛錬を積み課せねていけば、あんなことにはならず僕も力を発揮できたかも知れない」
兄貴も璃子さんが奪われてしまったことで、団の一員として今やれるべきことをしている。ほどほどになと兄貴の邪魔をしないようにその場から離れて、夏海のところへと行ってみた。
夏海はあれ以来起きることはなく、魘されている状況で、宮廷医師のところにいる。アンジもそれなりに治療魔法は覚えているようで、付きっきりだ。ファウは夏海を助けられなかったことで、結構凹んでおり雫がそばにいてくれている。
ノックをして夏海の様子をみるも状況は変わらずで、アンジは疲れて寝ていた。そばにあったタオルケットでアンジにかけてあげる。
「想心じゃねえか」
「燎さん、夏海の容体は変わらずですか?」
「アンジと協力してやってはいるが、いつ死屍になってもおかしくはねえよ」
宮廷医師、保炭燎さんはホノオノ王国の宮廷医師であり、あっちにいた頃、少しお世話になった人でもあった。
兄貴が元気になったところで、一度ミズノ国へ戻ろうとしたが、焔副団長が駄々を捏ねてるし夏海とファウをおいては帰れないからまだ滞在をしている。
ちょっくら気分転換にリエートでポイ稼ぎすっかなと部屋を出ようとしたとこと。汀が口に咥えているものに俺はつい悲鳴をあげちまったことで、アンジが起きてはアンジは気絶をしてしまう。一旦出ようかとそのまま汀を抱っこして退散した。汀はネズミを咥えて離そうとはせず、とにかくミケのところに行くか。
ミケが使用している部屋へと行き、ミケ入んぞと扉を開けた瞬間に、物が顔面に当たった。なにすんだよと言いたかったが、ミケはシャーと威嚇している。威嚇している理由は部屋の中にいるローブを羽織っている奴だ。つい俺はカスてクラインを起動させる準備をする。
「てめえ誰だ?」
「ごごに焔はいるだが?」
「副団長?」
んだと頷いて確か焔副団長はレイン団長にこき使われているからな。それにそのローブどっかで見かけたようなと考えていたら、ミケが俺の前に立ってシャーと再び威嚇している。
「わは何もしねえだが、焔にづだえどいでぐれ。璃子を必ずだずげる。ぞれがわのづぐないだど思うだがら」
「あーうん。伝えとく」
「だのむ」
そう言って知らない奴はいなくなったところで、ミケが目を光らせて俺を睨んでいた。なんだよと思ったら俺に背を向けて深い深いため息を出す。
「ミケ、悪いんだけど汀がネズミを離そうとしなくてさ。なんとかとってくれない?」
再びこちらを向いたミケは本当に嫌そうな顔立ちでありながらも、汀を掴んでネズミを離してくれた。そのネズミはミケが怖いのかさっきよりおとなしくなったようで、ミケは空き瓶にそのネズミを入れて俺に渡す。
「ありがとうって言いたいんだけど、このネズミどうすりゃあいい?」
ミケは机に置いてあるホワイトボードに何かを書いていき見せてくれると知らんと回答が来ちまった。ただ単に汀がネズミを咥えたわけじゃなさそうだしな。
どうすっかなと汀を降ろして瓶の中にいるネズミを眺めていたら扉が開いた。
「おっ雫。ファウ大丈夫そうか?」
「まだ落ち込んではいたけど。夏海ちゃんのそばにいることにしたみたい。えっと何してるの?」
「さっきさ汀がこのネズミ咥えてたんだけど、ピンとくることがなくてさ。ミケに聞いたら知らんって言われて困ってんだわ」
「なるほどね。ん?普通のネズミじゃないし、上品なリボンつけてる…。もしかしてライトグレー王の姫とかじゃないよね?」
するとネズミはこくんこくんと頷いていて、せっかくミケが入れてくれたが瓶から出してあげる。本当の姿には戻れなさそうで雫がカステクラインを起動させた。
「カステクライン!変身、姿現し!」
雫のカステクラインによってネズミの姿が変わり、ネズミの擬人化となる。銀髪に耳はもちろんネズミの耳で尻尾も付いている。服装はライトグレーに銀色が多少付いているドレスだ。
「元に戻していただきありがとうございます。私はライトグレーノ王国の姫、ラットリエと申します。今回こちらにお邪魔させていただいたのは他でもありません。父上の目を覚させてあげてほしいのです」
「もしかして赤毛の女性と関係があるんですか?」
「えぇ。私は取引の場を拝見させていただいておりましたが、嫌な予感がして父上を止めようとした際、取引の方に魔法をかけられてしまいこちらの世界に閉じ込められてしまったのです」
「取引した相手って誰だか覚えてる?」
雫がラットリエ姫に質問するも、ラットリエ姫は首を横に振り覚えていないらしい。
「相手さえわかればいいけど、ちなみにどんな取引をしたの?」
「獄の世界と天の世界の決まりごとは同じだと言うのに、父上に偽の情報を与えたのです。獄の世界ではアノ族と結ばれて良いと」
「ん?姫がいると言うのにライトグレーノ王は別の女性を好んでいると?」
「そうではありません。母上が亡くなって弟たちがまだ幼いこともあり母親を求めているのです」
そうは言ってもアノ族を好むとはどうかと思うんだが。それに俺たちは獄の世界へと行くことはできないからどうすることもできない。かといってラットリエ姫が俺たちに助けを求めているからなんとかして行く方法があればいいんだけどな。
悩みどころだなと考えていたら、アンジの声が聞こえラットリエ姫を隠した。それによってアンジが怪訝そうな顔立ちで何隠してるのと言うも見ないほうがいいと言う。しかしアンジが見てしまったが、気絶することはなかった。
「平気か?」
「うん。なぜラットリエ姫がいらっしゃるんですか?」
「これはアンジ様。ご無沙汰しております」
「ネズミ嫌いじゃねえのかよ」
「ラットリエ姫は全然平気というより、以前助けたことでネズミたちがちょっかいしてくるから苦手意識を持っただけなんだよ」
そういうことだったのかと理解したところで、本題に戻った。
「赤毛の女性はすでに父上のもとへと連れて行かれたと伺っており、父上の目を覚ますにはある人を探して来てほしいのです」
「どんな人なんだ?」
「赤毛の髪質で子供好きにシジ族の方を探しています。簡単に見つかるとは限りませんが、その方と取り替えてもらいたいんです」
無茶苦茶なことを言い出して、やりたいが入れ替えるってことになるとその人の人生を台無しにするってことだよな。ここは焔副団長が決断することになるも、焔副団長はやろうと言い出しそうだ。
「難しい案件ではあるけど、僕たちで探してみるよ」
「おい、アンジ」
「焔副団長もやると思うし、最悪な展開にはなってほしくない。それにラットリエ姫を放っている王様の目を覚さないと」
そうだけど俺的にはやりたくない案件なんだよな。これって法的にはアウトな話になる。そしたら焔副団長もやって来てしまい驚くにしても、ラットリエ姫はなぜか頬を染めていた。
交互に見ていってちょっとすまんとアンジと雫と一緒に部屋を出て三人で話し合う。
「もしかしてさ、璃子さんを奪った現況って焔副団長にあるんじゃねえか?ラットリエ姫、焔副団長が来たら顔赤くなってたぞ」
「気づいちゃったよね。僕と焔副団長が任務でこっちに来ていた時に救ってあげたのがラットリエ姫だった。焔副団長はラットリエ姫を獄の世界に戻してあげた」
「つまりラットリエ姫は焔副団長に一目惚れしちゃって、璃子さんを奪ったってことなの」
「そこまではわからない。どちらにせよ、まだラットリエ姫を信じてはいないから様子見で探すでいいかな?」
アンジがわかって行動するなら、まあいいとするかと一度そっと扉を開けて二人がどんな感じなのか見てみる。ラットリエ姫、恋してますというような顔立ちで笑顔が微笑ましい。
ミケはずっとそこにいたから若干引いてはいても、焔副団長は普通に喋っている。邪魔したくないが探しに行こうと副団長と声をかけた。
「副団長、あの」
「話はラットリエから聞いた。探しに行くに決まっている」
ですよねと俺たちは苦笑しながら、俺たちは赤毛の女性を探しに行くことに。
◆
いくら扉を叩いたとしても、開けてはくれず、わのカステクラインも奪われてしまった。ここは獄の世界、ライトグレーノ城で間違いはないけれど、この状況かなり酷い。
わは確かにライトグレーノ団に挑んでいた途中で、戦いに挑む前に大好物のリンゴを食した。それに盛られていたのかは不明であっても、茜の団にミッドヴィークもしくはデステクライン使いの人が侵入している。早くそれを伝えたくてもカステクラインを奪われてしまったからどうすることもできない。それに起きた際、わの服装は団服ではなく真っ赤のドレス姿だった。
どうにか脱出したとしても、カステクラインがなきゃ帰ることは不可能。ここは従ってわのカステクラインがどこにあるか確認しなければならない。
一人でも味方になってくれそうな人は獄の世界にいないから、なんとかして仲を深めるしかと考えていたら鍵が開く音がする。誰と身構えていたらライトグレー団の団服を着ている子が入って来た。確かこの子ってねずみちゃんだったはず。ネズミがどれくらいいるのか確認をしてわの耳元に囁く。
「育さんがこっちに来る。逃げたいのならば育さんと逃げて。それでもあなたを刺した殺人者と一緒に逃げたくなかったら迎えが来るまでなんとしてでも持ち堪えて」
「なぜわに?」
「さあ。ただわずみはシジ族を守りたいとだけ伝えときます」
ねずみちゃんはそれを言ったあと、鍵を閉められ育さんがこっちに来ているのなら育さんと向き合わなければならない。育さんが来るまでわは大人しくしておくことにした。
◆
心当たりがあるというヒノ村に到着し、ヒノ村ということで火を見かけることが多い村だ。本当にいるんだろうかと探し回っていたら、どうだい兄ちゃんたちと店主に声をかけられる。
うまそうな肉を焼いていて、小腹も空いたことだしポイを払ってそれを頬張った。うまっと声に出しながら、だろと店主は微笑む。焔副団長は頬張りながら聞き込みをする。
「シジ族で赤毛の女性っているか?」
「シジ族で赤毛の女性ねえ。この村にいたっかな」
「ムツのことかね?」
後ろを振り向くと杖をついているばあちゃんがいて、杖にはリンゴのキーホルダーをつけている。
「そういやムツちゃん赤毛だったな。今は髪の色が変わっちまったんだよ」
「訳はわからんぬのだが、おそらくストレスで赤毛じゃなくなったんじゃろう」
俺たちには状況が読めずばあちゃんがムツさんのところに案内してくれることになった。村の片隅にある立派な家に住んでいて、ムツとばあちゃんが呼ぶと庭から顔を出した。
璃子さんレベルで麗しい人だとしても、焔副団長が璃子のほうが可愛いと言う。
「トキ婆、どうしたの?」
「ムツに会いたいと言い寄ってな。ミズノ国にいる青の団員さんたちじゃ」
俺たち青の団とは一言も言っていないのになんだこのばあちゃんと思ってしまった。
「こんにちは。リエート進行中ってところ?」
「いや、違う。赤毛の女性をっ」
アンジが焔副団長の口を塞ぎ、正直に答えそうで俺が代わりに聞くことに。
「なぜ赤毛ではなく金髪になってしまったんですか?」
「私でもわからないの」
「ネズミと関係は?」
「ネズミ?いえネズミは関係ないと思います。両親の遺伝が関係しているんじゃないかとお医者様に言われていて。母が赤毛で父が金髪なんです」
ふと赤いリンゴと黄色いリンゴを思い浮かべてしまったがそれは無視しよう。焔副団長はアンジの手を解き、ムツさんに言ってしまった。
「自分の妹がライトグレー城に囚われている。あんたはシジ族でもあるから、身代わりになってくれ」
「身代わり…?」
ムツさんは困った表情をしていて、すみませんと焔副団長を引っ張って距離を離す。
「副団長、いくらなんでも」
「ラットリエの頼みだ」
「これ団長がもし気づいたら俺たちじゃ庇いきれない。アンジはラットリエ姫の言葉を信用していないし、俺も雫も獄の世界の人間には裏があると」
「それくらいわかった上で行動している。それに力を貸してもらうだけだ。それでも腑に落ちないか?」
副団長だからムツさんも助ける方法だとしても、ムツさんは赤毛じゃない。考えれば考えるほど頭が痛くなりそうな時のことだ。俺を担いだ焔副団長で何がどうなっていると正面を向いたら死屍に囲まれてる。
なぜ俺は担がれてるんだと降ろしてくださいと言おうとしたら、濡羽玖朗の声がした。
「僕の弟を降ろせ」
「それは無理だ。てっきり育がいると思っていたがそうじゃないようだな」
「うちはいるよ。てかさこんなところにいていいわけ?ほむちんは獄の世界に行けるじゃん。大事な大事な妹を助けに行かないの?それとも怖気ついちゃった?」
「そうじゃない。自分は責務がある。想心を守れという責務をな」
ふうんと伊雪は俺が見えるほうに来て、伊雪がつけているペンダントに俺は驚愕してしまうほどだ。
「おい、伊雪!」
「気づいちゃった?あははは。いつ使おうか迷ってるんだよね。まだ使わないから安心しなよ。それとも今ここで使ってあげよっか」
「伊雪、そこまでにしておけ。想心、忠告しておく。獄の世界にいるシジ族やアノ族を簡単に信じるな。信じていいのは僕とセブラのみにしておけ」
「えーうちは?」
入っていないときっぱり言う濡羽玖朗であり、少し機嫌を悪くする伊雪。ここで争うつもりかと思っていると、アンジと雫が来たことで、死屍を残し二人は一瞬でいなくなった。
「焔副団長…」
「悪い」
俺を降ろしたあと、焔副団長はスッといなくなって、俺はカステクラインを起動させる。
「カステクライン!水、魚の大津波!」
死屍を退治しても、焔副団長はおそらく獄の世界へと行った可能性が高い。それにさっき玖朗に言われたこと。玖朗とセブラだけを信じろって言われても、なぜそう言い切れるのか不明だ。
「想心?」
「あっ悪い。副団長、やっぱり一人で様子を見に行くってさ。だからムツさんのことは大丈夫」
今はそれしか言えずヒノ村でリエートがないか、トキ婆ちゃんに聞きに行くことにした。
◆
ねずみちゃんは落ち着いたところで、すぐライトグレー城へと向かってしまったけれど大丈夫かな。僕たちはライトグレーノ城に入ることが許されず、どうやって侵入すればいいのだろうか。
リラ団長が戻って来てはセブラと二人でどこかへと行ってしまって、僕はルルラちゃんが飽きないように遊んであげていた。璃子さんと会うタイミングがあれば奪うことは絶対にできるよね。
そんなことを考えていたらすみませんと声がかかり、振り向くと灰色の髪質に猫目をした少年が現れる。僕の一個か二個したぐらいかな。
「どうかされました?」
「迂生を団に入れていただくことは可能ですか?」
驚いた。まさかここで団に入りたいという子が現れるだなんて思いもよらなかった。
「えっとごめん。君の出身は?」
「ライトノ国で今日は観光でライトグレーノ国に来たんです。ねずみが大量にいると伺ったので」
今はリラ団長がいるからリラ団長に確認をしなければならないという決まりがある。だからそのことを告げようとしたところ、セブラが戻って来た。
「セブラ、リラ団長は?」
「違う任務に行ったけど、優じゃねえかよ。紹介するな。こいつは猫又優。それでどうした?」
「セブラ先生、迂生はライト団に入りたいです。駄目ですか?」
「急にどうしたんだよ。入ってた団あっただろ?何かあったか?」
「追い出されました」
まじかと結構驚いていて団を追い出されるようなことでもしたのだろうか。
「迂生は正しいことを教えてあげただけなのに、お前はいらないと言われて追い出されたんです。気分転換にこの国に訪れてたところ、思穏先輩を見かけたので」
「そうなのか。俺は大歓迎だけど、思穏はどうしたい?」
「構わないけど、僕たち今からライトグレーノ団に喧嘩を売ろうとしてるんだ。それが終わってからでも大丈夫?」
「手伝えることがあるなら手伝いますよ。何すればいいんですか?」
優くんは好奇心旺盛なのか目を輝かせており、優くんの得意が分かれば一緒に行動しても構わない。するとセブラが何かを閃いたようだ。
「優とルルにちょっとしたお使い頼んでもいいか」
「なになに?」
ルルラちゃんも楽しそうなことが起きるかもということでやる気満々だった。二人の耳元で囁き、行ってくると二人は一緒にどこかへと行く。
「二人に何を頼んだの?」
「ちょっとな。それに二人には刺激が強いかもしれないから行ってもらっただけだ。それじゃあ乗り込むぞ」
セブラが傭兵の服を盗んで来ていたらしくそれに着替えて僕たちはライトグレーノ城へと入ることにした。




