39話 ローノ街④
ルドゥンに侵入することができ、ネズミや見張りの者たちがいなくてスムーズに動けている。針尾智人は誰かを庇っているんじゃないかって。
まるでファウの親父さんのように冤罪だったとしたら。今度会えたらもう一度聞こうと走っていたら、止まれという合図で止まる。俺たちはエンリさんのお子さんを捜し、レイム団長たちは璃子さんを救出。うまく見つけ出せればいいが、見取り図を見させてもらった時、結構な通路があって迷路のような形だった。
「こっちに何人か来る。ミケ、突進しろ」
扱いが雑すぎると思っていても、ミケは怒っていながらも突進してくれて、ミケに気を取られているうちに中へと入る。想像以上な工場で、俺たちは右へレイム団長は左の通路を使い探すことになった。
焔副団長は璃子さん救出に行きたかっただろうけれど、俺たちがいることでこっちを選んでくれた。
「焔副団長、よかったんですか?」
「自分は責務を全うするために、こっちを選んだまでだ。エンリさんのお子さんを見つけたら自分は璃子を救出しに向かう」
「了解です」
途中で従業員に見つかりそうになり、俺たちは物陰に隠れているが、何か様子がおかしい。雫が死屍になってると言っていて、俺たちはカステクラインを起動させる。
「カステクライン!水、浄化の雫!」
死屍になってしまった従業員たちを浄化してあげて、次次へと倒れていくも、教会へ連れていくのは後だと先へと進んだ。あちこちへと悲鳴が上がっており、おそらく針尾智人が仕組んでいたんだろう。
次から次へと死屍に遭遇しては、浄化の雫を唱え進んでいると、子供の泣き声が聞こえてすぐさま行ってみた。そこにはエンリさんの娘さんたちがいて、助けに入ろうとしたところねずみが登場する。
「随分と早い登場ですね。今、団長の邪魔をしてほしくはないので、遊んでもらいましょうか」
エンリさんの娘さんたちは箱に入ってしまい、上へと連れて行かれてしまいその一方デッドマウスとノーマルタイプの死屍が出現した。
時間稼ぎさせるわけにはいかないからちゃっちゃと終わらせる。それぞれ得意魔法を唱え、俺もカステクラインを起動させる。
「カステクライン!水、カワウソの牙!」
汀とカワウソ二匹が登場しデッドマウスに噛み付いてもらう。ねずみも負けずに攻撃をし始めた。
「デステクライン!闇、ネズミの食べかす!」
それは勘弁と防御魔法を唱えようとした時、なにか唸り声らしき声が聞こえる。なんだと思いきや死屍が猛ダッシュでこっちに来ようとしていた。
「焔副団長、あれやばいんじゃ」
「僕と雫が追い払うから二人はねずみちゃんの相手を」
えぇどちらかというとそっち対応したかったと思いつつも、焔副団長がいるからまあいいか。
「団長、派手にやっているようですので、こちらもやらせていただきます」
なんだと身構えていると上から何かが降って来て、よくよくみるとエンリさんの元旦那が死屍となっていた。しかも子供たちを巻き込むだなんて最低な事態だが、子供たちは箱に入っているから死屍になることはおそらくない。
この状況を早めに終わらせて璃子さんを助けに行きたいオーラが凄いでている焔副団長だ。どれくらいダメージを与えられるかわからないがやるしかないとカステクラインを起動させる。
「カステクライン!水、海王の叫び!」
鯨が現れ叫び出しねずみが使用していた魔法がリセットされるも、死屍はあまりダメージが効かない。だったらと次の魔法を唱えようとしたところ茜の団員が場に入って来た途端、ネズミは目を見張った。
「ねずみ、いい加減にしなさい」
「…お母さん」
まじすかと茜の団員をつい見てしまい、年齢は四十代ぐらいの女性だ。てことはねずみのお袋さんは事故か病でこちらに来たのだろうと感じる。
「こんなことしてもお父さんは望んでないわよ」
「嘘言わないで!散々、わずみのこと邪魔者扱いした挙句に捨てて、何今更母親ヅラするの!お母さんのところに生まれてこなければよかったってっ」
パンッと鳴るぐらいねずみのお袋さんはねずみの頬をひっぱ叩くも、ねずみのお袋さんがとった行動にねずみは大きな雫をポロポロと流し始める。
俺が思っていた人でよかったよと安堵を感じ、その間に俺と焔副団長は死屍に捕まっている子供たちを救出することに。
「ごめんね、ねずみ。ずっと苦しませていて、酷いことたくさんしてしまって本当にごめんなさい。そうしなければねずみを失うと思ってたのっ」
◆
わずみが生まれた時から、環境は最悪だった……
物心ついた頃よりもきっと酷かったかもしれない。両親は毎日のように喧嘩して、いつも両親は苛立ちを放っていた。それでもわずみは構ってほしくて、お母さんやお父さんに遊んでほしくて、遊ぼと言うもうるさいと怒鳴られる日々。
水道が止まっていることが度々起きた時は、お風呂に入れず入らなかったことで、イジメが起きていた。辛くなってお母さんに相談したことがある。
「お母さん、あのね、学校で」
伝えようともお母さんはその場から立ち去り、聞く耳を持ってはくれなかった。だから仕事から帰ってくるお父さんに相談しようと待ってみるも、お父さんはいつの間にか帰っては来なくなって離婚したんだと理解した。
わずみが一体何をしたのと頭の中から消えることはなく、時は過ぎていき、高校生活を送っていた頃のこと。
相変わらずクラスメイトからねずみの名前で揶揄われながら、帰宅するとお母さんの荷物だけなくて、お母さんに捨てられたんだと理解した。
一言だけでもいいからメモを置いてくれればいいのに、それすらなく生きる意味が消えたことでわずみは自害した。
目を覚ました時はもしかして夢の中と思っていたけれど、体を起こし一歩前へ進むとボッと青い灯火がつく。蝋燭の灯火を辿って歩いていくと、わずみはやっぱり地獄しか行けないんだと理解した上で進んだ。
役所らしき場所でなぜ自殺したのかを書き、好きな色を選べという選択で迷いがあった。白かそれとも灰色か。ただネズミという名でもあったから、結局灰色を選んだ。その先の世界はわずみが思っていた場所じゃなかった。涼真団長と智人副団長に歓迎された時、すごく嬉しかった。てっきり自害したことによって、大きな罰が下されるのだとばかり。
それに初めて嬉しいことを言ってくれた言葉は、わずみを救ってくれた。
「ねずみっていう名は素敵。どんな環境で育って、こっちに来たのかはわからないけど、これからは僕や智人たちが家族。よろしく」
「詳しいことは聞かないし、女子はほとんど選ばない色だから助かったよ。わからないことがあったらじゃんじゃん聞いて」
なぜあっちでは涼真団長や智人副団長のような人に恵まれなかったんだろうと。涙を零していたらネズミたちが多くいて、最初はびっくりしちゃったけれど、一人じゃないことがわかってここまで来れた。
わずみの家族は涼真団長と智人副団長、それからライトグレー団のみんなだけでいい。お母さんなんて必要ないと突き飛ばす。
「わずみを捨てたお母さんもこっち側の人間なのに、どうしてそっち側にいるんですか」
「…反省したからよ」
「反省?反省したからそっち側に行けるだなんて不公平だと思います」
「そうかもしれない。お母さんもそっち側につくべきよね。それでもね、ねずみ」
お母さんのカステクラインが光り出して神々しい猫が現れる。
「一生限りの人生をねずみは捨てたわよね?環境が悪い状況だとしても、死を選ぶ選択肢は間違ってる。それにねずみはお父さんとお母さんを選んで来てくれたのよ。今でも覚えてる。ねずみの産声を。お母さん、嬉しかった。ねずみの母親になれて」
「わずみは望んでないし選んでんもない!違う両親に恵まれたかった!」
今更お母さんを傷つけたとしても、後悔なんてない。わずみはデステクライン使いとして涼真団長に捧げると誓った。こんなところで心が揺れるわけない。
◆
俺と焔副団長はどう受け止めてあげればいいのかわからずにいながら、残っている死屍を倒していた。親子のぶつかり合い、そしてねずみのお袋さんが言った言葉は同意見だよ。
よくいく神社の神主さんに聞いたことがあった。命の誕生というのは両親の愛はもちろんのこと、その家族の一員になりたいと志願して生まれてくるものなのだと。
俺は間に受けてなかったけれど、兄貴はなるほどというような顔立ちをしてたな。まあその頃は芽森がまだ生まれていなかった時期の話になる。それに誕生日の日は父さんと母さんに感謝されてたな。生まれて来てくれて本当にありがとうって。
ねずみのお袋さんは伝えたかった思いを、今ここでねずみに明かす。
「ねずみが亡くなったと児童保護施設から連絡を受けた時、お母さん後悔したの。霊安室でねずみを見た時、何もしてやれなかった悔い、ねずみに酷いことたくさんしてきてしまった悔い、そういう後悔の思いが溢れて。ねずみを守ってあげたかったのに、守れなくて本当にごめんなさい」
守ってあげられなかったというのはと攻撃を止めたいぐらいだが、死屍が増えて倒しての繰り返しだ。ねずみはお袋さんの言葉では響いていないようで、それほど憎しみが強いのかもしれない。
ずっと憎んでいたとしても自分のためにはならないんだよ。憎しみは簡単に消えることはないかもしれない。そうだとしても人を許す思いは持ってなくちゃその先の未来は最悪な事態へと招くことになる。
おそらくだがお袋さんがカステクライン使いとして天の世界へと来れたのは、自ら反省をし償い、そして自分の心とちゃんと向き合ったからなんだ。そうじゃなきゃねずみと会ったとしてもあの言葉は出ない。気づけねずみ。お袋さんの思いとちゃんと向き合え。
「お母さんになんと言われようともわずみの心は響かない。どれだけ謝っても、お母さんを許すつもりはないよ!」
おいおいまじかよとねずみが出した死屍は、巨大ネズミであっても、この前のハリネズミとは訳が違った。そのネズミは武装したネズミであって簡単に倒せそうな感じじゃない。
俺が思うにこれはねずみがずっと抱えていた思いなんじゃないかって気がする。
「計算に入れてはいませんでしたがお母さんの魂を狩らせてもらう」
「…そう、わかった。なら全力でねずみを止めるわよ。カステクライン!炎、猫の戯れ!」
「デステクライン!闇、コウモリの牙!」
親子喧嘩が始まり俺と焔副団長はねずみのお袋さんを援護しつつ、どうやったら巨大ネズミを倒すことができるのか。
主に攻撃はデッドマウスと似ていて、食べかすを倍に俺たちへと飛ばし、武器で攻撃してはチーズを頬張る。どっからチーズが出ているのか読めれば、そのチーズを奪えばいい話だ。
それに相性的には普通だとしても、弱点が必ずあるはずと俺はカステクラインを起動させた。
「カステクライン!風、ダチョウの疾風!」
ダチョウの疾風は強い風が吹くから一か八かでやってみるも、巨大だからびくともしない。効率よく倒すには有利である植物魔法が妥当だ。ただ雫はアンジと猛ダッシュしてきた死屍を追い払っているからまだ戻ってくる気配がない。
焔副団長はなぜか炎魔法を使っていて、植物魔法は覚えていないっぽい。子供たちが再び捕まらないように動いているが、たまに死屍が子供たちのほうへと行ってしまう。
どうにかして避難させてあげたいんだがと倒していたらミケがやって来てくれた。
「ミケ!子供たち乗せて避難しろ!」
一瞬舌打ちしてため息を出したような感じでも、ミケはさっさと乗れと子供たちに合図を送っており、子供たちはあたふたしているも、一番上の子が乗る。それによって次から次へと乗り、全員乗ったことでミケは脱出してくれた。
よし、これでひと暴れできそうだなと思った矢先、アンジと雫がぜえぜえ言いながら戻ってきてくれる。
「おかえり」
「ただいま。それで今どんな状況?」
「雫、植物魔法で攻撃を与え続けろ。俺たちはねずみのお袋さんを援護する」
了解と二人が言ったところで攻撃を与えようとしたら、俺たちの前に大量のネズミが現れた。アンジ我慢しろと見たら目を瞑っている。
アンジには刺激が強いかと前を向いた瞬間に、何が起きたのかさっぱりだった。俺は壁に衝突しい俺の名と焔副団長を呼ぶ雫の声でアンジが目を開ける。焔副団長も俺と同じパターンが起きたようだ。
痛えなと体勢を立て直しネズミに紛れていたらしい奴らがいた。俺はともかくなぜ焔副団長までもが攻撃を食らったんだ。
「これはこれは青の副団長ではありませんか。こんなところで何ようかね?」
「それはこっちの台詞だ、溝鼠。あんたらに自分の妹は渡すつもりはないとあれほど言っているんだが」
「くくくっ。すでにお前の妹はこちらでいただく手配はすでに済んでいるということを忘れるなよ」
「焔副団長!俺たちは大丈夫なんで行ってください!」
「ネズミ嫌ですけど、僕らでなんとかするので、副団長は助けに向かってください!」
「私が二人をサポートします!」
焔副団長はすまないと俺たちに言い、行ってもらって、ネズミ退治とでも行きますか。チュウ族が現れた以上、あっちでは苦戦しているのを感じる。
とにかくこいつらをなんとかして、ねずみとやり合っているお袋さんの援護に回りたいもんだ。
チュウ族が攻撃を開始しようとした時、炎を纏う鳳凰が飛んで来た。兄貴の鳳凰だよなと愕然としていたら、ぼっと鳳凰が大きな火種を降らせ、次の瞬間その炎が大きくなり始める。
しかしそこには兄貴の姿がなくどうなってんだと思いながらも、俺を吹き飛ばしたチュウ族をぶん殴った。ネズミたちは俺に襲い掛かろうとしたところ、次々とネズミが倒れていく。兄貴、ありがとなと心の中で叫びながら、もう一発殴って気絶させた。
ねずみのお袋さんは結構、負傷していることがわかり、雫が植物魔法で回復させている。
「もう少し楽しませてくれると思ったのですが、時間のようですね」
「ねずみ、話を」
「お母さんと話すことはない。ここがお母さんの」
「ねずみ、よく聞いて!」
ねずみのお袋さんが叫び、ねずみはだんまりとする。ちゃんと聞く耳はあるじゃねえかよと後ろからくるデッドマウスを倒す。
「ねずみの由来ちゃんと伝えてなかったわね。ねずみの由来はねーーーーー」
◆
ライトグレーノ城に入ることは許されず、僕とルルラちゃんはセブラの指導を受けていた。なにも起きないことを願うしかないと練習をしていたら、涼真さんたちが戻って来たと住民たちが騒いでいる。
僕とルルラちゃんは真っ先に宿屋から出て、様子を見に行くとセブラが一発涼真さんに殴っている場面を目撃した。ねずみちゃんは目が腫れていて、どうしたんだろうか。
「何がしたいんだよ!」
セブラがこんなに怒鳴るのは異例のことであっても、涼真さんは嘲笑うような顔立ちでいる。きっとセブラを困らせるためにやっているのではないかと感じた。
「はいはい、そこまでー」
「お前は黙ってろ!」
「怖い顔しない。俺たちの寮に侵入したことは見逃してあげるから大人しくしよっか」
セブラは物言いたげな顔立ちをしているも、涼真さんから離れて僕たちのところに戻る。セブラが怒るという事は璃子さんがこっちに来てしまったと認識すればいいんだよね。
リラ団長がまだ来ないからどうすることもできず、セブラの怒りを鎮めようとしていたところ、ねずみちゃんがその場で泣きじゃくる。ねずみちゃんを慰める涼真さんと智人さんであっても、ねずみちゃんは何かによって影響を受けたのだろう。
「やっぱり捨てたお母さんに何か言われた。許さない」
「家にいてもらったほうがよかったよね。無理に付き合わせちゃってごめん」
いや、違う。ねずみちゃんが流す涙は、怒りや憎しみの涙じゃなく、真実を聞かされたことによって自分の過ちに気付いたんだ。
僕はなぜかとねずみちゃんに近づき、優しく包み込むとねずみちゃんは僕の服をギュッと掴んで目一杯涙を流す。
「あの、涼真さん。しばらくの間、ねずみちゃんをお借りしてもよろしいですか?」
「任務はしばらくやらせるつもりはないからいい。ねずみのことよろしく」
「感謝します」
針、行こうと涼真さんたちは去って行き、近くにあったベンチに座らせねずみちゃんが泣き止むまで待ってあげることにした。




