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シゴノセカイ《改訂版》  作者: 福乃 吹風
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37話 ローノ街②

 ホノオノ王国に戻り俺と焔副団長は、兄貴が属している団へとお邪魔しているも女性率が高い団だな。よく兄貴が属しているものだと客室で待っていると、そっと扉を開けて覗いている璃子さんがいる。

 入ればいいのになぜ入らないんだろうかと声をかけようとしたら、早く入れと背中を押されて入る璃子さんだった。気が強そうな女性が団長でその隣に璃子さんが座る。


「待たせたな。要件はなんだ?璃子を迎えに来たとかなら断るぞ」

「いや違う」


 焔副団長が言った言葉でグサッと刺さったような音が聞こえた気がするも、焔副団長は話を進めていった。


「ローノ街にあるおもちゃ屋に裏があると確信している。そこでレイムの団の力を借りたい。自分たちは所詮、留学生でもあるからできることは限られてるのはわかってるだろ」

「前から気にはなっていたが、仮にそれが罠だったら責任はお前たちになる。それでも構わないというのか?」

「そうならないために動くつもりだ。それに想心の兄が復活するまで、この国から出るつもりはない」


 俺の代わりに言ってくれる焔副団長であり、俺からもお願いしますと頭を下げる。いいと言うまで頭を上げないでいるとあたしからもお願いしますと夏海の声が聞こえた。


「夏海、それからファウ。釈放されたんだな」

「レイム団長の言葉があったから、ファウは赤の団に戻れることができたの。その恩を返させてください」


 夏海とファウは頭を深く下げレイム団長は、悩んだ結果、いいだろうと言ってくれる。


「なら璃子と夏海とファウを使え。璃子、今回ばかりは長期になるだろうから、門限は気にしなくていい。無事に帰って来い。いいな?」


 はいと返事をする璃子さんでなぜか焔副団長は照れていながら、ローノ街に戻ることになった。ただファウを奪いに来るディーグが現れるかもしれないし、それとも絹機涼真が現れるかもしれないから注意しなければならない。


 ローノ街に戻ってみるとデッドアーバーが多く襲撃をしており、璃子さんが真っ先にカステクラインを起動させる。


「カステクライン!炎、ほむらの残石流星群!」


 残石が炎を纏ってデッドアーバーに与えるも、なぜか今回効果が薄かった。夏海もファウも炎魔法を唱えてデッドアーバーに攻撃を与えようとも、倒すことができない。

 何がどうなってるんだと思考を膨らませていたら、子供の泣き声があちこちへと響き渡った。とにかくアンジと雫と合流するべく向かっていたら雫とアンジが吹っ飛んでくる。


「二人とも大丈夫か?」

「副団長、グレイ団長が」

「先に行くから璃子、想心たちと協力して住民たちを守り切れ。それとできるだけ標準語で話してやれ」

「わかった。気をつけて」


 焔副団長は一瞬でいなくなり俺たちは手分けして住民を非難させていくことになった。俺と雫は炎魔法を取得していないから住民を避難させていく。ファウは懸命にデッドアーバーに攻撃をしていて、怯えている住民を立たせ走らせる。

 後逃げ遅れた人たちはいないかと周囲を見渡していくと、尻餅をついたまま動こうとしない少年がいた。そこへと行き大丈夫かと声をかけるも俺の腕を掴んで手が震えている。大丈夫とその少年を抱っこし、避難場所へと行こうとしたらファウの父親が立っていた。


「ファウの親父さん、そこどいてもらえますか?」

「それはできない」

「じゃあファウに正直なことを伝えろよ!本当は殺めていないってこと。それとも息子がこっちに来ていることに罪悪感を持ってんのか?」


 伝えてみるとファウの親父さんは黙りとしてしまい、早くして命を落としてしまったことと、それからそばにいたらファウはここにいなかったかもしれないという罪悪感。

 自分を憎んだとしても、もう過去を変えることはできない。未練を残してここには来たくなかったよな。だから未練を残さずやりたいことはしっかりやらなくちゃならない。


「君には私の思いをわかるまい。冤罪だと言うのに、証拠は抹消され探すことも不可能となった以上、どうすることも」

「それでもだ!ファウはずっとお前を信じてんだぞ!家族だけでも信じてくれてんのに、なぜ希望を持たなかったんだよ!世間は偽の情報に流されて知ったかぶりになってるけどさ、自分を信じてあげなくちゃだろ!」


 お兄ちゃんと抱っこしている少年に言われ、えっと俺自身をつい見てしまった。青く光り輝いており、汀がキューと鳴き始めていく。まるでパワーが宿ったかのような感覚。


「とにかくだ!ファウとちゃんと向き合え!へたれ親父!カステクライン!水、イルカの超音波!」


 イルカが数帯現れイルカの鳴き声で攻撃を与えてみる。ファウの父親をやったかと思うがかすり程度。もしかして副団長あたりか。少年を避難させてやりたいが、逃してはくれそうにない。

 一度引いたほうがいいかと考えていたら、青い炎を纏う龍が空を飛んでいてダークグレー団は炎使いが多いと雫が教えてくれた。龍が俺目掛けて青い炎を発射しそうで、ファウ逃げろと叫びながら逃げようとしたところ焔副団長の声が聞こえる。


「カステクライン!水、海蛇の巻きつき!」


 龍と同じぐらいの海蛇が現れ、龍を巻きつこうと攻撃し始め、かっこいいと少年は海蛇に釘付けだった。


「グレイは?」

「あるはここにいますわ。察しがいいことですこと。この程度で想心が壊れるとかはしませんのよ」

「そうだとしても想心はまだ六段魔導士。あんたらが出る幕じゃない」

「釣れないことですの。あるたちの目的はファウの魂を奪うことですわ。あなたたちこと、他国の者として引っ込んでくれません?」


 そうは言っても団として動くのは当たり前だと言いたいぐらいだった。


「じゃあ一つ、ファウの件は後回しにさせてあげますわ。その代わり、妹さんが奪われないように守って差し上げて。ライトグレー城の王が妹さんをご指名したから今頃、ライトグレーノ団が奪いに向かってますわ。牡丹、ディーグ行きますわよ」

「ちょっと待った!グレイ、なんで敵だっつうのに情報をくれるんだ?」

「ふふっ。決まってますわ。想心に興味がありますのよ。もっと強くなったらお相手頼みますわね。ごきげんよう」


 すっといなくなったが焔副団長は璃子さんが戦っている場所へと行ってしまい、ライトグレーノ団って確か毒だったよな。りんごが好きな璃子さんで、毒を盛られたら相当やばくないかとファウに叫ぶ。


「ファウ!璃子さんが危ない!」

「わかってる!ここは自分一人で平気だから先行ってくれ!」


 わかったと俺は少年を抱っこしたまま璃子さんがいる場所へと急ぐ。璃子さん美人だし、りんごに毒を盛られてそれを食べたら以前味わったネズミサイズになっちまうかもしれない。

 せっかくルドゥンに侵入しようと思ったのにと全力で走っていたら大量のネズミが発生していて、アンジがいなくともアンジの叫び声がよく聞こえる。アンジ、絶対戦えてない状況だろうなとその先へ行こうとしたら雲井ねずみが現れた。


「この先には行かせませんよ。そうそう、これを渡しておきます」


 ネズミがせっせと運んで俺のところに届けたのはやや大きめの箱に手紙が添えられてあって、その文字が思穏だと気づく。一度少年を下ろしその箱と手紙を受け取った。ただ中身はなんであろうとも、焔副団長に確認をしなければならない。

 たとえ思穏だろうとも思穏はデステクライン使いだから何か仕込んであるかもしれないからな。取り入れをして隠れてろと少年に告げ、少年が隠れたところでカステクラインを起動させる準備をする。


「ねずみって本名じゃないだろ?」

「それが何ですか?名前だってどうだっていいじゃありませんか」

「自分の名前には両親の思いが詰まってるはずなのに、なんでねずみって名前にしたんだよ」


 気になっていた。なぜ雲井ねずみはその名になったのか。聞いても答えてはくれそうにないかと思ったがすんなりと教えてくれる。


「わずみの両親はわずみを産んだとしても名なんてなかった。いつも両親にネズミ呼ばわれされ、いつも道具とかにはねずみって。あぁわずみの名前は本当にねずみなんだって理解したころ捨てられた。周りからも汚い小娘として呼ばれ、生きる意味がなかったから自害したんです」


 まさか本当にねずみと名付けるだなんてどうかしてるとねずみの両親への怒りが出そうだった。ただねずみと名付けた理由はきっと意味があるから探して聞き出さなくちゃならない。


「もし両親に会うことができるなら会いたいとかは思わないのか?」

「わずみを捨てて今更会うつもりなんてない。もし会ったらこの手で奪います」

「…そっか。俺はねずみっていう名前、かっこいいって思うよ」

「お世辞は結構です。私を受け入れてくれたのは涼真様とセブラ先生だけで十分」


 お世辞じゃないんだが、自分の名前を嫌ってるなら別の名前に変えてもいいんじゃないかと感じてしまう。変えない理由はきっと両親に気づいてもらいたいからなんだろうな。

 そうとなればねずみの両親がいるか確認しなくちゃならない。もしいなかったらリヴィソウルでどんな風に過ごしているのか確認すればいい。


「俺は知りたい。なんでその名前にしたのか。聞いたことはなかったんだよな?」

「聞いても無意味だと思います」

「わかんねえだろ。本当はそういう意味じゃなくて、違う意味だったら嬉しいことじゃねえかよ」


 ねずみの瞳が揺らぎ、やっぱり一度も聞いたことがなかったんだとはっきりした。そうだとしてもねずみはデッドマウスを数体出す。おそらく毒ネズミだな。えっと毒に高価な魔法はなんだっけと思い返していたらアンジがこっちに逃げ回っている。

 アンジの後ろにいるのってまじかよと俺は咄嗟にカステクラインを起動させた。


「カステクライン!取り出し、箒!」


 箒を取り出して飛びアンジと隠れていた少年を救出して、上空へと逃げる。


「あれってネズミというより巨人針鼠だよな?」

「うん。デッドヘッジホックなんだけど巨人で大きな針を発射するから逃げるが正解。当たれば致命傷になる。ライトグレー副団長もいるからかなり危険だ」

「雫たちは?」

「わからないけどなんとか逃げ切れると思う。その子を安全な場所へ連れてってから引き換えそう」


 そうだなと避難されている場所へと行き、この子のご両親が気づいて無事で良かったと抱きしめていた。雫たちと合流しようとしたら、アンジさんと声がかかりルドゥン社長さんの元奥さんが慌てて来た。


「エンリさんどうかされたんですか?」

「娘たちがっ」


 それを聞いてやはり忍び込むしかないとアンジとアイコンタクトをとり、アンジがエンリさんに告げる。


「エンリさん、必ず僕たちが娘さんたちを救出しに行くので、家で娘さんたちが好きな料理を作って待っててください」

「お願いします」


 ひとまずデッドヘッジホックを倒しに引き返してみると、ネズミが一匹もいなかった。確かこの辺にねずみがいたようなと周囲を見渡していたら、雫が走って来てアンジ早くと叫んでいる。急いで行ってみると焔副団長が負傷していて、夏海は誰かと連絡を取っているようだった。


「璃子さんとファウは?」

「璃子さんはライトグレー団に捕まって、ファウは実の父親に連れて行かれちゃった…」


 さっきはファウのこと後回しにするって言ってくれてたのに嘘じゃねえかよ。アンジの力でなんとか傷は癒えたとしても起きることはなかった。


「すぐに団がこっちに来てくれるっぽいから宿で休ませてって言われたよ」

「わかったけど焔副団長俺たちより身長でかいからな。担架とかってないの?」

「そう言うのはないからケンタウロスタクシーで運ぶしかないと思う」


 やる気ないケンタウロスタクシーを呼ぶしかないのかと、アンジが呼ぼうとしたところ焔副団長が無理矢理起き上がるからストップをかける。


「今は寝てください」

「自分は平気だ。早く璃子をっ」


 バランスを崩しそうになり俺が支えてこういう時、車椅子とかあったら楽ちんなんだけどな。実際に作っちゃったほうが楽かと思っていたところ、猫の擬人化が現れた。


「一歩遅かったにゃあ。まだいるかもしれにゃいから、早急に探すにゃ!」


 猫の擬人化たちはローノ街を探し始め、指揮を取っている猫の擬人化が焔副団長を担いで、こっちにゃと案内してもらうことに。つい夏海に聞いてしまう。


「にゃあって言ってたから猫だよな?」

「そっか。想心は初めてだよね。ホノオノ国ではニャウ族と言って猫が住んでて、諸説ではライトグレーノ国にネズミが発生していることもあるからニャウ族がネズミ退治をしてくれてるの」

「涼真が好きだからとか思ってたけど実際は違うんだな」

「ニャウ族は千年前カステクライン使いに力を貸したんだにゃ。わにゃたちは主にネズミ胎児の役目をもらって追い払ってたんにゃよ。ただ最近はネズミの量が倍以上になって困ってるにゃあ」


 それはおそらくなんだが絹鬼涼真が関係してるはずだ。


「降ろせ化け猫」

「うるさいにゃ!黙って大人しくしておくにゃよ!妹にゃんは大丈夫にゃ。まだあったちに連れて行かれてにゃい。その前に連れ戻せばいいことにゃよ」

「それってどういうことなの?」

「ライトグレーノ王国を収めているのはチュウ族。つまりまずは王に捧げるための準備をするはずにゃ。その場所がルドゥンにゃよ。すでに偵察しに行ってくれたわにゃの仲間たちから報告を受けてるにゃから、案内するにゃ」


 これは心強いと俺たちは希望を持ち、ニャウ族が住んでいる場所で作戦会議をすることになった。



 ルルラちゃんにアップルパイを再度作り、ルルラちゃんは上機嫌となってくれてよかったよ。それにしても話長いし、涼真さんとねずみちゃんは天の世界へと行っちゃった。

 僕も行きたかったなと思いながらも。ルルラちゃんとトランプで遊んでいたらめちゃくちゃ機嫌悪くしながらセブラが戻ってくる。


「セブラ、育さんは?」

「玖朗と一緒に行ったよ。あぁ腹が立つ。涼真は?」

「ライトグレーノ王様に会いに行ったよ。僕たちも挨拶しに行ったほうがいいんじゃないのかな?」

「ルルはセブラと一緒に行きたくないからお留守番してる」


 ほおを膨らませているルルラちゃんで、セブラははっと思い出したかのようにごめんなと通常の顔に戻った。しかし僕の後ろに隠れてはあっかんべえをするルルラちゃん。


「後で欲しいもの買ってやるから機嫌直して」

「もので釣らないってあれほど言わなかった?」


 リラ団長がセブラのほおを引っ張っていて、ごめんってばと言っているも、リラ団長は思いっきり引っ張って放し、ほおが腫れるセブラだった。 


「団長なぜこちらに?」

「ちょっと野暮用でこっちに来たのよ。セブラ、わかってると思うけど、あしゃに隠し事、またしているなら今度はないと」

「隠し事はしてねえよ。それで野暮用ってなんだ?」

「ライトグレーノ王がカステクライン使いの娘を指名したことが気になっててね。育が暴れなきゃいいけど様子見でしばらく同行するわ」


 育さんが暴れるということは育さんの彼女さんがこっちに来るってことでいいんだよね。しかもライトグレーノ王国ってことは、涼真さんが動いていることになる。

 それに疑問なことが一つ浮かんでることがあった。あの時、育さんの恋人であった璃子さんは育さんによって殺された。けれどルルラちゃんがお店を出てきて亡くなった理由を聞かれた時、災害と言ったのか。


「セブラ聞きたいことがあって」

「リラ、ルルのこと頼む。あっちで話すか」


 うんとルルラちゃんが聞こえないぐらいの距離で話を聞いてみる。


「育さんの恋人について。僕には殺害されたって言ってたけど、なんでルルラちゃんには災害で亡くなったって嘘を?」

「あぁあん時、実はさ大きめの地震があったんだよ。俺もその場を目撃してたからな。あれは異様なぐらいの大地震が起きた。しかも日本全体だ。これは死者が出てもおかしくはないレベルでさ。思穏たちがまだ生まれていなかった時期だからあんまり記憶にはないだろうけどな」


 日本絶滅な時期があっただなんて信じられなくて、ここには小さい子たちは比較的少ないけど、天の世界にはルルラちゃんの下の子たちが多くいるんだ。その子たちの魂を奪いたくはない気持ちがある。


「まあルルラより下はあまり狙う対象にはならないから大丈夫だろ。だから重く考えるなよ」

「わかってる。璃子さんが育さんに刺された後に大地震が起きたって認識でいいんだよね?」

「そうなるな。災害は防げないものだし、俺たちは識別して獄の世界へと連れてった。その時の育やそれ以外の奴らは絶望に満ちてたよ。ばちが当たったんだって理解した上で、獄の世界で魂を狩ってるからな。複雑な思いを持ってる奴らがいることも忘れるなよ」


 災害で亡くなってしまう人たちのほとんどがカステクライン使いってことだよね。まだ生きたかった思い、家族や友人とまだいたかった思いややりたかったことたくさんあるはず。そしてあっちに残した家族や友人が前に向いて歩いていってほしいという思いは他の死よりもその思いは強い。

 そんな人たちの魂を狩るにはまだ抵抗感があるなと感じてしまいながら、団長とルルラちゃんの元へと行き、ライトグレーの王へ会いに行くことにした。 

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