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シゴノセカイ《改訂版》  作者: 福乃 吹風
33/72

33話 キャンドール鉱山④

 ここは一体どこなんだと起き上がってみるも景色がだいぶ低くなったような感覚だ。何がどうなっていると兄貴たちはまだ目覚めていなく、しかしだ。汀が檻の外にいるし巨大に見えてようやく理解する。俺たちだいぶ縮んだことで助けに呼びに行きたくとも、踏まれるのがオチだ。

 どうすっかなととにかく汀が見つかったらアウトだろうし、隠れてろと合図をしてどこかへと行ってもらう。カステクラインは無事だからいいとしても頑丈にできた檻だな。


 雫たちを起こすかと起こそうとしたら、白衣を着て陰キャラっぽい奴が覗いてきた。こいつが絹鬼涼真かと身構えていると摘まれ絹鬼涼真はヒッヒッヒッと不気味な笑いをする。

 降ろせとジタバタするも体がネズミサイズになっているからどうすることもできない。机に置かれている小瓶に落とされても痛くないのは柔らかめの絨毯が引かれてあった。

 よくよくみるとこの小瓶には家具等が置かれてあり、まさかこうやって芽森を閉じ込める気じゃと出せと瓶を叩く。


「何を言っているのかわからない。こうやって芽森を独り占めする日が待ち遠しい。早く来ないかな」


 やっぱりそうじゃねえかよと瓶を叩くもスルーされ、アンジどうしたらいいと思ったら、あっと俺はカステクラインを起動させた。


「カステクライン!連絡、水のペンギン!」


 水でできたペンギンが現れ、アンジ出ろと鳴らし続けると、想心今どことこの瓶に響き渡り耳を痛める。


「ボリューム、下げろ。耳痛めた。今体が小さくなって絹鬼涼真に閉じ込められた」

『嘘でしょ。僕と夏海でキャンドール鉱山に来たんだけど、ネズミが一匹もいなくなってる。場所、特定できそう?』

「いや、全く。見えるのは絹鬼涼真の姿しか見えない」

『そっか…。何かわかったら連絡して。周辺探してみる』


 頼むとアンジに伝え、どうにかならないものかと設置されているソファーに座った。相手にされないから何もできないと思っていたところ、そこに濡羽玖朗が登場する。


「涼真、実験はうまくできてるか?」

「要望には答えたから、妹さんもらっていい?」


 動かすなと思うも絹鬼涼真は俺が入った瓶を濡羽玖朗に渡しやがった。受け取った濡羽玖朗は笑いを必死に堪え、笑うなよと怒るも満足そうにこの場から離れることとなる。

 早く元のサイズに戻りたいもんだと揺れるからソファーにしがみつく。雫たちが無事でいてくれるしかなさそうだ。


 離れたその先はマグマがある場所でめちゃくちゃ暑そうだが、この瓶の中は冷んやりしているため暑くは感じなかった。一体濡羽玖朗は俺をどこに連れて行きたいんだかと思っていたら、地面が凍りついたことで濡羽玖朗のデステクラインが起動する。


「デステクライン!闇、鴉の羽根」


 鴉の羽根が現れ誰かが助けに来てくれたんだろう。少しして鴉の羽根が消え目の前にはアンジがいた。


「想心をどうするつもり?」

「どうすることもしないが、少し借りていく。その間に他の奴らを助けに行け。涼真は今度こそ成功させる気だ。そうならないためにも、わかっているだろ?」


 アンジは少し動揺を見せ俺を助けず、行っちまった。そういや夏海の姿がなかったな。すると俺が入った瓶をポケットにしまって状況が読めないが声が聞こえる。


「団長、準備できたってよ」


 暗野伊雪の声で出たくても出られないし、そのまま会話を聞いた。


やつがれはその戦には参加しない。だから伊雪に任せる」

「なになに?妹ちゃんの魂だから、自分では狩りに行かないんだ。ふうん。わかったよ。ただこっちに来た場合、どうするかは決めときなよ。じゃっ行ってきます」


 暗野伊雪の気配が消えたことでなのか、瓶を取り出し瓶から出してくれるも胸ポケットに入れられる。


「どんな光景なのか、見せてやる。生の世界での戦をな。おそらく今回は芽森を奪えないだろうから、次そういうことが起きた場合、すぐ行けるよう階級を上げておくんだな」


 なぜ濡羽玖朗がそんなことを言ってくれたのかわからずとも、一瞬で世界が切り替わり懐かしい光景を感じた。ひょっこりポケットから覗いてるけど、こんな多くデステクライン使いが俺たちの家を見張っているだなんてな。

 芽森は無事かなと少し不安を抱くも次から次へとカステクライン使いが現れ、デステクライン使いを追い払っていた。あれはなんだ。カステクライン使いじゃない奴もデステクライン使いを追い払ってる。


「カステクライン使いじゃない者が見えるだろ?あれが内に宿っている守護霊の姿だ。そして芽森の守護霊は別格。神々しい光を放っているのが芽森の守護霊」


 眩しくて人なのか動物なのか見極めつけられなくても、守護霊がそばにいてれるなら大丈夫だよな。そしたら濡羽玖朗は家の付近に近寄り、俺をポケットから出してくれる。


「お前を家に投げる。芽森と直接触れることはできないが、その様子をみることはできるからな。行くぞ」


 いいのかよと言う前に投げられ、家の中へと入ることができた。こっからどうしろって言うんだよと思うも、二階に投げてくれたおかげで階段を登ることはしなくて済む。

 芽森の部屋へと入ってみると、部屋は綺麗に片付けられていて、ちゃんと前に向けているんだなと感じる。


 芽森は勉強机で勉強に励んでいる姿を見て、つい芽森と声をかけてしまう。届かない声だとしても俺はここにいるよと伝えたかった。

 なんとか芽森の顔見たいなと本棚を利用して勉強机のところへ行こうとすると誰かの手に乗っかる。美しい女性でつい見惚れていると、その女性は窓を眺めながら言う。


「これで善良をしたと思っているのかしら」

「あの」

「私は芽森の守護霊。一時期は負のオーラが強かったせいで、私の力が弱まっておりました。されど芽森が現実を少しずつ受け止めていけていることで、こうして発揮することができています。想心の守護霊はまだ起きることはできない。それは分かりますね?」

「はい。俺がまだ六段魔導士だからですよね?」


 えぇと芽森の守護霊は俺を勉強机に置いてくれて、芽森の顔が見えた。真剣に取り組んでいる姿に、俺はつい芽森の指に触れてもすり抜けてしまう。


「芽森を死なせません。ですからあなたはあなたがやるべきことを成し遂げなさい」


 はいと告げると芽森の守護霊が光り、眩しくて目を閉じちまう。光が消え目を開けるとキャンドール鉱山に俺はいて、元のサイズへと戻っていることがわかった。よかったとほっとしていたら、目の前にファウが倒れている。


「ファウ!」


 しっかりしろと揺さぶっても、反応がないが息はしている。何がどうなってんだと思考を膨らませていたら、雲井ねずみともう一人の男性が登場する。


「ねずみ」

「ねずみサイズになってどうでしたか?」

「あの姿はこりごりだ。何を企んでるんだよ」

「玖朗さんに先ほど教わったかと思います。デステクライン使いの守護霊がどんなものか。芽森様の守護霊をこちら側に引き寄せ、闇に染め利用するため。もちろん、芽森様は涼真様のものになってもらいます」


 一番聞きたくなかったことだよとファウを寝かせ、雲井ねずみの隣にいるやつはおそらくファウの父親。


「芽森の未来を奪わせるかよ。それにねずみはこんなこと望んでるわけじゃないだろう。みる限り、お前は犯罪者というより自害して獄の世界へと入った」

「確かにわずみは自ら自害しましたよ。あんな腐った世界にい続けるよりましかと」

「違うだろ!」


 キャンドール鉱山に俺の声が響き渡り、ファウがゆっくりと体を起こすも俺はねずみにぶつける。


「腐った世界だったとしてもだ!自ら死を選ぶんじゃねえ!ねずみに何が起きたのかは知らないけどさ、一人で抱え込むなよ!」


 俺はつい思穏のことを思い出してしまうも、一人で抱え込む人は俺が思っているより多くいるんだ。家族や友人にも言えないなら、話を聞いてくれそうな他人でも構わない。それか世話になった先生か、専門家に頼って溜まっていることを吐き出せばいいんだ。

 俺も現世にいた時期は一人で抱え込むことがあったけど、思穏がいてくれたから俺は頑張ってこれた。


 ねずみは俺の言葉で涙目になるも、死屍デッドルタを数体出してくる。


「今更遅いんですよ。吐き出したとしても、その先に未来なんて」


 ねずみが言いかけた時、ファウが俺の横に立ちながら、ねずみに伝えた。


「未来は真っ暗で怖いっすよね。自分も未来が怖かったすよ。親父は冤罪なのに犯罪者呼ばわれされて辛かったっす。証拠を探してたのに、親父は諦めて死刑されちゃって、本当に情けない親父だったすよ。なぜ諦めたのか、それを知りたいっす」


 視線をねずみの横にいる男性に向けていても、その男性は黙りをしている。


「想心、あの時は悪かったっす。自分は親父に聞きたいっすから、ねずみを止めてくれないっすか?」

「わかった。よかったな、親父さんに会えて」


 へへっと笑うファウであり、俺たちはカステクラインを起動させながら、ねずみと死屍デッドルタに攻撃を与えていくことに。



 想心をほったらかしにしてしまったとしても塞がなければならないことが存在していた。濡羽玖朗は弟を溺愛していたから、弟に害を与えるつもりはないから大丈夫と信じるしかない。

 キャンドール鉱山の離れたマグマ山の奥へと進み、ねずみが大量発生しているも、僕は無視してその先へと進んだ。


 あそこですぐ気づくべきだった。夏海が教えてくれた情報で、緋色の鳳凰を持つ者はいずれ大きな代償を払わなければならない。その代償が起きたことで、緋色の鳳凰を持った魂はデステクライン使いによって奪われた。

 代償を払わせないために、想心のお兄さんを守らなくちゃ、想心が再びどん底へ落ちてしまう。間に合ってと到着したら雫が目一杯治療をしていて、治療を受けているのは紛れもなく想心のお兄さん。


「アンジっ出血が止まらないっ」


 事情は後で聞くとしてカステクラインを起動させる。


「カステクライン!回復、貝殻の海波!」


 貝殻が現れ海の波を聴かせ治療を行うも、思っていた以上に手こずりそうだった。ちらっと戦っている姿をみると副団長とホノオノ国の副団長がライトグレー団長、絹鬼涼真に挑んでいる。

 副団長がなぜここにいるのかは分からずとも、副団長がいてくれてよかった。想心のお兄さんのカステクラインを確認してみると、これはかなりやばいかもしれない。カステクラインにひびが入っている。


「雫、お兄さんを運ぶから校長に連絡は取れそう?」

「やってみるけどなんて伝えれば?」

「お兄さんのカステクラインにヒビが入ってる。至急、守護神のところに連れて行かないと死屍デッドルタになる恐れがある」


 わかったと雫はティモファ王に連絡を取ってもらい、うまく治療ができない理由はカステクラインにヒビが入っているから。想心になんて説明をすればいいと考えていたら、キューと汀が走ってくる。

 想心は今、濡羽玖朗に捕まってるからと伝えようとしたところ、汀ナイスと頭を撫でてあげた。


「緋色の鳳凰を持つ者を」


 移動魔法でホノオノ王国の守護神、マディールマに渡しマグマとなって消える。後は頼みますと雫と一緒に加勢することに。



 セブラがなかなか帰って来ないし、ルルラちゃんは泣き疲れて眠ってる。どうしたものかと椅子に座って考えていたら、セブラと知らない人がやって来た、


「ルルラ、寝ちゃったか。璃子が会いたがってる王林育おうりんはぐむ

「どーも。なんが迷惑かけてすまねえなぁ」

「いえ」

「会っだら辛ぐなるだげでぇ、会いだぐねえんだぁ。璃子を殺めでぇ、後悔しでで」


 育さんはきっと璃子さんを殺害した後、自分も殺したんだ。二人は別々の世界で暮らしてもお互い惹かれあっている。


「そのごど、璃子に言っでくれねえが?」

「自分で直接言え。後悔してほしくないってあれほど言ってんだろ?だからさ、しばらくの間、育も一緒に行動するかたちでいいか?また逃げそうでさ」

「僕は構わないよ」

「わはまだ」


 決まりだなとセブラが育さんに圧をかけていて、育さんは嫌々だとしても僕たちと行動してくれるようだ。


「そうだ。涼真とあれから会ってない?」

「会ってないし、ネズミカフェ閉店してたよ」

「てことは天の世界でなんかやってるってことなら、ねずみもあっちにいるなら、思穏、忍び込むぞ」

「えっ?どこに?」


 いいからと育さんはルルラちゃんが起きたら、事情を説明するかたちで残ってもらい、ライトグレーノ団の敷地へとは入ることになった。

 行ってみるも人の姿が全く見えなくて、本当に入っていいものだろうかと思いながらも入る。


 あちこちにネズミの銅像が置かれてあり、なぜネズミが好きになったのか少し興味が湧いた。建物へと入ってみるも人気がないから、誰かに侵入されてもおかしくはないはずだ。

 こっちだとセブラについていき、ある一室に入ると何これと言葉を失う。


 その部屋は瓶に一つ一つ淡い光があって、セブラはこれじゃないと何かを探し始めた。


「ここって何?」

「涼真が奪った魂コレクション。その一つに俺が奪った魂を奪われて、絶好のチャンスを探ってたってわけ」

「どんな色してんの?」

「虹色だからすぐ見つかると思ったんだけどな」


 虹色ねえと手分けして探していると布が引かれているものがあって、布をとってみると虹色に輝く魂がある。


「セブラ!」

「げっないと思ったらここか。液体の中だし取り出せない。かといってその液体はおそらく涼真特性で作られた液体だから触れると危ないかもな」

「どうする?」

「奪われたものは返してもらう。思穏、離れてろ」


 どうやって取り出すのだろうかと端っこによって、セブラがデステクラインを起動させた。


「カステクライン!闇、コウモリの牙!」


 コウモリの牙で壊そうとしてもびくともしなく、他の魔法を唱えようとした時のことだ。眩しい光に痛みが走り、美命ちゃんが来たのと思っていると別人だった。


「セブラ、案内をしてくれて感謝するよ」

「ちっ通りでライトグレーノ団員がいなかったのはシロノ団員とやってるからだろ」

「その通り。ここにある魂は全て返させていただこうか。そうそう、この魂も返させてもらう。麗しき姫君の魂をな」


 再び光が現れそうでなんとかしなくちゃと行動をしようとしたら、ネズミたちがやって来たとしても光を放たれる。けれど痛くないことがはっきりして目を開けると、セブラが守ってくれた。

 光が消え魂は全て取り戻されてしまうも、セブラは涙を流しながらも、これでよかったんだというような瞳をしている。


「セブラ…」

「悪い。あの魂は俺の婚約者だった人。婚約者は縁談を断って俺と結婚する予定だったが、婚約者の親に認められなくて、無理強いに結婚させられたんだよ。それでも婚約者は俺と会うことを諦めずにいてくれたが、夫はそれを許さず家に縛り付けて。俺が自害してこっちで暮らして間もないころに、婚約者は夫に殺されシロノ国に招かれたらしい。ただ…」


 セブラは隣に座り悲しそうな瞳をしながら打ち明けてくれる。


「再会した時、シロノ国にいるのが怖いと言っていた。理由は教えてはくれなかったが、何かがあるのは確かなことで、言われたんだよ。セブラの手で私の魂を狩ってほしい。そうすればセブラのそばにいられる。最初は俺も望んだ。この際なら婚約者とやり直せるんじゃないかって。だけど追っ手が酷くて、魂のままにして秘密の部屋に隠そうとした時に、涼真に奪われてさ」


 そうだったんだとなんて答えてあげたらいいのか迷ってしまうほどだ。僕は愛する人は家族と想心たちだけだけど、想心は美命ちゃんのことが大好きだった。

 美命ちゃんが亡くなった時期は想心、結構荒れてたし、美命ちゃんが変わってしまった現況がシロノ国にあるのなら、尚更解決しに行ってあげたいぐらいだけど、僕たちはデステクライン使い。簡単に手出しはできないから、セブラは魂を狩るしかなかったんだ。


「ねえ魂を取り戻したら、また会えるの?」

「カステクラインが眠っているのなら、元には戻る。ただカステクラインが新しい主人を選んだ場合は、無の魂となると聞かされている。無の魂は新たな命となって生へと送り出す」

「えっとつまり僕たちの場合だと、記憶がリセットされて送り出されるってことなの?」

「そういうこと。まあ俺の婚約者だった人のカステクラインは眠り続けているって聞いてるから、また会えるんじゃねえかな…」


 そうならその婚約者は再びセブラの元へと現れるか、それともシロノ国に閉じ込められてしまうのではないかと感じてしまう。会えることを願うしかなさそうと思いながら、僕たちはルルラちゃんと育さんが待っている宿へと帰った。

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