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シゴノセカイ《改訂版》  作者: 福乃 吹風
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28話 舟渡りと砂の山

 中間成績発表を聞き青の団は三位で他国からの成績は二位となっているらしい。一番の国は美命がいるシロノ国だった。もっと頑張らなくちゃなとこの数日で履歴書がわんさか届いている。

 その処理をしていたら、寮長と叫びながらノックもせず強引に扉を開ける舟渡先輩と砂山先輩。机にドンッと置かれたのはある一枚のビラだった。まあ噂では聞いていたがここまでやってくるとはなとそのビラを見ながら二人の愚痴を聞いた。


「俺ら何もしていないのに、こんなくだらねえこと書かれて嫌がらせに決まってる!」

「それに俺らが夜勤当番に必ず死屍デッドルタが出現してるから、住民たちにも睨まれてて…」


 確かに青の団が夜勤の時、最近では頻繁に現れてるのは確かなんだよな。俺目当てなら直接俺のところに来ればいいのによ。住民もどうにかなりませんかねと買い物がてら耳にするからな。

 改善はしたいしここで青の団の評価がガタ落ちするのはごめんだ。それにこのビラ、先輩たちの悪口書いてあって、先輩たちを恨む連中がいるんだろう。まあ最初は俺も馬鹿にされたけど、話せばいい先輩だし二人は努力家だ。そこを活かせば信頼を得られそうだとビラを置き、二人に指示を与える。


「舟渡先輩、砂山先輩。この件は俺らが解決しておくから、二人はまず階級を上げろ。まだ見習い魔導士なんだろ?」

「階級上げたくても、うまく勉強が」

「俺は実技試験で落ちまくってて」

「なら舟渡先輩は直接、アンジに指導してもらって、砂山先輩はリディーに指導してもらえばすぐ上がるよ」


 二人は段々と青ざめていき、自力でやるよと二人は苦笑いをして出ていってしまう。なんで嫌がるんだときょとんとしていたら、隣の部屋で聞いていたらしいアンジとリディーが入って来た。


「いるなら入ってくればよかったじゃん」

「あの二人、僕たちを避けてるから入らないほうがいいかなって」

「なんでだ?」

「点数が悪すぎるから一度、指導してやったものの逃げたんだよ。どうしようもない奴らだ」


 あはははと笑いで誤魔化して、リディーに指導してもらったことはないが、アンジの指導はそういえばハードだったと思い出す。きっとリディーもアンジと似たようなハードスケジュールで指導されそうだ。


「それでそれはどうやって解決するつもり?」


 アンジはそのビラを見て俺に相談をし、そうだなと二人に再度お願いをしてみる。


「二人は先輩たちの指導を頼みたい。俺と雫、それからテンファと航さんで調べてみるからさ」

「想心が言うなら、指導するけど、ピンチになったら教えてよ」

「想心殿が仰るなら、先生もほどほど程度に再度指導してやろう。これは想心殿のためだ」


 ありがとなと二人は先輩のために動いてくれて、まずは雫の部屋へと訪れてみる。ノックをしてみるとどうぞと言うから中へと入った。ちょうどテンファがいて植物魔法を教わっていたらしい。


「ごめん、勉強中に」

「全然平気だよ。どうかした?」

「先輩たちの悪口の件でさ」


 あぁと雫とテンファはピンと来たようで、どうするんですかとテンファに聞かれた。


「誰がそれをやっているのか調べたくてさ。変装して探し回ろうかなと」

「そのほうが手っ取り早いか。よし、テンファ、続きは後で教えて」

「わかりました。そう言えばアンジとリディー先生は?」


 先輩を指導中と説明したら二人は苦笑していながら、俺たちは航さんの部屋へと行ってみる。入りますよと言いながら扉を開けると紙屑が俺の顔面に当たった。

 航さんはただいま服のデザインをしていて、部屋は布の束や紙が散乱している。そろそろ片付けてもらいたいんだがと、近くへ寄って見るとかっこいい革ジャンのデザインをしていた。


「あらごめんなさい。今片付けるわ」

「いいですよ。あの俺たちに服を貸していただけません?」

「どんな服よ」

「捜査するためです」


 なるほどねと鉛筆を持ちながら俺たちを上から下まで見て、クローゼットを開き俺たちに服を貸してくれる。


「わたしゃも手伝ったほうが良さげかしら?」

「探すのに苦労したら、お呼びするんで」

「わかったわよ。幸運を祈ってる」


 航さんは机に向かってデザインを書き始めていき、俺たちは自室で着替えることになった。まさか俺にスーツを貸してくれるとは思わなかったな。

 何もなければあっちで社会人になって、スーツ着てたのかなと想像しながら着替え終える。玄関で待っているとテンファは花屋で、雫遅いなと待っているとごめん、遅くなったと雫がやって来た。


 雫が着ている姿に俺とテンファは同じことを思っていただろう。めちゃくちゃ似合いすぎる。雫に貸してくれたのは振袖だったらしく、模様も雫だ。スマホがあったら連写していたかもしれない。


「二人ともどうしたの?」

「雫、似合いすぎるじゃん」

「え?そうかな?着物似合わないと思ってたんだけど」

「綺麗ですよ、雫さん」


 テンファはグッジョブサインを出していて、雫はきっと勘違いしてたんじゃないかと気づく。雫の友達は雫の姿を見てヤキモチをして、似合わないと言ったんだろう。


「どうやって探し出す?」

「妙な動きをしている奴を見かけたら追跡しながら俺とテンファに連絡して」

「じゃあ僕は北のほう見回ってみます」

「なら私は東」


 それぞれ見回る方角へと行ってもらい、俺は西の城下町で探りを入れてみることにした。北西には赤の団寮があるから赤の団員がちらほらといるな。

 気づかれないように新聞を買って、適当に穴を開け変な奴がいないか確認する。こっちははずれかと周囲を見ていたら赤の団にいる副寮長の動きが妙だ。

 普通に歩けばいいのに、人の目を気にしているような感じで、追跡してみることにする。


 進むにつれて人気がなくなっていき、やっぱり怪しいなと進んでいたら、いきなり止まるから陰に隠れた。あそこで誰を待ってんだと様子を伺っていたら、正面から黒いローブを身に纏った人物が現れる。

 何か取引をしてんのかわからないが、ちょっと待ったとその場に入った。赤団の副寮長は俺に気づかなかったようで目を丸くし固まっている。


「おい、お前は誰だ?」

「言いませんの。あなたは引っ込んでくれません?」

「それは無理だな。どう見てもお前、デステクライン使いだろ?」

「さすがは青藍の葉桜の持ち主ですこと。ここで争うつもりはありませんの」


 そうは言っているものの何かを仕掛けてきそうだな。ここでカステクラインを起動させるかと考えていたら、カステクラインが回転する。

 今それどころじゃないと思っていても、デステクライン使いは出なくてよろしくて?と言われてしまった。まあ争うことはしないと言っていたから、大丈夫と信じてカステクラインを起動させる。


「カステクライン!連絡、水のペンギン!」


 カステクラインから水でできたペンギンが一周俺の周りを飛び、手の平に乗っかると雫の声がした。


『想心!犯人見つかった!』

「犯人誰だった?」

『赤の団員だよ。とにかくそっちに行ったから、寮の前にいて!』


 言い終えると通話は切れてしまい、それを聞いていたらしい赤団の副寮長は思い当たる節があるのか走って行く。


「あら、行っちゃいましたの。まあいいですわ」

「お前、何しにここへ来た?」

「答えるつもりはなくてよ。まあいずれ、あの人の目的がなんなのかわかると思いますわ。ごきげんよう」


 ローブを身に纏った奴は礼儀正しく会釈をして、すっといなくなり、これは報告するとして、まずは赤団の寮へと急いだ。


 赤団の副寮長を追いかけていたら、叫び声が聞こえそっちへと急ぐ。周辺には住民たちが見ていて、すみませんと前に出てみた。

 すると赤の団員が住民を人質にとっている場面で、赤団の副寮長はこんなことやめるっすと言っているも、団員は聞こうとしない。カステクラインで拘束させたほうがいいかと考えていたら、そこまでにしなよと夏海が登場する。夏海が来ても団員は人質を解放しない。


「何やってんの?住民を傷つけること自体、間違ってることぐらいわかってるでしょ?ねえ?」


 夏海の怒りが肌で伝わるほどで、赤の団員が焦燥感に苛まれていた。


「それとも赤の団員じゃなくて赤ちゃんな訳?違うでしょ?あたしたちはこの世界を守る騎士団。ポイントを簡単に稼げないよう設定されてるんだよ!」


 確かに騎士団に入る前、手続きの書類に記されていたな。この世界では新しい命になる前に、試練を与える。その理由は自殺や他殺が起きないようにという意味があり、どんなことが起きようとも屈しず、立ち向かえる勇気を持てと。

 


「誰だって早く新しい命となって生まれ変わりたいよ!だけどさ、生まれ変わったらこの命をくれた両親や兄弟、友達とも再会できない!それでもいいって言うなら、団を抜けて平民になりなよ!あたしの団はそう甘くないって団に入る時伝えたよね?忘れたとかは言わせないよ」


 夏海の説教で赤の団員は涙を浮ばせ、今だと判断して動こうとしたら、赤団の副寮長が団員を拘束し人質は解放される。ひと段落したことで、夏海は通常の顔立ちとなりお騒がせしましたと周囲にいた住民たちに謝っていた。

 住民を傷つけたことでおそらく赤の団員は罰を受けるのだろうと、その様子を見ていたら夏海とばったり目が合い、こっちに来る。


「えへへ、見られてた」

「さすが赤の寮長だな」

「そんなことないよ。ごめんね。あたしの団員が迷惑かけちゃって」

「いや、いいんだよ。なんとなく団員の気持ちわかるからさ」


 それでも夏海は俺に謝り少し話せないと言われたから、ベンチに座って話を聞くことになった。


「団員がこんなことしちゃうのあたしのせいなの」

「なんでだよ」

「今でもあたしはアンジくんの生徒で卒業できてないし、テストの成績も悪くてポイントがどんどん減っていく。もちろん団にも影響が出ちゃってるの。情けないよね」

「情けないとは思わないぞ」


 そうかなと少し落ち込んでいる夏海で、俺が思っていることを伝えてみる。


「俺はこっちに来て間もないけど、アンジ言ってたぞ。夏海は授業ではやらかしちゃうことがあるけど、根は真面目で人に懐っこく接しやすくて、住民からも評価を得ているって」

「んーそんなこと言われるの初めてだよ。あたしはさ、いつもどじってばっかだと思う。だから直さなきゃって思ってても、できない」

「夏海はそのままでいいんじゃないか?」


 俺がふと思ったことを口にすると夏海はきょとんとしながら俺を見ているもそのまま話を続けた。


「夏海のいいところや悪いところを受け入れて、赤の団員はやっていけてんだろ?だったらさ、無理に変わらず夏海は今まで通りにやりながら、改善したほうがいいところはお互いに支え合っていけばいいと思うよ。それに苦手な部分は教え合っていけば、きっと赤の団はよくなっていくと思うし」

「そうかな」

「そうだよ。あんまり深く考えすぎると周りが見えなくなっちまうから、もし悩みが消えないってなったらいつでも相談に乗るからな」

「ありがとう。想心に話したら少しスッキリしたよ。そろそろ戻らなくちゃ。それじゃあ」


 またなと夏海は先に行った副寮長のもとへと行かれ、俺は雫たちと合流して家へと戻ることに。


 これでひとまず安心だよなと舟渡先輩と砂山先輩がいるであろう書斎へと行ってみた。しかし入る直前、家令から入らないほうがよろしいかとと言われ、こっそり扉を開けてみる。

 そこでみた光景はビシバシと指導しているアンジとリディーでありながらも、逃げずに頑張っている先輩たち。


 報告は落ち着いてからにしてあげようと、そっと扉を閉め、テンファは庭の手入れをしてくるとかで庭へと行き、雫と一緒に談話室へと向かう。


「まさか赤の団員が青の団を下げようと思っていただなんて思わなかったな」

「そうだな。ただ少し気になっていたことがあってさ」


 何と雫に言われ知っているかわからないが、一応雫に確認したほうがいいよなと打ち明けた。


「赤の副寮長がさデステクライン使いと接触してた」

「嘘でしょ?」

「本当だよ。てっきりこっちが犯人って思ってたけど違ったっぽい」

「特徴とか覚えてる?」


 特徴って言われてもローブ羽織ってたし、それにフードを深く被っていたからな。特徴と言えば喋り方か。


「服装はローブ姿だったけど、喋り方がなんというか悪令嬢っぽい喋り方だったな」


 伝えると愕然としている雫であり、心当たりがあるようだった。


「想心が言った悪令嬢って子は多分だけど、ダークグレー団長だと思うんだよね」

「まじかよ」


 衝撃なことでつい驚いていると雫は苦笑いしながら教えてくれる。


「その子は放火魔として逮捕されたって聞いたことがあるの。ディーグの団はダークグレー団。つまりあっちでは炎を扱う団ってことかな」

「なるほど。えっとじゃあ濡羽玖朗が率いるブラックノ団は?」

「以前、テンファが言った通り、植物魔法使いが多いかな。だから回復が早くてなかなか倒せない」

「それ相応の魔法を取得してないと難しそうだな。なら絹鬼涼真は?」

「毒使いでネズミ好きだからネズミには注意して。こっちにいるネズミは偵察のネズミと考えていいから」


 そんな奴に芽森が狙われたらなんとしてでも守り抜きたいところだよと、雫と一緒に談話室で待つことにした。



 中間成績を聞いた僕たちでただいま絶賛、リエートの依頼をやっているも玖朗さんが言った言葉で集中ができなかった。


「本当に言ってるんですか?」

「あぁ。もう時期、想心の妹が自殺するよう仕向けている」

「なんで想心の妹まで奪う必要がある!」


 つい僕はかっとなって玖朗さんの胸ぐらを掴んでしまうも、玖朗さんの鋭い目でごめんなさいと手を離す。けれど僕の髪の毛をわしゃわしゃしながらこう言った。


「思穏、もし芽森を守りたければ、涼真から奪い取るんだな。奪い合いをしたとしても発動しないから平気だ。ただし。カステクライン使いを助ければ発動する。それだけ覚えておけ」


 そう言って玖朗さんは伊雪さんを連れて行ってしまわれた。


 本当に僕は絹鬼涼真という人に勝てるのか自信がつかないし、相手は二段魔導士だ。もっと階級を上げないと勝てる気がしない。それかもっと団員を増やし総攻撃するか迷いどころかな。

 色々と考えていたら、どうしたとセブラがの顔が目の前にあった。


「なんかあったか?」

「あっごめん。玖朗さんに言われた言葉で悩んじゃって…」

「あぁあれな。涼真から奪い取れってやつ。自分が奪えばいい話だろうけど、そうもいかない」

「どうして?」


 セブラは箒を持って玖朗さんの過去を少し教えてもらった。


「玖朗が犯罪を犯した理由は、妹のためだった」

「妹さん?」

「そう。玖朗は弟の汀春と妹の艿花にかをめちゃくちゃ溺愛してたらしいんだ。そんな時、艿花に悲劇が起きた。ストーカーに付き纏われて、外に出ることを怯えそして自害した。玖朗は相当ショックを受け、ストーカーを殺害」


 信じられない事実で言葉がうまく出てこない。妹さんを追い詰めたストーカーを殺害したけれど、あの姿は若い。つまり妹さんを亡くした後、すぐに汀春さんは死して、自ら自害したのではないかと思ってしまった。


「まあ詳しいことは教えるつもりはないが、本人に直接聞いたほうがいいと思う。俺から言えば落書き程度じゃおさまらなさそうだしさ。このことは俺から喋ったこと、玖朗には絶対に言うなよ」

「わかってるよ。教えてくれてありがとね」

「いいって。ちゃちゃっと終わらせて、ロゼ探しに行こうぜ」


 うんと僕とセブラは家で待っている、ルルラちゃんのために、早めにリエートの依頼を済ませることにした。 

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