24話 カイノ村④
ミズノ王国に戻りカイノ村にいた甲斐さんたちは牢屋に入れ、一件落着だがリディー先生がまだ帰って来ていない。本当に帰って来ちゃっていいのかなと背伸びしながら寮へ帰っていると寮の前で初日の時、俺を馬鹿にした二人が見ていた。
前もアンジと歩いている時、逃げるかのように去って行ったな。少し話してみるかと何してんだと声をかけると再び逃げようとしたから二人の後襟を掴む。
「待てよ。俺に用があるならはっきり言ってくれ」
ジタバタしていたがぴたりと止まり二人でこそこそ話していて、やれやれと俺はそのまま二人を寮の中へと引き摺り出した。執事たちが想心様と困惑していてお茶の用意をと伝え応接室まで引き摺って行く。
ほれっと一人ずつソファーに向けて放り投げもう一人と放り投げ向かいのソファーに腰を下ろした。
「で?どうしたんだよ」
俺が質問をかけると右に座っている男子がきっちり座り直して俺に見せて来たのは履歴書で、左の男子も俺に履歴書を提出する。
右の男子は舟渡潤次、十八歳で死亡した原因は災害時に亡くなった。得意魔法は水。志望動機は青藍の葉桜を持つ俺の下で働きたいという。
左の男子は砂山洋平、十七歳で死亡した原因は災害時に亡くなった。得意魔法は雷。志望動機は他の団に入団しようとしたがお断りされ辿り着いたのがここだったらしい。
「普通に話してくれればよかったじゃん。どうしてなんだ?」
「いや、ほら俺たち。お前が入って来た初日、馬鹿にした言葉言っちゃってさ」
「それで気まずくなって。お前の年齢見たら俺たちの年下だってわかって悪かった気持ちがあって…」
年齢とかここは関係のないことだし俺より先に入って来た二人だ。最初はムカついたけど怒りとかはもうない。
「そういうのは気にしてないけど、新しく入ってくる子たちにはもっと優しく接しろよ。それで魔法以外に何ができるか確認させてもらう。まずは舟渡先輩からどうぞ」
「俺はあっちにいた頃、スケボーの大会とかに出てた。それ以外のスポーツ系も結構得意」
「次は砂山先輩お願いします」
「潤次と真逆で俺は絵を描くのが好きで美術部だった。後は料理が得意です。だけどここに来てからは魔法に集中するようになった」
舟渡先輩はスポーツ万能で砂山先輩は絵画系に向いている。そうなると舟渡先輩は防衛官にして砂山先輩はどうしようか。
「二人とも採用するにあたってやりたい役割とかあるか?」
「俺ちょっと憧れと言うか寮の門番をやってみたい」
「俺も体力はあれだけど団の一員として団を守りたい仕事に就きたい」
門番って結構な労働だと思うし人数が少ないから交代制とかはまだ難しそうだな。それとも一人でやらせる。うーんどうしたものか。
「ねえちょっと想心」
「航さん、どうしたんすか?」
「話は聞かせてもらったわよ。お隣いいかしら」
どうぞと俺の隣に座ってオカマと驚いている二人だと言うのに履歴書を確認して話を進めて行く。
「門番は人数が増えてから志願しなさい。今は人手不足で団にいるのは想心、アンジ、雫、テンファと美しいわたしゃ。家事関係は家令たちに任せとけばいいけどそれ以外にやることがあるわよ」
やることってなんだと俺たちは疑問に抱きながら、航さんは話を進めていく。
「団の評判や依頼書を処理する経理部、団の人材を管理する人事部、団の動きを調整し指令を出す司令部。まずはその三つの部署を作らなければ他の団に負けるわよ。さっき違う団員に話を聞いたら団同士で競い合っていると聞いたわ。青の団は団長の働きで四位に入っているみたいだけど更に上げるためにはまず人数を取り戻さなければならない」
「じゃあまずはこの二人に人事関係の仕事をさせるってことですか?」
「そうね。まずはビラ配りをする。想心たちも手が空いたらビラ配り。わたしゃは団の評判を調査しといたから集計に当たるわ。だから順平、洋平。あなたたちにかかってる。それじゃあ」
話したいことを全て俺たちに言い仕事に戻ってしまって。大人はやはり凄いやと持っていたビラを取り出した。
「カステクライン!取り出し、ビラの束!」
他の街に貼れるように持っていた分を二人に渡す。
「早速なんだけど頼んじゃってもいいか?先輩たちのやり方で構わないからさ」
「オカマにあんなこと言われたけど、人が増えれば俺たちの夢叶えてくれるんだよな?」
「もちろん。先輩たちの願いは叶えさせる。俺たちも手が空いたらビラ配りの続きするから先に行っててほしい」
先輩たちはよろしくと手を差し伸べられ握手し、ビラの束を持って配りに行ってもらった。この履歴書はちゃんと保管しようと執務室へ入り空いているフォルダーに閉まって棚に戻しているとアンジが入って来る。
「どうだった?」
「採用してビラ配りに行ってもらったよ。それより出て来いよな。聞いてたんだろ?」
「えへへ。一人でも面接できるのかなって思って様子伺ってたんだよ。そしたら航さんが堂々と入るから入るに入れなかった」
「ふうん。まあいいや。一晩経ったけどリディー先生戻って来なかったんだろ?カイノ村に行ったほうがいいんじゃないかって気がするんだけどな」
「僕も行ってみようかなってずっと思ってたんだよね。雫とテンファにも話してみよう」
「だな。じゃあ俺、雫に声かけてみるからテンファをよろしく」
二手に分かれて俺は雫がいる部屋に行ってみると、バルコニーに通じる扉が開いていてバルコニーに出てみた。そしたら雫がいてよっと声をかけると雫がこちらを向く。
「雫、リディー先生が心配だからカイノ村に戻らないか?」
「私も思ってたの。例え一段魔道士であっても、先生の性格からして銀の言いなりになりそうな感じがする。依頼を受けるときに人形を渡されるから、あの時点で人形は持ってなかった。もしかすると単独でリディー先生を狙っていたとしたらどうかな?」
そう考えると白金銀はドSでリディー先生はドMだから銀の奴隷にもなってしまうということか。あの時点で戻るべきだったと雫を連れてアンジと合流するとテンファも同じことを考えていたっぽい。
「いい?何があってもリディー先生を取り戻すよ」
俺たちはそれぞれ箒を取り出してカイノ村へと至急急いだ。何も起きていないことを願うしかないとカイノ村に到着すると一日でゴミが溢れきっていた。昨日ゴミを拾ったばかりなのにと箒を取り入れする。
無人のカイノ村を調査しているとふふっと声が聞こえ身構えると、目の前にハウヴァがいて俺たち男子は制服を脱いで着させた。あいつ俺の妹にしたらマジでぶっ倒すとデレデレになっているハウヴァはもっとお仕置きしてと倒れてしまう。
「ハウヴァ?ハウヴァしっかりしろ!」
揺さぶっても反応がなくデステクライン使いは死なないようになっているんだよな。とにかく元甲斐さんのご自宅に入ってソファーにハウヴァを寝かせた。
「雫、無理しなくていい。てかリビングに入るな」
「平気だよ。それに拘束具になんかついてるから男子は出てって」
あまり見られず俺たち男子は一度退散してアンジは全身赤くなりながら洋服探してくると出てってしまう。アンジは慣れてないんだな。
少ししてアンジがてんやわんやで女性の服を大量に持って来て、雫に渡し数分後。雫がメモらしいものを俺たちに見せてくれた。
「ハウヴァをグレーの団から外し、リディーをグレーの団に入団させる。え?まじかよ」
「異例なケース。人質ってことないかな」
「さあ。だけどなんで今更リディー先生を?」
「あのう、これは見せるべきかなって思うんだけどみる?」
雫がもう一つ持っていてなんだろうと見せてもらうとアンジとテンファが鼻血を出して倒れてしまう。おっおう。そう来たかとリディー先生に拘束具をつけて、白金銀が自撮りしたものらしい。
「その写真は燃やそう。それでどうすっかな。ハウヴァを匿うのもあれだし…。ハウヴァが起きるまで雫はそばにいてあげて。それと倒れている二人は放置でいいか。ちょっと連絡してくる」
甲斐さんのご自宅を出て俺は剣太に連絡をとってみることにした。仕事中かなと水のペンギンを眺めているとどうしたのと剣汰の声が聞こえる。
「剣汰、一つ確認したいことがあってさ。その前にごめん。剣壊れちゃった」
『まさか父さんに遭遇しちゃったの?』
「知ってたのか?」
『うん。父さん、あっちにいた頃から母さんを束縛して、次第には道具を使うようになってたよ。それに僕も盾乃も外は危険だからって、監禁されてた。一度外に出た時に枷をつけられてお仕置きされたの覚えてる。しばらくして僕と盾乃は邪魔だと判断したのか殺された』
「そうだったんだな。気を付けろ。あの時、剣汰たちの父さんが自ら魂を狩りに行くって言ってたから」
『気をつけるね。剣は作り直すからユッキーノ街に来たら寄って。それじゃあ」
剣汰はどんな父親なのか知ってたのか。知っているならこのことは伝えないでおこう。甲斐さんのご自宅に戻るとハウヴァが起きたらしく、俺たちに甲斐さんのコレクションらしい貝殻を投げて来たのだ。
「落ち着け、ハウヴァ!」
「なんでですの!なんではいねが団を出なくちゃならない?教えてください、銀様!」
投げた貝殻をキャッチしコレクションを床にそっと置いてハウヴァやめろと怒鳴ったらピタッと止まる。うぅと俺に涙を浮かせ怪我してないかとハウヴァに触れると飛びついてきた。
アンジとテンファは怪我をしないように元にあった場所に貝殻を置いていく。
誰だって仲間外れにされたら嫌だよなと慰めていると咳払いをする雫でハウヴァと離れる。
「どうして仲間外れにされちゃったの?」
「わかるわけないですわ。銀様が考えていることはわかりませんの。ただここ最近、想心の妹に夢中でしたわ。何か心当たりありません?」
一番言いたくないことが一つだけあるんだよなと笑顔を取り繕う。絶対に秘密だからねと親にも話せていないことがあった。俺は普通に芽森の部屋に入った時のこと。芽森が勉強机で寝ていて話すのは後にしようとしたら漫画の一冊に目が入った。
ドS王子様とドM召使いという恋愛漫画でつい立ち読みしてしまう。こういう人が好みなのかと考えたのが甘かった。芽森は俺の中で一番だったし、誰にも奪われたくなかったからその漫画を全巻読み切ってなり切ったのが間違いだったのだ。
好きだったらしい子を諦め俺にずっとくっつくようになり、芽森の将来のことを考え正直に伝えた時は、何日か喋ってくれなかったのを思い出す。
正しく芽森がどっぷりはまるタイプの人だとこの場で言っちゃっていいのだろうか。
「笑顔取り繕って何思い出してるの?ここではっきりさせてよ」
「芽森、きっと白金銀にどっぷりはまるかもしれないってことは事実。なんとか阻止したいけど、団長が見守ってくれてるから大丈夫と信じたい。それよりリディー先生がどんな状況なのかわかるか?」
「銀様にデレデレ状態でしたわよ。ここで先手を打っておかないといずれ魂を狩られるかもしれないですわね」
本当はやりたくないけど芽森にした態度のように演技をするしかなさそうだな。俺はハウヴァに近づき顎クイをしハウヴァに命令をする。
「ハウヴァ、白金銀のところに連れてってくれればハウヴァの望みを叶えてやるよ。もしできなかったらお仕置きタイムが待っていると思え。失敗るなよ」
「わかりましたわ、そ・う・ご」
本当に居場所を知っているんだろうなと俺たちはハウヴァの後をついていった。
◆
セブラがなかなか戻って来なくて、待たせるのもあれだから面接をしていいなという人たちを付箋で貼り後でセブラと話し合おう。
全員面接を終えてまだ帰って来ないから何しようと考えていたら家令たちが入って来て、何と身構えるも服を脱がされちょっと何と執事たちが着付けてくれて数分後。
家令が鏡を持って来て僕じゃないような格好だった。
「素敵ですぞ、思穏様」
「ありがとう。セブラにも早く見せてあげたいけど、まだ帰って来る様子じゃなさそうだしルルラちゃんは?」
「終わっている頃だと思いますぞ」
せっかくだから写真撮りたいなと家令に頼みセッティングしてもらってルルラちゃんの部屋に入ってみると可愛いらしい服装だった。
「ルルの王子様!」
「デザインしてくれてありがとね。後はセブラが揃えばよかったんだけどまだ帰ってくるような様子じゃないんだ」
「そうなの?せっかくセブラの分もデザインしたのにな」
すぐ帰って来そうなのになと家令が準備できたっぽく写真撮影を行っていく。これで評判も良くなればいいなと執事たちが写真を撮ってくれているとデステクラインがくるくると回転する。
執事たちにストップをかけ僕はデステクラインを起動させた。
「デステクライン!連絡、闇雲の烏!」
闇雲でできた烏が出てきて手のひらに乗ると喋り出す。
『思穏』
「セブラ、今どこにいるの?」
『へへ。天の世界にいるんだけど、今日は帰れそうにない。だから家令に俺の晩飯は作らなくていいって伝えといて。それじゃあ』
勝手にかけてきて勝手に切るだなんて何をしているんだかと撮影の再開をしてもらう。そんなに大事なピアスならちゃんとつけておくべきだと思うんだけどなと撮影は晩ご飯ができるまで続いた。
◆
銀がいるところに行ってみるとあの馬鹿女がイタヤ貝のベッドですやすや寝ており、その横で馬鹿女の頭を撫でて微笑んでいる銀がいた。
「おい、銀。俺のピアス返せ!」
「これのこと?まだ返せないって言ったらどうする?」
「あのな、それは俺にとって大切なもんで」
「ロゼから貰ったもの?セブラとロゼ仲良しだったのもある。それにこれ魔法かかってる。このピアスを付ければあの子娘が本当なのか見極められるってことでいいのかな?」
俺だけにしかわからないように細工をしていたのに見抜かれていた。どうすりゃあいいとあいつも一段魔道士。ここでけりをつけるか、それとも馬鹿女を救出するか。
駄目だ。背中の焼印が発動するから手出しはできない。ものにするのは自由が定められているが逃すことは不可能。近づこうとしたら、銀の奴隷たちが出てきた。
「言っておくけど、リディーは渡すつもりはない。小娘が本当なのか確かめたらこれは返すからさっさと帰ったほうがいいんじゃない?主人が待ってるでしょ?」
「ちゃんと返してくれるんだろうな?」
「もちろん。あーそうそう、一つ言っておく。芽森は自分のものにはしない。ライトグレー団長が行ったよ。今頃どうなってるのかな。楽しみ」
ライトグレー団長、絹鬼涼真。何を考えているかわからない奴だが、あいつも銀と似たような趣味を持っている。これはまずいと俺はちゃんと返せよと伝えて玖朗に会いに行った。




