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シゴノセカイ《改訂版》  作者: 福乃 吹風
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23話 カイノ村③

 魚人族のあるマイメさんの情報によるとカイノ村に訪れた女性が失踪し、何日か経つと死屍デッドルタになって現れるんだそう。リディー先生は千年もここにいたから警戒心は強い方だし、雫はデステクライン使いでもあるからなんとか逃げ切るだろうと信じたい。

 俺たちは助けてくれた魚人族と一緒に、カイノ村に侵入していた。村の住民たちもミッドヴィークなため慎重に動かなければならない。


 それにしてもこの格好は流石にばればれじゃないすかと草のカチューシャに、多くの葉っぱをつけた服をつけて茂みに隠れて様子を伺っていた。なぜ今まで気づかれなかったのかが不思議だよと様子を見ていたら甲斐さんがお目かしをしてどこか出かけるようだ。


「追いかけたほうが良さそうだな」

「そうだね。見る限り誰かと会うような感じだもん」

「三本のバラ持ってる。三本のバラは愛していますと告白の花言葉があるよ。誰かに告る気だと思う」


 また禁断の恋をする気なのかと魚人族は目立つためここで見張っててもらい、俺たち三人は甲斐さんの後を

追いかけていった。

 カイノ村からすぐの林へ入りどこへ向かっているんだと進んでいたら死屍デッドルタが出現する。音でばれると思うも仕方がないとカステクラインを起動させた。


「カステクライン!水、雲雨の涙!」


 雨雲が発生し雨が降って死屍デッドルタが消滅しその後を追うと小屋を発見する。小窓を見ると甲斐さんは周囲を警戒しながら絨毯をどかし、下へと降りて行くのが確認取れた。

 ゆっくりと扉を開けて潜入し床収納の扉を開けると階段になっている。音を立てずにその中へ入ってみると長い通路があった。どこに繋がっているんだかと足音を立てずにその先へ進んで行くと、悲鳴を上げている声が聞こえ俺たちはすぐさまその先へと進む。


 行ってみるとなんだここはと階段が複数ありどの階段を登って行けばいいのかもわからない状態だった。


「ダンジョンだ」

「ダンジョン?え?ここが?」

「うん。辿り着けないダンジョンがいくつもある。その一つがここ。湘西さんが一度は行ってみたいと言っていた場所。ここには宝庫が存在するらしいんだ」


 宝庫に興味があるもまずは甲斐さんを探さなければならないと適当に選んで迷路のような階段を登っていく。悲鳴の声は確かに女性の声だった。どこにいるんだと登って行くと再び悲鳴の声を聞いて階段を駆け登って行く。

 到着したその先は下半身がタコの足になっていて、女性を掴んでおり上半身は甲斐さんそのままだった。


「甲斐さん!」

「わしの邪魔をするな!ようやく、ようやく見つけた。感じる、懐かしい。絶対に渡さない!」

「わたしゃは多恵たえじゃない。わたしゃは岬航みさきこうよ。あなたたち見てないでなんとかしなさいよ」


 ・・・。どう見ても女性の姿なのだが声はまるっきり男。俺たちは一度背中を向けて話し合う。


「なああの人どう思う?」

「見て見ぬ振りはどうかと思うけど、女の人が生まれ変わったら男になるのは稀なケースなんだよね。魂にはちゃんと男女があるから生まれ変わったとしても女性は女性のまま」

「そうなんですか?選べるのかと思いました」

 

 後ろを振り向き早く助けなさいよと涙目で言う岬航さんであり、それに全然気づいていない甲斐さん。あれが本来の姿というべきなのかは置いとくとして助けてあげるか。


「テンファ、よろしく」

「オカマさんを助けるの初めてなんだけど。カステクライン!植物、サイの泥土!」


 泥をたくさんつけたサイが突撃して岬航さんを救出し、岬航さんを乗せたサイがこちらに戻ってくる途中のこと。邪魔をするなとタコの足が伸びて来て再び捕まってしまった。

 あららと俺たち三人は同時にはもり、何してるのよんと嫌あと甲斐さんにべったりくっついてしまった。タコだからなかなか離れないようになっているのか。ふむふむと納得しているともっと低い声で喋り始めた。


「おっさん!わたしゃに何してくれてるのよ!おっさんには興味ないわけ!それにわたしゃにはやらなくちゃならないことがあるの!」

「男になってしまおうがこの魂は多恵の魂だ。一生いてもらう」

「いやに決まってんでしょうが!何これ?離れないじゃない!」

「このために離れないようタコの吸盤を強化していた。絶対に離すものか」


 何この茶番と俺たちが見ているとふふっと声が聞こえ、身構えているとバックハグが来て想心とアンジの声がかかる。


「また会いましたわね、そ・う・ご」


 ハウヴァが俺の頬にキスをしてちょいやめろと離そうとするも降りてはくれない。アンジとテンファが攻撃を開始しようとしたら目の前にマーメイドドレスのような衣装を着飾った雫とリディー先生が登場した。つい鼻血が出てしまいハウヴァが俺の鼻にティッシュを詰め込む。


「どうです?力作ですの。やっぱり雫?それともリディー?」

「二人を使って何をする気だよ」

「ふふっ。決まってるでしょう?想心の選択でどちらかの魂を狩らせてもらうことにしましたの」


 どちらとも選べないと迷っていたら雫のアイコンタクトでやっちゃっていいんだなと俺は回答した。


「じゃあ雫」

「ふふっ。やはり雫を選びましたわ。銀様、リディーの魂を狩らせて」

「そうさせるかよ!カステクライン!水、海王の叫び!」


 鯨が現れ叫び出しハウヴァが離れアンジとテンファはその隙に二人を助け、俺は剣汰がくれた剣でハウヴァを追い払おうとしたら、白金銀が剣を掴んだ。


「ハウヴァ、一度引け」

「…はい」


 すっといなくなり白金銀はデステクラインを起動させた。


「デステクライン!闇、針鼠の針!」


 針鼠が現れ針を一気に飛ばし俺の体に刺さって痺れがくる。剣を持っていられなくて倒れ込み全身が麻痺してしまった。その剣返せと掴みたくても足で蹴り飛ばされてしまう。


「このつるぎ、この前は別件で魂は狩れなかった。今度依頼が来たら自分が直々に狩りに行ってあげよう。我が息子」


 一度頬に当ててやめろと叫んだ瞬間、パキッと剣が真っ二つにされてしまった。


「カステクライン!炎、竜の火炎!」


 アンジが攻撃してみるが白金銀はアンジの魔法を避けて、リディー先生に向けて起動させる。


「デステクライン!闇、スカンクの威嚇!」


 スカンクが現れ威嚇するってまさかとアンジが俺を庇い、テンファが二人を庇おうとした時のこと。


「カステクライン!氷、氷の天険!」


 俺たちの目の前に氷の壁のようなものができてスカンクが放つおならが向こう側で漂っているのが見えた。かかってたらどうなっていたのだろうか。

 リディー先生はマーメイドドレスをビリビリに破き、ぽきぽきと指を慣らしていた。


「相変わらずお前の趣味は呆れるな。アンジ、先生は大丈夫だから想心殿を安全な場所へ。どうせあいつはまだ先生を殺さない。遊んでいるだけだ。早く。そうだ、ついでにあのタコ野郎とオカマも連れて行け。ここは一段魔道士の戦いだ」

「はい。テンファ、あの二人を拘束させて連れて行くよ。雫、動ける?」

「大丈夫」


 俺はアンジに助けてもらいながら、まだガミガミ言い争っている二人をテンファが拘束し俺たちはここを脱出したのだ。

 リディー先生を置いて来ちゃっていいのかなと痺れがまだ取れず、マイメさんたちがいるところへ戻る。岩場に座りアンジが回復魔法をかけてくれた。 


「カステクライン!水、貝殻の海波!」


 貝殻から聞こえる波で傷が癒え、痺れがなくなることを確認する。


「雫、無事でよかった」

「うん…。ねえちょっと話したいことがあって想心とアンジだけで話したいの。いいかな?」

「小生は大丈夫。この二人見てないといけないから」


 雫は俺とアンジを連れてややというよりだいぶ離れた場所で打ち明けられた。


「あのね、実は…」


 甲斐さんに捕まってしまい、最初何をされるのかわからずそこにハウヴァが女性たちを連れて現れたらしい。それでハウヴァと取引をしていたらしく、以前の女性が使用していたカステクラインが、例のオカマさんである岬航さんの住所だった。

 そしてまさかカイノ村に住んでいたことがわかって仲間のミッドヴィークに頼み誘拐をお願いしていたらしい。その情報源はなんと白金銀の口から聞いた。


「あのドS野郎が?」

「うん。なぜか私にだけ情報を教えてくれたの。それでその話には続きがあってもしかしたらばれてるかもしれない…」

「白金銀にか?だってウォールディアが言ってたじゃん。デステクライン使いから追われないようにするって。まさかウォールディアに何かあったんじゃ」

「それはないと思う。ウォールディアはこのミズノ国を守っていて普通に生活できているのもウォールディアのおかげだよ。やられたらここにいられない」

「どういう形でばれたかもって思ったんだ?」


 雫に問うと雫が常につけている雫のピンを見せながらこう言う。


「これはお父さんが作ってくれたピンなの。だからどこにも売っていないピン。それにカラコン入れているのがばれちゃって私だってばれちゃったかもしれない」

「そんな気にすることはないと思うけどな」

「んー判断はしにくいけど、話している時に何かを感じたの?」

「お父さんのことで反応しちゃったの。それで気づかれちゃったかなって少しあって」


 なるほど。雫の父さんについて反応してしまった雫だから少し恐怖を抱いてしまったということか。これで仮にばれていたとしても奪おうとしない理由は一体なんだ。考えても答えが出ないと悩んでいたらアンジがこんなことを言う。


「もしかすると僕たちは泳がされているのかもしれない。今はカステクライン使いとしているけど、実際雫の魂はデステクラインの中にある。だからデステクライン使いに戻ったタイミングで奪うか、それともウォールノ森に侵入して奪うかのどちらかだ」

「じゃあデステクラインは私がもっといたほうがいいんじゃないのかな。ウォールディアに何かあったら困るよ」

「いや、持っててもらった方がいい。ここで雫がデステクライン使いだってばれたら青の団の評価が悪くなる。それは一番に避けたい」

「それもそうかも。まだできたばかりだし評判を下げたら団長すぐ現れそうな感じだし、ここで匿っているとなれば想心が危険になる可能性だって出てくる。僕たちだけで探りを入れてみよう」


 白金銀がいるところに戻ることにしテンファがいるところに戻ってみると、甲斐さんは拘束されたままで岬航はテンファの後ろでぶつぶつ言っていたのだ。 


「テンファ」

「お話は終わったようですね。一応団長に報告したところ、全員捕まえてミズノ王国に連行するよう指示が出ました。今魚人族の皆さんが捕まえに行ってもらってます」

「そうか。ありがとな、テンファ。それより甲斐さんなんでこんなことするんだよ」

「うるせえ。お前たちは生まれ変わりもできる。だがなわしたちはそんなものないんだよ!死ぬことも許されない!せめて、せめて癒しだけ欲しかった…」


 あんたねと岬航さんが怒り始めそうになりまあまあと俺が落ち着かせている間、アンジが甲斐さんを離れさせる。三十万ポイントは無しになりそうな感じでも仕方がないか。どうなるかはわからないけど岬航さんに確認をする。


「岬さん」

「何よ」

「失礼ながらあなたのご職業お聞きしてもよろしいですか?」

「デザインと美容系の仕事してるけどそれが何?」


 デザインと美容系の仕事関係か。女子にも入ってもらえるようにおしゃれとかアドバイスとかできそうだし、デザイン関係もできるならそれはそれでいいのかもしれない。


「あのよかったら青の団に入っていただけませんか?」

「本気?」

「カイノ村は全員ミッドヴィークだし、ただ一人ここに残すわけにもいかない。またいつこんな美人が狙われるかわからないだろ?俺たちが保護してあげないと新手が追ってくるかもしれないし安全な場所って言ったら寮じゃん?寮なら家令たちもいるから安心して仕事ができる」


 美人という言葉で頬を染めて俺の前に来て目をチラチラ見せている。嘘でしょという顔をしたテンファであり、まあいいんじゃないと俺の意見に賛成してくれる雫。


「名前まだ聞いてないけど、あなたがそういうなら団に入ろうかしら」

「ぜひ。俺は青の寮長である葉桜想心って言います。それと雫にテンファ、あっちにいるのがアンジ。よろしくお願いします」


 新しい出会いがあって一件落着だと俺たちはこの日思っていた。あの日が来るまで…。



 六段魔道士になるのに後もう少しになった頃、セブラがやばいと何かを慌てていた。どうかしたのかなと僕の部屋の隣がセブラの部屋で入ってみると散乱している。


「どうかした?」

「やばい、無くした!こんな小さい雫のピアス見てないか?」

「雫のピアス?僕は見てないよ。それがどうかしたの?」


 頭を抱えてどうしようとしゃがみ込むセブラでルルラちゃんの部屋でも聞こえたのかルルラちゃんも入ってくる。


「どうしたの?」

「ルル、雫のピアス見てないか?」

「えーとそれなら、銀さんがさっきセブラの部屋に入ってたよ」

「あいつ何考えてんだよ。あいつのところに行かなくちゃ。確か今、馬鹿女のところに行ってるんだった。俺、ちょっくら言ってくるから、留守番よろしく」

「あっ!セブラ!」


 セブラはローブを着て行ってしまい、あんなに慌ててどうしちゃったのかな。まあいいやと散らかったのを片付けていく。そう言えばセブラ、雫のピアスつけていた。とても大切なんだろうとルルラちゃんと一緒に片付けていると家令が入って来る。


「思穏様、お客様たちがいらっしゃいます。お通し致しますか?」

「誰ですか?」

「外をご覧ください」


 家令がカーテンを開けてくれて窓から覗いてみると長蛇の列が出来ていた。こんなに寮生に入りたいと志願しに来てくれたのか。セブラはさっき出かけちゃったし僕一人で面接とかできる気がしない。

 それにまだチラシに載せた時間にはなっていないし、待っててもらうしかなさそうだな。


「少し待たせといて」


 御意と家令がセブラの部屋を出て行き僕は自室に戻って、セブラを待つことにした。

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