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シゴノセカイ《改訂版》  作者: 福乃 吹風
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21話 カイノ村①

 松風先輩の授業を受け風魔法の使い方を覚え数日が経った日のこと。ポイントも稼いで五段魔道士になれるところまで、後もう少しだというのに筆記試験と実技試験を受け、脱落者となってしまった。

 そのせいでポイントを半分没収されるというショックな出来事に、雫も同じで落ちこぼれ状態となっている。


「二人ともそんなに落ち込まない。ほとんどはできてたからよかったと思うよ。それに比べて夏海は筆記試験で毎回、〇点だから気にしない。本当は夏海、卒業させてもいい頃なんだけど、筆記試験が駄目だからずっと僕の生徒なんだよ。頑張れば卒業できる」

「次試験いつなの?」

「半年後。それまでに僕がビシバシと指導してあげるから安心して」


 その言葉に俺と雫は同じ思いをしていたと思う。こう見えてアンジは鬼教師だから、どうせならライゼ先生辺りが良かった。ここは笑って誤魔化すしかないと笑ってありがとうと伝える。


「ありがとな。いろんなこと教えてくれて」

「魔法を覚えるのも一苦労なのがわかってくれたところで、ポイントを半分失ってしまった二人に新しい依頼書を貰っといたよ。依頼者は甲斐亀太郎かいかめたろうさんでカイノ村にある海がゴミのせいで汚染されているらしい。いくらゴミを拾っても増えるばかりで人手不足」

「不思議だね。ゴミを拾っても増えるだなんて妙だよ」

「だから依頼をしてきたんだよ。もしかするとデステクライン使いの仕業かもしれないから調査をしに行く。ちなみに報酬ポイントは三十万ポイント」


 これは受けるしかなさそうだなと俺と雫は同時に受けると言う。


「じゃあ早速行ってみようか。そう言えばテンファは?」


 そういやさっきまでいたのにいないなとキョロキョロしていたら、紙の束を持ってこっちに来たのだ。


「テンファ、どこ行ってたんだよ」

「寮生を増やすためにやることはやっておいた方がいいと思ってこんなの配ってたから遅くなった」


 テンファが俺たちにチラシをくれてみると寮のイメージであるエイの腹が描かれていて寮生募集中というチラシ。そうか、テンファは花屋で働いていたこともあり、こういうチラシを作るのは得意なほうなんだ。


「ありがとう」

「いいよ。寮生として役に立ちたいこともあるし、ここにはまだ庭師もいないって家令が言ってたからお庭の手入れもさっきしといた。そういう人材も集めるのも寮長の務めだと思うから、寮生が増えたら仕事も振り分けるといいのかもしれない」

「参考になるよ。アンジ、役割分担について後で話し合おう」

「そうだね。雫もテンファも寮生として役割を持たせるといいのかもしれない。後で話し合おっか」


 その話は一度中断し俺たちは箒に乗って、カイノ村に出発することにした。


 俺は寮長でアンジは副寮長、テンファは庭師としてやってもらうけど雫は何が最適なのだろうか。他にもいろんな職はあるだろうし雫にあった職を与えよう。

 箒に乗って南西方面に進み数分後、カイノ村が見えて来てあれがカイノ村かと、貝殻をそのまま活かした家がいくつもある。


 箒から降りてカイノ村に入ってみるとなんじゃこりゃというぐらいゴミが村まで行き渡っておりしかも壁にカビが生えており刺激臭が凄い。


「普段はこうじゃないんだけど、さすがにきついかもしれない」


 汀も小さな手で鼻を押さえていて、抱っこしてハンカチを当ててあげながら村の様子を見た。原因がなんなのか確かめてみないとわからないな。

 とにかく依頼主である甲斐亀太郎さんのご自宅へと行ってみると、ゴミ拾いをしている中年男性がいた。聞いてみようと声をかける。


「すみません。依頼を受けて来ました。青の寮長である葉桜想心って言います。甲斐亀太郎さんはどちらにいらっしゃいますか?」

「わしだよ。すまんな。いくらゴミ拾いをしても増えるから村のみんながやめてしまったんだよ」

「海が汚染されている場所を案内してもらえますか?」


 こっちだと浜辺に案内してもらい行ってみると村より浜辺の方が酷い状況だった。綺麗な海も汚染されているせいで、鼻がおかしくなりそう。


「いくら回収してもほら、ゴミが流れてくるんだ」

「珍しいですね。以前ここに訪れた時はこんな酷くなかった。いつからですか?」

「一ヶ月前辺りから、ゴミが溢れ出てきてな。早くこの問題を直して今まで通りに戻したいのがわしたちの願いだ。観光客がいなくなってしまって営業すらできない」

「小生も一度、店長と遊びに来たことあります。その時は何もなく美しい海で貝殻探しを楽しんだ。小生が思うに原因は海の中だと思う」

「私は初めて来たけど、海の中に何かがいるのは感じる。実際に海に入って調査した方がいいよ」


 テンファと雫が言うものでこの中に入るのかと嫌々でも海の中を確認するしかなさそうだな。しかし甲斐さんがこんなことを言う。


「そのことなんだがわしたちも海の中を確認してみたが原因となるものが何一つなかった。行っても無駄だと思うが原因がわかるなら頼みたい」

「そうですか。一応俺たちも確認させていただきます」


 気をつけてなと言われながら俺たちは海に入りカステクラインを起動させた。


「カステクライン!水、魚の人間!」


 人魚の姿となり俺たちは海の奥へと進んで行く。ただ汚染されていることであまり見えないなと泳いで行たら微かに助けを求めている声が聞こえた。


「なあ」

「どうかした?」

「あれ聞こえなかった?助けを求めている声がしたんだけど」

「私も聞こえたよ」

「え?小生には聞こえなかった」


 俺と雫には聞こえてアンジとテンファには聞こえなかったのが不思議だ。更に奥へ進んで行くと助けを求めている声が大きくなり、俺と雫はその方角へ進んだ。

 誰かがいるんだと泳いで行たらいきなり人魚が現れたというよりデッドメイドが出現する。やばいとカステクラインを起動させようとしたら魚の骨を剣にしたのが首元に来た。


「ふふ。見つけましたわ。青藍の葉桜を持つそ・う・ご。お友達は遠ざけてもらったから呼べないですわよ」

 

 剣を持っていない方で俺の頬を触り、やめろと振り払おうとしたが体が痺れていることに気がついた。それに声も出ず俺に何をしたと意識が朦朧として汀に指で指示を出しアンジのところへと行ってもらう。


「そんなことしなくても、想心を取り返しにやって来ますわ。デッドメイド、想心を連れて行きますわよ」


 デッドメイドが俺を担ぎ移動して行くのがわかるも俺は眠気さのあまり寝てしまった。


 

 芽森が目の前にいる。俺は芽森の手を掴もうとしたらシルバーの髪質にシルバーの衣服を身に纏った奴が現れた。おいでと囁き俺は芽森を呼んでも、芽森はシルバー男の手を取って行ってしまい遠ざかっていなくなってしまう。


「芽森!」


 ガバッと起きてなんでこんなに俺は魘されていたんだと汗が流れている。芽森が狙われているのはわかってたけどあんな夢を見るだなんて最悪だ。

 すっとグレーのハンカチを渡して来て横を見ると俺を連れて行った彼女がいる。手足には枷がついていた。


「魘されてたけど、大丈夫?」

「お前は誰なんだよ」

「はいねはグレー寮長であるハウヴァ。千年前、汀春の近くにいた女の魂を狩りに来ましたの。きっと今頃慌ててこっちに向かって来てる頃だと思いますわ」


 汀春さんのそばにいた人ってリディー先生のことか。体を動かそうとしたらハウヴァが俺の上に乗っかった。


「駄目ですわ。想心は囮。そうですわね、あの女が嫌がりそうなことでもしたら、ふふ。想像するだけで面白い絵ができそう」

「なっ何するんだよ!」


 ハウヴァは俺を倒し服を脱ごうとしていてたんまと大声で叫んでいたら、何してると現れたのは夢に出て来た奴だ。


「ハウヴァ、やめなさい」

「別にいいじゃありません?あっちでまだ生きてたら二十代後半ぐらいの年齢ですの。少しは甘えたい気持ちが」


 俺の目の前でいきなりハウヴァの唇を奪うシルバー男で、こんな奴に芽森を奪われるのは嫌だな。てか長くないっすかとガン見していたら、離れてハウヴァは満足そうな笑みでシルバー男を見ていたのだ。

 

「ハウヴァ、いい子なら自分以外はしないこと。いいね?」

「はい、銀様。何かあればお呼びください」


 なんだとぽかんとしてしまう俺で、ハウヴァは花を浮かせながらこの場から離れた。いなくなったことでシルバー男は俺を立たせるといきなり背中に板が張り付いて十字になる。


「ディーグから大体は聞いていたけど、汀春と同じ顔。壊すよう命じられてはいないから、どうやって遊んであげようか。リディーが一番嫌がる方法。決めた。リディーが一番欲したいことをしよう」


 なんすかと予想ができず急に俺に近づいて顔がやや近い。なんでボーイズラブでもあるまいしやめろと、なぜかシルバー男にドキドキしているとカチャッと枷が外れる音が聞こえる。

 楽になれた俺で目を開けてみると自分で枷をつけ始めたのだ。あなたは馬鹿なんですかと言いたいぐらい。


「想心、自分は言っておくけどSだから想心を超絶甚振りたい気持ちが溢れている。だけどリディーがして欲しいのはこう言うのじゃない。道具をここに」


 シルバー男が言うとハウヴァたちが道具を持って来て、いやいやできないと端っこに寄る。


「できるわけないし、俺そういう趣味持ってねえから」

「振りをするだけでいい。何枚か写真を撮らせてくれればいいんだよ。できなかったらお仕置きしようか。そうだな、例えば妹である芽森を目の前で甚振ってるところとか見せた方がいいかな?」

「お前、まさか芽森を狙ってる気じゃねえだろうな!」

「さあどちらだと思う?」


 ここでやらなければ芽森が危険になっちまうってことだよな。仕方がないとハウヴァが持っている鞭で俺は思いっきりシルバー男に向かって体を痛めつけていったのだ。


 

 デッドメイドに襲われ一度浜辺に戻ってみたけど想心の姿がなくもう時間が切れている。汚染されていたこともあり、周囲が見えなかったことで想心が襲われたかもしれない。一刻も早く探さなくちゃともう一回海に潜ろうとしたら汀が出て来た。

 しかし想心はいなくて汀が僕のところに飛びついて来たのだ。


「想心が襲われたっぽい。とにかくもう一回潜ってそれから」


 考えているとリディー先生の声が聞こえ僕たちは後ろを振り向くとリディー先生が走って来たのだ。


「アンジ!」

「リディー先生。なぜこちらに?」

「先生宛てに手紙が届いた。中身を見ると堪らん写真ばかりが入っていてな」


 何がと封の中身を見せてもらうと写真と手紙が入っていた。


 リディー、お前の愛しい人は預かった。返してほしければお前の魂を渡せ。それが条件だ。場所は人魚がいたとされるダンジョンだ。以上 白金銀しろがねぎん


 嘘でしょと雫が驚いており、雫はどこかで会っているんだろう。


「白金銀はグレーノ国の団長で、ドSだと聞いていたが想心がこんな趣味を持っていたとはやはり寮に入るべきだな」

「言いましたよね?先生は寮に入れないし、想心はそういう趣味はお持ちじゃありませんって。きっと先生が欲するようなことを無理やりやらされているだけ。人魚がいたとされるダンジョンは確か」

「シーゼン港街から行けば近い」

「だけど汚染されている原因はまだ見つかってないよ。アンジ、どうする?」


 そうだった。今は依頼の調査にあたってるし、想心を連れ戻しに行ってる間にどんどんゴミが増えて行くのもあれだな。こういう時は半々に分かれてやるしかない。


「わかった。じゃあ雫とテンファはここに残って依頼の調査を進めといて。僕とリディー先生で行ってくるから」

「船員さんが場所知ってると思うから聞いてみるといいよ」


 ありがとうと僕とリディー先生は至急シーゼン港街へと向かった。



 ルルラちゃんに貝殻のブレスレットの作り方を教わり出来上がって、ルルラちゃんと海を眺めていたらセブラが帰って来たのだ。


「どうだった?」

「芽森を落とそうとしているのがわかったんだけど言っちゃっていいのかな。あいつの性格まじでやばい。ルルラは聞かない方がいいかもしれない。待ってられるか?」

「ルルは全然平気。大人の事情ならルルは聞かない」


 ルルラちゃん、そういうところしっかりしていてルルラちゃんから相当距離を離し話してくれる。


「芽森を狙おうとしてる奴は白金銀はくがねぎん。ドSイケメンかつ一発で女を虜にさせてしまう奴なんだよ。それに間違えれば道具を使ってお仕置きタイムが始まる」


 想像したくない映像が浮かび上がってきてそれを揉み消し、芽森ちゃんが心配になってくる。


「どうにかならないの?」

「俺たちは所詮魂だ。直接触れ合うこともできないからくるめを信じるしかない」


 大丈夫かなと不安が大きくなるも僕たちが止めることは禁じられているから芽森ちゃんの無事を祈るしかなかった。

 ルルラちゃんがいるところに戻り、僕たちはバイル村を後にし一度帰還することにする。


 帰還しルルラちゃんをライト寮生にするため、僕は職員室で申請をしていると隣にねずみちゃんが来た。


「久しぶりだね」

「久しぶり。そっちは見つかったの?」

「全く。どこに行ってもロゼ・エンディリアを見かけていないって言われちゃったよ。ねずみちゃんのほうは何か情報掴めたの?」

「わずみのライトグレー団で探しても無理。ロゼはこう見えて隠れるのが上手いし、変装術もわずみたちより上だったから」 


 そう簡単には見つからないかとルルラちゃんの手続きが完了し寮へ戻ろうとしたらシルバーの髪質でシルバーの服装を着た人が職員室に入って来る。廊下では女子の声が響き渡っていた。この人が白金銀だと理解する。


「ねずみ、今日も可愛いね。どうだい?自分のところに」

「お断りします、銀さん。他の女子と違ってわずみはあなたの趣味に付き合っている暇がないから。それじゃあ、またね思穏」


 ねずみちゃんは用事を済ませてさっさと行ってしまい、僕もあまりこの人と関わらないように行こうとしたら引き止められてしまう。


「君が思穏だね。自分は白金銀。セブラから大体は聞いてるでしょ?芽森を落とし自分のものにするって決めてるんだ。すでにあっちで始まってる頃だと思うよ」


 殴りたい衝動があるもグッと堪えて寮に帰ろうとしたら、ハハッと笑って何がおかしいと振り向く。


「そうそう、一つ言い忘れてた。思穏の友達である想心は今ね、自分の女の子たちに囲まれてる。その意味がわかるかな?だけどそこは天の世界にある場所だから思穏は助けに行けないだろうけどね」


 僕は咄嗟にセブラがいる寮へと走り、想心を助けに行ってもらわなくちゃと急いで帰った。

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