18話 シーゼン港街④
三日後の出来事。
俺たちは普段通りにリエートで引き取った依頼を受け、ポイントをがっぽり稼いで湘西さんのご自宅へ戻った。まだ寝込んでるのかなとアンジ特製のお粥を持って寝室に入ってみると、湘西さんが着替え中で一度固まり俺とアンジに物を投げつけてくる。
「この馬鹿!どこ見てんのよ!」
「すみませんでした!」
俺とアンジは寝室を一度出て扉を閉めようとしたら俺の顔面に物がぶつかり雫がそっと扉を閉めた。おでこに大きなたんこぶができ、まじで痛いとおでこをさすっていると宮廷医師である和水志帆さんが出てくる。
「男子たち、ノックもせずに乙女の寝室に入るのは禁物よ」
「すみません」
「わかっているのならよろしい。さてと私はミズノ王国に戻るわ。湘西さんは見ての通り元気になったけど、あまり無茶はさせないでね。呪いが発動したら発熱程度じゃ治らないから」
「はい。気をつけます。志帆さん、ありがとうございました」
「また何かあったら言ってね。それじゃあ。カステクライン!取り出し、箒!」
箒を取り出して和水さんは帰られてしまい、少しすると湘西さんが牙を出しているような表情で俺たちを見ていたのだ。今度からは気をつけようとリビングでアンジ特製のお粥を一緒に食べる。
なんか空気重くないっすかと話をしようとしたら、玄関の扉が開き船員たちが良かったと涙ぐんでいたのだ。それを見た湘西さんの怒りが消え、普段の湘西さんに戻る。
「お前たち、心配かけてしまってごめんなさい。だが気を緩むな。あたしの愛弟子が奪われた。奴は必ず海に出てくる。船の準備を進めろ」
船員たちは敬礼してささっと湘西さんのご自宅を後にし、俺たちは朝食を綺麗に食べ終わり食器を片付けた。アンジが全てやっちゃうから、たまには手伝わせてほしいと食器を拭いていく。
「またリエートでポイント稼ぎする?」
「三日も現れないのが不思議だけど、そろそろ僕たちも出動命令が出されると思う。ほら今、ミズノ王国では死屍軍団が攻めているって聞いたでしょ?もしかしたらシーゼン港街にもその可能性が高いってことだよ」
「もしかしたら紛れてくるかもしれないよ。デステクライン使いは変装術を叩き込まれてる。デステクライン使いだとわかる印があるんだけど、足の裏を見なくちゃならないから捕まえて確認するしかないよ」
まじすかと言いたいぐらいで、探すのに一苦労しそうな感じがした。
「想心、アンジ、雫」
「なんでしょうか?」
「人形を取り返してくれた報酬だ。受け取ってほしい」
十万ポイントが加算され後もう少しで五段魔道士までいけると喜びたいものだがまだ終わっちゃいない。
「それで次の依頼を出す。テンファを無事に取り返したら五十万ポイントを渡す」
「いやいや、そんな多額なポイントは受け取れない。俺たち、青の団がいながらも助けられなかったこちらの問題です。ここはポイント入りません。今度こそ俺たちがテンファを救い出しますから、湘西さんは体を大事にしてください」
「ごめんなさい。そうさせてもらう。船はいつでも出せるよう手配は済ませておこう」
「ありがとうございます。んじゃ俺たち、行こっか」
ちょっとと二人が俺を止めようとも俺は湘西さんのご自宅を出る。二人も慌てながら出てきてどうしてとアンジに聞かれた。
「想心、なんで?湘西さんと一緒に行動しなくちゃ駄目でしょ?」
「そうだよ。だって団長に狙われてるんだよ」
「湘西さんは大丈夫だって。薬草とか買ったらすぐ出港しよう」
二人はまだ俺が考えていることがわからないような顔立ちでいるも、シーゼン港街で買い物をして出港する。
やっぱり海賊船に乗るのはいいなと鼻歌を歌いながら海の景色を見ているとそろそろ聞かせてよと拗ねり始める二人。そろそろかと俺は二人にあることを告げた。
カステクラインで時間を確認し、俺たちは人魚になるため海に潜りカステクラインを起動させる。
「カステクライン!水、魚の人間!」
人魚になって俺たちはシーゼン港街へと引き返していたら、濡羽玖朗がデッドシャークを複数出して現れたのだ。やはり湘西さんをやるのは副団長である暗野伊雪。
「アンジ、雫。先に行ってろ。俺はこいつに用事がある」
「時間が限られてること忘れないでよ」
「わかってるって」
行かせないと濡羽玖朗が二人を止めようとも俺は攻撃を開始する。
「カステクライン!水、カワウソの牙!」
汀ともう一匹が濡羽玖朗に噛みつこうとしたが、濡羽玖朗の鋭い目で汀ともう一匹が戻ってきてしまう。そう簡単に行くわけがないことは承知している。だがこれも作戦の一つだ。
アンジは俺の作戦を聞いて絶対に駄目と手で罰点を作るほど嫌がっていたが、俺がこうしたいという思いを受けて雫と先に行ってもらっている。
「テンファがここにいるのもわかってる。出してもらえないか?」
拘束魔法で拘束されているテンファはまだ気を失っている状態だった。
「テンファの魂を狩らないならさっさと返してくれない?目的は湘西さんだけだろ?なぜテンファを人質にとった?」
「あの女の弟子だったからな。まあこいつを人質にしても無意味。返す代わりに一度お前を人質に取りたい」
「どういうことだ?」
質問をすると濡羽玖朗は考える仕草をして、考えてなかったんかいとツッコミしたくなるような感覚だ。濡羽玖朗はマイペースな性格なのかと一瞬思ってしまう。
二人はもう無事に着いたかなとカステクラインをみるとまだ時間はあるから早くテンファを返してもらい船に戻らなくちゃならない。
考えがまとまったのか俺の方を向き、教えてくれる。
「またいつか会った時に答えを出そう」
拘束魔法が解けテンファがこちらに来ると、小さなアルバムまでもがついてきたのだ。
「これお前のなんじゃ」
「思穏が写っている写真だ。セブラのせいで想心の命を奪ってしまったこと申し訳ないと思っている。だが、思穏は獄の世界に必要な人材。証拠を探しているようだが絶対に見つけることはできないと思え」
どう言うことだよと言いたかったがすでにいなくなってしまって、考えている暇はないとテンファを船に乗せる。
「テンファ、テンファしっかりしろ!」
何かされていないか不安だったがここはと目を開けた。良かったと船員たちが安堵し混乱しているテンファに事情を説明する。
「箒でシーゼン港街へ行くぞ。飛べるか?」
「はい。あの想心さん」
「さんはいらない。だってテンファはもう青の団なんだからさ。それじゃあ行くぞ。カステクライン!取り出し、箒!」
箒に跨いでテンファも箒に跨いだことにより、俺たちは箒に乗ってシーゼン港街へと急いだ。
着いてみるとすでに始まっており死屍を倒しながら、湘西さんの自宅へと向かう。思っていた以上の死屍で、後もう少しで湘西さんの家だと倒していたら、湘西さんの自宅方面が爆発する。
アンジと雫が箒に乗って脱出しているのが見えテンファは焦り行ってしまった。まだ死屍がいるのにと、ここにいる死屍を放置しテンファを追う。
家が崩壊したらしく煙が凄いなと煙を吸わないように、腕を当てながら進んで行くと店長と叫んでいるテンファの声がした。何かあったんだと走っていくと、唸り声を発しながらテンファに攻撃を当てている湘西さんがいる。
遅かったと俺も加わり湘西さんを止めようとしたら、ばっと俺の前に現れたのは暗野伊雪だった。
「沙緒りんの邪魔しちゃ駄目だよー。愛弟子の魂を狩ってもらうんだからさ」
「そんなのさせるかよ!カステクライン!水、雲雨の雨!」
雨が降りデステクライン使いにも効果はあるはずだと雨に打たれていると落とされた時に見たローブを羽織る。
「そんなことしても無意味だよーだ。沙緒りんの人形は団長が壊したから、思うように操れること忘れないでよね」
「カステクライン!氷、熊の雪合戦!」
アンジが出した白熊が雪玉を喑野伊雪に当てようとしたが、喑野伊雪の攻撃に防がれてしまう。
「デステクライン!タコの逆鱗!」
タコが炭を出してやばっと逃げようとしたら、しししっと笑う喑野伊雪に捕まってしまった。
「アンジくんのご主人様ゲット。しかも青藍の葉桜の持ち主じゃん。クロノ国に連れてって遊びたいな」
「離せ、離せ…アンジ?」
俺が喑野伊雪に捕まったことで、アンジの様子がおかしくなり、そう言えば前にも似たようなことがあったような気がする。アンジは笑っているも、あれは完全に怒っているパターンだ。
「想心は連れて行かせないし、伊雪さんは三段魔導士。僕に勝てるわけがないんだよ。カステクライン!氷、雪男の暴風雪!」
吹雪が吹き始め何も見えないし目が痛くなりそうと目を閉じていると誰かに担がれ脱出しているように見えた。目を開けるとお前は誰だと、固まっていたら俺の名を呼ぶアンジの前に降ろしてくれる。雪男かと認識が取れ雪男は雪の結晶となって消えていった。
雫もこっちに来て三人で喑野伊雪に挑もうとしたら死屍になりかけている湘西さんがこっちに来てしまう。
「湘西さん、目を覚ましてください!」
声をかけても攻撃して来て、このままじゃまずいとカステクラインを起動させた。
「カステクライン!取り出し、剣汰の剣!」
剣汰がくれた剣を取り出し湘西さんを止めに入る。唸り声を発しながらよだれまで出てきていた。一度噛まれたら感染するって授業で習ってたし、早く浄化魔法を唱えてあげたい。
だけど操っているデステクライン使いが放置しなければ浄化魔法は効かないと教わった。だからまず喑野伊雪を倒さなきゃ意味がないんだ。
「せっかく捕まえたのに残念だなー。でーも、あたしの役目は終了してるの忘れてなーい?」
嘘だろと喑野伊雪の方を確認すると湘西さんのカステクラインを持っていて、テンファが取り返そうとしたが目の前で魂を奪う瞬間を目撃することになる。
「湘西さんの魂返せ!」
「テンファ、よせ!」
テンファは喑野伊雪が奪った魂を取り返そうとしたが、喑野沙緒はあっかんべえをして瓶に魂を入れると鮮やかな色が真っ白へと切り替わった。
テンファは喑野伊雪の目の前で地面に座り込み、大笑いをする喑野伊雪はテンファの顔面を蹴り倒れてしまう。
「残念でしたー。沙緒りんはもういないよー。この魂は誰にあげようかなー。自分で使ってもいいけど、まだ遊び足りないからまた遊びに来るね。今度は沙緒りんの愛弟子であるテンファの魂かな。なんてね。バイバーイ、負け犬さんたち」
「待ちやがれ!」
こんなあっさり行かせるかよと俺の思いが届いたのか汀が喑野伊雪の腕に噛み付いたのだ。
「痛っ!」
喑野伊雪が汀を振り払い行ってしまわれ、せっかく友人になれたのに再び死が訪れるだなんて最悪な事態だよ。喑野伊雪が放置したと確認したことにより、ここはテンファにやってほしいところだが立ち直れそうにない。
完全に死屍になってしまった湘西さんを、俺が浄化することにした。
「カステクライン!水、浄化の雫!」
浄化の水が流れ湘西さんが元通りになり倒れるところ、キャッチして地面に寝かせる。アンジも雫も予想外な展開で言葉が出ないようだった。
◆
バイル村に到着し想像していた村よりちょっと外れてしまった場所。貝殻の建物が汚れ切っており新鮮な貝が食べられるか不安がありながらも村に入る。
人も穏やかな人がいなく、どの人も疲れ切っている表情をしていた。何かあったのかなと疑問にありながら進んで行くと、帰れと怒鳴り声が聞こえる。
そちらの方角に行ってみると随分ボロボロになっている服を着て、頭もボサボサの状態でいる少女が小さなお椀を持って尻餅をついていた。少女の前には高そうなスーツを着ている中年男性が少女に向かって泥水を撒き散らして扉を閉めたのだ。
「セブラ」
「いい加減やめておけって言ってんだけどな」
「知り合いなの?」
「まあな。あの子は一度もカステクライン使いの魂を奪うことができなくて、手作りの物を作ってポイント稼ぎしてんだよ。だけど獄の世界は厳しい世界でもある。そう簡単に買ってはくれないのが当たり前なものだから、あまり子供達にはデステクライン使いとして、敵のカステクライン使いの魂を狩るよう教育させてんだ。まあ一部はその教育に耐えきれず、逃げ出す子達もいる。その一人があの子だ」
なんか可哀想だなとまだ座り続けている少女の前に行き、手を差し伸べてみるが自分の力で立ち行こうとする。待ってと追いかけ少女の手を握りしゃがんで顔をよく見ると辛そうな顔をしてた。
「お名前は?」
「ルルラ…」
「ルルラちゃん、さっきおじさんに買ってもらおうとしたのは何かな?」
ルルラちゃんはポケットにしまっていたお手製の貝殻のブレスレットだ。ここに来る前に多少ポイントは稼いであるから大丈夫だろう。
「そのブレスレット、いくらかな?」
「一億ポイ」
それを聞いて僕は苦笑いしてしまうほどで、こらとセブラが軽く拳骨をしたのだ。
「ったく。その金額じゃ買ってもらえないぐらいわかってるだろ?それにルルラ、自分で名前変更したんだからそのポイントを稼いでも意味がないのは覚えてるか?」
「わかってるもん。この世界が厳しいことも、生まれ変わりができる確率が低いことも知ってる。でも…殺しちゃったお兄ちゃんに渡したい」
「あのなーこっちとあっちじゃポイントを分け与えられないんだぞ。何度いー」
僕はセブラの口を塞いで僕はある提案を持ちかけてみた。
「ルルラちゃん、もし良かったら僕たちの団に入らない?」
「でも団に入ってみも無理だよ。ルルは授業から逃げた。団に入れてもらう資格ない」
「そんなことないよ。僕たちと旅をしてポイントを稼いで行けば階級も上がれる。五段魔道士になればあっちの世界に行けて、お兄ちゃんを探しに行けることもできるんだ」
「…ルル逃げるかもしれないよ。それでもいいの?」
「いいよ。逃げたければ逃げればいい。但し条件がある」
条件と首を傾げ僕はあることを伝えると、パッと花が咲いたように笑顔になってセブラはため息を出す。行こっかとルルラちゃんの手を握り歩き始め、ルルラちゃんが僕たちの仲間に加わった。




