14話 シーゼン港街①
六段魔道士になれて魔法を一つ取得できるらしく、どの魔法にしようか迷っていると松風先輩が隣で見ていた。
「松風先輩、どうしたんすか?」
「六段魔道士に、なった、て聞いたから、アドバイス。風魔法を、先に、覚えると、便利。風の調節が、できて、暑いところも、寒いところも、自由に風を利用、できる」
「なるほど。じゃあ風魔法学を取得しようかな。でも俺的には炎魔法学にも興味があって迷っちまうな」
この前みたいに寒いところとかに行くなら、風魔法学を取得しておいた方が一番楽かもしれない。だけど俺が興味をまず持ったのが炎魔法学なんだよな。
考えていると雫もどれにしようって呟きながら、今度は松風先輩が雫に説明するも無視され俺のところに戻って来た。無視はあかんぜよと突っ込みたいが、松風先輩がずっと待っているから仕方ない。ここは風魔法学にしようと風魔法学を取得することにし、先生に提出をして手続きが完了した。
「風魔法を、選んでくれて、ありがとう」
「そう言えば基本はアンジが魔法学の先生やってますけど、普段は違うんですか?」
「うん。アンジは、優秀だし、生徒にも、人気が、ある。だから先生たちは、任せっぱなし。だけど想心が、来てから、校長が、それを見直して、先生も動き出した。某も、風魔法学の、先生に、抜擢されたから、想心に、教えたくて、風魔法学を、選んで、もらった、のもある」
そういうことだったんだなと笑顔を取り繕い、小さくはははっと笑っていたら、アンジが職員室に入ってきてやきもちをする顔をする。
「涼太郎さん、もうすぐ飛行学の時間じゃないんですか?生徒たち集まっていましたよ」
「もう?じゃあ、行く。それじゃあ、授業で」
「はい。松風先輩」
松風先輩はカステクラインを起動させ箒を取り出しながら職員室を後にされ、何話してたのと聞かれたから答えた。
「風魔法学を進められたからそれにしただけだよ」
「え!氷魔法にしてくれなかったの?」
「あっ悪い!」
パンッと両手を合わせて謝るもアンジは不貞腐れてしまい、また機嫌損ねさせちゃった。スライムペンギンを捕まえて機嫌が良くなってくれたのにやらかしてしまう俺のミスだ。だからこう伝えるしかない。
「五段魔道士になったら今度は氷魔法学を選ぶからそれで許して」
「…わかったよ。それで雫は何にしたの?」
「私、氷魔法や風魔法も良かったんだけど、植物魔法にした。ほら植物魔法は回復魔法が多いみたいだし、想心は攻撃魔法系でアンジは防御魔法系と考えると回復させる人がいないじゃない。そう考えて植物魔法を選んでみた」
「植物魔法にしたんだね。そうなると…教える人がいない。大体は水魔法で癒やせてたからミズノ国にいる人たちは植物魔法を選ばなかったと聞く。どうしたものか。せっかく覚えられるのに独学で学ぶか…」
「それなら僕の知り合いに植物魔法を覚えている人がいるよ」
そこに現れたのはライゼ先生でなぜか丸焦げになっていて若干焦げ臭く先生たちは窓を全開に開けたのだ。
「ライゼ先生、なぜ丸焦げになってんすか?」
「あははは。実は生徒の前で実験をしていたら爆発してしまって、この通り丸焦げになってしまったよ。それで知り合いは今、シーゼン港街という港の街に住んでてね。ちょうど依頼が来ているから、これあげるよ」
依頼書をもらい確認してみると海のどこかに眠る花を一緒に見つけてほしいという依頼だった。海=船に乗るってやつかと興味深々になりつつ、報酬金額を見たら十万ポイントらしい。これはいい依頼書だと引き受けることにした。
「そうだ。ついでなんだけど、シーゼン港街でしか売っていないのがあって、それを二つ買ってきてくれないかな。もちろんポイントは渡す」
「いいですけど、何を買ってくればいいんですか?」
「あれですよね。娘さんたちの魂がどんな生活を送っているのか知りたいんでしょ」
「さすがはアンジくんだね。そう、ちゃんと幸せに暮らしているのか見ておきたいんだ」
「わかりました。買って来ますね。それじゃあ早速、行ってみよう」
シーゼン港街はどんな場所なんだろうとワクワクしながら、松風先輩の授業はお預けになるも箒に乗って直接向かう。港だから新鮮な魚がたくさんありそうだとアンジが先頭で進んで行くとデッドバードに遭遇した。襲いかかって来るデッドバードで、アンジがカステクラインを起動させる。
「カステクライン!雷、雷雨の光線!」
雨雲が出来上がって雷が落下し、デッドバードが消えていく、さすがだなとアンジとハイタッチして進んだ。進んでいると雫が疑問に抱いていたことをアンジに聞く。
「さっきライゼ先生が言ってたおつかいってどんな物なの?」
「生の世界で生きている人たちの魂の様子を見ることができるリヴィソウルが売られているんだ。僕も一度買って里親を見たことがある」
「へえ。そんなのが売ってんだな。俺もそれ買ってみようかな」
「ちなみに値段は十五ポイントだよ。まあ想心がご家族の心配をしてるから買ってあげてもいいよ」
「いや、貯めたポイントで買うからいいよ。ついでにリエートに行って依頼書を受け取りに行こうぜ」
本当は家族のことが心配であまり寝れないことがあって、夜風に当たっているところを見てたんだろうな。
箒に乗って数分後にシーゼン港街が見えて来て、街の入り口で箒から降りて取り入れをし中へ入った。市場では豊富な魚が売られており、海鮮を焼いている匂いに釣られるほどいい匂いがする。
後で食べ歩きしようとアンジが依頼書を確認しながら依頼主の家へ訪ねた。ベルを鳴らしても反応がなく、出かけてるのかなと思ったら誰と扉が開いたのだ。
想像していた人ではなく頭はボサボサで、丸眼鏡がずれており、半袖短パンの女性だった。
「あなたが湘西沙緒さんでよろしいですか?」
「ふわぁ。そう。あたしのこと。あなたたち、ライちゃんから引き受けて来たらしいけど船酔いする子は却下してるの。船酔いはしない?」
「はい。俺は船に乗って釣りに行ったこともあるので大丈夫です」
「僕も平気。雫は船酔いとか大丈夫?」
「平気だよ」
じゃあ準備して来ると扉が閉まり船に乗って冒険とか初体験なものだから楽しみだな。談笑して待っていると湘西さんが出てきて、さっきとは別人のような格好の姿だったのだ。
髪は一つにまとめて服装はなんか海賊っぽい格好をしていた。なんか憧れると目を輝かせていたらバコンと頭を叩かれ、行くよと港へ行く。どんな船かなと港に到着したらそのまんまで海賊船じゃないっすかと興奮してしまった。
「あたしの船はあれ。言っておくけど今から行く場所はデッドフィッシュが多く住み着いてる。雷魔法はちなみに覚えてるの?」
ぎくっと俺と雫が反応しアンジが苦笑いをして説明をする。
「すみません。まだ想心と雫は六段魔道士で雷魔法学は覚えてませんが、僕は二段魔道士で雷魔法学も覚えてます。二人のサポートは僕がします」
「わかった。但し役に立てなかったら海に放り投げるから覚悟しなさい」
はいと小さく答える俺と雫で、湘西さんが船に乗ると船員が一列に並び湘西さんが喋り出す。
「海のどこかに眠る花を一緒に探しに行ってくれる想心、アンジ、雫。お前たち、奴らより先にその花を見つけ出す。いいな?」
船員たちは、はいキャプテンと大声で叫び、配置について船が出港した。風が気持ちいいと海の景色を眺めこんな景色を思穏にも見せてやりたいと感じる。
俺たちも何か手伝いましょうかと聞くと、大丈夫ですと断れてしまい船長室にお邪魔した。
「本当に手伝わなくていいんですか?」
「手伝わなくていい。船員たちは全員落ちこぼれだったのを助けてあげただけだから」
「落ちこぼれ?」
「魔力がうまく使えない人たちのこと。団に入っても雑用のことしかできないなら、好きな職で働いてポイント稼ぎした方がよっぽどいいでしょ?だから花屋を経営しながら、船長をしているの」
そっか。カステクラインをうまく使えない人たちも多くいるんだと知れ、剣汰も盾乃もその人たちに含まれている。騎士団に入らなくても、コツコツと貯めていけばいずれ生まれ変われるチャンスが訪れるからなんだ。
「湘西さんがいない間は花屋はどうしてるんですか?」
「花が好きな子に任せてる。だからいつでも出かけられるから」
「じゃあ今回の花はもしかしてその子が欲しいって言ったから探しに行くの?」
「違う。あたしが興味を抱いて探しに行くだけ。その花は植物魔法に必要な材料の一種なんだけど、滅多になくって薬も作れないから」
植物魔法を使うのに必要な材料があるとは知らず、勉強になるなとそう言えばと湘西さんに伝えた。
「あのもし良ければなんですが、雫、植物魔法学を取得したんですが教えてもらえる人がいなくて。それでライゼ先生が湘西さんのことを教えてくれたから教えていただけますか?」
「あたし覚えてないわよ。植物魔法を取得しているのはさっき言った花好きの子。もうライちゃんったら。まあいい。花を見つけることができたら教えてあげるよう説得してみる」
やっぱりその子のために花を探しに行くんだと理解したことで、俺たちは船長室から出て樽が三つ置いてあるところにそれぞれ腰を降ろして話し合う。
「アンジ、湘西さんがさっき言ってた子って知ってるか?」
「んー僕が見てきた生徒に植物魔法を覚えている子はいなかったし、知り合いの人も使えてなかったから知らない子かも」
「そうなの?てっきり全員把握してるのかと思ったな。そうだ、湘西さんに聞きたいことがあるから行ってくる」
いきなり雫が何かを思い出したのか湘西さんがいる船長室へ戻ってしまい、俺とアンジは同時に首を傾げた。
「雫、どうしたんだろうな」
「さあ。でもあの感じだとお父さんの情報があるか確認しに行ったんじゃないかな」
少しでも父親の情報は入手したいもんな。アンジと話していたらすぐ戻って来たがズンッとした表情で戻って来る。
「どうした?」
「湘西さん、お父さんと会ったことがなくって他を当たってほしいって言われちゃった」
「湘西さんが知らないってことは探すのに時間がかかりそうだね。それにデステクライン使いと接触していたなら、尚更人と接触していなかった可能性が高い」
「何か見つけ出せたらいいんだけどな。例えば住んでた場所とかきっとあっただろうし。あの機械でやっても不可能だったから地道に探すしかないよ。いいこと考えたけどさすがに無理か」
もしかしたら何か知ってそうな美命でも、シロノ国にいる人と連絡はできないらしいからな。どうしたものかと頭を掻きアンジが何か思いついたのと聞いてきたから打ち明ける。
「美命だったら何か知ってそうな気がしてさ。でもシロノ国の人と連絡は基本できないだろ?だから頼みたくても頼めない」
「言われてみればそうかも。シロノ国の人たちは全てを把握していると聞いたことがあった。雫のお父さんの情報を掴んでいるかもしれない」
「そうなの?だったらシロノ国に行ってみようよ」
「歓迎されていない他国の人が入ると侵入者と見做されて、牢獄行きになり生まれ変わることもできなくなっちゃう。それは避けたいから招待されたら行ってみようか」
「残念。行けると思ったのにな」
落ち込んでしまう雫で、早く手掛かりを見つけ出せればいいなと思った俺であった。
船を出港させ夜になり船員たちは体を休め就寝しているも、俺はやっぱり寝付けず大の字になって星空を観察している。兄貴と芽森は今どうしてんのかなと思い浮かべているとアンジの顔が目の前にきた。
「寝れないの?」
「まあな。兄貴と芽森のこと考えちまって余計に眠れなくなった。俺がいなくなって大丈夫なのか凄え心配だよ」
「兄弟を信じるしかないんじゃない。僕は一人っ子だったから兄弟愛っていうのは知らないけど、ちゃんと前に進んでくれてると僕は信じたい」
「だよな。セブラにやられてなきゃ俺たちはまだ生きてた可能性が高かったのに、気づきもしなかったし思穏の忠告も聞かなかった。思穏を失いたくない思いが強かったから、やられちゃったのかなって思うよ」
本当にあそこで選択肢を変えていたら俺はまだ生きてたのかもしれない。だけど思穏を犠牲にして俺だけ生き残るのはどうかと思った。
実はあの時、感じてたんだ。何か背後に誰かがいる気配がして寒気を感じているにも関わらず、俺は思穏の手を離さないで命を繋いでいたこと。それが凶となり俺は思穏と違う世界に辿り着いてしまった。
「なあ、アンジ」
「ん?」
「書類にさ、もし自殺って選択してたら獄の世界に行ってた?」
「どちらの選択を選んでも天の世界へ入ってたよ。それは自分が自殺じゃなく殺されたと認識していたからだと思う。最初に天国の世界へようこそという矢印が見えた時点で天の世界が確定していた」
「てことは思穏は自殺したと認識していたから獄の世界にしか行けなかったってことなのか?」
多分ねと俺と同じ体制で寝っ転がりあの馬鹿、何やってんだよと涙が出そうになる。そうじゃないだろ、思穏と星たちに訴えた。
◆
セッキノ街で依頼主とご対面をし、デステクラインを起動させながら掃除をしていた。それにしても埃が多くあってくしゃみが止まらない。埃が舞うし窓全開に開けて掃除しているもなかなか上手に掃除ができていないことに気づく。
その一方セブラは一段魔道士でもあって次々と部屋を綺麗にしている姿が見えた。僕も負けてられないと掃除をしていく。
空き家になってたここに住居される方がいるらしいが、埃が溜まってしまっていたことに気づいた不動産業者が依頼書を提出したという。
ピカピカにして次の部屋と掃除道具を持って、次の部屋に入ったらすでにピカピカになっていた。
「終わったか?」
「うん。まさか僕が一つの部屋で集中している間に全てやっちゃったの?」
「まあな。俺が教えた魔法、苦戦してたっぽいから」
「ごめん」
「いいんだよ、徐々に慣れていけばいいんだから。さてと報告して次の依頼主のところでも行くか」
セブラに励まされながら依頼主のところに行って、掃除が完了したことを告げ十万ポイントがデステクラインに入る。次はなんだっけと依頼書を確認しながら、進んでいるとセブラが足を止めた。どうしたのかなと思ったら再びあの人が現れてしまう。
「てめえ、何しに来た?」
「そう怒んなくれやす。セブラに一つ、確認しとうたいことがあってなぁ。葉桜颯楽が事故死しよった原因についてや。知っとるやろ?」
「そんな奴、知るわけ」
「知っとるはずや。颯楽は想心の兄やで。思穏を見とってたらわかるはずや」
思穏のお兄さんが事故死したって本当なのと混乱していると、ふっとセブラは笑って証言する。
「俺は思穏とずっと一緒にいた。消えるタイミングがどこにもない」
「ちゃうやろう?あん時、颯楽が死んだ時間はちょーど四日の日や。思穏、何か気づいたことでもなんでもえぇ。セブラが席を外したとかあったんちゃうか?」
四日の日、確かセブラはお手洗いに行ってくるとかでずっと席を外していた。セブラ、僕たちの他に人を襲ったのとその場では聞けず、ここは嘘を吐く。
「一緒にいましたよ。居酒屋で中継を観ながらご飯食べてました」
「そやったか。それならえぇ。ただセブラ、これ以上、生の人間を落としていったらどうなるかわかっているはずやろう?なら思穏のためにも人を殺めるな。ほな、ごめんやす」
すっといなくなりセブラがくそっと壁に拳をぶつけ、壁にひびが入ってしまった。
「セブラ、さっきの本当なの?」
「俺じゃない。俺はあの時、嫌な予感がして生の世界へと行ったのは事実だ。だけど手遅れだった。想心の兄は真実に辿り過ぎたことで、あいつらに殺されたようなものだ。証拠は全て破棄されてると思う」
「証拠って何?」
「俺が映っている映像だよ。ちゃんと壊したつもりだったのに、なんでこうなっちまったんだ…」
セブラは助けに行こうとしてわざわざ行ってくれたんだと知る。だけど想心のお兄さん、解析するの得意だから誰かが依頼して襲われたとしか言いようがない。想心、ごめんね。大切な人がそっちに行ってしまったこと、許してほしいとセブラを慰めながら次の依頼主のところまで向かった。




