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シゴノセカイ《改訂版》  作者: 福乃 吹風
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13話 想心と思穏がいない世界

 弟である想心が死に四十九日が終えても、母さんは想心に何もしてやれなかった悔いがあってここ最近は泣いてばかりだ。父さんは家のローンも残っているため、辛い表情をしているも仕事に復帰している。

 その一方妹である芽森は想心のことが大好きで、想心の死が耐えきれず休学をしていた。大学院に通っている僕も正直言うと辛くても前に進まなければならない。


「芽森、入るよ」


 芽森の部屋に入るとカーテンは閉めっきりで、布団に包まっている。床には散らかり放題の想心がくれた物が散乱していた。物を大切にしなきゃ想心、怒っちまうぞと棚に戻してあげベッドに座り芽森の顔を見る。

 泣き疲れて寝ちゃったかと想心と喋った最後の日を思い出してしまう。


 僕は想心たちよりちょっと年上でその当初は勉強が山積みだったから、想心に任せっきりにしてしまった部分がある。芽森は想心と同じ高校に通いたいと僕に相談して勉強を教えていた。

 そしたら隣の部屋、つまり想心の部屋でガタガタと音を立ててたから、どうしたんだろうかと想心の部屋に入ってみると、どこかに出掛けるような感じ。

 僕はとてつもないことが起きるんじゃないかってその日止めに入った。


「行かせないよ」

「どけ、兄貴。行かなくちゃならないんだよ!」


 想心はとても焦っていることが伝わっても、僕は兄としてここは止めるべきだと思ってたが、想心の目が赤くなっている。


「俺はもうこれ以上、何も失いたくない。思穏が助けを求めてんだよっ。兄貴、行かせてくれ!」



 その言葉に僕は何も言えなかった。幼馴染の美命ちゃんが亡くなって、思穏くんまでいなくなってしまったら想心は完全にいなくなってしまうことがわかってたから。


「無事に帰ってくるんだよ」

「ありがとう、兄貴。絶対、帰ってくるから」


 その言葉が僕と話した最後の言葉。


 翌朝、朝早くから誰かが来たらしく、誰だろうと下へ降りると警察が父さんと母さんに喋っていた。母さんは泣いていて、父さんは信じられないような顔をしてたよ。

 芽森も起きてきたが降りずその場で座り込んで、想兄と叫んでいたことが今も耳に残っている。事情はわからないが思穏くんと揉めてしまい、誤って転落死したのではないかと警察はそう言っていた。


 本当に信じられないし受け入れたくもない。だってあの二人は大の仲良しだったから揉め事はなかったはず。ただ想心と思穏くんにはある共通点があった。

 想心は学校に慣れないことからクラスメイトや同級生に先輩後輩からいじめを受けるようになったが、想心は喧嘩早い性格で全員を倒して男子はもちろんのこと、女子も想心に近寄らなくなった。 

 思穏くんは名門校の学校に通っていたが、思穏くんは想心と真逆な性格であり、結構いじめを受ける性格でクラスメイトに財布を奪われたり、教科書や習い事をしていたピアノの楽譜もビリビリに破かれることが多かったそうだ。


 それを知った想心は、想心が通っていた学校も名門校であり転校させるよう思穏くんの両親を説得。最初はもうこれ以上うちの子と関わらないでくださいと、家まで乗り込んできたご両親だったが、僕たちの父さんと母さんが叱ったことで思穏くんへの態度が変わった時は驚いたよ。

 ごめんなさいと目の前で謝る両親を慰める思穏くんは嬉しそうでも目の瞳は暗かった。僕がもっと思穏くんの相談に乗っていれば二人は死なずに済んだのではないかと思ってしまう。


「颯楽兄…」

「ごめん。起こしちゃった?」

「ううん…夢に想兄と思ーちゃんが笑ってた。あっちに逝っちゃっても二人は仲良しだよね…。だけど途中で二人が別々の道に進んじゃうの。わからないけど想兄は青い制服を着て、思ーちゃんは白い制服なんだけど、二人がまるで王子様のような格好だったな…」

「それだけ二人のことが大好きなんだよ。今は辛くても乗り越えなければならない。美命ちゃんの願いを叶えられなかった想心の分を僕たちが叶えてあげよう」


 うんと僕の手に触れ暖かいと少し笑みを出す芽森。少しは元気になってもらいたいと、僕は想心が大好きだったシュークリームを買いに出かけた。

 想心と思穏くんがいない世界で僕と芽森はどれくらい我慢ができるのか不安がある。ちゃんと前に向けるのか、それとも辛くて想心に会いたい衝動に走ってしまうんじゃないか大きいよ、想心。


 視界がぼやけていき自転車を端っこに止めて眼鏡を拭き取る。おかしいな、僕は耐えられると思ったのに鼻水が出そうで鼻を啜った。


「想心っ」


 道中ですれ違う人に凝視されてしまうも、僕はこの現状を受け入れられずその場で嗚咽してしまう。想心に会いたい。なんで転落死しちゃったんだよ。

 大丈夫ですかと声をかけられ、すみませんとペダルを踏み、自転車を走らせ美命ちゃんの実家に到着する。ついでにお線香あげて行こうかな。

 チリンとドアベルが鳴りおばさんとおじさんがいらっしゃいと来て、僕の顔を見てなのか中に入りなさいと、お邪魔させてもらった。箱ティッシュをもらいそれで鼻をかみ、持ってたハンカチで涙を拭く。


「どうしたんだい?」

「すみません。まだ想心が死んだことを受け入れたくなくて。おばさんはどうやって乗り越えてますか?」

「そうだね。美命が亡くなって一年が経っても、おばちゃんはまだ心の整理がつかないよ。もっと丈夫に産んであげていたら想心くんと一緒に、通ってたかもしれないと思ってしまうことがあってね。だけど現実を受け止めなければならない。そう思って、美命が大好きなシュークリームを店で出すことにしたんだよ。そのほうが美命が喜ぶだろうからね」


 そうだった。このシュークリームは美命ちゃんが亡くなってすぐ発売された商品で商品名が美の命。一見普通のシュークリームでも外生地は硬いけれど実際口に入れるとふわっと広がるクリームが絶賛。


 ぱくっと一口、口に入れそういや想心、毎日のようにこのシュークリーム買ってたな。飽きないのって聞くと想心は満面な笑みで、だってこれ世界一うまいシュークリームだから飽きないって言ってたのを思い出す。

 少し気持ちが楽になれたのはこのシュークリームのおかげだとぺろっと食べ終え美命ちゃんの仏壇の前に座りお線香をあげた。僕は両手を合わせ目を閉じる。


 美命ちゃん、ごめんね。想心が美命ちゃんのところに逝っちゃったこと許してあげてほしい。想心とずっと一緒にいた思穏くんと、転落死してしまった。どうしてなのか二人に聞かないとわからないけど、それはできないことだからもし会えたら想心のそばにいてあげてほしい。こう見えて想心、寂しがり屋だから。それじゃあまたお線香あげに来るね。


 ゆっくり目を開け家族分のシュークリーム五つ買い、僕は家へ帰ることにした。


 ただいまと帰ると知らない靴があり、誰かいるんだろうかとリビングに入ると想心が通っていた学校の先生がいる。


「母さん、僕が話聞いとくから、母さんは寝てて」

「でも」

「でもじゃない。手が震えてるから。貸して」


 お茶を母さんからとりそれを先生の前に渡して、母さんは寝室で寝たのを確認し、リビングに入って先生と向き合う。


「こんな時間に申し訳ない」

「いえ。どうかされたんですか?」

「屋上の防犯カメラが壊されていたことが判明していたのはわかっていると思う」

「はい。以前お聞きしましたけど、何かわかったんですか?」

「映像がぶれているんだが、これを観てもらいたい」


 先生が持ってきたノートパソコンで観せてもらった映像は想心と思穏くんが映っている映像。動かしてもらうと思穏くんが自ら飛び降りているところを想心が助けている場面。想心はこう見えて鍛えている体をしてるからそう簡単に落ちるわけがない。

 どういうことだと観ていくと一瞬で想心がいなくなり、二人が呼び合っている声しか聞こえ落下した音も聞こえた。


「先生これって…」

「私も疑問に思って、警察に見せたんだが防犯カメラが壊れていたから、想心くんが一瞬いなくなったように見えたのではないかと言われてしまってな」

「そうですか…。この映像いただいてもよろしいですか?僕で解析できるかもしれない」

「もし分かれば連絡くれ。私も気になる。あの二人は自殺するような子じゃない強さを持ってたはずだから」


 先生もわかってたんですねと少し安心が持て、先生が帰った後、僕の部屋でその映像を解析していく。

 

 きっと見られたくはない映像があったとすれば、これは他殺と考えていい。何か小さなことでもいい。真実を僕に教えてくれとやっていたら、なんだこれは…。

 想心が思穏くんを助けているところで想心の後ろに黒い物体を見つけた。これは人なのかとスローで動かしていたら黒い物体が想心を蹴り落としているところだ。そこで映像が一度切れ屋上の映像に切り替わった。


 想心は黒い物体にやられ死亡したというのかと椅子にもたれ掛かる。信じられない真実にこれをどう先生に報告すればいいんだ。信じてくれるかはわからないけど、これは大ごとになると解析した映像をUSBに移し、明日、想心が通っていた学校へ行こう。



 翌朝、芽森が珍しくリビングにいてシュークリームを頬張りながら朝のニュースを観ていた。母さんはまだ寝込んでいて父さんはというとメモがあり仕事に行ってくると書かれてある。


「芽森、僕の分、食べていいから、母さんのこと頼むね」

「どこか行くの?」

「すぐ戻ってくるから大丈夫だよ。それじゃ行ってきます」

「行ってらっしゃい、颯楽兄」


 靴を履いて自転車に乗り想心が通っていた学校へ向かう。これを観せれば警察も動いてくれるかどうかはわからない。でも二人は誰かによって殺されたことには変わりない。

 信号が赤で自転車を止め、一応先生には報告しておこうかと学校に連絡をする。まだ誰も出勤していないかと、切ろうとしたら先生で葉桜ですと伝えるとどうだったと聞かれた。


「妙なのを見つけたので、今そちらに向かってます。後十分程度でーーー」

 

 僕は先生に報告しながら前しか見ていなかったことにより、トラックがこっちに来るのを知らず衝突してしまう。通りかかった人たちの叫び声に、トラックのおじさんが慌ててスマホを耳に当てながら大丈夫ですかと言われるも、まさか嘘であってほしかった。

 待って、僕はまだ生きなくちゃならない。それに芽森を置いてはいけないよ。頼む、頼むよとトラックのおじさんを掴もうとも視界が真っ暗になった。


 四十九日までは魂が残ると言われていたが、嘘で起き上がると何も見えない真っ暗い場所。歩き出すとボッと蝋燭が立ち道が現れてその先に進む。

 なぜ僕は気づかなかったと思考を膨らませるも、あの時間帯はあまり車は通らないはずだ。何が起きたんだと進むと、ようこそ天国の世界へという矢印を見つけた。


 本当に来てしまったんだと進み、役所らしい場所でどうして死亡したのかを記入。それから好きな色はなんですかという不思議な質問に、僕は赤が好きだから赤と書いた。

 それを提出するとボンッと赤い扉が現れ、行ってらっしゃいと役員に言われながら、僕はその扉を開け中に入る。


 眩しいと目の上に手を翳し歩いて行くとそこに見えたのは、火山の頂点で熱いと下山して行く。そしたら鎧を着た女性が来て、僕の前で立ち止まる。


「葉桜颯楽で間違いはないか?」

「はい。僕が葉桜颯楽です」

「ついて来い。足元に気を付けろ」


 女性について行き下山してすぐ近くに王国らしい場所が見えた。王国に入りアラビアン風な服装を着ている人たちが多くいる。本当にここは黄泉の国で間違いはないんだよねと歩いて王宮に入ったら、想心ぐらいの子や年下の子達が多くいた。

 なんだと女性について行くと今度は正方形がびっしりつまった部屋に到着する。ボッと炎がついてピューッと僕のところに来てそれを摘んだ。


「やはりか」

「あのこれってなんですか?」

「これはお前の思いが詰まった魔力源だ。お前が持つそれは緋色の鳳凰というカステクライン。かつて女騎士の右腕だった者が使用していた。詳細は歩きながら話そう。私はレイムだ」


 まだ手続きは終えていないらしくレイムについて行きながら、詳細を全て聞いた。

 これを聞いたら想心はこのまま残るんじゃないかと思いながら、平民ではなく騎士団に入団することにする。提出し僕はレイムの団に入団することになって、レイムの仲間に会いに行くことになった。

 どんな人がいるのかなと想像しながら城下町にあるやや大きめな建物に到着する。緊張感がありながらレイムが帰ったぞと声をかけると一列横に並んでお帰りなさい、レイム団長と一斉に言い出す。休めと指示を出したら休めの体制になり僕の紹介をしてくれる。


「葉桜颯楽であり、お前たちもわかっているであろうが緋色の鳳凰のカステクラインを持つことになった。まだ見習い魔道士でもあるが、皆、仲良くしてやってほしい。颯楽、私は団長会議とやらに出なければならん。代わりに副団長である灯田朱里ともしだあかりが教える」

「よろしくお願いします、颯楽さん」


 一歩前に出た子が灯田朱里ちゃんで、芽森とほぼ変わらないだろう子に教えてもらうとは思わなかった。じゃあ夕飯後にとレイムがいなくなった途端、めっちゃ緊張したと楽になり始めるみんな。色々と大変そうだなと感じながら、僕の部屋を案内してくれた。六畳ぐらいの部屋で家具等もしっかり設置されている。

 その他にもお風呂場や食卓などいろんな部屋を見せてもらい、朝練があるから起床は四時で庭に集合し敵である死屍デッドルタを倒す訓練を行うそうだ。

 六時になったら朝食を食べ七時には班ごとに分かれて依頼書の場所へ向かうらしい。そして決まった時間には帰らないとならないためハードなスケジュールであっても一度ここに戻らなくてはならないそうだ。


「どうして?」

「えへへ。レイムさん、ご両親を幼い頃に亡くしちゃって、大人になって戦争で命を落としちゃったんです。でもご両親は新しい命として生まれ変わってしまったこともあり、会いたい人にも会えず寂しい思いが強くて夕飯は絶対にみんなで食べたいという要望があるんですよ。だけど寮生になったというより、圧をかけて無理やり寮生にさせてしまったからみんなレイムさんに逆らえない。あっうちは全然平気です。その気持ち、うちもしてたから」


 色々と抱えている事情があるんだと感じながら、ご兄弟はいますかと言われ僕は会えるならと口に出す。


「僕はつい最近に弟を亡くした。両親や妹を慰めながら四十九日を終えてすぐに、弟が通っていた先生から防犯カメラの映像を見せてくれて。僕はその映像を分析して解析したら、変な物体が弟を屋上から落とした場所までわかったんだよ。それで先生に見てもらおうと、学校へ向かっている途中に事故に遭ってここに来ちゃった。本当に情けない兄で、まだ弟に知られたくない。僕がここに来てしまったことをね」

「それって想心くんのことですか?」

「知っているの?」

「いえ。ですが全国にその情報は行き渡っています。青藍の葉桜に選ばれた葉桜想心くんは、かつてその青藍の葉桜を持っていた人が戦を止めたと歴史学で学びました。もしかしたらまた似たような戦が起きるのではないかと予想したそうで、うちたちもそれの準備をしながらポイント稼ぎを行っています。ちなみに想心くんは他国のミズノ国にいらっしゃいますよ」


 僕も青を選んでおけば想心に会えたのかと思うも、このことを伝えたらきっと先生を恨んじゃいそうで怖い。だから今は伏せておくべきことだから、朱里ちゃんにお願いをする。


「お願いだ。まだ想心に伝えないでほしいから、伏せておくことってできる?心の準備ができたら自分で会いに行きたい」

「はい。できますよ。手続きしておきますね」

「ありがとう、朱里ちゃん」


 朱里ちゃんが手続きをしてくれるそうで、その後は城下町や他の街について教えてくれてった。

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