12話 ユッキーノ街⑤
デッドウルフを退治しながら、ディーグに攻撃を当てるもかすり傷程度で巨大デッドウルフが突進してくるから避ける。危なかったと次の魔法を唱えた。
「カステクライン!水、雲雨の涙!」
水の調節がまだできていないから大きな雨雲が出て雨が降り、普通サイズのデッドウルフが消えるが巨大ウルフには効かないのはわかってる。
まだ魔法は五つしか覚えていないからどれを当てても効果は薄い。アンジは二段魔道士であってもディーグに苦戦をしていた。雫も初めてなもので魔法は一切使わず武器で挑んでいる。
ここで海王の叫びでやれば大体の人はいなくなるかもしれないが、雫にダメージが起きるのではないかと思い俺とアンジはまだ使えていない。
「カステクライン!水、カワウソの牙!」
汀が先頭になって一匹のカワウソと一緒に巨大デッドウルフを噛みついてもらうも振り払われてしまった。
「どうした想心?海王の叫び使ってもいいんだぞ。それともできない理由があんのか。誰かを庇っている?」
ここで気づかれたら完全にアウトだ。どうする俺と考えていると、雫が背後に来て小声で言ってくれる。
「私は大丈夫だからやって」
「悪い。カステクライン!水、海王の叫び!」
鯨が現れて叫び出し巨大ウルフが消えてディーグが降りて来た。雫は大丈夫だろうかと振り向けずやるねえというポーズをとる。しかしディーグは無傷らしく防御魔法をかけていたんだろう。
「やればできるじゃん。まあ俺は教育係でもねえから、さっさと目標の魂を狩らせてもらう!デステクライン!闇、猪の戯れ!」
死屍の猪バージョンが数頭現れ、振動によりあまり動けず突進してくる猪たち。まずいと剣汰と盾乃を守ろうとした時だった。
「カステクライン!水、イルカの超音波!」
イルカが数体現れイルカが声を発声すると猪同士がぶつかり合い猪たちが消えていく。
「団長、なぜこちらに?」
「後輩はんたちが戦っておるから、来たんや。ディーグは相変わらずやね」
「くるめ、情報は貰っていたぜ。獄の世界で調査しているってな。なんの目的だ?」
「セブラと全く同じ言葉やなぁ。言えへんに決まっとるやろうに。そや。セブラと一緒にいてはった思穏にも会いましたわ。あんな子が自殺するようには見えへん。思穏はこちらに来るべきやった人や。証拠が獄の世界にあることもわかっとる」
「ちっ。覚えとけよ。思穏は獄の人間であり照秋に選ばれし者だと言うことをな」
ディーグはそう言って俺に何かを投げつけ消えてしまい、投げつけたのが剣汰と盾乃の人形で勝利したのかと俺たちは喜んだ。
「まだ喜ぶのは早いで、想心」
「はい!」
「えぇ返事やなぁ。まだこの街にデステクライン使いがおるさかい、手分けして追い払うんや」
もう一度返事をして俺たちは手分けしてデステクライン使いに襲われている住民を救って行った。
朝日が登る頃、デステクライン使いは覚えとけよと逃げ台詞を言っていなくなり、一先ず安心が持てたが半分以下の人たちの魂が狩られてしまい死屍になっていることが判明する。
俺たちは悲しみに暮れながら目の前にいる死屍に浄化魔法を唱えた。
「カステクライン!水、浄化の雫!」
浄化の雫で死屍になってしまった人たちが元通りになり、次々と倒れて遺体を運ぶ。ただの抜け殻となり骨もないスライム状態。
これで最後とアンジと運び街の人たちは悲しむ人たちだ。雫は助けられなかったことで悔やみそれでもデステクラインを渡してしまったからどうすることもできない。そんな雫を見てはいられず頭を寄せてあの場から少し離れた。
ベンチに座らせ俺はしゃがみ雫の涙を拭ってあげ、両手を握ってあげる。
「雫」
「想心…」
「俺も正直言うとな、死がここでもあるんだって知った時、凄くショックだったよ。だってさ生まれ変わるためにポイント稼いでたのに、それが全て奪われてデステクライン使いを恨みたくなる人たちが出てくる。それにな、雫」
また涙が溢れてしまい拭ってあげて、俺が思っていることを雫にぶつけた。
「自殺をした人たちも生まれ変わるために、自分を殺すのは別に構わない。だけどな、それは大きな間違いなんだよ。それは十分にわかってる?」
頷いて余計に泣かせようとも、思穏が何度も自殺を図ろうとして俺が必死に止めていた頃を思い出しながら伝える。
「楽に生きていければいいけどさ、人生はそう甘くない。辛くて苦しくてあぁこんな人生やだって感じて、負の感情が強くなっちまう。それでも耐え抜いて人生を足掻いていくしかないんだよ。獄の世界にいる連中はそれをまず理解してもらわなくちゃならない場なんだと思う。だから、雫。どんなことが起きてもそれを耐え切れる覚悟を持つんだ。俺たちがそばにいる。雫は一人じゃないよ」
「想心、私っ」
「ん?」
「他人の魂を奪って生まれ変わりたくないよ。私、天の世界にいる人たちを守り抜きたい。全てが終わったらどうなっちゃうのかわからなくても、お父さんを絶対に探したいよ」
雫の本音が聞けてよかったと雫の隣に座り、ハンカチを渡してそれで涙を拭き取る雫。落ち着くまでそこにいたら後ろからパコンと叩かれ振り向くと拗ねているアンジがいた。
「もう、探しちゃったじゃん」
「悪い。ご遺体はどうするの?」
「霊院という場所にご遺体が保管されることになってるんだ。場所も教えたいから二人とも来て」
わかったと雫の手を握って霊院という場所を案内してもらう。ユッキーノ街の南部に大きな教会っぽいところに到着し遺体が次々へと入っていた。
中にお邪魔すると壁にはずっしりと名前が刻まれておりここに名前が入るのか。シスターらしい人がいて名前を確認後その遺体が消えてしまい、名前が刻まれていく。
「もしこういう場に遭遇することになったら霊院に連れて行き、シスターがその手続きをしてくれるから」
「どこの街に行ってもあるのか?」
「全てのところにあるよ。覚えといてね。あっ団長、もう行かれるのですか?」
「そや。妾は重大な任務があるさかい。しばらくは連絡できへんけど、おきばりやす。想心、妾がしっかりと証拠を探してくるさかい、想心は寮長として役目を果たすんやで。ほなさいなら」
すっといなくなってしまい変わった団長だったな。シスターが手続きを終え、亡くなってしまったリストを青の寮長として受け取り、これをミズノ城にある職員室に提出すれば完了するそうだ。
帰る前、武器屋に寄って剣汰と盾乃の顔を見て帰ろうと、武器屋に向かっていたら珍しく俺のカステクラインがくるくる回転する。この場合って誰かが連絡を寄越してきた合図だったよな。
「カステクライン!連絡、水のペンギン!」
水でできたペンギンが現れ手のひらを出すとペンギンがそこで止まり喋り出した。
『想心…』
「イッシェ。どうした?」
『落としてしまったのじゃ…』
「何を落とした?」
『想心が作った作品を間違えて落としてしまったのじゃ。すまぬ』
作品と頭を悩ませていたらあれかと魔法学初日で作ったスライム。確かアンジが気に入って教室に飾ってあった。それを聞いていたアンジが怒りを我慢しながら笑ってアンジがイッシェに問う。
「僕の魔法解いたってことでいいんだよね?」
『あっアンジ。そこにおったのか…』
「ちゃんと質問に答えて、イッシェ。怒らないから」
いやいやその顔まじで怒ってますという顔だよと雫は俺の後ろに隠れちゃったし、アンジの怒りを鎮めるにはどうしたらいいんだっけ。
『すまぬ、アンジ。スライムを逃してしまった!城内には出ておらぬようなのじゃが見つけ出せないのじゃ』
「ふーん。見つからなかったら、もう手伝わないからね。じゃっ。想心、切っていいよ」
「おいおい。落ち着けって。俺たちすぐ帰るから事情聞かせろよ」
『うむ、待っておる』
いつものイッシェじゃなく結構落ち込んでることがわかり、アンジは怒ったままで早く機嫌を直さないとやばそうだな。剣汰の店に到着して、入ってみるといらっしゃいと盾乃が出迎えてくれる。
「今日ぐらい休んでもいいんじゃない?」
「私たちのお店は年中無休だから休む暇はないよ。剣ちゃんならあっちで刀打ってる最中。呼んでこようか?」
「よろしく。俺たちミズノ王国に戻るから」
呼んでくると椅子から降りて剣ちゃんと叫びながら呼びに行ってくれた。相変わらず盾乃は元気が良すぎる。最初は人見知りかなと思っていたけれど、どこにでもいるような元気が溢れる小学生だ。
少しして汗だくの剣汰が来てわざわざすみませんと汗を拭う。
「わざわざ来てくれてすみません。依頼が殺到してたからつい夢中になってた。もう行っちゃうならせめてこれをプレゼントさせてください」
レジの後ろにある棚に大きな箱が三つあって盾乃が一つずつ俺たちに渡してくれる。なんだろうと開けてみると剣が入っていたのだ。しかも青く加工されておりめちゃくちゃかっこいい。
「魔法で効かない死屍に出会うかもしれないので、念のため持っててください」
「サンキュー。めっちゃ気に入った」
「それはよかった。メンテナンスとか必要な時は送ってくれればメンテナンスするから」
「大事に使わせてもらうね。また何かあったら時、いつでも連絡して」
「ありがとう、アンちゃん」
別れは辛いけどユッキーノ街に来たら寄ってあげようと剣を取り入れして、俺たちはミズノ国へと帰還した。
ミズノ王国に到着したのは夕方で疲れが溜まりすぎて明日提出しようと家に帰ってみると、家令がいてお風呂の準備ができているらしく先にお風呂に入る。
頭と体を洗って湯船に浸かり、いい出会いあったな。明日はイッシェに事情を聞いてが先だけど、アンジの機嫌を直す方法をまだ思いついていない。どうしようと頭まで入りブクブクしているとじゃぼんと誰かが入ってきて顔をあげる。
そしたら汀が湯船を泳いで俺のところへとやって来た。汀に触れながら考えているといいこと考えたと汀を抱っこしてあがる。
私服に着替えアンジがいる部屋に行き、アンジは何か調べ物をしていたがアンジにおねだりをしてみた。
「アンジ、頼みたいことがあるんだけどいいかな」
「どうかしたの?」
「制服って規定ってないんだろ?」
「まあ今僕たちが着ているのは校長からいただいた最初の服だからね」
「だったらさデザインして青の寮生なら青の制服とかでさ色分けするってのはどうかな。そのほうが街の人たちもどこの団なのかわかるだろ?」
アンジは少し考え始めて校長からもらった星服だからやっぱり駄目かと待っているといいかもしれないと言ってくれた。
「だろ?だからさ、アンジ。そのデザインを考えてくれないか?俺、デザイン考えるの苦手でさ」
「やるよ。想心に似合いそうな寮長の制服考えるだけでワクワクする。校長から許可が降りたらでいいかな?」
「もちろん。んじゃよろしくな」
アンジがデザインを考えてもらっている間に、部屋の窓から俺はミズノ城へと飛んで行きイッシェと合流をする。
「想心、すまぬ」
「いいって。アンジが部屋に籠っている間に探すぞ」
「うむ」
俺が作ったスライムはペンギンだからそう遠くには行っていないはずと、俺とイッシェはスライムのペンギンを探して行ったのだ。
◆
中継が終了しどんな感じで魂を狩るのかをわかり、来月ではあっちに行けるようポイントを稼いでおこう。それにしてもセブラ長いと食べ終えてしまい、お店も閉店時間になりかけた時にスッキリしたという顔で戻ってきた。
「いやあ、すっきりした」
「終わっちゃったよ。それにもう閉店時間になるし僕たちしかいない」
すまんすまんと両手を合わせて謝り、会計はセブラが支払ってくれて、店主がまた来なと微笑む。僕は美味しかったですと伝えて店を出た。
もう朝日が登り始めて夜更かしするの初めてかもと、ふわあと欠伸が出てしまう。
「眠いか?」
「ちょっと」
「そりゃあそだよな。あの時間帯は真夜中真っしぐらだったからよ。どうする?家に帰って寝てもいいんだぞ」
「でも五段魔道士にいち早くなりたいからポイントを稼ぎたい」
伝えてみるとセブラは何枚か依頼書を取り出して、僕に渡してくれる。どれもそれなりのポイントでまずはこれかなとセブラに渡す。
「こんなんでいいのか?」
「うん。まずはデステクラインを使いこなすにもこれがいいかなって思ったから」
「ふうん。じゃあその街に行ってみようぜ。そこに行くの久々だな」
セブラが箒を取り出してセッキノ街というところへ向かった。
セッキノ街に着くまで僕は仮眠をとってしまったが、落ちずにしてくれて有難い。それに景色は真っ白い雪に埋もれており、僕はいつの間にか暖かいコートを羽織っていた。
「セブラ」
「起きたか。後もうちょいで着くから」
「セブラはコート着なくていいの?」
「俺は一段魔道士だからこれくらい魔法で調節できる。もちろん、段を上げた思穏にも覚えられる範囲が広くなったから後で教えてやるよ」
ありがとうと感謝を述べていると街が見えてきて箒が停止し降りる。雪景色の街なんだと雪を踏みしめながら依頼主のところへ尋ねることにした。




