神の怒り
嵐が起こっている頃、神託の間でタロスは神様の愚痴を聞いていた。成長すると聞こえる声が増え、会話できるようになった。魔法陣から出たタロスを大神官が真剣な顔で迎える。神殿に奉納されている神の心と謂われる水晶の一つが割れた。
大人達の緊張した空気は気にせずタロスにとっては恒例の感想を呟く。
「姉上、怒ったね。神様もお怒りだよ。この国に未来はない。姉上と神様はそっくり」
「タロス、神託は?」
「終焉の歌が歌われた。神様は不干渉。加護はない。これ以上怒りに触れたくなければ、先は教えてくれない。たぶんバカなことをすれば覚悟」
「タロス、言霊を」
「ごめんなさい」
大神官はタロスの受けた神託を王宮に伝える手配を整える。国が滅びるかどうかはわからない。
王家の秘宝の水晶が真っ黒になった。
神の加護の象徴とされる水晶が真っ黒になったのは初めてだった。そして神殿からの使者の言葉を聞き国王は真っ青になり調査を命じる。
王家が慌てている頃、タロスは笑っていた。
ヘンリエッタとドログが行方不明になったがスダー伯爵はドログには何があっても生き抜けるように仕込んであるので心配していない。そしてヘンリエッタには過保護な神様も憑いている。
タロスは神殿に訪問した疲労の色の強い父にお茶を渡す。
「父上、お疲れ様。姉上も鈍いよね。神様は姉上の真の願いは叶えていた。姉上がどんなに願っても叶わない願いは他人のものばかり。そして願われた者は望んでいない」
「タロス、ヘンリはどこに?」
「教えてくれない。でも王家の加護はしないけど、気が向いたら個人には力を貸してもいいって。神様を楽しませるなら。神様は気まぐれだからね。それがいい意味かはわからないよ。でも姉上の歌をバカにしたお姫様と王子様には、その先は聞こえなかったよ」
タロスは神殿でヘンリエッタの次に神の声を聞いていた。タロスは音痴だが美声の持ち主であり、神託に感想を話す初めての神官は気に入られていた。神に遠慮がない寵児の姉弟はある意味そっくりだった。
国王は神殿からの追加の神託とアンジェラからの報告を聞き顔を真っ青にする。巫女姫の怒りを買った第二王子を生贄に申し出ても神は許さない。神の怒りを鎮めるのは興味をひくものだけ。
王家はスダー伯爵家から止められてもヘンリエッタを必死に捜索した。その行為は神の怒りを買い、大豪雨に襲われる。罪のないヘンリエッタは指名手配をされても見つからなかった。
ヘンリエッタの宣言で巫女姫と王家との取引は終焉を告げた。スダー伯爵令嬢がどんなに歌を奉納しても王家への加護は起きない。神のお気に入りを奪った愚かな者を加護することはない。




