07「スキンシップ」
食事が終わった後、ハロルドは城を案内してくれた。
寝泊まりする部屋は、離れの客室を宛がってくれた。
「綺麗なお庭ですね……」
「まあな……うちの親父の趣味だ」
「グレイテスト王のですか!?」
「ああ、柄になくな。ゴツい顔して花が好きとか笑えるだろ」
ゴツい顔ってどんなだろう?
筋骨隆々で口髭が立派な感じ?
それで、お花の手入れを愛おしそうにしているのかしら……あ、想像したら。
「ぷっっ、ご、ごめんなさい……笑うつもりはっ……ふふっ」
ダメよリアーナっ! 他国の王様を笑うなんて失礼だわ! しかも、その息子である王子の前でなんてもっての他っっ。
でも、想像したら面白くて我慢出来ないのっっ。
「良いんだぜ? 盛大に笑ってくれ! リアーナの笑顔を見てると、こっちまで嬉しくなっちまうな」
な、なんて事をさりげなく!
ズルい! ズルいよ、ハロルド……。
これが"天然ひとたらし"、ってやつかしら?
私が女だと分かったら、絶対そんな事言わないよね。
あれ、待ってっ!
もしかして、ハロルドって男の人が……。
「あの、ハロルド様……ハロルド様って、女の人に興味あります?」
聞かずにはいられなかった。
怒られるのを承知でハロルドに質問をぶつける。
「な、なに言ってんだ急に!? そ、そりゃあ、俺だって男だ! 子供の頃は、綺麗な侍女の着替えを兄貴と覗いてたな~。あ、誰にも言うなよ? これは男と男の秘密だからな!」
「は、はい!」
良かった~! ハロルドは女の子に興味しんしんでした! でも、覗きをしてたのは悪い子ね!
「では、今好きな人はいますか?」
ちょっとお仕置きの意味も込めて追及しようと思う。
決して、私が気になるからではない!
「い、居ねえよそんなもん!」
「何故です? ハロルド様の年頃なら女性の一つや二つ抱いていてもおかしくないですよね?」
「なっ、なんて事を聞くんだっっ」
ふふ、ねちっこく更なる追及をお見舞いしてみた。
案の定ハロルドは、顔を赤くして回答に困っている。
「う、うるせえ! そんな事リアーナに関係ないだろ!」
あれま……怒っちゃった?
これは話を切り替えた方が良いかも。
「ごめんなさい。ちょっと調子に乗りました……ところで、ハロルド様にはお兄様がいらっしゃるのですね!」
「ん、ああ……二つ上にな。これが女にだらしなくて困った兄貴でな。まあ、継承者が子沢山なのは良い事なのかもしれんが、俺には理解出来ん」
セーフ! なんとか話をすり替えられた!
「そうなんですね。因みにハロルド様はおいくつになられるのでしょうか?」
「俺は今年で21だな。リアーナは?」
「わた……ぼ、僕は今年19です!」
危ない危ない……一人称の調節が難しいわね。この際だから、ハロルドが自分から気づくまで男のふりをするしかない。
それが、ここに居られる唯一のチャンスだから……。
「そうか、リアーナは二つ下か! 俺は昔から弟が欲しいと思ってたんだよ! だが……もう少し鍛えないと、なっ!」
ハロルドは快活に笑うと、私のお尻をペチンと叩いた。
男同士ならなんて事ないスキンシップだけど、私は女の子なんですよ!
もう、恥ずかしくてハロルドの顔が見られないよっっ。
「どうしたリアーナ?」
「な、なんでもないですっっ」
「そうか? あ、そうだ! 今晩は俺と風呂に入ろう! どこを鍛えたら良いか見てやる」
ちょ、それはダメ! ぜーったい、ダメっ!
「僕は鍛えなくも大丈夫ですから! お風呂も一人で入りますっ!」
「なんだ恥ずかしいのか? まあ、風呂は勘弁してやる」
よ、良かった~! これでピンチは脱出したわね?
「だが、サウナは一緒に入るぞ! 男同士、共に汗を流すぞ!」
「け、結構ですっ!!」
「安心しろ! 恥ずかしいなら下はタオルを巻けば良い! 因みにこれは決定事項だからな! 絶対に入るぞ! あ、ついでに兄貴や親父を誘ってみんなで入るか! そこでリアーナを紹介するとしよう!」
ちょっと、一人で勝手に盛り上がらないでよ!
ど、どうしよう!? 最大のピンチがやって来たっっ!?
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