グリーシャ帝国軍第444隊の風景その1
少し長くなりそうなので2回に分けました。
グリーシャ帝国軍本部にある第444隊の執務室での仕事ははっきり言って楽だと私は思う。なぜなら私がしないといけない書類整理は隊で作成・整理・提出しないといけない書類の10分の1にも満たないからだ。むしろ執務室では1番楽をしていると言っても過言ではない。
「みんな、おはよう。今日はアルクスとベルクとケイネがいるんだね」
今私が率いる帝国軍第444隊の執務室には先程入室した私とリーシャを含めて5人いる。そして人ならざる者も1人
1人は私やリーシャと同じヒト族のアルクス・ゲイドー大尉。彼は3年前のこの隊の発足以前から一緒に戦場を駆けた戦友でもある。とても丁寧で真面目な人だ。
「おはようございます少佐。今日は陛下がいらっしゃる前に少佐の机にまとめてある書類の可決お願いします」
「わかったよ。いつもありがとね」
「いえ、私の仕事ですからお気になさらず」
アルクスに言われて自分の机を見ると、書類の山…………というか丘ぐらいしかない。いつも通り彼らでできる分は全て受け持ってくれているんだろうなぁ。
「おはようございます少佐。いつものようにお可愛らしいですわ。私にもその美しさを分けてほしいくらいです」
「あ、ありがと」
「照れながらお礼を言ってくる少佐も可愛らしいですわ」
挨拶と同時に私をべた褒めしてくれたのは森エルフ族のケイネ・フォルネウス中尉。2年前にこの国の大公家であるフォルネウス家から急にこの隊に入ってきた不思議な人だ。本人曰く“戦場の白銀”なる人物の下で働きたかったかららしい。“戦場の白銀”なんて2つ名の人って軍にいたかなぁ?
彼女はいつも私の容姿をべた褒めしてるけど私にはイマイチわからない。物心がついた時からずっとこの容姿だからなぁ。
私は身長154cm、体重は41kgどちらかと言えば小柄なほうだ。胸も男たちみたいにペターンとはしていないけど、リーシャやケイネと比べたらささやかだし。長い銀髪と金色の瞳の組み合わせが珍しいのかもしれないけどそれだけじゃあ可愛いとか美しいには繋がらないだろうし。ホントわからない。
「そういや少佐って陛下と仲良さそうにしてますけど、なんでっスか?」
「フフッ、それはヒ・ミ・ツだよ」
「ちぇっ、それくらいいいじゃないっスか」
少し軽い口調でそう話すのは獣人の中の黒狼族のベルク・オーフェンス少尉。半年ぐらい前にこの隊というか軍に入ってきたばかりの新人士官で、口調はいつも少し軽め。成人したばかりでなぜか成人する前から軍にいたリーシャよりも私と年が近い。だからと言って話が合うわけではないけど。あと私と陛下の関係はそう簡単には教えられないよ。
「さてと、仕事を始める前にみんなに伝えることがある。リーシャ、ヘリヤとエルクに繋いで」
「あれ?少佐、ケイルには繋がないんスか?」
「そのことに関しての話だよ」
「シル少佐、モービック中尉とテリオッツ少尉と繋がりました」
執務室にあるモニターにここにはいない2人の士官を映す。
『少佐、この時間に連絡とは何かあったのですかシルフィーナ様?』
『少佐、こちらエルク・テリオッツ。繋がりました』
いつもはない朝からの連絡に不穏を感じているのは天翼族のヘリヤ・モービック中尉。3年前にこの隊が発足したときに部下になった人だ。何というか犬みたいな人だ。本人曰く私を主として忠誠を誓っているらしい。隊の発足前にどこかで助けてたみたいで自らこの隊に志願した最初の人だ。
それに対して事務的な反応をしているのは砂漠エルフ族のエルク・テリオッツ少尉だ。ベルクより少し前に来た人で、物静かだ。結構仲間思いで、ピンチの仲間がいるとすぐ助けに入る。ベルクより狼っぽい感じがするのはなんでだろう。
「実は昨夜ね、昨日までここにきてたケイル・ラビンス少尉が私のとこにね、暗殺者としてきたんだよ」
『『「「「!!!!」」」』』
「もちろん今回も私は無傷だよ。いつものように寝ぼけてたから部屋が血で汚れちゃったけど」
「少佐を襲うとは文字通り命知らずな奴ですわね」
『シルフィーナ様を襲うとは。どこの間者だったのですか。今すぐに乗り込んできますので!』
「モービッツ中尉落ち着け。それは少佐がいないときに俺たち全員でやることだ」
「そうっスよ。ヘリヤ先輩だけ行こうとするなんてずるいっス」
『レザノフ大尉、敵の特定は済ませていますか?』
「もちろんです。遅くとも明日の朝には脅迫状があちらの宮殿に届くように手配済みです」
いつも通り過保護な反応ありがとう(泣)。みんななんでそんないつも物騒なの!?
なんで過保護かっていうと、みんなシルフィーナを子供としか見てないからないからです。