9.貴族で盗賊
とにかく着いて来て欲しいと言われたのでクレイドに伴われ街の中を歩く。隣を歩くエナに先程話していた貴族という単語について聞いてみる。
「エナって貴族なの?」
そう問いかけると、エナはこちらを見下したいのか背伸びをしている。まぁ、それでも俺の方が背が高いので、頑張っている子供を見ているようでで微笑ましかった。
「私は誇り高い白狼の獣人!ご主人様よりも尊く偉い存在よ!」
俺が言わせてることなので口が裂けても言えないが、ご主人様って言っておいて自分のことを俺より偉いだとか尊いとかなんの冗談かな?と思った。
「そうなんだ?でもなんで教えてくれなかったの?」
「聞かれなかったから。それにご主人様に教えてそれをネタに強請られるかもしれないって思ったからかな?」
「…それを俺に言っちゃうの?」
「あっ!聞かなかったことにして!」
前にも一度感じたことだが、この子少し頭がゆるい子なのかもしれないと思った。
「そういえば、さっきはありがとう。良い一撃だったよ」
「当たり前でしょ。シーフの蹴りを受けて立っていられるわけないからね」
そう言って彼女の頭の上の耳が揺れる。やっぱり犬なんじゃないかな?褒められて喜んでるし。
ん?ちょっと待って。
「あのさ、シーフって盗賊のこと?それってジョブかなんかだよね?」
「そうね言い方を変えると盗賊だから合ってるわ」
え?シーフって短剣とか弓とか使ってるイメージなんだけど。ここではシーフは拳で抵抗して行くのがグローバルスタンダードなの?
「…そもそもなんで貴族様がシーフなんかやってて、俺の道具袋を狙ったの?」
「…私にも黙秘権はある」
言いたくないらしい。まぁ聞きたいところだけど折角普通に話してくれてるのにまた機嫌悪くさせるのもなぁ。
「着いたぞ。ここが総合組合所だ。冒険者組合やら騎士の駐屯場所なんかもこの中に入っている」
かなりの大きさの建物の扉を開けたクレイドに、中に入ってくれと促されるまま建物の中に入る。
中のエントランスは広く作られていて階層も一階から三階まであるようだ。
「俺たち王都騎士隊の詰所は三階だ。二人で先に行っててくれ、クレイドの客だと言えば通してくれる筈だ」
何か用事があるのかそう俺たちに告げると、すぐに何処かに行ってしまう。三階までの階段を登り『王都騎士隊詰所』と書いてある扉を開ける。
「おはようございます。本日はどのようなご用件でしょうか?」
入室するとすぐに声が掛けられる。
「えっと。クレイドさんにここで待つ様に言われて来ました」
「そうでしたか。今ドレイク隊長は外出中でして、そろそろ戻ると思われるので、待合室でお待ち下さい」
ドレイクが姓かな?クレイド・ドレイクがフルネームか…、言葉遊びみたいな名前だな。
受付のお姉さんに待ち合い室に通され、座って待つこと10分クレイドが待たせたことを詫びる様に手を挙げながら入室してきた。
「悪いな。待たせた」
そして俺たちの対面に腰掛け話を切り出した。
「改めてお礼を言わせてくれ。助かった。ありがとう」
「いえ、俺は何もしてませんから」
「そうね、ご主人様は怖くて目を閉じてただけだったもんね?」
…確かにそうだったが、敢えて言われると少しイラッとする。でも俺は大人なので口を出さない。偉いでしょ?
「特にエリアーナさんの体術は本当に素晴らしかった!グレイトだったよ!」
「当然よ!」
褒められて頭の上の耳が動く。
クレイド・ドレイクが素晴らしくてグレイトってか。喧しいわ!
「それでなんだが、君達にこの街の統治者から先程褒美が出されたので君達に渡そうと思う」
マジか。その袋の中はしっかりお金だよね?お幾ら万円?
「それ私が貰えるんでしょ?」
エナが報酬と聞いて俺に耳打ちする。
このがめついシーフめ!分かったから!だからすぐに懐に仕舞おうとしないの!お下品でしょ!
「分かったから!ちょっと静かにしてて」
エナにそう言いクレイドに感謝を告げる。
「ありがとうございます。有り難くいただきたいと思います」
その答えを聞くとクレイドは嬉しそうに頷いた。多分辞退しても困るものだったのだろう。
エナ?マジで犬みたいだよ?ご飯の前で『待て』をされてる犬みたいになってるよ?写真撮ってあげようか?
「まぁ、ここに連れて来たのは別件なんだがな。担当直入に言うとケルベロスを倒した凄腕の君達に二日程この街の防衛に加わって欲しくてな。もちろん先程の統治者からの褒美とは別に報酬も出す」
「見ず知らずの俺達に警備をお願いするなんて、何か理由があるんですか?」
「最近地龍が目撃されて、その討伐に殆どの冒険者と騎士隊の半分が出払っていて人がいないんだ。地龍ともなれば生半可な戦力じゃ倒せないからな」
なるほど猫の手も借りたいと…。人と犬だけど良い?
「分かりました。今日を含めた二日間で良いんですよね?」
「問題ない予定通りなら明日には討伐隊が戻ってくるからな。じゃあ早速今日の午後からでも街の外の警備に着いてくれ」
そう言い残しクレイドは席を立った。
「ねぇ、これ貰っていいのよね?」
エナ良しだ!持ってっていいぞ!
「どうぞ。そう言えばいいの?勝手にエナも警備に加わるって言ったけど」
そう言うと速攻で懐に褒美を仕舞い込んだ。
「お金貰えるならいいよ。それより冒険者組合に行きましょう。さっきのケルベロスの素材を換金したいから」
エナはケルベロスの目玉と血がこびりついた玉を取り出した。
ひいぃ!グロいぃ!女の子がそんな物を笑顔で見せつけないでぇ!エナがメンヘラに見えるよぉ!
俺達は三階の騎士隊の詰所を後にし、一階の冒険者組合の受け付けにエナの手に持ったグロい物の換金の依頼をしに行く。
「ご主人様お願い」
エナは俺に丸投げする様に俺にグロい物を手渡す。
いやぁ!目ぇ!目ェエェエ!
「あ、素材の換金ですか?ではカードの提示をお願いします」
俺の手にある目玉を全く意に介することなく、受付のお兄さんが俺にカード?の提出を求める
「か、カードってなんですか?」
「冒険者カードをご存知ないのですか?身分証の代わりになりますので便利ですよ。よければお作りしますけど如何しましょう」
「それじゃあ、お願いします」
「では申請用紙に必要事項を記入してから、お手数ですがもう一度受付までいらして下さい」
受付の物腰柔らかいお兄さんから申請用紙を受け取り必要事項を記入する。
冒険者カード申請用紙に名前、年齢と必要事項を記入していくとジョブという記入欄が。
「なあ、エナこのジョブって何を記入するんだ?」
「ジョブはジョブでしょ?」
なるほど?分からん。
最後の記入欄だけわからなかったので、受付に申請用紙を渡すついでにジョブについて話を聞いた。
「ジョブは神殿で現在の能力や性格などで認定されます。また、能力が極めて高い方だと自分で就きたいジョブに就くことが可能です。まだ認定がお済み出ないなら空欄で構いませんよ」
そう言って彼は申請用紙を俺から受け取り奥に消えて行ったが、しばらくすると免許証くらいの大きさのカードを持って現れた。
「お待たせ致しました。こちらが冒険者カードになります。初回の登録ですので、等級はブロンズからになります。等級は様々依頼や功績に応じて上昇し、シルバー、ゴールド、プラチナ、ミスリル、ダイヤまであり、ダイヤ等級ですと国から毎月支援金が与えられます」
きたぜお決まりの展開!ここから俺の冒険譚が始まるんだ!特殊能力なんてここから身につけていけばいいんだ!
「そちらの方もカードをお作りしましょうか?」
「私は持ってるから要らないかな」
エナはカードを持っているらしい。
そうだなジョブなんて興味を唆るものは是非とも頂きたい!午後までまだ時間があるし神殿とやらに行ってみますか!
エナさんは獣人種の貴族です。そのうちその辺の説明もするので、今のうちは想像で補完しておいて下さい。
なんかこういう説明っぽい文章考えているのって難しいですね。(文章が変だったらすみません。。。)人と人の絡みを書いてるほうが、スラスラとかける気がします。