7.Hey, しり
「ねぇ、誓約書を書いたんだから早くこれ取ってくれない?」
エナが顔を上げ俺に頼んでくる。
俺はアスパラに近寄り手で引き千切ろうと試みる。
弾力強すぎぃ!え!?なにこれぇ!どんだけぇ〜!
「…つかぬことを伺いますが、これどうやって切るかご存知ですか?」
「はぁ?知らないわよ!『アンタ』が出したんでしょ!」
そう言い放つと同時にエナは苦痛の表情を浮かべ、エナの右手の甲にローマ数字のIの様な文字が浮かび上がる。
「なんなのこれ!」
何となく俺には想像がついていた。
「ダメじゃないか、俺のことはご主人様でしょ?」
「誰が!絶対『アンタ』のことなんかご主人様なんて呼ばないんだから!」
またエナの顔が引きつる。その手にはIIの文字が。
この子察しが悪いのかな?それとも頭が弱い子?
「とにかく先にこのうねうねをなんとかして!」
そういえばそうだった。でもエナなら簡単に引き千切れそうな気がするけど?
「なあ、俺にやってたみたいに手に光を纏わせて茎を切るって出来ないのか?」
「…『アンタ』何も知らないのね。魔法生物には魔力を使った攻撃は一切通らないのよ?そもそも地面に足が付いてない宙吊り状態で力なんて出るわけ無いじゃない」
わぁお。この世界のアスパラは魔法の生き物でしたか。
何か切るものは…、包丁じゃ切れないくらい太いし、大きすぎる剣だと俺が持てない。このくらいの剣なら丁度いいか。
俺は道具袋から自分のへその高さくらいの剣を取り出す。
「よし、行くぞっ!」
…袋から出して地面に刺したは良いが全く持ち上がらない。あれ?おかしいな?
「『アンタ』非力過ぎでしょ」
自分より一回りくらい小さい女の子に非力って言われた。悲しい。
「は、早くして!どんどん引き寄せられてるから!」
アスパラは既に捕食体制に入っていた。
「ちょ、ちょっと待ってもっと良いのがあるはずだから」
この植物を手早く処理したい!そう思うと、また道具袋の紐が何かを俺に差し出してくる。
「『除草剤MAX END〜卍雑草共、貴様等の運命はここまでだ!卍〜』かぁ、サブタイ付いてる除草剤あるんだなぁ」
「早く!」
せかされて俺はアスパラにそれを振りかけると、みるみるうちにアスパラは枯れて干からびたミミズくらいの大きさになった。
「ふぅ、大丈夫だったエナ?」
「気安く愛称で呼ばないで!」
…。
「エリアーナ大丈夫だった?」
「気安く名前を呼ばないで!」
「…大丈夫だった?」
「話かけないで!」
どうしろと?これから喋ってはいけない〇〇24時とか始まるんですか?そういうの大学のときだけで間に合ってます。
「『アンタ』との変な契約のせいでもうまともに暮らせないじゃない!」
彼女が苦悶の表情を浮かべる中、彼女の手からIVの文字が消え、Vの文字が刻まれる。
「あの、多分なんですけど俺のことを『ご主人様』って呼ばないとダメなんじゃ無いんですかね?ほら僕に続いて復唱してね?せーのご主人様」
「いやよ」
彼女の手にVIの文字が。
「なんでよ!」
その現象を確認して仮説が確信に変わる。そして、そのことが分かった俺はまた強く出れることを悟った。
「ほほぅ?これはさっきの誓約書に反することをすると罰を受けるんじゃないですかねぇ?でも、それならカウントされる意味が分からないですよねぇ?子供に与える罰って言ったら何か分かりますかぁ?」
その言葉にハッとしたように彼女は飛び退くが、俺は彼女との距離を近づけるべく前に歩を進める。
「近寄らないで!『アンタ』の宝物庫を狙うんじゃなかった!この『ケダモノ』!獣人の、私よりよっぽど『アンタ』の方が野生に近いじゃない!」
彼女の手のカウントがIXになった。と、同時に彼女はクルリとうしろを向き逃げる体制をとった。このままだと逃げられると思った俺は、
「動くな!」
と叫んだ。しかし彼女は俺の静止の忠告を聞き入れず逃げようとする。そして彼女の手のカウントがXになり赤く輝いた。
すると彼女はその場に足から力が抜けた様に座り込んだ。
「え?なんで?身体から力が出ない…」
俺は好都合とばかりに笑い彼女に近づく。
「いやっ!近づかないで!なんで身体に力が入らないのよ!」
彼女のすぐ横に立った俺は、彼女に向かってこう言い放つ。
「お尻を上げなさい」
すると彼女は俺の言いつけ通りに顔を床に付け尻を上げた。
「オ仕置キノ時間ダァー〜ッ!!」
「イヤーー〜〜〜ッ!」
その断末魔を金切りに俺は彼女の尻を叩き始める。
「いたッ!やめて!」
パンッ!パシッ!
乾いた音が辺りに木霊する。
「いたいよぉ。ごめんなさい!ごめんなさい!」
叩くたびに赤く輝くカウントがIX、VIIIと減っていく。
「これで最後だ!」
そう言い俺は右手を大きく振りかぶり、おそらく服の下では赤くなっているであろう尻に手を振り下ろす。
パァァンッッ!
「ーー〜〜〜ッッ!!」
一際大きな音を立て、手が彼女の尻にクリーンヒットする。その音の残響が消えると同時に、彼女の手から数字が消え、そこには元の透き通る様な綺麗な手があった。
彼女は腕で顔を覆い隠し、ぐすぐすと鼻を鳴らして地面に突っ伏している。
あれ?やりすぎたかな?
「あのー?自分でやっといてなんだけど大丈夫?」
「グスッ、なんですか?今度は優しいふりですか?これだから童貞は嫌いなんです。人のことをイヤらしい目で見てくるし」
「ど、ど童貞関係ないだろ!」
彼女は恨めしそうな顔をこちらに向け立ち上がる。
「…認めた訳じゃないから」
「はい?」
「すぅぅぅっッはぁーー〜〜、『ご主人様』。これでいい?」
そう言うと彼女はそっぽを向く。
この子のこと泣かせといてなんだけど、超、超、かわいいーー〜!感激ぃ!そうですよーご主人様ですよー?
「…さっきの誓約書もう一枚出して?」
「ん?何に使うの?」
「誓約の確認するからもう一枚だして!」
「わ、分かったから」
凄い剣幕で怒鳴られしまった。直ぐに袋から誓約書をもう一枚取り出し彼女に渡す。三分くらい目を通したあと彼女は、
「……。もういい。ありがと。仕舞って良いよ」
と、俺に誓約書を返してきた。
俺も目を通しておかないとまずいよなぁ。
上記の約束以外にはこの様な誓約があります。
1.誓約主と被誓約者の距離が一定以上離れると強制的にカウントがXになります。その後も離れ続けるとカウントが一定間隔毎にIずつ上昇します。
2.被誓約者が誓約主の命を害した場合にはカウントが強制的にXXになります。
3.約束を違えた場合には原則カウントが1ずつ上昇します。
4.カウントがXになった場合には被誓約者の脳に干渉し、被誓約者の身体の自由を奪います。カウントがXXになった場合には、被誓約者の身体がパァンって弾け飛びます。
5.カウントを減らす場合は、誓約主が被誓約者のお尻をおもいっきり、叩いてください。一叩きにつきカウントが、1ずつ減少します。
6.誓約は十年続きます。再度誓約を結ぶ際にはもう一度誓約書をお買い求め下さい。
以上となります。
なるほどね。期限有りで誓約にはもう一枚買わせると…商売が上手いなぁ。
内容を確認した後に俺は誓約書を袋の中に仕舞った。
「はぁ。いやな誓約ね。一定距離内に居なきゃならないなんて逃げられないじゃない」
「…なぁ、俺はキミのことなんて呼んだら言い?」
彼女はいやそうな顔をした後に、
「エナ」
そう一言だけ言った。余程口を聞きたくないらしい。ごもっとだけど…。
「じゃ、じゃあこれからよろしくねエナ」
「…よろしくはしない」
こうしてかわいい獣人が仲間?になった。
エナさんが仲間になりました。よかったですねご主人様。誓約を考えるときに辻褄合わせが大変でした。今まで書いた文も読み返しましたし。。。こういうの直ぐ書ける人って見切り発車してないんだと思いました。
ちなみにエナさんと浩二さんの戦闘力の差は、
エナさん(1万)< 浩二(1)
ぐらいって思ってもらえればいいです。