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6.俺のターン!いでよ!アース・パ・ラ・カースド!

 どうしてだよ!さっきまでの俺に笑いかけてくれた優しいエナさんはどこ行ったんだよ!


 目線は彼女から外さずに道具袋の中に手を突っ込み、手の感覚だけで何か武器になるものを探す。


 でもやっぱり傷付けたくない。殺傷能力のない武器とかないか?


「…もしかして私の心配とかしてる?お優しいのね。敵だっていうのにそんなこと考えてるなら相当キモいよ?」


 そう言うと彼女は手首から指先までに光を纏わせると同時に間髪を入れずに懐に飛び込んできた。


 うそだろ!?早すぎぃ!


 あのケルベロスと同じ位かそれ以上の速さで彼女は俺との間合いを一瞬で詰める。


 マズい!


 俺は道具袋の中から取り敢えず手に触れている物を取り出した。


 俺の眼前に自信の身の丈は余裕で覆える大盾が、手を貫手の様に伸ばす彼女と俺の間に互いを隔てるように現れるが、


 ガギンッ!


 金属同士がぶつかる様な音が聞こえた。そして音の正体を見て俺は驚愕する。


 手で大盾に穴開けるの!?そんなん防げるかよ!


 大盾を手で放った一回の刺突で穴を開け、続けざまに左から右への切り払いで堅牢そうに見えた大盾がいとも簡単に両断される。身の危険を感じた俺は転がるように避けたおかげで、腕と胴体がお別れすることはなかった。


「ごめんね。殺すつもりまではないけど腕の一本や二本は覚悟しといてね?」


 彼女は転がった俺に攻撃を仕掛けようと姿勢を低くし踏み込みの体制を取る。


 は、早く起き上がらないと。


 一瞬でも良いから立つ時間が欲しい俺は、自分の周りに気を引く何かがないかを探し、切られた大盾の破片を彼女に向かって投げた。ちょうどその瞬間に彼女は踏み込み始めた様で、


「!」


 彼女の視線が破片に移る。


 不意を突くことが出来たようだったが、足でブレーキをかけてスピードを緩め、投げつけた大盾の破片に手を添えるだけで金属同士がぶつかる音と共に破片を弾き飛ばしてしまった。


 その隙に俺は立ち上がり道具袋に再び手を入れる。


 その行動を彼女が見逃してくれる訳がなく、もう一度間合いを縮めてくる。


 ダメだ。速すぎる!


 彼女の手が道具袋を持つ左腕を狙い、貫手を放ってくる。次に来るであろう痛みから目を逸らすべく、反射で両目を閉じる。誰でもいいから彼女を拘束してくれ!俺と彼女以外に誰もいないのに俺はそう祈る。


 が、彼女の攻撃が俺に届くことはなかった。


 道具袋の紐がひとりでに道具袋の中の緑色の物体を引き摺り出し、その緑色の物体が彼女の両腕を絡めとり拘束していた。


「なんなの!これ!」


 俺にもなにがなんだかよく分からなかった。


 その正体を確かめるために道具袋から伸びる緑色の物体を手で引き抜く。それを見て彼女の目の色が変わる。


「緑色で、その手に持ってる茎の形もしかして…」


 どう見ても訳ありアスパラガスだった。


「自生する周辺に近づく女性を拘束する、アース・パ・ラ・カースドね!なんて物を宝物庫にしまってるのよ!」


 どうやらこの世界のアスパラの好物は女性だった。


「知らんけどー」


 よく分からなすぎて、ア○ネちゃんみたいになってしまった。


 そう言ってる間にアスパラは彼女の両足をも拘束し、完全に身体の自由を奪い取った。形勢が一気に逆転したのを良いことにちょっとだけイキる。


「エナさん良い格好ですね?そのまま先程のテントでの続きでもしましょうか?」


「やめて!近寄らないで!」


 アスパラに両手両足を拘束されている嫌悪感からか少し涙目になっている。


 警察が見たら間違いなく現行犯逮捕な絵面だった。


「そう言われても、近寄っちゃうんだなぁこれが!」


 両手をワキワキいやらしく動かしながら少しずつにじり寄る。その姿を見て彼女は怯えたように喉を鳴らした。


「降参だから!早くこの生き物どうにかして!」


「…誠意が足りないなぁ?」


「お願いです!降ろして下さい!」


「誠意込めてますぅ?感じ取れませんなぁ?」


 少しずつだが、彼女に伸ばす茎の本数が伸びてきている気がする。彼女がアスパラの夜食になるのは多分もう直ぐだろう。


 彼女は心底悔しそうな顔をしながら、


「…私が悪かったです。なんでも言うことを聞くので、この生物を閉まっていただけないでしょうか」


「良いだろぅ。合格だぁ!」


 俺は相当悪い顔をしていたと思う。それもそうだろうこんなにかわいい子が何でもしてくれると言うのだ、そんなの御相伴(ごしょうばん)に与らなければ相手に失礼というものだろう。でしょ?


 彼女を縛り付ける何か契約を交わさせたいなぁと思いながら道具袋を漁っていると、道具袋の紐がまた何かを引き摺り出した。


「ん?なんだこれ、『僕(私)のパパ、ママとの誓約書(せいやくしょ)』?」


 えっと?『僕(私)はパパとママの言うことをしっかりと聞きいい子にします。約束はこの下に書いています。約束を守れなかったらお仕置きして下さい』子供の書いた文章みたいだけど、最後の一文から滲み出るドMはなんなのだろう?絶対子供はそんなこと書かない。


 その誓約書を見て好都合とにやけながら、


「さあエナさん?この誓約書にサインして頂こうかぁ?あ!その前に約束を書かないとな」


 俺は道具袋からペンを取り出しサラサラと紙に書き記す。


「改めて…、」


 そう前置きしてから俺は、


「さあ書きたまえ!これからは僕が君のご主人様だよ?」


 彼女は心底嫌そうな目をしながら、誓約書の約束を読み始めた。


「…1.浩二様のことはこれから『ご主人様』とよびます。2.ご主人様の言うことは絶対!3.ご主人様には手を上げません。4.ご主人様大好き!。ってなによこれ!ふざけないで!」


「じゃあここでお別れかな?この緑色のうねうねと仲良くしてね?」


「ー〜っッ!!クズ!外道!」


 おいおい?純粋無垢な童貞を弄ぶのは外道ではないかね?


 彼女は大きく息を吐いた後、


「分かったわよ!紙に書くから両腕の拘束を解いてちょうだい?」


「ペンは握らせてあげるよ?紙も持っててあげるからそのまま書いて貰うよ」


 右腕だけでも怖いのに両腕?俺だってその位の危機管理能力あるわ!


 彼女は最後の抵抗チャンスも失い何もかも諦めた顔になった。そしてペンを走らせ自分の名前を誓約書に書き始めた。


 エリアーナ・ヴァルディ?エナってのは愛称みたいなもんだったのか。さん付けもなぁ、俺の召使いみたいなもんだし。まあエナでいいか?


 彼女もといエナが誓約書に名前を書き終えると誓約書は燃えて灰すら残らず消え去った。


 何はともあれ獣っ子でぐうかわで、なんでも言うことを聞いてくれるエナちゃんゲットだぜ!


 この世の終わりの様な絶望の様相を浮かべ、緑色のうねうねに拘束された美少女と、下卑た笑いの表情を浮かべる男がそこに居た。

別に作者はアスパラに思い入れは特にないです。故に深い意味もないです。

文中のアスパラさんは火の通ったアスパラみたいに柔らかくしなるって思ってもらえればいいです。具体的イメージは触手さんです。


ここまで毎回思ってる事ですが、終わり方難しくないですか?どう書き終えたらいいか全く分からんのです。なので独自の切り方になっていますが、ご容赦を頂きたいです。

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