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5.どこの世界でも男は女に騙されるもんだなぁ。

 街まで伸びているらしい道をエナさんと二人で歩く。前世では専ら(もっぱ)男友達としか、談笑しながら歩いたことのない俺からしたら、今の時間は希少な嬉しい体験だった。


「コージさんは見たところ軽装のようですけど、近隣の村から来たんですか?」


 確かに今の俺の見た目からしたらそういう風にに感じてもしょうがないな。でも説明するときに転生しましたなんて言っても変人だと思われるからなぁ。取り敢えず便乗しとくか。


「そうだよ。森の中で食べ物を取って街で売ろうと思っていたんだ」


 実際に道具袋の中には山菜やキノコ類も入っていたし、見せてって言われても嘘とはとられないだろう。


「その袋の中に売るものを入れているんですね。でも、今日は多く取れなかったんですか?袋の膨らみ方からして中にそんなに量が入っている様には見えませんけど」


「あぁ、この道具袋は見た目よりも多くの物が収納できる便利な物なんだ。なんでそうなってるかは知らないけど」


「えっ、それって魔法の道具袋なんじゃないですか?」


「…もしかして珍しかったりする?」


「勿論ですよ!凄く希少な物なんですよ?所有者の最大魔力量に応じて許容量が変動するので、持ち手に左右されるところが欠点ではありますが、それでも平均的に普通の道具袋の30倍位は収納出来ます。余り人に見せびらかすのはおすすめしないです…」


 知らなかった…次からはおいそれと道具袋の話はしない様にしよう。人目につかないように懐の中に閉まっとこう。


 それにしてもエナさんが良い人でよかった。忠告されていなければ悪い人に奪われてたかも知れない。


 腰に付けていた道具袋を懐の中に仕舞う。


「…」


 その様子をエナさんがじっと見つめていた。


 もしこの人が悪人だったらヤバかったな。まぁこんな可愛い人が悪人な訳ないしなぁ。可愛いは正義!なにより俺には人を見る目がある。だから問題なし!




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 1時間半くらい歩いただろうか、もう日が山の向こうに隠れ、辺りが暗くなってきたのが分かる。


「暗くなってきましたね。街まで歩いてまだ4時間程かかるので、この辺りで野営した方が良いかも知りません。この辺は獣の類いも少ないので心配は余りないです。なにより街の門が夜は閉まっているので中に入れませんので」


 女の子にこんな足場があまり舗装されてない道をあるかせるのもなんだしな。しかも街に入れないならこれ以上進んでも意味ないし…。


「そうだね。一旦横の森の中で野営した方が良さそうだね」


 そう言って俺たちは森の中に入り、少し開けた野営地に良さそうな場所を見つけた。


 道具袋の中に何か無いかな…。


 中を覗きながら使える物がないか漁っていると、テントの様な物が幾つか入っていた。


 おっ、これは使えそうだな。


「エナさん。これを使って下さい」


「えっ…、良いんですか私が使っても?」


「勿論だよ。まだ幾つか入ってるみたいだし」


「ありがとうございます。ではお言葉に甘えて使わせて貰います」


 エナさんはそう言ってテントの設営を始めた。その背を横目に見つつ、俺もテントを組み立て始めた。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 俺たちは、テントの設営を終えて夕食の準備に取り掛かっていた。伊達に一人暮らし歴が長いだけあって、料理には自信があった。


 道具袋の中に食材がいっぱいあったし、包丁や鍋などの道具や食器も入ってたから問題ないな。…なんだこのデカくて太いアスパラガスは?デカすぎだろ!こんなん料理で使えないだろ。


 そう思いつつも俺は必要な道具や食材のみを取り出し、食材に刃を通し始めた。


「お手伝いします。何からすればいいですか?」


「じゃあ野菜の皮を剥いてもらえる?」


「わかりました。では包丁をお借りしますね」


 あぁ、前世で彼女がいたらこんな風に一緒に料理なんかしたのかな…。


 そんなことを考えながら作ること半刻程、二人の前には出来たてで暖かいシチューと、火で(あぶ)った香ばしいライ麦パンが並んでいた。


「コージさん!どうぞ!」


 エナさんにシチューの皿を手渡される。


「ありがとう!冷めないうちに食べようか」


 俺はそう言いスプーンでシチューを掬って口にした。その様子を見ていたエナさんも手にしたスプーンで食べ始めた。


「美味しいです!コージさん料理上手なんですね」


「料理には自信があるんだ。一人で暮らすことが長かったからね」


「えっ、今まで一人で暮らしてきたんですか」


 変なこと言ったかな?そっかこの姿だとまだ親と一緒に暮らしていても不思議はない年だもんな…。


「あの、そのぉー失礼かもしれないですけど、彼女さんとかいないんですか?」


「え、そっち?」


 この世界はどれだけ早婚なのだろう。俺のことそんなにいじめて楽しい?


「ご、ごめんなさい。気にしていることかもしれないのに失礼でしたね」


「いや、気にしてないからいいよ」


 嘘だよ!めっちゃ凹んでるよ!なんならエナさん結婚して!


 そんな気まずい空気になることもあったが、概ね楽しく談笑しながらの夕食となった。


「もう寝ましょうか。私が先に見張りで起きているので先に休んでください」


 正直色んなことが起きすぎて身体が熱を感じる程疲れているのは実感していたので、その申し出は凄くありがたかった。


「お言葉に甘えて先に休ませてもらうよ。4時間位経ったら起こして欲しい」


「任されました。コージさんお休みなさい」


「お休みなさい」


 後ろから掛けられる心地よいお休みの挨拶を感じながら、俺はテントに入り直ぐに眠りに落ちた。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 ガサガサッ、ゴソッ。


 テントの天井部分が揺れる。


 カサカサッ、


 衣擦れの音とともに身体に何かが触れる感覚を感じて、意識の半分位が身体に戻される。


 ん?なんだ?


 音の正体を確認するため眠い目を薄く開ける。が、音の正体と自分の状況を確認した脳が完全に覚醒する。


 なんでエナさんが、俺の上に跨って俺のシャツを脱がそうとしているんだ!?


 そして瞬時に脳が判断した。


 そうか俺はこのまま…。親父、御袋(おふくろ)、どうやら孫の顔を拝ませることが出来そうだ。


 目を閉じつつこれから起こることを想像し期待に胸を膨らませる。だが、


「お?あった。これで私のやりたいことがようやく始められるわ」


 その声が聞こえると同時に服の中から道具袋が抜き取られそうになる。


「え、エナさん?」


 流石におかしいと思い声を掛けると、エナさんは俺の懐の中から手を引き大きく飛び退いた。


「あれ?もう起きたの?おかしいなぁ分量は間違って無かったはずなんだけど」


 立ち上がろうとすると頭痛が走る。


「ど、どうしたんですかエナさん。なんで拳なんか握ってるんですか?」


「…。まだ分かんないの?私その宝物庫が欲しいんだけど?」


 そう言ってエナさんは戦闘態勢を取る。


「じょ、冗談ですよね。あんなに俺に色々と教えてくれたりしたのに!気を付けろって言ったのもエナさんじゃないですか!」


「まぁ、私みたいなのに気を付けろってことかな?その宝物庫を寝ている隙に頂戴する代わりの勉強料ってつもりで言ったことだし」


 その言葉で俺は理解した。彼女が何か薬の様なものを俺に盛っていたこと。そして、根拠のない自信は信用ならないことを今になって理解した。ちくせう。


ケモっ子の据え膳だったら私は美味しくいただきたいと思いながら書きました。(正直その描写を書いてから袋を取られるのもいいかなと思いました。)


まぁ、そんな話は置いといてw。ここまでではあまり袋が凄い物だと分からないと思いますが、次から少しずつ分かって行くと思いますので、お楽しみに!




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