1.特殊能力下さい!
初投稿です!
よろしくお願いします!
微かに耳に音が入ってくる…。
音の原因を意識のはっきりしない頭で昨日の自分の行動を振り返り特定しようとする。
えっと?仕事を終わらせて終電に乗り家に着いたのが1時だった。確か着替えだけ済ませてお気に入りのテレビ番組を見ていたんだっけかな?
あぁ、テレビの音か。俺はまた疲れ過ぎて寝落ちしてたいたらしい。
付けっぱなしだったテレビの音が俺の眠りを妨げていると思ったので、付けっぱなしのテレビを消すために起きあがる。
「浩二さん。起きて下さい」
俺が起き上がった瞬間にハッキリと名指しで声が掛けられた。
俺は名指しで呼ばれたことに驚いて振り返るが、そこには見知った自宅の壁は無かった。
おかしいなぁ確かに声が聞こえたんだけどなぁ。それよりもどこだよここ?殺風景だなぁ。そしてなんで俺に当てられている光以外は光源がないんだよ。
今の自分が置かれている状況としては、何もない暗い空間でスポットライトに照らされる俺。
はぁ。とうとう拉致されたか…でも、俺みたいなの拐っても無駄飯食うだけの有害な存在にしかならないのに…ん?やっぱり誰か居るぞ?尋問官かな?
俺が人影を認識した瞬間に、その人影にスポットライトが当てられて大変美しい大人な雰囲気の女性が俺の目の前に現れた。
美しい女の人。そして知らない暗い空間。さらには先程まで眠ってたって自覚がある。そうかこれは…。
「服は脱いだ方がいいですよね?///」
「…失礼な勘違いしてませんか?」
えっ?俺はてっきりえっちな夢かと思ったんだけど?俺の夢なら早く俺を楽しませてくれないかな?
何故か美しい女性は目を細め嫌悪感を顔で示した。咳払いをして美しい女性は話しを切り出す。
「私は異世界の神です。足袋浩二さん。貴方は既にお亡くなりになっています」
それ卍?唐突過ぎてやばたにえん。
「なので異世界への転生というプランを我々は貴方にオススメしたいと考えています」
異世界だ!やったぜ!魔王は俺に任せろ!
「異世界にかわいい子は居ますか?」
「勿論ですよ。貴方にピッタリがきっと見つかります。ですがそのかわいい子達もこのままだと悪い魔王に酷いことをされてしまいます」
「なんだって!それはけしからん!俺が魔王をぶっ倒してやりますよ!」
俺の目の黒いうちは魔王様なんかにそんなことさせませんよ?
「いいお返事です。さっそくですけど貴方には私共のプランに加入して貰い魔王を倒して欲しいと考えています。それでは今から転生後の安全安心保証についての説明に入らせていただきます」
…なんだか一気に胡散臭くなってきた。家に押しかけてくるセールスマンみたいだ。
でも!転生してかわいい子と暮らせる!何それ?美味しいよ!とってもボーノです!
「浩二さん。聞いていますか?」
ワクワクが止まらず、話半分に聞いていた俺にセールスの人が確認を取る。
「もちろん聞いていますよ」
半分くらいだけど。
「そうですか。では話の続きをさせて貰いますね?転生時には前世の肉体を一度ミキサーに掛けて練り合わせ再形成します。その際に15〜18くらいの年齢で肉体が再形成された後に魂を入れて異世界に飛ばされます。あ!魂と記憶はそのままなのでご安心を」
え?ミキサー?俺クッキングされちゃうの?ミンチはいやだなぁ。
「今は肉体に魂が入っていないので痛みは全くありません」
良かったぁ!生きたままミキサーにかけられる痛みなんて経験したく無い。あ!俺は死んでるんだっけ?どうせ身体を作り直すなら注文しても良いよね?
「どうせならかっこよくして下さい」
「今のままでも十分かっこいいですよ?再形成されたときも多分問題ないと思います」
本当にぃ?やだぁもう!お上手なんだからぁ!セールスのなんとやらが分かってますねぇ!
「それと…まだ大事なお話が済んでないんじゃないですか?」
異世界といったらお決まりの主人公補正や特殊能力についてまだ話していなかった。
「えっとですね?欲を言っちゃうとですよ。何か特殊能力的な物ってないんですかね」
「特殊能力的なものとは、どういったものでしょうか?」
しらばっくれても駄目ですよ?あるんでしょう?主人公補正が!
「例えばですよ。内に秘められし魔力の量が多くてどんな魔法も使いこなせたり、何でも絹ごし豆腐の様に切り裂く魔王を倒す為の伝説の聖剣とかは…」
「ないです」
「何と仰いましたか?」
「ですからございませんと申し上げました」
この神様は新人なのかな?接客対応マニュアルしっかり熟読したの?すいませーん!担当の人を変えて貰えませんかー!
「どうしてないんですかね?魔法そのものが無い世界なんですかね」
「いえ、魔法はしっかりと存在する世界です」
付け加えて胡散臭い新入社員女神はこう言った。
「最終的には魔王は倒して欲しいですけど、おいそれと優遇なんて出来ませんから。貴方が言う様な特殊能力的なものは渡せない取り決めなんです」
「…」
俺は絶句した。
「ちなみに、貴方の考えていることは筒抜けですよ?胡散臭いとか新入社員とか、そんなことを言う人をどうやって信用しろと?そんな人にもし渡せる様な特殊能力があったとしても快く渡すと思いますか?」
ごもっともだった。でも心を読むなんてずるくない?
「心の底からごめんなさい。あぁ美しい女神様!何か凄い力を授け…」
「ダメです」
俺じゃなきゃ脱糞してたと思う。最後まで喋らせてくれよぉ。
「無理です!普通の高校生くらいの身体で冷血非道で極悪な魔王なんて倒せませんよ!」
「それだけペラペラよく回る口があれば大丈夫ですよ。もしかしたら魔法とかだったらワンチャン使えるかもしれないので頑張って下さい。では浩二さん良い異世界生活を!」
何の取り柄もない高校生くらいの状態で放り出されたら、5分くらいで魔物の餌になっちまうか、山賊に捕まって奴隷落ちが関の山だ!
「ま、待っ…」
「早くミキサーに入れて下さい!」
言い終わる前に胡散臭い神が言葉を遮る様に虚空に向かって叫んだ。その瞬間に俺の意識は闇の中へと沈んでいった。
はじめまして。ぐらおです。
初めての作品投稿になります。
頑張って書いていきますので感想、誤字脱字、レビュー、ブクマ、評価をお待ちしています。
これからもよろしくお願いします。