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Fast-Ⅵ. 『ダーナス・ラングリッド』の独り言。(心の言葉)


 俺はダーナス・ラングリッドと言う名の、『冒険者稼業』をしている者だ。無論モグリでは無く正規の冒険者だ。冒険者になり、彼此れ、もう何だかんだで十年程に為る。出身はこの国だが、この近くの街では無い。国境にも近い或る農村に生まれて育ち、畑仕事やバイトの放牧ーーつまりは家畜の世話で鍛えられ、そう、俺の生まれた村には珍しくも家畜がいる。家畜はウーウや、トンや、卵を産む家畜のホワイト・レッド等が主だ。このホワイト・レッドは実は良く飼育されている鳥だ。肉を食うより、卵を産ませて売る為に飼われる鳥だ。小さな町などでは、個人の家で二~三羽飼っているのが普通だ。少し大きな街の側に在る町や村で、家畜として飼い、卵を近場の都市に売りに行くのだ。だから大きな都市では、あまり個人では飼わなくなる。逆に貴族達は産まれたて新鮮な卵が美味いと知っているので、飼育させていたりする。勿論商売の為では無く、自分達や使用人の食用となる。勿論ホワイト・レッドの世話も近所の養鳥屋の手伝いーーつまりバイトとしてやった事は有るが、どちらかと言うとウーウ等の世話の方が多かった。ウーウはデカイのだ。力有る者で無いと振り回される。俺の生まれた村の男連中は逞しい四肢の大人連中ばかりだったので、俺はそれが普通だと思って育った。ーー八つに成り、一番近い学び場が在るでか目の都市ーーまあ、街だーーそこに行くまでは。同じ八つの周囲のガキ連中より、村出身の俺や近所の同い年の少年らは、頭一つ、俺に至っては頭二つ分位はでかかったのだ。


 

 


 その街に行ってから出来た同い年の友人等から、俺は、俺達は色んな事を教わった。そんな中で俺は『冒険者ギルド』と言う存在を知り、興味を引かれた。学び場の勉強が済んで、村へと帰ったら、畑をやるか、または近所のおっちゃんに習って、家畜を育てるつもりだった。別段不満も無かったが、不安は有った。俺には兄が二人居た。姉も居た。姉はいつかは嫁に行くだろうが、稼業の畑は兄達で実は間に合う。村の近くの土地を開拓すれば畑は得られるが、農家の収入とはそんなに潤う程の高収入では無いのだ。…新しく畑を切り拓くとなると、それ成りに苦労するのは分かっていた。兄達が手を貸してはくれるだろうが、それは父親の畑仕事へ迷惑を掛ける事に為る。兄達が手伝わなければ、父の畑は回らないだろう…と。だから家畜で生計を立てようと思っていた。そのせいもあって、街への学び場に語学や算術やらなにやらの勉強をしに、村から出て来ていたのだ。



 一緒に出て来た同村の少年~友人等の理由も似た様なものだった。ハイツと言う名の同村の友は、長男だが、家の畑よりも大分規模が小さく、彼の両親も彼も苦労していた。なんにしても『馬鹿では生きてもいけない』と、俺と一緒に学び場で学ぶ為に、街へと出て来たのだ。後の二人は家畜業の長男と、養鳥屋の長男だった。家畜も鳥も生きていて、畑で動かぬ野菜よりもやや扱いが難しい。ましてや世間には、『獣』や『魔物(※後から知った事では、魔物とは俺の地方の言葉で、普通は『魔獣』と呼んだ方が、通ずるらしい)』が、かなりの数で生息して居る。魔獣や獣は滅多に『森』や棲家~根城から出ては来ない。人が生息出来る地域の『空気』を嫌うらしいのだ。つまりは生きづらいから森等から滅多に出て来ないと。稀に無神経なのもいて、人のエリアにも来るらしい。しかも人嫌いな奴等は、人に遭えば必ず襲って来るーー迷惑な生き物だーーが、向こうも同じ気持ちなのだろう。人は魔物を狩る。生きる為だ。食料として魔獣を見ているーーそんな人間は少なく無い。かく言う俺も、魔物ーー魔獣の味を知ってしまってからは、家畜や獣の味では物足りなくなってしまっていたーー冒険者を続ける理由はそこにも在るーー決して村へと帰っても、年頃の俺の嫁さん適齢期な女がひとりも残って無いとかそんな事はーーーーそれも大いに在るよ(苦)在るったら有るよ。




 冒険者やってる間に来た田舎からの知らせで、斜め向かいの家畜のおっちゃんの娘も、同い年の鳥屋の友達んとこの妹達も、その他もみ~んな、嫁に行っちまったよ!…別に好きとかじゃあ無かったがな。…さびしいもんだよな。



 ハイツも別に好きとも何とも思って無いとか言っていた、…鳥屋の下の方の妹と所帯持ったとかで、(※手紙寄越したんだよ)もう子供までいるらしい…て、当たり前か。あの日からもう十年なんだものな……懐かしいよ、ハイツ。お前の薦めも有って、俺は冒険者への道を決めたんだったな。『畑耕すより、お前に合ってそうだぞ、ダーナス。家に反対されたら兄貴や親父さんに俺も口添えしてやるよ。お前そんな説明とか説得とかって出来な…苦手だろ』ってな。なあハイツ、……俺ってオマエから見て、脳筋だったのか?  鳥屋の妹のおまえの嫁さんからの手紙にそう書いてあったんだが。……なあ?   「お久しぶりです。元気で冒険者頑張ってるのかな。お知らせがあって、手紙を書いています。幼馴染だから分かるよね。バダニさん家のハイツ。彼と結婚しました。四つ上だし迷ったけど、ハイツなら、昔から良く知ってたし、他の街とか村とかにお嫁に行かなくて済むし。安易かな。でもお兄ちゃんとも、ダーナスとも仲良かったし、大丈夫だと思う。ハイツ良い子だしね。って四つ上なのに良い子とか言うから、『オマエは生意気だ』ってよくハイツに言われてたのかな。まあ、妹みたいに思われてるみたいだけど、何とか頑張ってみます。そうだ、お兄ちゃんとハイツがね、この前言ってた『ダーナスは頭の中ほぼ筋肉で出来てるからなあ』って。自分が結婚するからって、ちょっと言い過ぎだよね。でも心配してるみたいだよ。ダーナスも早く良い人見付けて、お兄ちゃんやハイツを安心させてください。たまには帰ってきてね。 ~ラビラ。」




 …喜べ、ラビラ。そんな手紙を貰って早ーー数年。もう嫁を見付けずには故郷にも顔も出せんーーそんな想いはやっと報われそうだ。……目の前に滅茶苦茶可愛い美女が居るんだよ。…なんだかちょっと怪我が痛々しいけど。 ラビラ、ダーナスにいやんは、この人を嫁にして故郷に見せに行こうと思う。妹のようだったお転婆ラビラもそしたら喜んでくれるだろ? ラビラの姉ちゃんのミラビは他の都市に嫁に行っちまったから、見せれんかも知れんけどな。

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