『最後は「友理奈」姉さんが、此の【事件】を「解決」する。ーーのか?(え?そんな上手くいく?の?いかないの?)』
加野なつめの目の前の惨劇は果たして『現実』か?
青黒い【闇】の様な『何か』に引きずり込まれそうになった時に、ふいにそれ等は『霧散』した。
「やめろ、『青』。『御前』は『余計』な『事』を『するな』。」
そう言って『現れた』男の『顔』を、加野なつめは『知って』いたーーあの日のあの『男』だ。本人だ。
「陸兄……、」
青が苦々しくそう言った。
「『先生』、お久しぶりです。………なんか………『派手』な事…………………してますね?……………何、此れ……………『血』?………………………お掃除大変そうだなあ、(此処の)……生徒さん。頑張ってね、『海』君。」
「友理奈さん、『酷い』よ、なんで『僕』が『掃除』するの? あれ? ……………友理奈さん? どうして橋本『先生』と『お久しぶり』? 先生と知り合いなの?」
「ちょっ、『海』君っ! なんで居んの? ああ、もう、頭働かないしorz 何がどうなってるんだよ!」
突然現れたのは、昔自分を助けてくれた男と、その『連れ』は、自分の同級生『海』で、それから何故か『女性』がいたーー加野なつめは混乱の真っ只中に『居た』。
『陸』と呼ばれた男が『動い』た。友が『捕えた』弓削 光明だった『筈』の『同級生』は、息も絶え絶え、然し陸と言う男を睨み、対峙する。既視感だ。いつかのあの日みたいだと、加野に思わせて。
ふっと陸が笑った。笑わないと思っていた男は、笑って、それから『お父さん』と、言った。卓が『陸』と声を掛けたが、それに『陸』と言う男は、『おにいちゃん』と返した。
『自分』に任せてもらって、良いかと。
卓と陽藍が了承した。狐が『なんだ?』と言うか言わないかで、徐ろに『狐』に近付いた陸が、ひゅっと腕を振り切った。ころんと何かが其処に落ちた。友の腕の中の『弓削 光明』は、首が別れ目と為り、違っていた。落ちたのは首から先だ。光の無い瞳だった箇所が、頬に伝えたのは、涙だったのだろうか。加野なつめには、非現実な光景が、未だ未だ続いていたのだ。
「陸さん…………『此の子』は、『どうするんです?』」
陸と一緒に『来た』女性がそう言った。海が言う。『お父さん、弓削君は「許して」もらえるの?』とーー
「なつめ君『次第』かな」と、華月 友が、そう言った。
「加野君?」
華月 海が不思議そうな表情を浮かべて、自分を見た。いきなり過ぎて、なつめは息が詰った。
「馬鹿言うな友。出来る『限り』救けるよ。但し、『出来る限り』だ。」
陸が言った。そして又言う。『卓兄、「手伝っ」て』と。海が僕は?と聞いたが、『海は其処に居れば、其れでいい』ーーと、言われていた。
「友、『その子』寄越せ。早く。手遅れになるだろ。」
陸兄ちゃん、頑張ってと海が小さく言ったのが聴こえた。お願いと。泣きそうな顔で。隣の女性がその頭を、優しく撫でて。海は顔を隠して少し泣いた様だった。『友理奈さん見付かったから、もう泣いて良い。』と、海が言い、其の女性が『何それ』と呆れた風に、其れに呟いた。
なつめはそこで、ぎょっとした。てっきり『弓削』を、どうにかするのだと思えば、弓削は友が、其の身を、ごとりと、其処に置いた。置かれた弓削 光明は、もう、動かなかった。
腕を、陸と卓に向けた友は、『何か』をふたりへと確かに『渡し』た。友から其の、『何か』を受けった陸は、壊れた宝石の様に其れをそっと受け取り、其処に卓が『手を貸し』て、
『何か』が始まった。
女性が言った。
大丈夫と。
『私みたいに再生するよ。だって、陸さんーーだもん。海君の最強お兄ちゃんでしょ?』と。
「うちの『お兄ちゃん』は、『全員』『最強』……。」
海が鼻を鳴らしながら言った。友理奈と呼ばれていた女性が、笑った。『全員、最強なんだ?』と、可笑しそうに。盾と矛だねと、いとおかしそうに。
「陸兄、『此方』、どうするの?」
と、ふいに友が言った。陸に『煩い、黙ってろ。』と黙らされていた。
友が言った『此方』とは、弓削 光明だった肉体だった。ふたつに別れた。
「先生、」友理奈が橋本に提案した。
「あの『剥製』って、『未だ』有ります?」と。
橋本 和希が『あれか!』と頷いた。多分在る筈だと。
「陽藍先生、俺、『入れ物』取って来ます。………此処って『任せ』ても?」
華月 陽藍が、早く行けと言ったので、橋本 和希が其の『場』から、『消え』た。陸が『何?』と、友理奈に聞いたので、友理奈は答えていた。暫しして、橋本 和希は『其の場』に戻った。手に『其れ』を抱えて。在った!と、其れを『見せ』て。すかさず、友理奈は『突っ込む』。
「橋本先生ーーーーー何・で、『狸』な・ん・ですか? 私が言ったのは、『狐』の、剥製だから。有ったでしょ? まさかーーーー捨てたの? 先生? 棄てちゃったの? 祟られちゃうよ〜先生。あの狐ちゃんには、……罪は無かったのに。頂き物は大切にしようよ〜で、何処やったの?」
橋本が『安定の橋本』の名の元に言う。『紛失くしました!』と。
「だっ代替え品で勘弁してくれ、紀端。大丈夫だよ!狸可愛いよ!……………多分きっと。」
友理奈がその狸は何処から持って来たんですか?と、橋本に聞き、和希は『例のおっちゃんに又貰った』と、答えていた。狐ちゃんは盗まれたんですか?と、友理奈が聞くと、『違う。仕舞ったら失くしたの……てへ』とか、英語教師は言っていた。『…………駄目だ此の教師……』と、加野なつめは遠慮無く思った。
足元に非現実な同級生が転がったままで。まあ、いいやと加野以外の面々が納得と言うより妥協して、狸の台座が『外され』た。弓削 光明を『残し』て、『狐の神』は、其処から『狸』に『入れ』られた。友理奈がまあ、『シュール』と言ったが、加野はとっくに感覚が麻痺して、働かなかった。友人の遺体を見ながら。
光が『生まれ』た。そちらを見ると、狸に気を取られていたが、陸と卓が『光』を、『再生』していた。嫌、光ではなかった。其処に、少女が在た。有りの侭の『姿』で。
「いやこれ、ちょっと待ったげて。着替えは?着替え。先生!着替えは?嘘でしょ先生、役立たず。」
「ちょっ、紀端!おまえっ、相変わらずきついな、もの言いが…………………着替え無いけどさ…………よしお前脱げ」と、言い掛けて、橋本は死にたいのか?と、陽藍に睨まれた。真っ青に生った英語教師は、海に救われた。
「んと、取り敢えず、此れ……」
そう言った海が自分のジャケットを脱ぎ、少女へと掛けた。卓と陸が着せてやった。友理奈は『海君、ナイス。橋本先生、論外ね。』と、言って居た。確かに『駄目』だなと、加野なつめは思ったが、それよりもふと、気が付いた事が有る。
「…………木ノ下? 木ノ下……なつの ? 1組の木ノ下………だよ………な? なんか…………若いけど………………い、妹?」
加野なつめはそう言ったが、それは『否定』された。嫌、『当人』だよと。
弓削 光明の中に在った少女の魂を、友が『無理矢理』抜き『返し』たのだ。友は其れを『握って』いたーー陸に『渡す』迄。預かった陸は、卓の『力』を『借り』て、少女を再生したーーが、
「う〜ん、やっぱり、この辺が『限界』か」と、そう言った。
少女、木ノ下なつのは、小学生位の姿に『生って』しまった。肉体の微粒子は殆ど『拾え』なかったので、此処が限界だった。ただ、なつのの、『強い想い』が、『再生』の『手助け』ーー強いスパイスに為った。『海は居るだけ』で、『いい』ーー友理奈はこっそりと『成程』と思った。海、当人は気付いていないのだが、いつか『彼女』が自分で伝えるだろうーーと友理奈は思った。良かったね、海君。美人さんじゃない。モテるねと。
「ーー『なんだ?』『これ?』」
『剥製』が『話し』出したのは、そんな時だった。『確かに妙だ』と、流石に加野なつめは思った。
剥製は動いていた。どう見ても狸なのに。弓削 光明は未だ廊下に転がって居た。
「『洗濯屋』さん、『仕事』だぜ?」
と、華月 友が言った。
私ですか? 友さんっ!? 洗うの!? 『アレ』を?!と、紀端改め、華月 友理奈はそう言った。
加野なつめだけ、何も理解らないままだった。
「まあ、『糊』だけ剥がせば、動ける『様に』なるだろ。なあ、『ポンタ』」と、
華月 陽藍が狐を辞めた狸に、微笑んだ。加野なつめには陽藍が、とても精巧に造られたとても美しい彫刻に思えた。息を呑む程の。呼吸を忘れる程の。
お陰で誰も『ポンタ』に突っ込みを入れる事は無かった。未だ知らないからで在ろうが。
「ポンタ」
そう呼ぶ声は、加野なつめの『後ろ』に『居た』。『お兄ちゃんっ』と叫ぶ声が聴こえた。
狸の剥製は、剥製に見え出した。固まって居たからだ。立ち尽くすとは、此の事を言うので在ろうと、加野なつめはそう思った。狸の剥製のフリーズはやはりシュールだったが、突っ込みを入れる余力は最早無かった。もう既に十分 奇妙だ。
血だらけの宝物が哀しかった。




