Ⅱ-nd.−Ⅱ. *その後の元カレ〜* そして、
佐木直夏は先急いでいた。ぐんぐんど先を急ぐ。今向かっているのは借り住まいしている部屋ではなく、生まれて育った自宅だった
とりあえず、ーーとりあえずは先ず、父さんに相談しよう。それからおじさんにーー
自宅まで後5分程。相変わらず全く反応の返って来ない携帯電話。相手は勿論友理奈でーー
本当、あのバカは何処に行ったんだ。これで実は旅行ーーとか言われたら、怒るからな?メールも無料トークも送れるって事は、電源入ってんだろ?何で出ない?未だ怒ってるだけか?ーーいや真逆ーー頭の中ぐちゃぐちゃになりながら、ぐるぐると心配ばかりしていると、見慣れた自宅や友人宅が並ぶ風景がもう見えた。ーー
※ ※ ※
「お腹空いた。」もう素直にそう言った。恥とかもういいや。そんな事より空腹だよ。街に着くまで後何分なの? 10分も有れば着くの? トータル1時間だよね? 間違い手違い無いよね? ガイ君。 喉も渇いたよ! 後払い頑張るからお願いします!
と、心の中で語ったので、ガイに詳細は伝わっていない。単に、話す気力も無い程に自分が空腹だと気付いてしまったのだ。うん、現実逃避、飽きたね。無理だった、現実逃避。逃げれなかった。
きゅうぅん
…まただ。また何か鳴った。そう、私がお腹の中に飼っているらしい虫さんだよ。…泣きたい。恥ずかしい。また、1、5M位先に居た、三人の男共がこっちガン見しているよ。無意識に目を反らす…
ガン見やめて、おやつで良いから分けてくれないかな。お腹空いたって言ってるのに。優しくないのね、この人達。私が美人じゃ無いからなの?(泣)
そんな事思っていると、ガイがようやく口を開いた。『我慢しろ』と。もうすぐ街に着くからって。『じゃあ、お水。ちょっとでいいから』そう言うと、金髪のおにいちゃんの方が反応したよ。
「ー私のもので良ければ」と。う~ん。いいの? 慣れた手つきで、細長い筒みたいな入れ物を自分の荷物から外して、此方に向かって来るよ、おにいさん。 でも何か色々と気不味いよ?
これを『じゃあ』と貰える程、私の神経は太くは無いみたいで。とりあえず慌てて、口を開いた。
「ーあでも、あの…ガイ…ガイ…さんに、聞いてみないと…で」ガイにさん付けるの忘れて、慌てて付けて言い直した。礼儀、大事。ここ重要。
すると彼等は二人して、ガイの方を見て、ガイをとても不思議なものみたいな反応でーー見たのだった。…何その反応? ガイの事も良く知らない、ガイの知り合いらしき二人の事は余計知らないーーそんな私はこんな空気をーーどう読んだら良いのよ。と、思ったら、
「なんで、ガイに聞かないと?」と。
先に出て来たおっちゃ、んん、否、え~と、茶色っぽい髪色の、ややくたびれたおにいさんーーかが言いました。しかも私にはでなく、ガイに聞いてた。…なんでよおっちゃん。
でもガイが答える。……ガイの説明はこんな感じだった…
『一銭も持たずに何故か歩いてたってか、道の真ん中ですっ転んで邪魔だったその女退かしたら、護衛に雇われた。…後払いでな。金払うまでは少なくとも、俺の言う事は聞いてもらう。…そいつな…どんな田舎から出て来たのか……本気で何も知らないぞ……冒険者って何だって言いやがったよ』
と。何故か心底呆れた感じだった。…何でよ。因みにだけど、『田舎者』って、私は田舎から出て来たとは、一切言っていない。『かなり遠い所から来た』と説明しただけだ。それをガイが『じゃあ大分田舎なんだな』と解釈しただけで。(面倒だから否定しなかったらこうなった)田舎じゃ無いよ。…都会から来たよ。この世界には無い場所だけどね。そうは言えないし、言わない。どうせ言っても何の事か分かってもらえないだろうし。
ガイの知り合い二人は、ガイの説明に、目を見開いて驚き、無言で私を見て、何やら納得した。…だから何でなの。ってこの汚れ具合では仕方無いか。かなり遠くからと言われても、『ああ』となるな。とりあえず早く街に行って、埃落として、さっぱりしたいです。早く街へ行きませんか。勿論お腹も減ってるけどさ。お願いしますよ、皆さん。早よ歩け。こっちは膝も痛いんだ。勿論この怪我にこの人達が無関係だと理解してるんだけど、ちょこっと気を使ってくれるかな。可愛く無くても女の子が怪我して痛ましい姿で、ばてばてなんだからさ。優しさ振りまいてもバチは当たらないと思うよ。
特はしないだろうけどさ。私では。