Ⅹ. ‐ 5. クール・…パニック?
私ーー紀端 友理奈は、今目の前の『光景』に、大いに戸惑っていた。
普通戸惑いますよ、此れ。
今どうなっているかと言いますと、先程『空』から、沢山の『女のひとたち』が、やって来ました。それだけでもう、非常識。しかもその『方々』が皆して、『ケバい・セクシー』だったのです。いや、『出で立ち』がね。裸に近いお洋服って言うのかな?品が無い。『色気』ってそう言う事じゃ無いと思うんだよ。これじゃ、『痴態』です。申し訳無いけど。
…御洒落さも…無い。個性が余り無い…『見せれば』それでいい!……みたいな格好で。お金貰ってもしたくない『格好』してる。…。 はい、わかり易く言うと、『ダサい』んです。半裸のおねえさん達が、『…裸のが…マシじゃない?』って格好して、空中にいるんだよ?異様だし、変だよ。
お巡りさんいたら……皆…捕まると思う……此の星にも是非居て欲しい……。
こういう人達に限って痴漢されたら怒るんだよ。……馬鹿みたい。…とっても迷惑だよ…。
その時、きゅっと、手を握られた。…直夏だった。見ると心配そうな顔をしているー大丈夫だよ…。でも私は涙目だった…。こんな所で泣いている場合ではない。しっかりしなくては…。ごめんね、…直夏。…大丈夫だよ。
でも『大丈夫』ではなかったのだ。更に『其れ』は来た。『罵声』と共に。
「ーー退け!馬鹿女神共が!邪魔だあ!」と。
『女神』さん達を掻き分ける様に『現れた』ひとたちーー。…今度は…何?
『女神』さん達に比べれば、半数にも満たない数では在ったけれど、其れ等は『来た』。
『出現』と言っていい。空間が、歪んだーーかもしれない。『空中』から。『其処に在った』違和感ーーの『中』から。現れた。男の『ひとたち』で在ったーー。
白い服のひと、黒い衣装のひと、水色のひと、黄緑、深緑ーー様々だった。金色や銀色も居た。薄紫ーー薄桜色…そんな感じだった。ああ、服装ね。肌は皆『肌色』だったよ?
『女神』さま達は何だか…『薄黒』かったり、『赤黒』かったり、それこそ『桜色』だったり、肌色以外も色々居たけど。ほんのり黄色とか。今更だけど、おねえさん方、『女神』さまなの?
……ちょっとがっかりだ。夢壊れるな。寧ろ…軽いホラー『悪夢』…………。あ、そうだ、『おじ様』を見て、『気分転換』にしよう。……あとほら、『タクトさま』とか。…………よし、爽やかだ。
とかやってたら、『タクトさま』が…こっち見てるよ…。…やばい?
焦るとタクトさんが、呆れ顔で言った。
「あのさ」と。
「僕の名前『卓』ね? 円卓とかの卓上とかの『卓』。」OK?と、聞かれました…。はい、オーケー(了解)です。………………今其処なんだ?
あ、直夏呆れてる。
「じゃあ、ついで。直夏に任せとくと、紹介してくれないな? 俺は『龍』ね? 『和風』のドラゴンってやつ。 了解?」と。
『リュウ』さんは、『龍』なのね。……和風……(笑)。成る程。面白いけど、凄くわかり易い紹介。あ、笑顔素敵。と、思うと『お父さんが付けたんだ。受売り』だって。…そうなんだ。
「あっちのあれが、『青』。『あお』って書くんだ。後、横のが『陸』。『大陸』の『リク』だね。あのコンビで『空と大地』だよ、うちは(笑)」と、龍さんが言った。
「それ……『今』かな? ……龍兄…」直夏さんが…呆れました。
「「直夏、堅い。」」と、ハモり。うん、呆れる位、素敵な『笑顔』。……愉しそう…だし。
「大丈夫だよ、直夏。」と、タクトさーーじゃなくて卓さん。
「残念。俺等出番無いね。」と、龍さん。『もう終わるよ』と。……さっき、おじ様もそう言った。でも、どうやって? そんなのほほんとしてて……終わるの? ……なんで?
「ーーーー何か『用』か?」
おじ様の声がして、そちらを向いた。声が怒気を孕んでた……。
言われたのは、『空』から『出て来た』男の人達ーーこの場合、多分『全員』神さまーーなんだろうね。…信じたく…無いけど。
だって。だってなんだか皆して『一般人・その他』みたいな風貌なんだもんっ。がっかりだよっ。『神さま』って『美形オンリー(※のみ)』じゃあ無いの?! ……なんか無性に哀しい……。
「待てー!その他って何だ!その他って!ひどくないか?!毒舌過ぎるだろ!」
と、空にいる『おにいさん………おっちゃん?』のひとりに怒られました。………心の声を……聞かないで? マナー違反。 ……え? セクハラじゃない? これ。セクシャルハラスメント。
………酷いなあ。気持ち悪っ。とか思ってたら、
「くっ」
「ーぷはっ」
「ははは、」
「ちょっ、笑かすなよ、友理奈チャン。」とか、
「くっく、友理奈ちゃん。君、『一般人・その他』って。ぷ。それさ、どんな顔なの?『その他顔』」
と、おじ様が。ええ? 突っ込み入れるかな? 今? 緊迫感無いなあ…。もう。
「ちょっ、お父さん!煽らないでっ。やべ、『一般人顔の神さま』。……ぶはっ」って。
友さんが吹いた。………イケメン俳優が………ガチで吹かないでよ。やめて。私の夢を壊さないで。
友さんが出たドラマとか映画とか結構観てるよ? 私。何お腹抱えて笑ってるのよ……ちょっと。
あ、陸さんは唯一笑ってないよ?偉いぞ!陸さん!
因みに直夏さんは『…いつもの事』みたいな顔して呆れてるだけ…。寧ろ困った顔をしている。私は思わず直夏の手をきゅっ!と、……握り返す。さっき掴まれたままだったから……。直夏が一瞬驚いてから……笑顔になった。……うう、直夏の笑顔が……可愛い。……照れてしまう。………うう〜もう。時々見せる此の顔に弱いんだよ。あんまり不意打ちしないでよ? ねえ?
と、そこで、急に陸さんが、『踏むの』を『止めて』此方に来た。ずっと踏んでたんだよね……
「直、ちょっと。」と。直夏に話し掛けると、
「何?陸、『あれ』、もういいの?『ミッション』だよ?」と、卓さんが。
「僕代わる?」と、青さん。いやいいーーと、陸さんが応えて言った。
「直、『事態』が『変わる』から、『その子』ちゃんと『押さえとけ』。……また『飛ばれる』ぞ?」
と。
言われた直夏が無言で『私』を『抱え』た。ぎゅっと。えと思うと意外と真剣だったーー。
「卓兄、龍兄、…。結界は?」と陸さんが言うと、
「もう『張って』る。」と卓さんと、
「完璧だから、安心して。」と、龍さんが。
頷いた陸さんが次に言った。『青!』と。
「仕事!」と言い、空へ顎をやる。にっと頷いたのか、嬉しそうに笑う『青』さんーー
が、『消えた』。え?
そして何かと何かがぶつかり合う、凄い音だけが『聴こえる』。悲鳴と共に、次々とする『落下音』。
多分青さんは、『空』にいた『全て』の『女神』を、『叩き落とし』たらしいーー。
見えた訳ではない。ただ、『女神』達が皆、『庭』に落とされ『呻いて』いたのでそう思っただけだ。
青褪めたのは、後から来た『神々』。彼等は皆、全員が未だ、『空』に居たままだ。どれだけ器用に『彼等』の間をすり抜けたのだろう………『神』技と言うしかないのだろう……見えないのだから。ああ、『彼』は、『ひと』ではないのだとそう思った。どんなに『軽口』を叩いていても。
女神達は……涙目だった。多分痛いのだろう……『神』でも『痛い』のだな……と、私は不思議な事を思っていた………。
「……あんまり『スマート』じゃあ無いなあ。青?」
と、沈黙を破ったのはおじ様だった。
「え〜じゃあどうするの?お父さんなら。……今僕コイツ等に、ひと言ふた言嫌味たっぷり言ってやろうと思ってたとこ、だったのにさ?」
と、青さんが言った。………嫌味ってどんな………。と、私が思ったら、例えば?とおじ様が言う。応える青さんーー
嬉々としてる。
「ふっ。」
にやりと笑い、横の『神さま』のひとり、私に『毒舌!』と言って来た………
「ーー邪魔だと思ったならさ」と、目を『女神』さん達に向けてーー
鋭い眼光がーー
「『退かせば』良かったじゃない? こういう『風』にさ? ねえ? まさか、出来ないの?」と。
一瞥してから、
「その『程度』の力量で、人様の『星』に乗り込んで来るなよな? 『稽古』つけてやろうか?僕なら『優しい』よ? どう?」
と。……意味有り気に聞こえた……何………するつもり?
「…………あんた……………関係ない………だろ? ……此の星神の許可なら……貰ったさ」と、絞り出す様に言った…………そこへ、
「出してない!」と、
力強く言ったのは、白い服さん。普通さんね。
にやっ!と、青さんはかなり不敵に『笑った』。悪い笑顔だな…
「強制送還か………おまけ付けてやるよ、御決まりのな。」と、おじ様が言った。言うと同時位に、それは起きた。
ぶわっと『風』が吹いた様にも感じたけれど、あっと思う暇も無く、次の瞬間だった。
落ち着いてみると、おじ様はいなかったーーどうして?
そして『其処には』、
『神々』は『全員』『居なかった』。嫌な予感。【消滅】とか恐い【事】を言って在たーーねえ?【まさか】。
「おっ、おじ様?!」思わず『叫んだ』私はーー『青褪めて』在たーー【消えないで!】よ?
未だお礼も言って無いよ!! 頬から、温かい『何か』が何度も伝って流れていくーーそれが涙だと気付いたがーー冷静には為れなかった。ーー
※ ※




