Fast-Ⅳ. 『知り合い』と遭遇。
…疲れた…お腹空いた
そう言いそうになった頃に、何故か目の前の、正確には左前方斜め前辺り付近の、轍街道横の林みたいな木々の間から、ふいに動く影が現れたーーと言うか出て来た。
あ、ひとだ。ぇえと、疲れand空腹で、正直どうでも良くなってたのですが、例の獣やら…なんだっけ、ああ、魔獣とかやらでは無く、人間の形をした、多分人間だと思われる身なりの方ーー多分男性ですねーーが、森だか林だかから出て来た。服装はそうね、ーーダサいーーおっと間違えた、余り派手では無いと言うか、地味〜な色合いの…マント? ついきったないとか形容してしまいそうなのは自粛。今は私もそこそこ汚れてる。ひとの事は言えないので。
「…ラングリッド?」
意外にも意外な言葉は私の近くから聞こえた。 つまり、私の右やや斜め前から。 …はい? あの〜もしやその『ラングリッド』さん〜と言うのは、今其処の木々の間から無造作にしれっと出て来た…おっさ…いや、ちょっと歳の行ったおにいさん…の事? …でしょうか? …ガイさん。
アンタその小汚い身形のおっさ、んん、おにいさんさ、…知り合い……なのかな?
先程、私の砂埃まみれのちょっと可哀想な、悲惨な姿見て、『汚い』とーー言っていたのでは?
そのにいさん、十分てかそれ以上に、多分恐らく私よりも薄汚れてるよ……?ねえ? それは良いの? すっごい にこやかに お話弾んでますけど。 ねえ?
放置される事ーー暫し、時間にすれば五分位なのか…と思う。なにしろ先程気付いたが、私の腕時計、…止まってたし。正確な時の経過は分からない。けれど体内時計的なものは、五分位だろうと言っている。多分ね。
そして、
更に、何故かもう一人、男がその森とかの中から当たり前の様に出て来たのだった。…其処は何なの?…実は道になってるの? そんな訳は無い。 いや分かってますよ。 …分からないけど。
そうして、見るからにびっくりする位、『美しい』と形容してしまいたくなる、鮮やかな金髪の美形の男が、目の前に在たふたりの男にこう言ったーー
「何だーーガイスか」と。 うん、ねえ、とりあえずガイスって誰。 今ガイに言ったよね?おにいさん。(※金髪美形) ガイがガイスって事? それともラングリッドさんとやらが、ラングリッド・ガイスとか、ガイス・ラングリッドとか言う名前なの? どっち?
どっちでもいいやと言いそうになり、いや駄目だ駄目だと考えを訂正する。もう暫くガイには役立ちーーいや、お世話にならんといけないのだ。ここ大事。重要。軽く無い。ああ、うん、お腹減ったわ。 糖分と水分を私に下さい。 頭回りません(泣)
きゅうん。…………。 鳴ったのは私の可愛らしい胸のときめきとかではーー無く、お腹鳴ったよ。自分でもちょっとびっくりなタイミングと音で。
せめて鳴ったのが、ガイの知り合いらしい人達がいきなり道に沸いて出て来る前ならば、……聴かれなかったよ。 だからその『はあ?』〜みたいな顔、やめてくれるかな。
ガイその他二名の呆れた様な、驚きと何かの視線を身に浴びながら、哀れみの視線とかじゃ無くて、水か何か下さいって思った。…きっとガイはお金取るけど。