Ⅷ. 友理奈さん〜お家に帰れないので〜『洗濯屋』さんになる〜それは稼げるの?
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今日も快晴と言うやつだ。洗濯物の乾く日だ。
宿屋『葉緑』の女主人は、最近楽をしている。歩くと五分程の処に、『洗濯屋』が出来たのだ。
しかも洗い物も回収しに来る。楽過ぎる。娘のお古もあげてみるものだと思った。
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街の中、外壁に囲われた安全とも思える地で、紀端 友理奈は空を見ていた。
「良い天気。」と呟く。産まれた地は大分『遠い』のだと、恋人直夏の話を聞き、一応理解した。又怪奇現象的な『例のアレ』つまり『転移』が起きないと帰れないだろう。
「…なんだかなあ」と又呟く。
自分は恵まれた場所に住んで居たのだと、そう思った。
洗濯カゴを、抱えながら。
さあ干さなくちゃと思った時だった。『ユリナ』と聞いた事がある声に呼ばれた。
振り返るとガイサースが居た。金の髪が陽に眩しい。
「ガイサース様!?っと、え?」
友理奈が言葉に詰まったのは、ガイサースに連れが居たからだった。
「え?ガイ?」
ガイサース王太子の少し後ろを歩いて来たのは、ユリナの知っている『ガイ』だった。
レザード・ガイサースがアレフゥロードの弟だとは、ユリナは知る訳も無いので、目を白黒させるしか無い。
「…やっぱりおまえか…」ガイが溜息を吐いた。『無事だったか』と。ガイにしてみればである。
「ユリナ嬢?私の弟とは知り合いだったのかな?」と、アレフゥロード王太子が疑問を口にする。
弟と言われて目を剥いたのは当然友理奈だ。『聞いていない』と言いそうだったが、言う訳が無いだろうとひとりノリ突っ込みだ。
そんな事より彼女は大切な事を思い出して、アレフゥロード殿下に勢いづく。
「ガイサース様っ」と。余りの勢いに、アレフゥロード・ガイサースはやや無意識に身体を引いた。どうかしたのかと促すと、先日助けたこのレディは大袈裟に言う。
「先日お借りした『例のあれ』ですが、ごめんなさいーー未だお返し出来る程の『貯え』がありませんっ」と。居住いを正して。
先ず其処なのかとアレフゥロードは少し脱力と共にやや呆れた。此方としては若い婦人をひとりにし、自分の用事を優先させた紳士とは無縁の行いの反省や、待ち人には会えたのか等、心配事も尽きずに、弟を促して半ば無理矢理ここ迄同行させたと言うのにーーだ。全く。
「その様な事よりもユリナ嬢、待ち人には会えたのかな。あれから大事はなかったかい。」
アレフゥロードはまるで『妹がもしいれば』と言う様な心持ちで彼女ーーユリナに接していた。妹と言うより、親になった気分だった。
「……そんな事と言えば……まさか。ガイがガイサース様の『弟』なのですか……て、この場合そうですよね……あ、そうだ、ガイ、お礼ちゃんと言えてなかった。この前は色々とありがとう。……お礼の金額……足りたのかな?」
友理奈がそう言ったので、アレフゥロード王太子はきょとんとする。弟とユリナの関係性が良く分からない。『お礼』の『金額』?そう言った。ユリナは弟に『仕事』を頼んだのだろうか?
果たして何の仕事を頼んだのだろうか?想像がつかない。
「レザード、どういう事だ?」
王太子は弟殿下に聞いてみる事にした。その方が的確な答えが得られるだろうと。
其処へ『子供』の声が聞こえた。
「ーゆりなさんっ、こいつ等だれ?」と。
見ると敷地の入口にその『少年』がいた。
勝気な表情は今にも此方に挑んで来そうだった。
「あ………、『カイ』君……」ユリナがやや疲れた様な声でそう呼んだ。
少年は『カイ』と言うらしい。
雲も薄い快晴の空の下で、アレフゥロード・ガイサース王太子は弟殿下レザード・ガイサースを伴い、陽に照らされ輝く『十字架』の下で、洗濯物をカゴに入れて抱えた『妹の様な存在』と、此方を睨む『少年』とを見、暗雲の影を予感していた。
空は晴れ渡っているのに。神の声が聞こえそうだった。




